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離宮散歩
しおりを挟む「クー、こうしてていいの?」
「え?」
「そろそろお仕事しないといけないんじゃない?」
エリナはそう言って、今もエリナを抱きしめたままのクーに尋ねた。
いくらエリナに危機が迫っていたって、クーが王としての執務をいっさいしなければ国が回らない。エリナだってそのくらいはわかっている。
「それは、まあ、そうですけど」
クーがあはは、と笑ってごまかそうとするのを、エリナは腰に手を当てて咎める。
「そうやって、仕事を人任せにしてはいけません!」
めいいっぱいの怖い顔を作ってクーを睨むが、クーはと言えばその顔さえも噛み締めているようで、まったくこたえた様子がない。
エリナはもう!と声をあげた。
「私は大丈夫よ。クーがくれたペンダントがあるし……それに、執務室はあんなに高いところにあるんだもの。私の散歩コースくらい見えるでしょ?」
「うう……」
「大丈夫、大丈夫。離宮に花が咲いてるって聞いたの。少し歩きたいからそこまで足を延ばすだけよ。何かあったら呼ぶから、クー、お仕事、がんばって?」
「……わかり、ました」
クーはしぶしぶと言ったように頷いた。これは仕事にならないかもしれないわね、と思ったけれど、親離れさせるのも大事なのだ。
……あれ?どうして、親離れ、なんて思ったのかしら。
からん、とちいさな音。と同時に、それはペンダントによって吸い込まれるように掻き消えてしまった。
いつものような頭痛は襲ってこない。
とにかく!と、エリナはそれをいいことに、クーの背中をぐいぐいと押して部屋から出してしまった。
「あとでまた会いましょ、クー」
「何かあったら呼んでくださいね、絶対ですよ」
そう言って、クーが閉まる扉の向こうに消えていく。
エリナはそれを見送ってから、使用人用の呼び鈴を鳴らしてダーナを呼んだ。
「ダーナ、散歩に行きたいの。付き合ってくれるかしら?」
エリナの言葉に、ダーナはいつものようにゆったりと、目じりにしわを寄せて微笑んだ。
「ええ、もちろんです。ご一緒しましょう。エリナさま」
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