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1000年後の世界~大和王国編~

クレスタウンの周辺国

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 村外れにある小さな遊亭の地下、そこの牢屋の中に全裸で手足を縛られたユウトがいた。
 彼は無理やり押し込まれた牢屋の中で、疲労でぐったりし横たわっている。
 その横では、鞭を持った着物姿の美女が立っていた。

「最強の勇者だかなんだか知らないが、こんな状況、何時でも抜け出せるって面ぁしてるね?」
「いや、そんな事はないぞ、感度も痛みも生身の人間と同じだ…」
「そこでだ、勇者のボウヤには、今まで危なくて客にはとても使えなかった特殊なお薬を使わせて貰うとするよ」
「あの…話聞いてます?
意味わかんないんで、やめて貰っていいですかねぇ?」
「却下だ!!!」
「うぅっ!?」

 そしてユウトは首筋に注射器を差し込まれた。
 やがて中の液体が押し込まれ、徐々に彼の体の感覚がおかしくなってくる。
 牢屋の窓の外から吹いてくる風を感じるだけでいつもの何十倍もの刺激を肌に感じ、同時に物凄い快楽もこみ上げて来る。

「はぁ…はぁ、バカな、いったい何を打った…
感覚がっ…おかしい、それに…勃起が…」
「このほうが楽しめるだろう?
感度と痛覚を上げてやったのさ、勇者さまが圧倒的有利な状況じゃ、こっちにだって調教する楽しみも無いだろう?
そらっ、受けてみな!!」

 彼女は棘の付いた鞭を大きく振り上げ、ユウトの背中に振り下ろした。
 その鞭は棘部分がユウトの背中に直撃し、敏感になった肌を傷つけた。
 血が吹き出す背中を見て女は笑っているがユウトのほうはそのあまりの痛みに体が跳ね上がってしまった。

「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!
い…痛ぇ…もっ…もう勘弁してくれ…
こんなの、いやだ、痛い、痛すぎる!!
普通なら…死んでるぞ…」
「あっはっはっ♪
まったく、何を泣いてんだい?
情けない勇者様だねぇ!
今首筋に打ち込んだ液体は感度と痛覚が増す薬だよ?
どちらも感度100倍、痛覚100倍の北の帝国が処刑用で使う薬さ!」

 それはユウトと言えど耐えられるものではなかった。
 通常は死刑囚に処刑用の薬として打ち込み、鞭で叩いてショック死させる為にあるものだった。
 その威力は少しの刺激でも気が狂って死んでしまう筈なのに女は全力で力一杯ユウトの背中を叩いたのだ。
 さらに彼女はもう一度鞭を振り上げて、ユウトの無防備な背中に向けて狂気に満ちた表情で再び振り下ろす。
 その鞭が背中へ直撃し、肌を叩かれた時に出る激しい音が鳴り響いた。

「ぎゃあぁぁぁっ!!
うわああああああぁぁぁぁぁっ!!!」
「あーっはっはっ、その顔が見たかったんだよ!
この変態マゾ勇者が!
ボウヤに怨みはないが、これから地獄を見て貰うよ?
覚悟するんだね!!」

 それから先は、暴力としか思えないトゲトゲの付いた鞭の嵐がユウトを襲った。
 薬の影響で防ぐことも逃げる事も出来ないまま、出血し、通常の100倍もの激痛に襲われ…ユウトはついに気絶してしまった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 その一時間後…
 ユウトはペチペチと頬を叩かれている。

「起きたかい?ボウヤ」
「くっ…まだ痛ぇ、薬の効果は切れてねぇし…
それにあんた、さっきのは何だ!
あれが客にやる事なのか?
いくら何でもやりすぎだよ!
許さねぇからな!」

