天使な狼、悪魔な羊

駿馬

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第16章 日の差さぬ場所で

11.お伽噺の女神

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シェニカ様とディスコーニ、トラント国王や将軍らの捜索に何の進展もない状況が続いて5日。
この状況に嫌気が差し、エニアスを連れて王宮の捜索に行こうかと思っていると、エメルバの副官アスギークが部屋に入ってきた。


「バルジアラ様。ベルチェに行って大臣らに確認してきました」

来る途中で巻き上がった砂を浴びたらしく、クリーム色の砂粒を赤茶色の頭につけたままのアスギークは、自分の前に立ち止まると聞き取ったことを書いたメモを広げた。



「どうだった?」


「大臣らは、『白い渡り鳥』様の戦場介入について戦争前から何も聞かされておらず、彼らはまったく関与していないと申しておりました。話を聞いていた限り、嘘をついている様子はありませんでした。
次に要人らの行方ですが。国王や王太子の行方については知らないと言っていましたが、宰相は戦争前から将軍のリャドとその副官らを護衛に、フシュカードに視察に行っていて不在だったそうです。
そして鍾乳洞については、どの者達も存在すら聞いたことが無いとのことでした。ただ、大臣は世襲ではないものの、宰相は代々公爵のトラスベ家から出ているので、宰相は知っていたのではないかと言うことでした」


「宰相がフシュカードに視察ねぇ……」


ウィニストラの周辺には、民衆の蜂起が起きたりクーデターの動きがあったりと政情が不安定な国が多い。その中で、フシュカードというのは4年前にクーデターにより出来た新興国だが、新しい国王は政治に明るい貴族だったから政情は安定している。

トラント国王は戦場に自ら乗り込んでいくような奴だから、頻繁に留守を預かる宰相の政治手腕はかなりのものだろう。そんな宰相がフシュカードに視察に行ったとしても、何も得るものはないと思うのだが。フシュカードだって宰相の知識や政策の練り方を教えて貰いたくても、自国の内政なんて晒すようなことはしないから、普通は勉強会のような場を設けて意見交換くらいしかやらない。何を目的に視察に行ったのだろうか。



「宰相の家族はベルチェに居たか?」


「はい。宰相の妻、娘、娘婿が居ました。3人に話を聞いたところ、この数年は屋敷に帰らずに王宮で過ごしていて、妻と娘は顔を合わせていないそうです。
次の宰相候補となっているのは娘婿ですが、宰相とは折り合いが悪いらしく、娘婿は王宮での仕事に関わらせて貰えなかったそうです。将来を不安視した娘婿は、少しでも情報を手に入れようと常に宰相の行動を監視し、追いかけ回していたそうです。
宰相が離席した僅かな時間に執務室に忍び込んだ娘婿は、このメモを見つけたそうです」


「なんだこれは」

アスギークから渡されたのは1枚の紙だった。



『ベラルス神官長より報告を受けた国王陛下は、『白い渡り鳥』のシェニカ・ヒジェイト様が、第2のアルナ様に相応しい者だと判断なされた。
我が国が世界の覇者となり続けるには、シェニカ様と同レベルの『白い渡り鳥』様が生まれ続いていかねばならない。
だが我が国の王族は総じて白魔法の適性が高いため、王太子殿下とシェニカ様の婚姻では、残念ながら中途半端な能力を持った子供しか生まれないという問題に直面した』



第2のアルナ様ってどういうことだ?
たしかアルナっていうのはガーファエルの寵姫で、王宮内にいくつかある女神像のモチーフになっていると報告を受けている。ガーファエルは首都の土地改良をした賢王らしいが、この寵姫が何をやったのだろうか。気になる情報は多いのに、解決出来る情報が少な過ぎる。



「娘婿によれば、宰相は後々国史を書くために日頃からメモを記しているので、それは下書きではないか、ということでした。戦争が始まってから家族がフィラを飛ばしているそうですが、返事は返ってこないそうです。
それと……。大臣らの話の中で奇妙なのが、誰も王太子の顔を見たことがないことでした」


「王太子の顔を見たことがない?どういうことだ」


「国王と宰相、アステラや護衛を務める将軍や副官は王宮内で顔を合わせているそうですが、大臣らは王太子の顔を見たことがないそうです。
なので、知っているのは26歳のアバナスという王子ということだけで、彼の普段の生活、外出の予定などは知らされていなかったそうです」


