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1000年後の世界~大和王国編~
クレスタウン到着
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ユウト、マリン、マゾドレエ、スズカゼはクレスタウンを目指し自動で動く荷車に乗っていた。
「しかしすごいな、魔法にもこんな使い方があったとは…」
数十分前、ユウトが魔法で大きな荷車を出現させた。
スズカゼからすればそれだけでも驚きだったのだが、さらに凄いのは馬もいないのに目的地に向かって走っているからだった。
「魔石を埋め込んで魔力を込めるだけだよ。
空飛ぶ船とか、砂漠を進む荷車とか、見かける事あるだろ?
あれと基本原理は同じだよ」
「なんだそれは…悪いが私はそんな物は見たことがないな…
それに君たちはこんな場所で何をしていたんだ?」
ユウト達は一瞬答えるのを躊躇い、三人で小声で話し始めた。
そしてしばらくすると結論が出たのかユウトがスズカゼに目的を話し始めた。
「時空の歪み…いや、5000年以上もの過去の世界に続く穴、それを俺達は封印して行ってる」
「私達はその為にここに来たの、穴の場所のだいたいの予測は付いているけれど…
ただ、街がわからなくて」
「我が輩もこの地に舞い降りたのは今回が初めてでしてな…
スズカゼ殿、道案内はお任せしますぞ?」
「ああ…任せておけ、しかし過去へと続く穴?
そんなものが存在することも信じがたいが、いったい誰が…」
ユウト達の話はスズカゼにとって常識の範囲を超えていた。
魔法が使える世界とはいえ、過去へ行くなどは出来ないことに入る部類だからだ。
ユウトは「わからない」と首を横に振り、少し暗い表情になりながら言った。
「…ただ、もしも、その過去で誰かが暴れれば過去の改変が起こってしまう」
「過去の改変が行われれば未来も変わるわ…
もし悪意を持った人が過去へ行ったとしたら、どうなると思う?
過去の人たちは魔法は使えないのよ?」
ユウトとマリンの話にスズカゼは青ざめる。
その結果、この世界も、自分自身すらも消えてしまうと察したからだ。
「ありえるのか?
そんな事が…下手をすれば世界が崩壊してしまうだろうに」
「そうだ、過去へ行った奴の影響力次第では未来が代わり俺達すらも消えてしまう可能性がある。
だから早急に対処に来たんだ」
「で、その過去へと続く穴の場所は一つだけなのか?」
「いや世界各地にある、だから俺達の仲間が散らばって探し、封印している所だよ。
まったく、迷惑な事をする奴がいたものだ…
見つけたらただじゃおかねぇ」
その数十分後の事…
到着した場所は鉄壁の壁に囲まれた村だった。
遠目に屋台やお店が並ぶ雰囲気を見る限り、見た目は賑わう街に見える。
雰囲気としては平和な街なのだがスズカゼの話によればそうではなかった。
この街は戦争中の東西南北にある四つの国に囲まれており、毎回戦争の巻き添えになるそうだ。
その影響か、商人も旅人も住民も、戦いが始まれば避難をするか地下へ隠れるらしい。
そうしなければ巻き込まれて死傷者が出るからだ。
「フリーの傭兵と、商人が3人か」
スズカゼは傭兵で、ユウト達は商人という事にしてクレスタウンの検問所で待機させられていた。
マリンは人間の姿に変身し赤髪の女剣士の姿になっている。
しばらくすると、検問所で通行の許可、滞在許可が降りた。
「よし、通っていいぞ」
ユウト達は商人という事にして、その言い訳としてパールグレイ開発のアイテムボックスからオリジナル商品を取り出して見せた。
誰も見た事がないものばかりで一瞬騒ぎになりそうだったが、マゾドレエの言い訳でなんとか収まった。
マゾドレエはユウトピアでも女尊男卑社会のガス抜き役として使われる事も多いのだが、交渉は上手く、数々の事件を切り抜けている。
そのほとんどは、自らが撒いた種である事ばかりなのだが、しかしそれでも数々の困難を生き延びてきたのもまた事実。
「ではユウト殿、我が輩達は宿の確保とそれから風俗街のチェックを致しますぞ!」
「おう、任せと……あっくあぁぁぁぁっ!!!」
「おおおぉぉぉっ!!!」
マゾドレエとユウトが突然口から泡を吹いて倒れてしまった。
女剣士姿のマリンが2人に手をかざしていたので彼女の仕業で間違いないだろう。
「凄いなマリンさんは、あの強かった2人をこうも簡単にねじ伏せてしまうとは…
いったいどんな魔法を…」
「マリンでいいわ?