 手足は縛られ感度は100倍、痛覚も100倍で何もしていないのに痛みが走りユウトは気軽に動けなかった。

「ボウヤはこれから、西の王国カリバーンに連れて行くよ?
今からあたしの売り物になって貰うからね?」
「いや、ちょっと待て、何を言ってる?」
「まだわからないのかい?バカだねぇ…
アタシは奴隷商人で調教師なんだよ、あんたはまんまと騙されて…
ここでアタシの商品となり、売られちまうのさ…」
「つまり、あんた西の国のスパイだったのか…」
「いや…あたしゃただの奴隷商人さ、金さえ貰えれば魔族の国にだって売りに行く…
カリバーンの奴らはボウヤのこと、喉から手が出るほどほしいだろうからねぇ?」
「いや、十中八九殺されちまうよ!やめろ!」
「良かったねぇ勇者様、魔族共に可愛がって貰いな?
運が良ければ美しいサキュバスのお姉さんに飼って貰えるかもよ?
あーっはっはっ♪」

 ユウトは縄を解こうと手足をジタバタさせるが首筋に注射を突き立てられた。

「おっと、逃がさないよ。
それに、カリバーンに行けばお前はもっと可愛がって貰えるんだ…楽しみだろう?
地獄の責め苦を味わい、そして死ね…クソ勇者くん」

 ユウトは首筋に注射され、激しい睡魔に襲われて眠りに付いた。

 宿屋のマリンはスズカゼにこの付近の王国について話を聞いていた。

「まず…このクレスタウンは東西南北にある四つの国に囲まれた、いつ戦争に巻き込まれてもおかしくはない非常に危険な場所だ…」
「ええ、そこまでは知ってるわ」
「続いてまず、北にある国は要塞都市フブキ、南の方角にあるボレガノ帝国、人間が住む国だが魔族は人類の敵と見なされるので注意して欲しい」
「北の要塞都市フブキに南のボレガノ王国…」
「そして西にある魔族の国「カリバーン」、ここは先日クレスタウンを襲ってきた魔族の国だが人類を嫌っている」
「カリバーン…まるで剣みたいな名前ね…」
「そして中でも最も危険と言われているのが東にある「デッドランド」と言う場所だ。
ここに関しては残り3国が近付きもしない危険地帯…
すべての生き物は近づけない…」
「近付けない?どうして?」
「デッドランドに入れば不治の病にかかり、二度と帰って来れなくなる…
この辺りじゃ誰もが知ってる有名な話さ。
噂では霧に包まれ、生き物が住んでいるかも怪しい危険な場所だが国王はいるのだとか…」
「恐い場所があるものね…
いったいどうやって出来たのかしら…
それに、どうしてそこが国扱いになってるの?」
「すまないがそこまではわからない…
しかしデッドランドは本当に危険な場所で、今ではかのクロス王国とも手を組んでいるのだとか……」

 スズカゼはクロス王国という言葉を出した時、マリンの反応を確認し、一瞬疑いの目を向けていた。

「へぇ…どんなところなの?そこは」
「意外だな、君達はクロス王国の人間と知り合いかと思ったが違うのか…
クロス王国は数百年前に突然現れた巨大な国だよ、剣術でも魔法でも絶対に壊せない硬い壁に囲まれた国。
中に住む軍隊の強さは恐ろしくつよいと聞いたことがある。」
「ええ、知らない場所だわ」
「あくまで出所もわからない噂だが、デッドランド国王はそのクロス王国から来た奴らに操られているらしい…」
「へぇ…それじゃ、デッドランドの後ろ盾はクロス王国って可能性もあるわね…」