「なんでそんなに顔を出さないし情報がないんだ。次の国王なのに」


「現国王の子供は王太子1人であるため、成人の祝賀は盛大に行うように計画されていたそうです。ですが、国王がその費用を戦争の資金に回してしまったので、結局お披露目されなかったとか。
王宮での会議、他国から来た賓客や『白い渡り鳥』様をもてなす場にも現れないため、大臣らが宰相や国王に理由を尋ねたそうですが、はぐらかされるばかりだったそうです。
そのため、容姿に問題があるのではないか、引きこもりがちな性格をしているのではないかと、大臣らは噂していたそうです」


「よく喋る大臣たちだな」


「はい、協力するから領主は自分達のままにして欲しいとしきりに訴えられました」


「そうか。このメモはお前が持っておけ。ご苦労だった、下がっていい」


今後の自分達の将来がかかっている大臣らの話は、ある程度信用出来るだろう。それにしても、なぜ王太子の情報がないのか。
賢王として讃えているガーファエルの寵姫と、シェニカ様を同じようにしようとしていることも気になる。このアルナという寵姫は『白い渡り鳥』様だったのだろうか。


自分の手と目でこの戦争を終わらせたいのに、自分がここに居続けるとウィニストラの防衛が手薄になっていると思われて、周辺国から侵略戦争をふっかけられる可能性が高い。だから、自分がここで指揮を執れるのはあと3週間くらいだろう。
それまでにトラント国王を捕まえ、シェニカ様とディスコーニを助け出したいのに、地下に入る出入り口が見つからない。

首都を占領されたことで早々に国王を見限り、保身のためによく喋る大臣たちと違い、宰相は自国の王を売るような真似はしない可能性もある。情報を得られるかどうかは分からないが、フシュカードに暗部を送って接触を試みてみるか。



「このアルナっていう女の情報が欲しいが、書いてある文献があるとしたらガーファエルと同じで、字が古すぎて読めないだろうな。とりあえず女神像を見てみるか」


「はい、では噴水からご案内します」




エニアスの先導で王宮の正門をくぐり、中庭で一番豪華で目立つ5段の階段状になったデカイ噴水の前で立ち止まった。白い石で造られたこの噴水の一番上には、赤子の拳くらいの石の玉を胸に抱きかかえ、目を閉じて何かを祈っている白い女神像が鎮座している。
噴き出す水は止められ、溜まっていた水も抜かれているこの噴水は、女神像の正面を捉える土台部分に黒い石碑が嵌め込まれていた。そこには


『どんな災いをもたらす昏い雷雲であろうと、安寧を願う彼女の声は空まで届き、それを割って導きの光が注いだ。
どんな雨風に耐える剛健な山でも、彼女の流す一滴の涙は深く深く染み渡り、山は崩れて恵みをもたらす砂となった。
どんな苦境に立たされても、彼女の慈愛の眼差しが新たな道を切り拓き、逃げ惑う民を導いた。
女神の化身である寵姫アルナはトラントに恵みをもたらし、守護者の庇護のもと、まばゆく光り輝いた』


という詩が刻まれている。
階段を上って女神像を調べてみたが、特におかしなところはない。噴水周辺も調べてみたが、あるのは王宮や中庭の奥に繋がる灰色の石畳の道、鮮やかな緑の葉に映えるようなピンク色の花をつけた低木くらいで、そこにもおかしなところはなかった。

隠し通路を見つける時に有効なのは、神官長の隠し部屋を見つけた時のように空気の流れの違いを感じ取ったり、地面の埃の溜まり具合や仕掛け部分に着きやすい手垢などの汚れ、擦れた痕跡などの僅かな違いに気付くことだ。
屋外にあるものは、周辺の空気や風が動いているから違いを感じ取りにくい。だから念入りに調べてみたが、特に人の手が加えられたような跡や何かを移動させた形跡はなかった。



「ここには隠し通路はなさそうだな。次の女神像はどこだ?」


「屋外にあるのはこの噴水と東屋で、あとは王宮内にある礼拝堂、国王の執務室、謁見の間となります」


「なら東屋の方に行くか。城壁に沿って行った方が早いから、こっちから行くぞ」


王宮内の地図を見ると、東屋は軍の建物に近い中庭の端の方にある。
そこには綺麗に整備された石畳を歩いても行けるのだが、中庭を散策出来るように迷路のような遠回りをする道になっている。今は散策する必要なんてないから、城壁に沿って一直線に行った方が早い。