ユウトったらこうやって時々暴走するから懲らしめてやらないといけないの…
目を離すとすーぐ変態なお店に行っちゃうんだから」
「変態なお店だと…?
それはマリン、どういう店なんだ?」
「やべろぉ、言うなマリン…うぶっ…ううぅ」
マリンとスズカゼが話している中、気絶したマゾドレエと泡を吹きながら痙攣しているユウトが動けなくなっていた。
一同は宿に泊まり、マゾドレエとユウト、マリンとスズカゼで2人部屋ずつ取る事になった。
「くそっ、トラウマだわあれ…」
「ああ…わかりますぞ…超越者マリン殿のあの技は防ぎようが無いですからな…
ここは、認識疎外魔法で隠れて行動するしか…」
「じゃあ援護は任せる、まずは店を探さなくては話にならんからな」
その時だった。
「「敵襲!敵襲!!」」
カーンカーン!と鐘を鳴らす音や、サイレンの音が村中に響き渡る。
外では騒ぎになっており、聞く話によれば突然魔族の軍勢が現れこちらに走ってくると。
「ふむ、西から魔族の軍勢が1000匹、我が輩達からすれば、取るに足らない雑魚ですな…
マリン様が出る幕でもない」
「面倒だな、どっちが行く?」
マゾドレエは握り拳を出した、つまりこれはじゃんけんと言うことだ。
「「じゃーんけーんっ、ぽんっ」」
マゾドレエ、パー
ユウト、グー
「わっはっはっ、ではユウト殿、よろしく頼みますぞ。
我が輩はその間にこの村の店を…」
「開いていればいいがな、全員地下や外に避難しているかも知れん」
ユウトが門の近くへ行くと既に村の兵士達が外の守りを固めていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スズカゼは部屋でマリンに自己紹介も兼ねてこれまでの経緯を話していた。
約数ヶ月前の事…
大和王国「国王の広間」にて、スズカゼは父親ベンケイに対し怒りを露わにしていた。
「スズカゼ…何故わからん、これが最も平和に近いやり方なのだよ」
「ならば何故、戦争が続く!
国民が餓死している!
そして死亡者リストが行く前から決まっている!?
これはつまり、魔王側とお父様で、国民の命を金に変えているだけではないのか?」
「そうなのだよ、これはビジネスだ。
私達はこうでもしなければ平和を維持出来ない。
国に都合の悪い連中を戦争に行かせ、死んで貰うのだよ。
屑が死んで金になるのだ、これほど生産性を生むビジネスはない」
そしてスズカゼは家出した…
彼女は大和王国の国民が魔族に食料を奪われた事で飢えて死ぬ姿を直に目撃したことがあった。
国に不満を持つ庶民は戦争に強制的に行かされ、断ればその場で即銃殺刑だ。
戦争で死に、飢えて死に、働いても裕福な暮らしは出来ない庶民に比べ、貴族達だけは裕福な暮らしが約束されていた。
それも魔王軍側と…。
結果、国の在り方に納得か行かないスズカゼはある時「魔王を倒してやる」と言い、王位継承権を持ったまま王国から逃げだし行方不明になった。
「こっちの世界が今やそんな事になっていたなんて…スズカゼも大変だったのね…」
「こっちの世界?マリン達の世界はこことは違うのか?」
「私達はユウトピアと言って、違う次元に作られた世界から来たの。
こっちとは時間の流が違ってあちらの世界で100年過ごせば1000年の時を越えてる」
「何ともまた現実離れした話だな…本当に君達に会ってから信じられない事だらけだよ…」
その時、外から鐘を鳴らす音が聞こえてきた。
(なんだ?
まさか魔族の襲撃か?)