 やがて話し終わりマリンとスズカゼが眠りに付いた一時間後、クレスタウンから西の方角へ、荷馬車が出発した。
 その中にいるユウトは手足を縛られ身動きの取れない状況下だった。
 さらに先程の着物の女も乗り込んでいる。
 さらに荷馬車を運転するのはユウトを案内した忍者のような格好の女だった。
 ユウトは荷馬車の中で揺れながら、意識を失っていたのだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 この時、奴隷商人のレイナとアイカは昔の記憶を思い出していた。
 北の要塞都市フブキと南のボレガノ王国は領土拡大の為に戦争中だった。
 結果、彼女達の村は焼かれ蹂躙されていた。
 戦う二つの軍は1000の軍隊を率いて領土の奪い合いをしていたのだ。
 親を2人殺されて、家の中で震えているレイナとアイカは、甲冑や兜に身を包んだ北の要塞都市フブキの紋章を肩に刻んだ男達に見つかってしまう。

「ぐへへへっ!!」
「可愛らしいお嬢ちゃん達だぁ!!」
「やめねぇか、俺達ぁいま、生きるか死ぬかの大戦中だぞ…」
「いや、だからこそ硬いこと言わず、目の前の獲物は食っちまおうぜ?」
「へへっ、楽しめる時に楽しんでおかねぇとな!」

 そして2人は男達に手足を押さえられ、順番に犯された。
 処女を奪われ殴られて、到底力では適わず恐怖のどん底を味あわされた。
 彼女達の口を、膣を、体をザーメンで汚しスッキリした様子の男達は剣を放心状態の2人に向けて言った。

「悪く思うなよ?俺たちは今戦時中なんだ」
「こんな場所にいたてめぇを怨め、じゃあな」

 そして男は剣を振り下ろした…
 その瞬間、姉のレイナは妹のアイカを庇うために、手を左右に広げて妹の前に立った。

「お姉ちゃ…駄目!!!」

 姉のレイナは斬り伏せられる覚悟をし目を瞑っていた。
 しかし…その時に奇跡が起こる。
 彼女が切り捨てられる事はなく、外から鐘のような音が鳴り響き、彼らは目の色を変えて姉妹の事など興味を失ったかのように走って行った。

「お姉ちゃん、外に霧が…」
「はぁ…はぁ…戦場で何か起こったのかねぇ、しかし今は隠れるんだ!」

 どうやら、南のボレガノ軍と北のフブキ軍が戦っている最中に何かが戦場に現れたことで場はさらに混乱したらしい。
 フブキ軍、ボレガノ軍の将軍は討ち取られ、部下達も全滅し血を吐きながら倒れていた。
 戦場は真っ白な霧が出て包み込まれており、その中をたった1人の骸骨が歩いている。

「ふぉっふぉっふぉっ…
国王を脅し、ひとり戦場へ向かわせるとは…とんだ修道女どもよ…」

 頭に王冠を被り、マントを羽織った骸骨が、霧を出しながら歩くだけで2000の軍勢を1人で壊滅させたのだ。
 もはやこの場に、立っている戦士は1人も居なかった。

「うむ…うるさいハエどもは始末した…
これであやつらに怒鳴られる筋合いもないじゃろうて…
まったくこの老体を戦場へ向かわせるとは…
本当にけしからん修道女共じゃ……」

 彼はデッドランド国王ワイトキング…。
 スケルトン系の最強種とも言われている。

「なぁにあれ…骸骨が独り言を言いながら体から霧出して歩いてる…」
「アイカ、隠れてな…あの霧はきっと病原菌か何かだ、吸い込めば死ぬよ?」

 2人は小屋の中の酒樽の中に隠れ、布で口を押さえることでその場はなんとかやり過ごせた。
 そしてクレスタウンへと2人は逃げ切って、その後は闇市場で活躍した。
 レイナ達は当初殺し屋で生計を立てていたが、ある時に限界を感じ奴隷商人となった。
そして今に至る。



 ――そして―――

 ユウトもまた、気を失った中で夢を見ていたのだ。
 
 これは1000年前、俺が今のような半インキュバスではなく、人間で子供だった時の記憶…
 これは確か、マゾ教のヴィクトリアに監禁されて、調教を受けている頃の映像だ…
 和風の部屋の一部がガラス張りのペット用の部屋になっており、そこで俺が何度もヴィクトリアに殺されては魔法で生き返らされるという正気の沙汰とは思えない行為を繰り返されていた時の事…。