赤い城壁を見ながら、緑の芝生と不規則に置かれている大きな飛び石の上を歩いていると、ディスコーニとシェニカ様が巻き込まれた落盤が起きた時のことを思い出した。あの時、軍の建物内でも激しく揺れたのだが、落盤地点からそう離れていない東屋も城壁も王宮も壊れていないようだ。煉瓦造りの建物や城壁は、衝撃にはさほど強くないのだが、崩落しないくらい頑丈に出来ているらしい。


東屋までもう少しという辺りに、羽を広げたデカイ鳥の石像があるのを見つけた。王宮の方を向いたこの鳥は、俺の腰くらいの高さで、やたらと翼がデカくて俺が寝そべったくらいの幅がある。ディネード達が調べていた場所がこの辺だったから、奴らはこの石像を調べていたのだろう。
奴が探して何もなかったということは、何もない可能性があるが油断は出来ない。奴らが調べ残したことはないかと石像に触ったり、目や嘴、頭などを押したりしてみたが、何も仕掛けはないようだ。



「エニアス、俺がこの石像を持ち上げるから下を確認しろ」


「はい」


「どうだ?何かあるか?」

見た目でこの石像はかなり重たいと予想したが、実際に持ち上げてみると思ったほど重くなかったから拍子抜けした。


「いいえ、何もありません。動かした形跡もないようです」


「そうか。全部一通り調べているのに隠し通路が分からねぇってことは、漏れ出る空気の違いを分かりにくくするために、扉を何重にもしてるか屋外かと思うんだが。仕掛けの手掛かりや隠し通路の場所は、限られた人間に口述でしか伝えられないから、自力で見つけ出すのは骨が折れそうだな」


視線を感じる方向を確認すると、ここから離れた王宮のすぐそばにカトゥノバというディネードの副官が俺の方を監視するようにジッと見ている。自分達が見落とした何かを見つけるのではないかと、気になっているのだろう。
奴らをおちょくるためにも、もう少しこの周辺を調べて何か見つけたフリでもしてやろうか。




「そうですね。通常と違って相手が見えない状態で戦争が長くなると、士気の低下と油断を招いてしまいますので、早く終わらせたいものですね」


「地下への入り口を探すために、建物を全部崩して地面を全部掘り返したくなるが、こういう捜索をする時は現場維持してやらねぇといけないのが面倒だな。エニアス、カトゥノバに背を向けてそこの飛び石の前に座れ」


鳥の石像の周辺には、緑の芝生と城壁近くにポツポツと埋められた円形の飛び石、赤い城壁くらいしかないから、カトゥノバをおちょくるために飛び石を調べてみた。
と言っても、飛び石はどれも大人が2人は座れる座布団2枚分くらいの大きさがあるし、石を掴む部分もないくらい深く埋められている。これを持ち上げたり横に動かしてみるためには、芝生の地面を掘らなければならない。
この飛び石には特に異変を感じないし、動かすと芝生が倒れたりするからすぐに分かる。おちょくるだけならこの辺に座り込んでいるだけで十分だろう。



「バルジアラ様。サザベルの将軍や副官をからかって遊ぶつもりですか」


俺の指示通りに飛び石の前に座ったエニアスは、困ったような顔で俺を見上げてきた。


「別に構わねぇだろ。こういうのは気分転換が大事だ。焦ったあいつらがどんな反応するか考えるだけで、面白いもんだ。
いっその事、落盤の時のような揺れでも起こって建物が壊れねぇかなぁ。そうすれば堂々と掘り返せるのになぁ。いっそのこと事故に見せかけて壊すか!」


「バルジアラ様、そんなことをすれば無用な破壊をしたと思われて、国の評判を落としてしまいます」


「あははは!冗談だよ。そんなことしたら、サザベルの奴らがイチャモンつけてきて『故意の有無を調査しながら、土台から綺麗に片付けておきましょう』とか言って、出入り口を探すために地面を掘り返すだろう。
こちらが意図的にやってないと証明できるような落盤や地震といった災害でも起きない限り、あいつらにそう言われたら譲るしかねぇからな。サザベルの奴らが苛ついて破壊行為でもすれば、こっちから嫌味を言って堂々と掘り返せるんだがなぁ」


