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22羽腐った匂いにアレ発見

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イーサさんが、デンと捌かれた肉の前で仁王立ちに立って待っていた。似合い過ぎだよイーサさん。
あなたがこれらを狩ってきたと言っても、誰もそれを否定する余地がないオーラが漂ってるよ。
ただ、エプロンが可愛いんだけどね。誰趣味それ?

「この肉がロックカウで、こっちの肉がジャンボフランゴ。そんでこっちが…」

数が多すぎて、まったく覚えられん。この世界で生きていて、その肉を扱ったことがあるんだったら名前だけ言われりゃわかるだろう。俺には全く未知なるものだからな…。

「あの…」

「覚えられないんだろ?」

「えっ…。えぇ…」

「途中からポカーンって顔してたからな。ダニアがあいつ多分肉の種類言ってもわからないと思うぞ。無知そうだからなって言ってたから、メモにまとめといた。どうにかして自分で字は解析しろ。習ったんだろ?」

すいませんと言ってメモを受け取った。まぁ、見ても俺にはミミズが這ってる文字にしか見えないんだけどね…。一つ一つ解析していくしかないだろ。

また、その捌かれた肉をアイテムボックスに入れるのも一苦労。ダニアさんやイーサさんに手伝ってもらいどうにか終える。

「これだけに肉、このままだとケン腐るぞ?なぁ、イーサ生肉ってそんなに日持ちしないよな?」

「しないな。塩漬けにするなら持つだろうが」

「保存方法は少し考えがあるので、試してみます。お肉の勉強もしたいので頑張ってみます」

やっぱりアイテムボックスに時間停止はないんだな。まぁ、俺のにはついてるから入れときゃ腐らないみたいなんだけどね。
でも、それを今伝えるのは得策じゃないな。

「あと、教えてもらいついでにこの辺に調味料とか香辛料扱ってるお店ってないですかね?」

「調味料はそこらへんの市場に行けば手に入るが、珍しい香辛料なら…あの自称魔女の家か?」

「魔女の家?」

あぁ…。とダニアさんが苦虫潰すような顔をしながら話してくれた。なんとも変わった女性がいる場所で、その人はいつも黒いフードを被っており店の中は独特の匂いが鼻につくそうだ。
ダニアさんも、1度店を覗いてからは足を運んでないそう。それでも時々物好きが買いに行ってるらしいんだよなと話していた。

「怖いもの見たさで行ってきます」

「そうしてみると良い。悪い人ではないんだよ。ただ、俺達にはあの匂いがどうも…」

「あの匂いを良い匂いと言える人間は、あの女ぐらいだろうさ」

どんな匂いがしてるんだよ…。逆に気になるよ。ダニアさん達に、ありがとうございますとお礼を言うと、さっとく教えてもらった魔女の家に向かった。

「なんか、カラスが鳴きそうな雰囲気の店だな…。ここだけ孤立感はんぱないぞ」

――ガチャツ――

明けた瞬間に、なんとも言えない臭いが鼻につく。臭い…臭いことは臭いんだが、そこまで毛嫌いするほどの臭いでもないぞ?なんか懐かしいような懐かしくないような。

「おっ?これクサヤじゃないか!臭いの下はこれか?この世界にもクサヤが…って、ダニアさん達は受け付けないような言い方だったから、この世界にはないのか?」

「あなたクサヤを知ってるの?」

「あぁ。よく親父が食べてたからな」

女がフードをバサッと取り、やっと見つけた!と俺に抱き着いてくる。ちょっと待て待て!!
いきなり女性に抱き着かれても、俺には女性に対しての免疫がほとんどないんだって…。その柔らかい身体を押し当てるの止めて…。

「あなた日本人ね!?この世界の奴らは、クサヤなんて腐った食べ物だとか言うからね!」

「ってことは、あんたも日本人なのか!?」

「そうよ!私は日本では笹本香ささもとかおる。こっちの世界では、カオルで通してる」

カオルと名乗る女性は、日本でスパイスや保存食についての料理研究をしていたらしい。
その時に、地震にまきこまれ亡くなったところを爺さんに呼ばれ転成したそうだ。
爺さんには、勇者も魔法使いも興味ないから研究の続きをやらせてくれと研究材料の提供を申し出たらしい。

「俺は尾口健之助だ。フルネームで名前を言わないのには理由があるのか?聞き取ってもらえないとか?」

「そうなのよ。何回か伝えても長ったらしい名前だと言われるから、カオルにしたの。私にとっては研究できれば名前なんてどうでも良いんだけどね」

「よっぽど研究好きなんだな」

よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、研究についての面白さというものについて語られる。興味が無い俺にとっては地獄のような長い時間だった…。
自分の興味がないことを、間髪入れる瞬間もなく話し続けられたら誰だってぐったりするだろ。

「それで、尾口さん…。なんかおかしいね。ケンは何しに来たの?」

「屋台を開いててさ、珍しい香辛料とかあれば見て見たいんだけど」

「お店開いてるの?それなら今度お邪魔しようかしら。珍しいって言っても、私のは研究の延長上に売ってるようなものだから…」

そう言われながら店内を歩いていくと、これは…。これは、まさかのアレか?アレならアレがないと美味しさ半減だが、アレはなさそうだ。

「これもカオルさんが?」

「えぇ、そうよ。私たちには一般的なものだからと思って出したんだけど…こっちの世界では不向きなのよね…なにがいけないのかしら?」

うーん…。これだけだと確かに扱いにくいかもしれない。でも、アレを出せるなら是非とも欲しい。

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