どうやら外の様子が騒がしい…
スズカゼはドアを開けすぐに出て行った。
(マリンはユウトが行ったから大丈夫と言っていたが、私もフリーとはいえ傭兵の1人。
活躍させても貰おう)
しかし、門の外へ出てみれば腰が抜け動けなくなった兵士達。
向こうからは砂埃を立てながら1000を越える魔族達が走って来ている。
ドラゴン、リザードマン、炎の馬に、巨大な蛇、そしてヴァンパイアもいる。
「あの数…」
「まだ避難誘導も間に合ってないのに…」
「俺達ここまでか…」
「はぁ、まだ死にたくねぇのになぁ」
兵士達が門の外で武装しネガティブ発言をしている。
スズカゼは向かって来る戦力を分析していたところ、ドラゴンの数で討伐は無理だと判断した。
(レッド、イエロー、グリーン、ブルーの四属性が勢ぞろいか…
不可能だ…私達だけでは絶対に…)
このメンバーだけでは明らかに分が悪いと考えていたその時だった。
何者かが門を飛び越えスズカゼ達の前に飛び降りたのだ。
背中の大剣をひき抜き、マントを揺らしながら振り向いて、そして剣を天に突き立てて言った。
「あんな奴ら、俺1人で十分だ、君達は下がっているといい」
自信満々に言った彼はユウトだった。
1000を越える魔族の群にいっさい脅える事なく表情一つ変えない。
それはまるで、自身の敗北など有り得ないと言った自信の現れにも見える。
威風堂々とした彼の姿にスズカゼは乙女心を刺激され、抱くべきではない感情を刺激されてしまう。
「すまん、お前等に怨みはないが!許せ!」
ユウトは魔族達に一度だけ頭を下げた後、剣を構えた。
「行くぞデュランダル!
我が聖剣に斬れぬもの無し!桐の太刀筋!
エンプレス・ツリー!」
ユウトは大きな剣を横に一振りした。
すると、斬撃が横に走り、その後地面から振動が伝わって来た。
その様子に村の兵士達とスズカゼは驚き混乱していた。
(ん?何が起こった?
うわっ、地面が揺れて…)
突然地震が起こり魔族達はふらつき、兵士達もまた後ろへ転んでしまう程の揺れだ。
しかし魔族達は何とか踏ん張ると、敵意剥き出しでこちらへ走って来た。
ユウトとの距離がだいぶ詰められたその時、リザードマンが踏み込んだ地面にヒビが入り、やがて…。
「「逃げろ!門の中へ!」」
兵士達が叫び、慌てて門の中へ避難する。
地割れが起こり、まるで底が見えない程の穴が開いたのだ。
魔族の大群はそこに吸い込まれるように落ちていった。
(なんて…でたらめな力なんだ…
こんなもの…見たことがないぞ)
穴は魔族達を吸い込んだあと、再び閉じてゆく。
スズカゼは怖くて手足が震えていたが、ユウトは魔族達に興味を失っており、崖の方を眺めていた。
「今さっき、あの崖から人間の子供が落ちたような…」
そんな事を言うとユウトは崖の方角に走り去ってしまった。
ただ、剣をたった一振りしただけで魔族1000体を滅ぼしたユウトをスズカゼはこのとき恐ろしいと感じていた。
「しかしすごいな、魔法にもこんな使い方があったとは…」
数十分前、ユウトが魔法で大きな荷車を出現させた。
スズカゼからすればそれだけでも驚きだったのだが、さらに凄いのは馬もいないのに目的地に向かって走っているからだった。
「魔石を埋め込んで魔力を込めるだけだよ。
空飛ぶ船とか、砂漠を進む荷車とか、見かける事あるだろ?
あれと基本原理は同じだよ」
「なんだそれは…悪いが私はそんな物は見たことがないな…
それに君たちはこんな場所で何をしていたんだ?」
ユウト達は一瞬答えるのを躊躇い、三人で小声で話し始めた。
そしてしばらくすると結論が出たのかユウトがスズカゼに目的を話し始めた。
「時空の歪み…いや、5000年以上もの過去の世界に続く穴、それを俺達は封印して行ってる」
「私達はその為にここに来たの、穴の場所のだいたいの予測は付いているけれど…
ただ、街がわからなくて」
「我が輩もこの地に舞い降りたのは今回が初めてでしてな…
スズカゼ殿、道案内はお任せしますぞ?」
「ああ…任せておけ、しかし過去へと続く穴?
そんなものが存在することも信じがたいが、いったい誰が…」
ユウト達の話はスズカゼにとって常識の範囲を超えていた。
魔法が使える世界とはいえ、過去へ行くなどは出来ないことに入る部類だからだ。
ユウトは「わからない」と首を横に振り、少し暗い表情になりながら言った。
「…ただ、もしも、その過去で誰かが暴れれば過去の改変が起こってしまう」
「過去の改変が行われれば未来も変わるわ…
もし悪意を持った人が過去へ行ったとしたら、どうなると思う?
過去の人たちは魔法は使えないのよ?」
ユウトとマリンの話にスズカゼは青ざめる。
その結果、この世界も、自分自身すらも消えてしまうと察したからだ。
「ありえるのか?
