お題を消化していくよ

いえろ~

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時計の針が折れるまで

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 星と雪が交錯する聖なる夜、新宿駅。

 そこの喧騒から抜け出したのが私。

 抜け出しても、別の喧騒があって。

 自分がどこにいるかもわからない。

 でも、今日は、彼と待ち合わせ。

 だから、迷わない。

 なのに。

 腕時計の針は7時を指している。


 彼が去年の聖なる夜にくれた、お気に入りの腕時計。

 決して高くはない腕時計。でも、お気に入りの腕時計。

 彼が初めて贈ってくれた物だから。


 あの日、喜ぶ私に、彼が言った言葉を思い出す。

 時計の針を折らせはしない。

 その意味がわからなくて、私は笑った。


 仕事が忙しい彼は、よく待ち合わせにも遅れた。

 彼は、おどけて、ごめん、と言うのが常套だった。

 彼と会う度に、彼は疲れた顔をしていた。

 彼は言った。仕事がキツイ、と。


 今日、奇妙な話を聞いた。

 私の勤める会社の近くで、男性の死体があったらしい。

 その死体の首にはロープ。

 その死体の右手には、2個目の腕時計。

 腕時計の秒針が、折れていたとのことだ。


 腕時計の針は7時を指している。

 待てど待てど、彼は来ない。

 でも、私は待つ。

 時計の針が折れるまで。
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