戦争では王宮や街で戦闘になることもあって、そういう時は戦闘の影響で建物が破壊されることも多い。
通常の戦争なら破壊するという行為は仕方ないことだと済まされるが、今回のような相手が居ない状態で街や王宮を破壊すれば、その国の戦争の仕方というものが広く知れ渡る。
無用な破壊をしたという評判が出回ることは、大国の振る舞い方に相応しくないと国王陛下が判断し、俺は大目玉を食らうだろう。



「カトゥノバがそわそわした感じでこっちをずっと見てるぞ。俺たちがいなくなったら、すぐにディネードとここを調べるだろうな。調べても何もねぇのにご苦労なこった!」


「バルジアラ様、本当にからかうのがお好きですね。そんな風にしていると、いつかしっぺ返しが来ますよ」


「お前、ディスコーニみたいなこと言うようになったな」

エニアスは俺の副官になって数年経っているが、腹心として側に置くようになったのはディスコーニが昇進してからだ。今までは素直に命令を聞いていたのに、そんなに時間が経っていないにも関わらず一人前に口答えするようになったのだろうか。



「ディスコーニ様から教えて頂きました」


「まったく、あいつは余計なことを教えやがって」

溜息を吐きながら、すぐそばにある城壁に背中を預けるように寄りかかった瞬間。






ガラガラガラガラ!!!ドドドォォォーン!!


ガラガラ!ドドド!!


ドーン……ガラガラガラ……。


赤く高い城壁がドミノ倒しのように広範囲に渡って派手に崩れ落ちた。派手な音が黒い王宮の壁に反響して、見事に周囲に響き渡った。


背中にあったはずの壁がなくなって、バランスを崩しそうになったが足に力を入れて踏ん張って、ひっくり返るなんて無様な真似をすることはなかったのだが。
寄りかかっただけなのに何故こうも崩れるのか。ここは落盤地点から比較的近い場所だから、あの事故の時に揺れて脆くなっていたから、僅かな衝撃で崩れ落ちたのだろうか。



「バ、バルジアラ様……!」

エニアスを見ると『あぁ…なんてことを』という顔をしている。
ちょっと待て。これは俺のせいじゃない。寄りかかっただけで崩れる城壁の方が異常なんだ。

落盤の揺れの影響を受けたであろう煉瓦の城壁が、ちょっとした力が加わったことで偶然崩れただけだ。そもそも城壁を頑丈な石で作ってないからこうなるんだ。




「敵かっ!!」

「バルジアラ様、ご無事ですかっ!?」


城壁が崩れ落ちる音と砂煙に気付いたウィニストラとサザベルの兵士達が、剣を抜いてこちらに駆け寄ってきている。
この状態なら隠れていたトラント兵を発見して戦いが始まったように見えるだろうが、事実はそうじゃない。



「違う。脆くなっていた城壁が自然崩壊しただけだ。ここにトラント兵はいないから下がっていい」


ここに居たのがエニアスではなくディスコーニだったら。

「貴方様の巨体のせいで、城壁が悲鳴を上げて崩れてしまいました。貴方様は日頃から周囲の状況を慎重に読み取り、よく考えて行動し、熟考して作戦を練ろと仰っているのに、サザベルの副官の目の前で貴方様ときたら……」と嫌味を言うだろう。


将軍になると嫌味の1つや2つサラッと出てくるのも嗜みだ。上官である将軍が他国の将軍や貴族とやり合うのを見て聞いて覚えていくものだが、あいつは俺相手に腹の立つ嫌味を言うようになった。
上官としては成長を喜び褒めるべきことなのだが、俺を相手に言われると、喜ばしい気にもならなければ褒める気にもならない。


ウィニストラ兵が俺の指示に従って持ち場に戻り始めると、遠巻きに見ていたサザベル兵の間から面倒くさい奴がやって来た。
こちらを見ていたカトゥノバが、奴に崩壊現場に俺が居たと告げたのだろう。面倒くさいことになってしまったと、心の中で大きなため息を吐いた。



「バルジアラ殿、一体何の騒ぎですか」


「脆くなっていた城壁が偶然自然崩壊したんですよ」

深緑色のしっぽのような髪を背中で揺らして歩いてきたディネードは、カトゥノバを含めた副官3人を連れて俺の前で立ち止まった。奴は王宮の正門近くまで崩れた城壁を見やると、わざとらしく呆れたような溜息を吐いた。