そんな事が…下手をすれば世界が崩壊してしまうだろうに」
「そうだ、過去へ行った奴の影響力次第では未来が代わり俺達すらも消えてしまう可能性がある。
だから早急に対処に来たんだ」
「で、その過去へと続く穴の場所は一つだけなのか?」
「いや世界各地にある、だから俺達の仲間が散らばって探し、封印している所だよ。
まったく、迷惑な事をする奴がいたものだ…
見つけたらただじゃおかねぇ」
その数十分後の事…
到着した場所は鉄壁の壁に囲まれた村だった。
遠目に屋台やお店が並ぶ雰囲気を見る限り、見た目は賑わう街に見える。
雰囲気としては平和な街なのだがスズカゼの話によればそうではなかった。
この街は戦争中の東西南北にある四つの国に囲まれており、毎回戦争の巻き添えになるそうだ。
その影響か、商人も旅人も住民も、戦いが始まれば避難をするか地下へ隠れるらしい。
そうしなければ巻き込まれて死傷者が出るからだ。
「フリーの傭兵と、商人が3人か」
スズカゼは傭兵で、ユウト達は商人という事にしてクレスタウンの検問所で待機させられていた。
マリンは人間の姿に変身し赤髪の女剣士の姿になっている。
しばらくすると、検問所で通行の許可、滞在許可が降りた。
「よし、通っていいぞ」
ユウト達は商人という事にして、その言い訳としてパールグレイ開発のアイテムボックスからオリジナル商品を取り出して見せた。
誰も見た事がないものばかりで一瞬騒ぎになりそうだったが、マゾドレエの言い訳でなんとか収まった。
マゾドレエはユウトピアでも女尊男卑社会のガス抜き役として使われる事も多いのだが、交渉は上手く、数々の事件を切り抜けている。
そのほとんどは、自らが撒いた種である事ばかりなのだが、しかしそれでも数々の困難を生き延びてきたのもまた事実。
「ではユウト殿、我が輩達は宿の確保とそれから風俗街のチェックを致しますぞ!」
「おう、任せと……あっくあぁぁぁぁっ!!!」
「おおおぉぉぉっ!!!」
マゾドレエとユウトが突然口から泡を吹いて倒れてしまった。
女剣士姿のマリンが2人に手をかざしていたので彼女の仕業で間違いないだろう。
「凄いなマリンさんは、あの強かった2人をこうも簡単にねじ伏せてしまうとは…
いったいどんな魔法を…」
「マリンでいいわ?
ユウトったらこうやって時々暴走するから懲らしめてやらないといけないの…
目を離すとすーぐ変態なお店に行っちゃうんだから」
「変態なお店だと…?
それはマリン、どういう店なんだ?」
「やべろぉ、言うなマリン…うぶっ…ううぅ」
マリンとスズカゼが話している中、気絶したマゾドレエと泡を吹きながら痙攣しているユウトが動けなくなっていた。
一同は宿に泊まり、マゾドレエとユウト、マリンとスズカゼで2人部屋ずつ取る事になった。
「くそっ、トラウマだわあれ…」
「ああ…わかりますぞ…超越者マリン殿のあの技は防ぎようが無いですからな…
ここは、認識疎外魔法で隠れて行動するしか…」
「じゃあ援護は任せる、まずは店を探さなくては話にならんからな」
その時だった。
「「敵襲!敵襲!!」」
カーンカーン!と鐘を鳴らす音や、サイレンの音が村中に響き渡る。
外では騒ぎになっており、聞く話によれば突然魔族の軍勢が現れこちらに走ってくると。
「ふむ、西から魔族の軍勢が1000匹、我が輩達からすれば、取るに足らない雑魚ですな…
マリン様が出る幕でもない」
「面倒だな、どっちが行く?」
マゾドレエは握り拳を出した、つまりこれはじゃんけんと言うことだ。
「「じゃーんけーんっ、ぽんっ」」
マゾドレエ、パー
ユウト、グー
「わっはっはっ、ではユウト殿、よろしく頼みますぞ。
我が輩はその間にこの村の店を…」
「開いていればいいがな、全員地下や外に避難しているかも知れん」
ユウトが門の近くへ行くと既に村の兵士達が外の守りを固めていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スズカゼは部屋でマリンに自己紹介も兼ねてこれまでの経緯を話していた。
約数ヶ月前の事…
大和王国「国王の広間」にて、スズカゼは父親ベンケイに対し怒りを露わにしていた。
「スズカゼ…何故わからん、これが最も平和に近いやり方なのだよ」
「ならば何故、戦争が続く!
国民が餓死している!
そして死亡者リストが行く前から決まっている!?
