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あなたが好きです2

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 エリスティナはクリスを愛していた。
 溶け合って、一つになった今だからわかる。エリスティナはクリスを一身に愛していた。
 親子じゃない、恋人でもない。ただ、世界で唯一の存在として、愛を注ぎ続けた。

 ともすれば重すぎるほどの愛を、一身に受け止めてくれたクリスを守れたのは、エリスティナの本望だった。
 クリスが生きていると知って、エリスティナの心が震える。大好きよ、大好き、あなたを愛しているわ。そう言って何度もクリスを撫でたくなる。

 でも、そこにひとつだけ、違う愛が混ざってしまった。
 エリナは、クーを愛してしまった。ああ、そう、そうなのだ。エリナはクーを好きになってしまった。

 だってそうだ。きっかけは、シチューだったとして、クーはいつだってエリナに愛を注いでくれた。やさしくしてくれた。
 エリナを気遣い、いつだってエリナのことを考えて……。

 そんな人を、愛さずにおられるだろうか。
 愛することに疑問を抱いて、愛されるわけがないと思い込んで、一人で殻に閉じこもっていたエリナ。

 そんなエリナに、何度だってあたたかな手を伸ばしてくれたクー。
 エリナはクーに、恋をしてしまった。

「エリスティナが先に、クリスを愛した。でも、そこにエリナが恋をつけ足したの。どちらも私だからわかるの。私は、クリス、あなたに、持てるすべての愛情を抱いている。……クリス、また泣いてるの?」

 見上げたクリスの顔は涙にぬれていた。
 エリナはふふ、と笑ってクリスの涙を指先でぬぐう。

「いつまでも、泣き虫ね、クリスは」
「そんな、そんなこと、ずるいです。エリー。僕は、ずっとあなたを好きで、あなたに愛情も恋もすべてささげてきて、この先はないと思っていたのに」

 クリスが、エリナの顔中に雨のように口づけを降らせる。エリナは微笑みでそれを受けとめた。

「これ以上好きにさせるなんてずるいです」

 クリスは、横抱きにしたまま、エリナの体をぎゅうと抱きしめた。
 痛いくらいの抱擁は、今は心地いい。離さないで、もっともっと近くに行きたい。
 そう思うから、エリナは目を閉じて、クリスの抱擁を受け入れた。

「私達、ずっと、遠回りしてきたわね」
「……そうですね」

 互いにそう言って、エリナとクリスは見つめあった。
 アーモンド形の美しい緑の目が、エリナの空色に映る。混ざり合った瞳の色は、クリスにはどう見えているのだろう。
 エリナは目を閉じた。

 感じるのは、かすかな吐息と、ためらい。
 触れ合った胸の音が伝わって、うるさいくらいに拍動しているのがわかる。
 エリナは、きゅ、とクリスの服を掴む。
 それが合図だった。
 触れ合った唇はやわらかく、あたたかい。
 一筋の涙が唇に触れて、それが少しだけしょっぱかった。

 唇が離れて、冷たい温度が触れる。
 わずかな湿り気を残す唇に指先で触れて、エリナはほう、と息をした。

「エリー?」
「キスなんて、はじめてしたわ」
「え」
「前世でも、今世でも、唇同士のキスはしたことがないの。こんな感じなのね」

 エリナは笑ってクリスを見上げた。が、クリスは顔を覆ってなにやら呻いている。

「勘弁してください……心臓がはじけ飛びそうだ……」

 その顔は耳まで真っ赤で、それにエリナはまた笑った。
 これでハッピーエンド、全部解決の大団円だ。
 そう、思った。
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