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第六章

あなたこそ私の陽光3

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レインはぎゅっとユリウスの服を握りしめた。

今、きちんと言わねば、と思った。この想いを、すべて打ち明けねば、と思った。

「あの日から、ずっと、私はお兄様に好かれたり、愛していただきたいと思って生きてきました。だから、婚約の件も、お兄様のお役に立てば、愛していただけると……」
「レイン、君は、役に立とう、なんて考えなくていいんだよ」
「ええ、お兄様ならそうおっしゃると思いました。でも、私はあさましく、家族として愛されるだけでは足りなかったのです」

レインは息を吸った。ユリウスの琥珀色の目にレインが映っている。それが何よりうれしかった。

「――愛しています。お兄様、いいえ、ユリウス様。家族として、妹として、ではなく、あなたを――あなたを、私のたった一人として、お慕いしております……」

妹が兄を、ではない。ずっと、ずっと、おかしな妹だと見捨てられるのが怖くて言えなかったこと。
この人を、ユリウスを、誰より、何よりも、愛しているということ。

――あなたこそ、私の陽光だということ。

そのすべてを込めて、レインはユリウスに抱き着いた。

「――……!」
ユリウスは手を震わせた。けれど、次の瞬間、痛いくらいに強い力でレインを抱き返した。
息ができない。それほど強い力で抱きしめられて、レインは肺の中の空気をすべて吐き出してしまった。みしみしと骨が鳴る。けれど、今はこれが嬉しくてならない。

小さく小さく息をするレインに、ユリウスがこらえられない、というように囁く。

「本当に――本当に、君は私を好きなのか」
「はい」
「私はレインを、妹としてではなく『私の君』として愛してもいいのか」
「はい……」
レインは泣きながら言った。
「愛してください。『私のあなた』」

それが――言葉にした、最後だった。

群青の空に星が瞬いている。だというのに、一瞬のうちにその光は見えなくなって。
口付けられている、と理解したのは、唇にあたたかいものが触れたからだ。
レインは胸の内を幸福で満たしながら、静かに目を閉じた。

――雨の日の、あとには。

そう、虹が見える。雨はけして悲しいものなんかじゃない。陽の光があれば、幸福の象徴である虹が現れる。だったら、私の陽光こそ、あなたなんだわ。
ユリウスの腕の中に包まれて、レインは微笑みながらそう思った。

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