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両腕、両脚に絡み付いた触手はぬめりが少ない鰻に似ていて、生理的な嫌悪感から身を捩って逃れようとするも、触手の力が強くなっていきによって身動きが取れなくなる。
得体の知れない侵入者、四肢に絡み付く触手に体を締め付けられる恐怖から、両目いっぱいに涙を溜めた陽菜は全身を震わせる。
身動きも悲鳴を上げることも出来ず、口腔内いっぱいに入り込んだ触手にせめてもの抵抗で歯を立てた。
「ふっ、人型であることと、女であることだけは良かったか」
甲冑で表情は見えないのに、侵入者の声から愉しそうに笑っているのが分かった。
力いっぱい噛んだ触手が口腔内から抜け出ていき、触手の先端から垂れた唾液の糸が陽菜の口の端に落ちる。
「貴方、なん、なの?」
発した声は恐怖で震え、瞬いた際に両目からの零れ落ちた涙が陽菜の頬を伝う。
「ひっ」
顔の近くで二本の触手が蠢き、涙で濡れる陽菜の頬を撫でながら下がっていき細い首に巻き付く。
首を絞められるかもしれないという恐怖で、浅い呼吸を繰り返す陽菜の首筋を触手の先から出た繊毛が慰めるように撫でた。
「はぁはぁ……あ、貴方は何なんですか? これは、不法侵入だし、ドッキリにしてはやり過ぎでしょう」
唯一自由になる目を動かして、部屋の何処かに仕掛けられているだろうカメラを探した。
「ドッキリ? 何だそれは。俺は最上級のエナジーを求め探し出し、採取するため此処へやって来た。俺と相性が良く、我が軍を強化することの出来るエナジーの持ち主、それが貴様だっただけだ」
侵入者が首を少しだけ傾げ、擦れた甲冑が軋み音を鳴らす。
「エナジー? それこそ何のことですか?」
聞き覚えの無い、否、幼い頃に見たテレビアニメでヒロインの敵が集めていた力と同じ言葉。
アニメと同じ意味だとしたら、この甲冑は人外の存在ということになる。
(触手を出す時点で人外だって薄々気が付いていたけど、この後はどうなるの? まさか……)
触手の出す敵が出て来る漫画は、学生時代に付き合った恋人の愛蔵書の中でも成人向け美少女漫画で読んだことがあった。
敵の触手に捕らえられたヒロイン達がどうなったのかを思い出して、背筋が寒くなってくる。
陽菜の脳裏にヒロイン達が触手の出す魔物に凌辱された末、快感に負けて気持ちよさそうに甘い声で喘いで自ら腰を振っているという、とんでもない場面が浮かんだ。
別れた恋人の性癖云々は置いておいて、人外と触手の組み合わせときたらエロ展開しか浮かばない。
「ちょっと、意味が分からない。エナジーなんてもの、知らないわ」
どうにか逃げ出さなければ、脳裏に浮かんだ成人向け漫画と同じ展開になってしまう。
触手の生えた甲冑の化け物に凌辱されるのはご免だ。全力でこの場から逃げたいのに、四肢に絡み付く触手によって身動きが取れない。
「ドッキリでないなら、これを解いて帰ってください。このまま帰ってくれれば、警察に通報はしません」
「はっ、帰れだと? 此処へ来るだけで相当な魔力を使ったのだ。貴様からエナジーを摂取しなければゲートは開けないし、この場より他へは行けぬ。俺を帰したいのならば、拒絶せずにエナジー採取の協力をするのだな」
「協力って? 貴方に協力すれば、帰ってくれるの?」
大声を出して隣の部屋の住人に助けを求めたくても、夕方から出勤している隣人は不在だった。
「ああ、必要量のエナジーを手に入れたらな」
想像してしまった成人向け場面が脳裏から消えてくれなくても、甲冑に帰ってもらうには協力するしかないと陽菜は覚る。
ゴクリと唾を飲み込み、陽菜は表情の分からない甲冑の顔を見詰めた。
(エナジー接種って、献血みたいなものかしら? もう疲れ過ぎて頭がくらくらするし、早く帰ってもらって寝なければ明日起きられなくなるわ。少しくらいなら大丈夫よね)
甲冑に協力すれば此処から去ってくれる約束しれもらえるのなら、献血するくらい大したことは無い。
異様な状況と連日の残業で、疲労困憊になっていたこの時の陽菜は判断力が鈍っていたと、思い出す度に後悔することになった。
「分かったわ。貴方に協力します。エナジー採取したら帰ってください」
