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金曜日、一週間の疲労で重たくなった体を引き摺って帰宅した陽菜は首を傾げた。
「え?」
いつもよりも遅い時間に異世界からやって来たギルは、綺麗なリボンと光沢のある紙で包装された長方形の箱を抱えていたのだ。
「ギル、これは何?」
「土産だ。開けてみろ」
「土産って、これが?」
甲冑を解除したギルから箱を受け取り、両手で抱えた陽菜は困惑して包みを見た。
リボンと包装紙は特殊な加工がしてあるのか、光の加減で色が変化するという凝ったもの。
綺麗にラッピングされた包みは、土産と言うより特別な日に渡すプレゼントに見える。
突然の贈り物はどういう意味があるのかと勘繰りたくとも、ギルの表情からは贈り物の意図は読み取れない。
「ありがとう。開けてもいい?」
「ああ」
包みをテーブルに置いて、慎重にリボンを解いて包装紙を開けていく。
箱の蓋を開けて……両手で蓋を持った陽菜は動きを止めた。
「……これ、は」
目にした直後は声が出て来てくれず、陽菜は何度も目を瞬かせて箱に入った贈り物を確認する。
箱の中身は、繊細なレースに縁どられた布と薔薇や複雑な刺繍がされている布が入っていたのだ。
そっと箱からだしてみれば、入っていた布の形から用途が分かった。
フリルとレースに装飾された薄ピンク色のベビードール、布面積が極端に少ないショーツとこれで胸を保護出来るのかと、首を傾げたくなるデザインのブラジャー。
いわゆるセクシーランジェリーと言われている、下着だった。
「人族の女に人気の品を用意させたのだが、気に入らなかったか?」
箱から出したセクシーランジェリーを手に持ち、どう反応したらいいのか困っている陽菜へ問いかけるギルの声色は普段と全く変わらない。
「気に入らないというか、あのね、その、ギルが、これを用意したの?」
「ああ。この前、身に着けていたのが似合っていたから、似たようなものを用意した。手伝うから、着替えてみろ」
戸惑う陽菜の腕にギルの背後から伸びてきた触手が絡まる。
(似たようなもの? こんなにスケスケでセクシーなのが? 着替えてみろって言われても……)
両手で広げていたセクシーランジェリーを箱へ戻し、腕に絡まる触手を撫でる。
「プレゼントをありがとう。でも着るのは後で、お風呂に入った後にギルが選んだのを着るね」
自分から“情事の前に着るから選んでほしい”と言ってしまい、恥ずかしさから陽菜の頬に熱が集中していった。
「風呂に入らなくてもいいだろう」
目を細めたギルの背後から触手が伸び、陽菜の腰から太股へ掛けて巻き付いていく。
「せっかくだし、綺麗にしてから着たいのよ」
太股に巻き付く触手に触れた陽菜は、甘いものへと変化している(気がする)ギルの放つ雰囲気に耐えきれず、視線を彼から逸らす。
(この男、また何か見て勘違いしたのかしら? 女性に下着を贈る意味を分かっていない、よね? そういう意味じゃないよね?)
