上 下
117 / 409

後−44 異国の感じをしみじみと、しかし初めて実感

しおりを挟む

昨晩、銭湯の帰りに酒蔵があったので立ち飲みしてきた。
銭湯は宿から2ブロックほど中央に向かって宿前の通りを行くと右側に見える。大きさはどこも一緒で、日本にあった中規模の昔ながらの銭湯くらい。浴槽が2つの場合が多く、たまに少し大きな銭湯で3つ。サウナが無い銭湯はなかった。たまに薬湯に当たる場合があるが、あまり見ない。
宿前の通りは荷馬車がやっとすれ違える程度の道。街なかなので石畳だ。秋で気温が低めだが、カラッと乾燥しているので、水濡れの路面でもすぐに乾く。そういうとこは石畳は良い。かなり古い石畳なので歩きやすい。
秋の夜の街の石畳の裏道に響く足音は澄んでいて、もう少なくなった虫の音にほどよく馴染む。
こんなとき、ふと、異国なんだな、と感じる。

酒蔵は道に面した正面こそ拾間くらいの間だが、奥行きがある。蔵があるから。大体どぶろくは自家製だ。蒸留酒は勿論、醸造酒も酒造元から仕入れてくる。なのでどぶろくは酒蔵毎に結構特長があるし、年や季節で味が変わる。勿論やすいので労働者が帰りがけに引っ掛けて帰る手頃な酒。

そんな酒をコップ二杯くらいで眠くなったので早めに帰って寝た。
なんか、そーゆー店を見つけるのがうまくなったのかな?俺達の目は。



プチビーレの宿の食堂の食事は良かった。
なので、翌日の昼は街の食堂(喫茶店)で食べてみる。
ドコにでもあるような店構え。だが、侮ってはいけない。この農国では食に関して手抜きはめったにされない。ここも同様だろう。
席に着くまでに店内のテーブルを見渡すと、魚のムニエルを食べている人が多く目に付いたので頼んだ。
うまかった。

こっちの人、バターの使い方がうまいのかなぁ、、塩・胡椒の加減も、僅かに控えめでちょうどよい。
水辺の食用野草みたいのを湯がいて塩かけただけの添え物もうまかった。
ムニエルって何気にごはんに合うよね?

食後に小さめのケーキをくれた。バターベースの硬めのスポンジ。柑橘系のクリームと薄切りのドライフルーツを間にクリームで挟み、上には控えめにクリームの飾り。あまり甘くはない。
これも農国の、日のいずる国との国境近くの街の宿や喫茶店のと同じく、茶を飲みながら食べるとちょうど良いうまさだった。甘くないのに、だ。
日のいずる国に近づいてくるとこういうコンボで食べる工夫が多くなっているということ。日のいずる国の食事にはそういった工夫が多いのかも、と密かに期待。


技術などは必要性があるので考えやすい。が、食事、特にこのケーキのように、
甘さを求める菓子なのに甘さを控えめにし、しかし、その甘さを緩めてしまう茶と一緒に取ることで、より美味さが引き立つ、というような思考は、、、どっからでてきたのだろう?

たまたま何かを食べ、複合で食べると美味さが引き立つのがわかる、というのはあるだろう。
しかし、これは、まずそういったケースは考えにくい。
たまたま、失敗したケーキを紅茶で食べたらすごく美味かった、とかだったのだろうか?

もしくは妖精のケーキ屋ってのが、こんな感じで、そこから来たとか、、?
アレらみたいにぽんこつばかりでも無いかも知れないし。



昼食後、中央市場方面に歩く。
ここはブートッチと湖の逆なので、似たようなものかも知れないが、日のいずる国の特長が何かあるかもしれない、という期待は少なくない。

しかも、ブートッチと似たような条件・環境なので、もしかしたらぽんこつ共もいるかもしれない。
昼は人が多いので気づきにくいだろうが、ココに居るときは夜もまわってみよう。

発見するとなんか嬉しいんだよね♪それだけだけどw

人通りが少しずつ増えている。市場への行き帰りだろうと思われ。
すれ違う人たちは大半が何かを持っているから。

小さい荷車を押している者も目に着くようになった。
道の奥から喧騒が聞こえてき始める。
同時に、アザーンが近くのモスクから聞こえ始めた。

ああ、俺達は異国にいる。この感じが、たまらん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……

百谷シカ
恋愛
カメロン侯爵家で開かれた舞踏会。 楽しい夜が明けて、うららかな朝、幼馴染モイラの部屋を訪ねたら…… 「えっ!?」 「え?」 「あ」 モイラのベッドに、私の婚約者レニー・ストックウィンが寝ていた。 ふたりとも裸で、衣服が散乱している酷い状態。 「どういう事なの!?」 楽しかった舞踏会も台無し。 しかも、モイラの部屋で泣き喚く私を、モイラとレニーが宥める始末。 「触らないで! 気持ち悪い!!」 その瞬間、私は幼馴染と婚約者を失ったのだと気づいた。 愛していたはずのふたりは、裏切り者だ。 私は部屋を飛び出した。 そして、少し頭を冷やそうと散歩に出て、美しい橋でたそがれていた時。 「待て待て待てぇッ!!」 人生を悲観し絶望のあまり人生の幕を引こうとしている……と勘違いされたらしい。 髪を振り乱し突進してくるのは、恋多き貴公子と噂の麗しいアスター伯爵だった。 「早まるな! オリヴィア・レンフィールド!!」 「!?」 私は、とりあえず猛ダッシュで逃げた。 だって、失恋したばかりの私には、刺激が強すぎる人だったから…… ♡内気な傷心令嬢とフェロモン伯爵の優しいラブストーリー♡

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

リアルチートの召喚士~いや召喚士は普通前衛じゃないだろっ!!~

スカイア
ファンタジー
神城 優(かみしろ ゆう)はあらゆる武道の達人 所謂リアルチートだった。 ある日幼馴染の遠藤 仁(えんどう じん)に誘われゲームをすることになった。 これはあるリアルチートの青年(見た目少年)が 運営やプレイヤーを困惑させながらゲームをする物語だ。 ------------------ 本作品は作者の処女作になっております。不定期更新ですが、温かい目で見守っていただけると幸いです。

王妃ですけど、側妃しか愛せない貴方を愛しませんよ!?

天災
恋愛
 私の夫、つまり、国王は側妃しか愛さない。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

処理中です...