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後後268 祭りの翌日

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南の開拓村の秋祭りはこれ以上無いほどの盛況ぶりで終えられた。
時期が、他の村はもう稲の収穫作業を一通り終え、畑作業のみであったこと。これが大きかったろう。
皆開放感が大きかったのだ。

更に、各村から馬車を往復させていた。村にある馬車数台を使っていたので、1-2時間待てば乗れるというのが大きかった。こっちで1-2時間待ちなんぞすぐだという感覚なのだ。
更に、規模がデカかったので1回ではなく、皆複数回来たこと。
領主様が3日とも屋台を見て歩いていたことも、領民達が何度も来た要因の一つだ。(領主は領民に人気あるのだ!)

ガクはそれらとは別に、懐かしの向こうの屋台と同じのが多数出ている、というのを見てまわっていた。余程嬉しかったのだろう。
というか、前回のショックがデカすぎたのかもしれない。
3日間、一日中祭りの中に居た。


「ふう、堪能した♪」ガク
「よかったですね!」何をどう、とか聞かないアニャータ。ガクが喜んでいるのだからいいのだ。
祭りの翌日、朝起きた時に布団の上でごろごろしながら昨日までの祭りでの屋台を思い出し、満足げなガク。
さあ、布団を片付けますよ、とアニャータがたたみ始めた。
この屋敷は昼間は幼年組の教室になっているのだ。

朝食を食べにシューレの食堂に向かう。
村は、ここで祭りをやったわけでもないのに、祭りの終わった後並にのどかになっていた。皆寝坊でもしているのだろう。
そういや、今朝は鍛練なかったな?と思ったガク。起こされなかったから。

食堂も人は少なかった。
「おや、早起きだね?」と給仕してくれたおばさんが言う。
「え?」
「昨晩は今朝方まで飲んでたろ、皆。まじってなかったのかい」

そうなの?ってアニャータを見るガク。
こくん、と頷くアニャータ。
ガクは屋台達しか気にしていなかった。見ていて満足し、たまにまたなんか懐かしいものを買って満足していた3日間。
いつでもできる”飲む”とか、言われたかもしれないけど、全く気に掛けなかったのだろう。

まあいいか・・
シューレも泉さんも今朝姿が見えないのはそれだったのか。

うまい朝食を食べ、その後、静かな村を散歩した。

「これだけ静かなこの時刻も珍しいですね」アニャータ
「うん、記念になるくらいののんびり雰囲気だねー」

たまに子どもたちが外で遊んでいるくらいだ。親はまだ沈没中なのだろう。

ひととおり周ってきた。トリミング小屋に行くと、人狼の老人と、ねこ人の老人一人づつが待っていた。歳なんで飲み会には参加しなかった、というところだろうか。

トリミングを始めると、人狼のじいさんの酒臭さがねこ人をトリミングしているガクのところまで来る。
「じいさん、酒飲んでたのか?」ガク
「ああ、朝方までなー。でもなんか眠くならんのでなぁ、んじゃトリミングって貰えば眠くなるかなーってな!もちろんさっき風呂で洗ってきたからきれいだぜ?」人狼じいさん

「じじい、危険だって行っているだろ!酒のんで風呂はやめろ!」
「わかったよ、今日は忘れていただけだって・・」
「今度から絶対思い出せよ!!」
「ういーっす」

「その点、ねこ系は飲まないからねぇ、安心だよ」ねこ人ばあさん
「・・・・・・・・・・・・・・・」アニャータ
「うん、アニャータ、ダイジョブだから!」ガク
例外もいるんですよおばあさん、あまり言わないでくれる?

でもアニャータは節度ある飲み方なので、いつも果実酒数杯くらいしか飲まないのだ。
度数20くらいありそうだから、弱くはないけどね。(日本酒(武国酒)と似たようなもん)

せっせとトリミングしていて気付くと昼近く。ガクもアニャータも各々2人ずつをし終えて昼ゴハン。
外に出ると、通りはいつものように人通りが。昼時だからね。

シューレの食堂に入ると、
「あんたらは昼餉だけど、こいつら皆これが朝飯さ!」と給仕してくれたおばさん。
今頃起きてきたらしい。仕方ないね!!。
朝まで飲む、はガクも泉とよくやること。たまになら悪いことではないと思っている。
しかも祭りの後夜祭みたいなもんだ。いいこったろう。

が、飯を食べてそのままテーブルに突っ伏してまた寝始めている者も少なくない。
おばさんたちがそれらを台車に載せて出ていく。配達だろう。
あ、泉さんもいたんだ・・軽いんでおばさんに担がれて出ていった。村長宅が泉さんちなのだここでは。
他の村のもの達はみえなかったので、皆自分の村で飲んでいたのかな?

食事を終え、茶を貰って飲む。
「アニャータ、ようやく旅に出るぞ。」
「ええ。楽しみですね。」
「まぁ、泉さんと一緒だからな、いろいろあるだろう」
「そうなんですか?」

「・・・泉さんが、いろいろ呼ぶ体質みたいでね」
「そりゃおまえもだぞ?」
いきなりシューレが下からぬっと現れた。ごろごろ転がってきたんか?なんか疲れて起き上がれない様子。
アニャータがシューレを持ち上げてイスに座らせた。ガクより力持ちだからね!

「おーい、お茶クレー」シューレ
すぐにお茶が手渡され、温いお茶だったのかごくごく飲み干す。後ろに控えていたおばさん、別の湯呑みを手渡す。今度はふーふー覚ましながら飲む。すげーなそんちょー宅女性陣!!茶さえもベストにっつ!!!勝てないわけである。
でも、なぜそんななのに、料理だけはてきとーだったんだろう?ある部分今もだけど・・
謎だ。

「おまえら、公爵の家を別荘代わりにするんじゃないのか?」シューレ
「そういう話しになったけど、今回は旅なので途中で寄るだけですねー。じゃないと醍醐味がない。」ガク
「まぁ、そりゃそうか。特にアニャータにはなんのおもろみも無いだろうしな」
「そーゆーこと」

「じゃー、地べたでいくのかー」
地べた・・・そうだけどさ・・・。

「どうだ?おもろい乗り物出してやろうか?」
「いやー、ふつーに歩いて、乗合馬車つかったり便乗させてもらったり、で行きます」
「そうか?おもしろいんだけどなー」
誰が?どう?
シューレが俺らがそれに翻弄されるのを見て喜ぶのではなかろうか?

ぷwとか言うシューレ。
なんか想像したな?

「まぁ、それはとっておこう。」
・・・・・・(ガク)

グリフォンとかかなー?
「なぜそれをっつ!!!」シューレ
まじですか・・・大精霊って・・・
「いや、冗談だ。気にするな。」
ぜってー冗談じゃなかったなっ!!

アニャータ、しっっぽがびったびった打ってるって。
興味がすごくあるようです。

「あー、わたしはまた寝るわ、あとでなー」
シューレがよろよろ奥に引っ込んでいった。
精霊もこういう時は寝るんだなー。

「グリフォン、いいですねっ!!」アニャータ
・・・・・・・・何が?、どう?

トリミングは今日の午後はそう客も多くなく、早仕舞いした。
その後、旅行に必要なものを2人で考えながら集めた。
泉さんが以前シューレに貰ったストレージがあるので、そこそこ多くてもいいなー、とか思っていたらすごくなった。
なので半分くらいに減らした。
出先で容易に手に入るモノでめったに使わないモノはみなはじいた。

夕方前には泉さんも来て、あーでもないこーでもないと、リストを作り、明日から足りないものを用意することになった。
旅を実感し始めた初日だった。
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