「そうですか。てっきり貴殿が苛立ちを城壁にぶつけたか、進展のない捜索に嫌気が差して城壁を事故に見せかけて破壊し、崩壊事故の片付けという名目で地面を掘り返すつもりなのかと思いましたよ」


「ははは。随分と失礼な物言いですなぁ。私はどんなに苛ついても物にあたるような粗暴な真似はしませんし、事故に見せかけて破壊するなんて、大国にあるまじき行為は考えもしませんでした。
そんなことを考えるとは、貴殿は以前にそのようなことを考え、実行したことがあるからではないですか?」


俺がそう言うとディネードは目を細めて嫌そうな顔をして、またわざとらしい溜息を吐いた。



「そちらこそ随分と失礼なことを仰る。無用な破壊など我が国は一度もしたことがありません。
貴殿は図体と態度がウィニストラ領土よりも大きいと揶揄される方ですから、時間のかかる細かな仕事は不向きだと推察しましてね。苛立った末の破壊行為は、貴殿ならやりかねないと思ったのですよ。
まぁ、首都全体で地盤沈下が進んでいるようですし、ここは落盤地点からそう離れていない。城壁が事故の際の揺れで脆くなっていた可能性は十分あるでしょうから、自然崩壊したということは十分頷ける話です。
ですが、ウィニストラの筆頭将軍である貴殿が故意に破壊した可能性がある以上、我々が貴殿の故意だったのかを調査し、崩れた城壁は土台から綺麗に片付けて差し上げましょう。ルナイ、兵士を集めろ」


腹が立つが、ここはこいつの言う通りにサザベルに譲らなければ、俺がわざとやったんだろうと言われかねない。無用な火種を残せば、後々それが大火に発展するほどのものになるかもしれない。ここは不運に見舞われたと諦めるしか無い。


「では貴殿らにお任せしましょう。そうそう、『深海の死神』は海辺に立って軍の指揮を執り、向かってくる敵船を海の底に沈めるそうですね。貴殿がこの場を指揮していると、その船のように王宮や街の建物、残った城壁が地に沈むようなことが起きないと良いですな」


「私はどこかの誰かと違って、歩くのに場所を取るようなデカイ図体ではありませんし、馬鹿力なぞ持っていませんのでそんな偶然は起きません。無用なご心配をありがとうございます」


「そうですか、それは失礼しました。貴殿は荒くれ者ばかりのサザベルには珍しく頭が回る上に、腹を空かせた鮫のように狙った獲物を追い詰める執念深い性格をしていると聞きますのでね。隠れて出てこないトラントの連中の尻尾をつかもうと、落盤事故の影響という体のいい口実で、王宮や城下の建物を偶然を装って破壊しかねないと危惧したんですよ。
まぁ、そうなった場合は、我々が片付けと故意の有無についての調査をさせて頂きますのでご安心下さい。エニアス、王宮内に行くぞ」


「はい」

殺気を滲ませて睨みつけてくるディネードに背を向けた後、止まらない溜息を吐きながら、城壁周辺の地中から何も出てこないことを祈りつつ、王宮に向かってまっすぐ歩を進めた。



「あ~!くっそ!!」


「まぁ、事故ですから仕方ありません。それにしても、いつもバルジアラ様が他国の将軍相手に嫌味を言う時は、どうなるかと内心ヒヤヒヤします」


「お前も嫌味くらい言えるようにならねぇと、ウィニストラの看板を背負って立つ将軍にはなれねぇよ。
サザベルはヘルベみたいに脳筋の奴らが多いから、嫌味を言えばすぐに悔しそうな顔をするから楽しいが、ディネードに反論されると腹立つな。次は国王の執務室に行くぞ」


王宮の中庭が見下ろせる2階の角部屋の豪華な扉を開くと、目の前に眩しいほどの光が入る大きな窓と、そのすぐ側に広い机が配置されていた。左の壁には隣の書庫に続く木製の扉、右の壁には壁の端から端まである、横に長い1枚の絵画が上品な額縁に入って3枚も飾ってある。よく整理された机の上には書類やペンが1つも置かれていないが、小さな女神像がぽつんと置かれていた。



