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4 シーロアへ向けて
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困惑していると部屋の扉が開く。そちらを向くと、若い頃はさぞ美しかっただろう女性が立っていた。
「おや、起きてたのかい。旦那が世話になったね。朝飯ができてるから下りてお行き」
「お世話になります。えっと…」
「あたしゃカレナだよ。あんたが昨日酔いつぶれちまったのを旦那が担いできたのさ」
「ではここはドグさん達のお家ですか?」
「そうさね。ああ、世話くらい気にしなくていいよ。うちににゃでかいガキが2人も居るからね」
1人増えたところで変わりゃしないさ、と笑う。シワが多くてもその笑顔はとても上品だった。お礼を言ってカレナさんとすれ違い階段を下りていく。
「いつまで寝てんだい! さっさと起きな!」
「いってぇ!」
ぱっちーんと高い音がしたのを俺は聞こえなかったことにした。食卓には既にドグが座っており、火酒を仰いでいる。
「おはようございます」
「おはよう。良く眠れたか?」
「おかげさまで。ご迷惑お掛けしました」
「気にすんなよ。いやあ兄ちゃん良い飲みっぷりだと思ってたら水と勘違いしてんだもんなあ」
「あはは……」
正直記憶に無いので苦笑いするしかない。これからは節度を弁えよう。自戒をしているとカレナとアレンが下りてきた。アレンはまだ眠そうだ。
「良い年なんだから自分の管理くらいするさね」
「休みの日くらいいいじゃないか」
「おい、もう腹減ったから食おうぜ」
「あんたもしっかりおし!」
「……おう」
ドグにもしっかり飛び火しつつ、美味しい朝食をいただいた。話を聞くとアレンも狩人らしい。ドグから技術を学んでいるようだ。
「アレン、武器なくしちまったからシーロアで買ってきてくれ」
「しょうがないね」
「兄ちゃんも一緒に行って来いよ、こいつに案内して貰え」
「よろしいのですか?」
「それくらい苦にならないさ。ついでに嬢酒場も教えてあげるよ」
「ではお願いしましょう」
「あんたたち、朝っぱらから酒飲んでコレみたいにはならないでおくれよ」
「おいおいひでぇな」
口では言いつつもドグは笑顔だ。長年一人でしか食事をしていなかったけれど、こういうのもいいな。
「ごちそうさまでした」
「あいよ、口に合ったなら良かったよ」
「とても美味しかったです」
「はっは、ありがとうねえ」
片付けを手伝おうとしたが、カレナに止められてしまった。食後の休憩の間、忘れないうちにドグへとりこれポーションを渡しておく。
「ドグさん、はいこれ60本」
「ん? おお、わりぃな兄ちゃん。つかこんなにいいのか?」
「大丈夫です。在庫も材料も山ほどあるので。カレナさんにもあげてください」
「ああ、後で渡しとくぜ。じゃあさっそく試してみっかな」
ドグはごきげんで自室へと運んでいった。それを見ていたアレンが声を掛けてくる。
「フレド君、いいのかい? 僕の目にはかなり高級そうなポーションに見えたのだけれど」
「そんな大層な物じゃありませんよ。まだ200本くらいありますけど、アレン君も飲みます?」
「うーん、じゃあ試しに一本貰おうかな」
「色んな病気だけでなく、美容とかに効きますよ」
「それはいいね。最近アゴの裏にデキモノが出来てて気になってたんだ」
何せ空間拡張してあるバックにぎっしり詰めてきたのだ。正直慌てていて、こんなに持ってきてどうするつもりかは考えていなかったから丁度いい。
『島の物を売るな』とは伝えられているけど、あげるなとは言われていないし。むしろ『礼は欠かすべからず』とされているくらいだ。
「うん、鼻に抜けるような爽やかさがくせになるね」
「好き嫌いは分かれそうですけどね」
「女性には少し辛いかもね。ところで、フレド君」
ずいっとアレンが顔を近づけてくる。割と真剣な表情だ。
「いつまで僕にかしこまっているつもりだい? 見えないけど、僕より君の方が年上なんだろう?」
「まあ、そうですけど」
「男同士なんだ、堅苦しいのは無しにしようじゃないか。それとも僕とはあまり仲良くしたくないかい?」
「……それもそうか。確かに壁があるように感じさせちゃったかもしれない」
「うんうん、そうしておくれ。可愛いお嫁さんが欲しいんだろう? プレゼントの選び方なんかも教えてあげるよ」
「是非よろしくお願いします」
つい迫るとアレンは苦笑しながら頷き、外出の準備を整えるため自室に戻っていった。俺はバッグを持ってくるだけだから、ドグとカレナに挨拶をするだけだ。
「ドグさん、カレナさん」
「おや、悪いね。こんなポーションまで貰って」
「いえ、たくさんあるので気にしないでください」
「ところで兄ちゃん、どうしたんだ?」
「そろそろシーロアへ向かうので、その前に挨拶をと」
「なんだいなんだい、えらく丁寧じゃないか。こいつにも見習って欲しいね」
「いってぇ!」
持っていたおたまをドグの頭に振り下ろすと、ぽこんと軽快な音が響く。良く見ると、ほんの僅かにドグの生え際には産毛が戻っているような気がした。
「ここらは凶暴な魔物こそ居ねぇが、雪で足を踏み外し易いからな。気を付けて行ってこいよ」
「何言ってんだい、あんたじゃないんだから」
「フレド君! 行くよー!」