動く気配を感じさせず距離を縮めたギルの手が、紅潮し熱を持つ陽菜の頬に触れる。
「ヒナ?」
大きな手に囚われてキスされる前に、両脚を動かした陽菜は体当たりする勢いでギルの胸に顔を埋めた。
「ギル、ご飯を食べてシャワーを浴びたら、着るのを手伝ってね」
顔を埋めたままだった陽菜は知らない。
息をのんだギルの目元が赤く染まっていたことを。
抱き締めたいという、湧き上がってくる自分の感情が理解できずに抱きしめられず、両手の代わりに陽菜の背中へ触手を回すことしか出来ないギルの戸惑いなど、今の彼女は気が付けなかった。
***
ここまでお読みいただきありがとうございました。
男性から女性へ下着を贈る意味……『離れたくない』、『密着したい』、『親密な関係になりたい』、『強い愛情』、『独占欲』らしいです。
「え?」
いつもよりも遅い時間に異世界からやって来たギルは、綺麗なリボンと光沢のある紙で包装された長方形の箱を抱えていたのだ。
「ギル、これは何?」
「土産だ。開けてみろ」
「土産って、これが?」
甲冑を解除したギルから箱を受け取り、両手で抱えた陽菜は困惑して包みを見た。
リボンと包装紙は特殊な加工がしてあるのか、光の加減で色が変化するという凝ったもの。
綺麗にラッピングされた包みは、土産と言うより特別な日に渡すプレゼントに見える。
突然の贈り物はどういう意味があるのかと勘繰りたくとも、ギルの表情からは贈り物の意図は読み取れない。
「ありがとう。開けてもいい?」
「ああ」
包みをテーブルに置いて、慎重にリボンを解いて包装紙を開けていく。
箱の蓋を開けて……両手で蓋を持った陽菜は動きを止めた。
「……これ、は」
目にした直後は声が出て来てくれず、陽菜は何度も目を瞬かせて箱に入った贈り物を確認する。
箱の中身は、繊細なレースに縁どられた布と薔薇や複雑な刺繍がされている布が入っていたのだ。
そっと箱からだしてみれば、入っていた布の形から用途が分かった。
フリルとレースに装飾された薄ピンク色のベビードール、布面積が極端に少ないショーツとこれで胸を保護出来るのかと、首を傾げたくなるデザインのブラジャー。
いわゆるセクシーランジェリーと言われている、下着だった。
「人族の女に人気の品を用意させたのだが、気に入らなかったか?」
箱から出したセクシーランジェリーを手に持ち、どう反応したらいいのか困っている陽菜へ問いかけるギルの声色は普段と全く変わらない。
「気に入らないというか、あのね、その、ギルが、これを用意したの?」
「ああ。この前、身に着けていたのが似合っていたから、似たようなものを用意した。手伝うから、着替えてみろ」
戸惑う陽菜の腕にギルの背後から伸びてきた触手が絡まる。
(似たようなもの? こんなにスケスケでセクシーなのが? 着替えてみろって言われても……)
両手で広げていたセクシーランジェリーを箱へ戻し、腕に絡まる触手を撫でる。
「プレゼントをありがとう。でも着るのは後で、お風呂に入った後にギルが選んだのを着るね」
自分から“情事の前に着るから選んでほしい”と言ってしまい、恥ずかしさから陽菜の頬に熱が集中していった。
「風呂に入らなくてもいいだろう」
目を細めたギルの背後から触手が伸び、陽菜の腰から太股へ掛けて巻き付いていく。
「せっかくだし、綺麗にしてから着たいのよ」
太股に巻き付く触手に触れた陽菜は、甘いものへと変化している(気がする)ギルの放つ雰囲気に耐えきれず、視線を彼から逸らす。
(この男、また何か見て勘違いしたのかしら? 女性に下着を贈る意味を分かっていない、よね? そういう意味じゃないよね?)
動く気配を感じさせず距離を縮めたギルの手が、紅潮し熱を持つ陽菜の頬に触れる。
「ヒナ?」
大きな手に囚われてキスされる前に、両脚を動かした陽菜は体当たりする勢いでギルの胸に顔を埋めた。
「ギル、ご飯を食べてシャワーを浴びたら、着るのを手伝ってね」
顔を埋めたままだった陽菜は知らない。
息をのんだギルの目元が赤く染まっていたことを。
抱き締めたいという、湧き上がってくる自分の感情が理解できずに抱きしめられず、両手の代わりに陽菜の背中へ触手を回すことしか出来ないギルの戸惑いなど、今の彼女は気が付けなかった。
***
ここまでお読みいただきありがとうございました。
男性から女性へ下着を贈る意味……『離れたくない』、『密着したい』、『親密な関係になりたい』、『強い愛情』、『独占欲』らしいです。
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