神妙な顔で言う陽菜を見下ろし、目元以外は見えないはずの甲冑がニヤリと口角を上げて笑った、気がした。
得体の知れない侵入者、四肢に絡み付く触手に体を締め付けられる恐怖から、両目いっぱいに涙を溜めた陽菜は全身を震わせる。
身動きも悲鳴を上げることも出来ず、口腔内いっぱいに入り込んだ触手にせめてもの抵抗で歯を立てた。
「ふっ、人型であることと、女であることだけは良かったか」
甲冑で表情は見えないのに、侵入者の声から愉しそうに笑っているのが分かった。
力いっぱい噛んだ触手が口腔内から抜け出ていき、触手の先端から垂れた唾液の糸が陽菜の口の端に落ちる。
「貴方、なん、なの?」
発した声は恐怖で震え、瞬いた際に両目からの零れ落ちた涙が陽菜の頬を伝う。
「ひっ」
顔の近くで二本の触手が蠢き、涙で濡れる陽菜の頬を撫でながら下がっていき細い首に巻き付く。
首を絞められるかもしれないという恐怖で、浅い呼吸を繰り返す陽菜の首筋を触手の先から出た繊毛が慰めるように撫でた。
「はぁはぁ……あ、貴方は何なんですか? これは、不法侵入だし、ドッキリにしてはやり過ぎでしょう」
唯一自由になる目を動かして、部屋の何処かに仕掛けられているだろうカメラを探した。
「ドッキリ? 何だそれは。俺は最上級のエナジーを求め探し出し、採取するため此処へやって来た。俺と相性が良く、我が軍を強化することの出来るエナジーの持ち主、それが貴様だっただけだ」
侵入者が首を少しだけ傾げ、擦れた甲冑が軋み音を鳴らす。
「エナジー? それこそ何のことですか?」
聞き覚えの無い、否、幼い頃に見たテレビアニメでヒロインの敵が集めていた力と同じ言葉。
アニメと同じ意味だとしたら、この甲冑は人外の存在ということになる。
(触手を出す時点で人外だって薄々気が付いていたけど、この後はどうなるの? まさか……)
触手の出す敵が出て来る漫画は、学生時代に付き合った恋人の愛蔵書の中でも成人向け美少女漫画で読んだことがあった。
敵の触手に捕らえられたヒロイン達がどうなったのかを思い出して、背筋が寒くなってくる。
陽菜の脳裏にヒロイン達が触手の出す魔物に凌辱された末、快感に負けて気持ちよさそうに甘い声で喘いで自ら腰を振っているという、とんでもない場面が浮かんだ。
別れた恋人の性癖云々は置いておいて、人外と触手の組み合わせときたらエロ展開しか浮かばない。
「ちょっと、意味が分からない。エナジーなんてもの、知らないわ」
どうにか逃げ出さなければ、脳裏に浮かんだ成人向け漫画と同じ展開になってしまう。
触手の生えた甲冑の化け物に凌辱されるのはご免だ。全力でこの場から逃げたいのに、四肢に絡み付く触手によって身動きが取れない。
「ドッキリでないなら、これを解いて帰ってください。このまま帰ってくれれば、警察に通報はしません」
「はっ、帰れだと? 此処へ来るだけで相当な魔力を使ったのだ。貴様からエナジーを摂取しなければゲートは開けないし、この場より他へは行けぬ。俺を帰したいのならば、拒絶せずにエナジー採取の協力をするのだな」
「協力って? 貴方に協力すれば、帰ってくれるの?」
大声を出して隣の部屋の住人に助けを求めたくても、夕方から出勤している隣人は不在だった。
「ああ、必要量のエナジーを手に入れたらな」
想像してしまった成人向け場面が脳裏から消えてくれなくても、甲冑に帰ってもらうには協力するしかないと陽菜は覚る。
ゴクリと唾を飲み込み、陽菜は表情の分からない甲冑の顔を見詰めた。
(エナジー接種って、献血みたいなものかしら? もう疲れ過ぎて頭がくらくらするし、早く帰ってもらって寝なければ明日起きられなくなるわ。少しくらいなら大丈夫よね)
甲冑に協力すれば此処から去ってくれる約束しれもらえるのなら、献血するくらい大したことは無い。
異様な状況と連日の残業で、疲労困憊になっていたこの時の陽菜は判断力が鈍っていたと、思い出す度に後悔することになった。
「分かったわ。貴方に協力します。エナジー採取したら帰ってください」
神妙な顔で言う陽菜を見下ろし、目元以外は見えないはずの甲冑がニヤリと口角を上げて笑った、気がした。
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