「はは、気をつけます。それでは」
「ああ」
「いってらっしゃい」
二人に見送られながら、俺とアレンはアルアンの町を後にした。
「おや、起きてたのかい。旦那が世話になったね。朝飯ができてるから下りてお行き」
「お世話になります。えっと…」
「あたしゃカレナだよ。あんたが昨日酔いつぶれちまったのを旦那が担いできたのさ」
「ではここはドグさん達のお家ですか?」
「そうさね。ああ、世話くらい気にしなくていいよ。うちににゃでかいガキが2人も居るからね」
1人増えたところで変わりゃしないさ、と笑う。シワが多くてもその笑顔はとても上品だった。お礼を言ってカレナさんとすれ違い階段を下りていく。
「いつまで寝てんだい! さっさと起きな!」
「いってぇ!」
ぱっちーんと高い音がしたのを俺は聞こえなかったことにした。食卓には既にドグが座っており、火酒を仰いでいる。
「おはようございます」
「おはよう。良く眠れたか?」
「おかげさまで。ご迷惑お掛けしました」
「気にすんなよ。いやあ兄ちゃん良い飲みっぷりだと思ってたら水と勘違いしてんだもんなあ」
「あはは……」
正直記憶に無いので苦笑いするしかない。これからは節度を弁えよう。自戒をしているとカレナとアレンが下りてきた。アレンはまだ眠そうだ。
「良い年なんだから自分の管理くらいするさね」
「休みの日くらいいいじゃないか」
「おい、もう腹減ったから食おうぜ」
「あんたもしっかりおし!」
「……おう」
ドグにもしっかり飛び火しつつ、美味しい朝食をいただいた。話を聞くとアレンも狩人らしい。ドグから技術を学んでいるようだ。
「アレン、武器なくしちまったからシーロアで買ってきてくれ」
「しょうがないね」
「兄ちゃんも一緒に行って来いよ、こいつに案内して貰え」
「よろしいのですか?」
「それくらい苦にならないさ。ついでに嬢酒場も教えてあげるよ」
「ではお願いしましょう」
「あんたたち、朝っぱらから酒飲んでコレみたいにはならないでおくれよ」
「おいおいひでぇな」
口では言いつつもドグは笑顔だ。長年一人でしか食事をしていなかったけれど、こういうのもいいな。
「ごちそうさまでした」
「あいよ、口に合ったなら良かったよ」
「とても美味しかったです」
「はっは、ありがとうねえ」
片付けを手伝おうとしたが、カレナに止められてしまった。食後の休憩の間、忘れないうちにドグへとりこれポーションを渡しておく。
「ドグさん、はいこれ60本」
「ん? おお、わりぃな兄ちゃん。つかこんなにいいのか?」
「大丈夫です。在庫も材料も山ほどあるので。カレナさんにもあげてください」
「ああ、後で渡しとくぜ。じゃあさっそく試してみっかな」
ドグはごきげんで自室へと運んでいった。それを見ていたアレンが声を掛けてくる。
「フレド君、いいのかい? 僕の目にはかなり高級そうなポーションに見えたのだけれど」
「そんな大層な物じゃありませんよ。まだ200本くらいありますけど、アレン君も飲みます?」
「うーん、じゃあ試しに一本貰おうかな」
「色んな病気だけでなく、美容とかに効きますよ」
「それはいいね。最近アゴの裏にデキモノが出来てて気になってたんだ」
何せ空間拡張してあるバックにぎっしり詰めてきたのだ。正直慌てていて、こんなに持ってきてどうするつもりかは考えていなかったから丁度いい。
『島の物を売るな』とは伝えられているけど、あげるなとは言われていないし。むしろ『礼は欠かすべからず』とされているくらいだ。
「うん、鼻に抜けるような爽やかさがくせになるね」
「好き嫌いは分かれそうですけどね」
「女性には少し辛いかもね。ところで、フレド君」
ずいっとアレンが顔を近づけてくる。割と真剣な表情だ。
「いつまで僕にかしこまっているつもりだい? 見えないけど、僕より君の方が年上なんだろう?」
「まあ、そうですけど」
「男同士なんだ、堅苦しいのは無しにしようじゃないか。それとも僕とはあまり仲良くしたくないかい?」
「……それもそうか。確かに壁があるように感じさせちゃったかもしれない」
「うんうん、そうしておくれ。可愛いお嫁さんが欲しいんだろう? プレゼントの選び方なんかも教えてあげるよ」
「是非よろしくお願いします」
つい迫るとアレンは苦笑しながら頷き、外出の準備を整えるため自室に戻っていった。俺はバッグを持ってくるだけだから、ドグとカレナに挨拶をするだけだ。
「ドグさん、カレナさん」
「おや、悪いね。こんなポーションまで貰って」
「いえ、たくさんあるので気にしないでください」
「ところで兄ちゃん、どうしたんだ?」
「そろそろシーロアへ向かうので、その前に挨拶をと」
「なんだいなんだい、えらく丁寧じゃないか。こいつにも見習って欲しいね」
「いってぇ!」
持っていたおたまをドグの頭に振り下ろすと、ぽこんと軽快な音が響く。良く見ると、ほんの僅かにドグの生え際には産毛が戻っているような気がした。
「ここらは凶暴な魔物こそ居ねぇが、雪で足を踏み外し易いからな。気を付けて行ってこいよ」
「何言ってんだい、あんたじゃないんだから」
「フレド君! 行くよー!」
「はは、気をつけます。それでは」
「ああ」
「いってらっしゃい」
二人に見送られながら、俺とアレンはアルアンの町を後にした。
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