これはつまり、魔王側とお父様で、国民の命を金に変えているだけではないのか?」
「そうなのだよ、これはビジネスだ。
私達はこうでもしなければ平和を維持出来ない。
国に都合の悪い連中を戦争に行かせ、死んで貰うのだよ。
屑が死んで金になるのだ、これほど生産性を生むビジネスはない」
そしてスズカゼは家出した…
彼女は大和王国の国民が魔族に食料を奪われた事で飢えて死ぬ姿を直に目撃したことがあった。
国に不満を持つ庶民は戦争に強制的に行かされ、断ればその場で即銃殺刑だ。
戦争で死に、飢えて死に、働いても裕福な暮らしは出来ない庶民に比べ、貴族達だけは裕福な暮らしが約束されていた。
それも魔王軍側と…。
結果、国の在り方に納得か行かないスズカゼはある時「魔王を倒してやる」と言い、王位継承権を持ったまま王国から逃げだし行方不明になった。
「こっちの世界が今やそんな事になっていたなんて…スズカゼも大変だったのね…」
「こっちの世界?マリン達の世界はこことは違うのか?」
「私達はユウトピアと言って、違う次元に作られた世界から来たの。
こっちとは時間の流が違ってあちらの世界で100年過ごせば1000年の時を越えてる」
「何ともまた現実離れした話だな…本当に君達に会ってから信じられない事だらけだよ…」
その時、外から鐘を鳴らす音が聞こえてきた。
(なんだ?
まさか魔族の襲撃か?)
どうやら外の様子が騒がしい…
スズカゼはドアを開けすぐに出て行った。
(マリンはユウトが行ったから大丈夫と言っていたが、私もフリーとはいえ傭兵の1人。
活躍させても貰おう)
しかし、門の外へ出てみれば腰が抜け動けなくなった兵士達。
向こうからは砂埃を立てながら1000を越える魔族達が走って来ている。
ドラゴン、リザードマン、炎の馬に、巨大な蛇、そしてヴァンパイアもいる。
「あの数…」
「まだ避難誘導も間に合ってないのに…」
「俺達ここまでか…」
「はぁ、まだ死にたくねぇのになぁ」
兵士達が門の外で武装しネガティブ発言をしている。
スズカゼは向かって来る戦力を分析していたところ、ドラゴンの数で討伐は無理だと判断した。
(レッド、イエロー、グリーン、ブルーの四属性が勢ぞろいか…
不可能だ…私達だけでは絶対に…)
このメンバーだけでは明らかに分が悪いと考えていたその時だった。
何者かが門を飛び越えスズカゼ達の前に飛び降りたのだ。
背中の大剣をひき抜き、マントを揺らしながら振り向いて、そして剣を天に突き立てて言った。
「あんな奴ら、俺1人で十分だ、君達は下がっているといい」
自信満々に言った彼はユウトだった。
1000を越える魔族の群にいっさい脅える事なく表情一つ変えない。
それはまるで、自身の敗北など有り得ないと言った自信の現れにも見える。
威風堂々とした彼の姿にスズカゼは乙女心を刺激され、抱くべきではない感情を刺激されてしまう。
「すまん、お前等に怨みはないが!許せ!」
ユウトは魔族達に一度だけ頭を下げた後、剣を構えた。
「行くぞデュランダル!
我が聖剣に斬れぬもの無し!桐の太刀筋!
エンプレス・ツリー!」
ユウトは大きな剣を横に一振りした。
すると、斬撃が横に走り、その後地面から振動が伝わって来た。
その様子に村の兵士達とスズカゼは驚き混乱していた。
(ん?何が起こった?
うわっ、地面が揺れて…)
突然地震が起こり魔族達はふらつき、兵士達もまた後ろへ転んでしまう程の揺れだ。
しかし魔族達は何とか踏ん張ると、敵意剥き出しでこちらへ走って来た。
ユウトとの距離がだいぶ詰められたその時、リザードマンが踏み込んだ地面にヒビが入り、やがて…。
「「逃げろ!門の中へ!」」
兵士達が叫び、慌てて門の中へ避難する。
地割れが起こり、まるで底が見えない程の穴が開いたのだ。
魔族の大群はそこに吸い込まれるように落ちていった。
(なんて…でたらめな力なんだ…
こんなもの…見たことがないぞ)
穴は魔族達を吸い込んだあと、再び閉じてゆく。
スズカゼは怖くて手足が震えていたが、ユウトは魔族達に興味を失っており、崖の方を眺めていた。
「今さっき、あの崖から人間の子供が落ちたような…」
そんな事を言うとユウトは崖の方角に走り去ってしまった。
ただ、剣をたった一振りしただけで魔族1000体を滅ぼしたユウトをスズカゼはこのとき恐ろしいと感じていた。
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