「もう…お許しください…何でもします、二度と逆らいませんから…だから、もう、殺さないでください…お願いです…」

 まるで幽体離脱した体から自分を見ているような映像だった。
 俺が繰り返される殺戮に心の底から脅え、何度も土下座をして謝っている。
 しかし、どれだけ許しを求めても、ヴィクトリアは許してくれなかった。
 目からは涙が溢れ体は傷だらけの哀れな自分の姿が見える。
 出来れば忘れたい記憶で今でもトラウマなのだが、こうして夢の中に出てきているのだから嫌でも目が離せなかった。
 ヴィクトリアが目の前にいると例え夢でも恐ろしい。
 あの人なら夢の中に現れる手段を持っていたとしても不思議ではない。
 そんなヴィクトリアは土下座する俺の頭を踏みつけながら言った。

「君は、自分の意志で自害する事が出来るかい?
ボクにこうして殺されなくても、自分の意志だけで自害が出来るようになれば…
例え逃れようもないピンチでも、切り抜けられる」
「はぁ、はぁ…
いえ…そんな、自分から死ぬなんて俺にはとても…
それに…逃れられないピンチを切り抜けられるとはどういう事でしょうか…?」

 その俺の問いに、思い出すかのように目を瞑った彼女は、椅子に腰掛けて話し始めた。

「この時代、魔法やスキル、そして呪いがはびこるのは知っているね…?
このボクでさえ、気を抜けば遙か格下の相手に敗北寸前にまで追い詰められる事もあるんだ…
何が起こるかなんて誰にもわかりはしない」
「ヴィクトリア様が格下の相手に?
信じられません…」
「珍しい事じゃないさ…
格上の相手を倒すには頭の使い方次第で何とでもなる…
使える者は少なく消費する魔力量も半端ないからまず誰も使わないだろうが…
ただね、封印などされてしまえば、このボクですらひとたまりもない」
「では…それと、これから俺が覚えようとしているスキルに何か関係が?」
「君がこれから覚えるのは魔力ある限り死亡しても生き返るスキルだ、その使い方のひとつとして、例えば本当にピンチの時は自ら自害をし、復活すればいい……」
「えぇ…?」

 あの時は意味が分からなかったのだが、今になって考えてみれば死んでも復活するスキルの使い方のアドバイスだったのだろう。
 これを活用するならば自殺も戦略に入れなければいけないわけで、正直今でも行う勇気はありはしない。
 しかしこのスキル、実際死亡位置から復活位置は同じではなく毎回少し離れた場所で復活する。
 これを上手く利用すれば魔力は減るものの、手足を拘束され身動きが取れなくとも、自殺をすれば復活位置から逃げる事は可能というわけだ。
 やりたくはないが理論上出来ることは確かだった。




「起きたかい?ボウヤ」

 荷馬車で目を覚ますと俺を調教した着物姿の女が目の前にいて注射器を持っていた。
 俺の手足は拘束されており、やはり体に力が入らない。
 リード付きの首輪をはめられ、なぜだか手足に力が入らなかった。
 彼女はそんな俺をあざ笑いながら言った。

「ま、クロス王国製の特殊な首輪だから、ボウヤでもはずせないだろうが…
念のため筋肉の動きも弱めさせて貰ったよ…
あんたに暴れられるとアタシらじゃ手に負えないからねぇ」

 口が上手く動かず喋る事も出来ない、おそらく薬の影響だろう。
 馬車は西の国へ向かい、止まらなかった。

(助けを呼ぶか?
いや、しかし、まだ奴らの危険度がわからない…
まずは俺の目で見極めてからにするべきか…
一応サタンになら言わなくても以心伝心で伝わるだろうし…)

 そしてユウトは西の魔族の王国カリバーンへ連れて行かれたのだった。
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