「この像も怪しい所はないな」

部屋に足を踏み入れると、真っ直ぐに机にある女神像を手にとってみた。この像は短剣くらいの高さで、小さなダイヤを抱くように胸の前で両手を組んでいる。目を閉じて首を傾けた表情には、どことなく憂いを含んでいるような緻密な仕上がりだ。
この像はごく普通の石で作られているもので、ひっくり返したり振ったり調べてみても何の異変も感じない。この女神像自体に仕掛けは何もないようだ。


女神像を机の上に置いて壁に飾られた絵画の前に移動すると、一番上に飾られた絵を見た。この横に長い絵は絵巻物のように右から左へと繋がっているらしく、絵の下の方には文章が書き連ねてある。
一番上の絵画の右端に描かれているのは、上部に天国、下部に地獄、その2つに挟まれるように実際の世界地図が生き生きと描かれている。


「これは絵巻物みたいに読むらしいが、なんでこんなものを国王の執務室に飾るんだ?」


「書庫を調べたフォリナスによれば、この絵はトラント国史の中にある『女神の祝福』という一節だそうです。この話はトラント国内では子供向けのお伽噺としても知られているそうで、国王のガーファエルと寵姫アルナを神格化し、その子孫である王族を崇拝させるために作られたものではないか、と仮説を立てていました」


「そうか」

俺はエニアスから絵に視線を戻すと、天国と地獄に挟まれた世界地図がある部分から読み始めた。



天国と地獄が地上を代理戦争の地として争っていた時代、海の彼方にある小さな島で恵みの大樹が1粒の種を宿した。すると、種に力を注いだ大樹は枯れて、養分となった大地は海の底に沈んでしまった。
枯れ木に残ったその種は、金の鳥が咥えて海を越え、山を越えて芽吹くに相応しい場所へと運んだ。

金の鳥によって運ばれた種は、肥沃な大地を苗床にすると、あっという間に根を張り緑の葉を芽吹かせた。誕生を待ちわびる金の鳥は歌うように囀ると、芽はみるみる成長して葉を茂らせ、茎を太くした。そして真っ白な蕾がゆっくりと花を咲かせた時、その中から女神が生まれた。


『金の鳥よ、私を咲かせてくれたあなたに最初の祝福を与えます。あなたの願いは何でしょう』と、女神が金の鳥にそう問えば、

『私は貴女の剣となり盾となる守護者になりたい』と願い、金の鳥は女神を守る守護者となった。


それから間もなく。女神の祝福を求めて、天国からは光を集めたような金の巻き毛の天使が、地獄からは血で出来たような赤い目の悪魔が遣わされた。
女神を独占するために、天使は天国へ、悪魔は地獄へ来て欲しいと訴えると、女神は『残念ですが私の祝福は2人にしか与えられないのです。既に1人に祝福を与えたので、残りは1人だけ。どちらに与えるのか私には決められないので、話し合ってから来ると良いでしょう』と言った。

女神の返事を聞いた天使と悪魔は、話し合ってはみたものの互いに譲らないため決まらなかった。
そこで天使は女神の右手を掴んで強引に天に連れて行こうとし、悪魔は左手を掴んで強引に地獄へ連れて行こうとした。両手を取られた女神が大きな悲鳴を上げると、その痛みを表すように大地が裂けた。
金の鳥が天使と悪魔に岩を落として女神を助けると、女神のエメラルドのような瞳からはダイヤのような光り輝く涙が大地の裂け目に次々と落ちて、そこはたちまちまばゆいばかりの池となった。


血に濡れた悪魔は、女神が泣き止まぬのはお前のせいだと言って瀕死の天使を持ち上げると、首を締めて殺してしまった。絶命の瞬間に流した天使の涙が悪魔の身体に落ちると、悪魔は白い煙を上げながら女神の涙の池に落ちて死に、天使の身体も池に落ちた。すると、2つの身体は清らかな涙の池で跡形もなく溶けた。

女神はまばゆく輝く池の水を掬い取り、涙で濡れる目を閉じで静かに天使と悪魔の死を悼む祈りを捧げ、金の鳥は自らの黄金の羽を1枚落とした。すると、その池の中から天使のような金の髪に、悪魔のような赤い目を持ち、背中に天使と悪魔の羽を片方ずつ生やした青年が現れて、『天使でもあり悪魔でもある私に、貴女の祝福を与えて下さい』と女神に告げた。


女神は『では貴方に祝福を与えます。貴方の願いは何ですか』と青年に問うと、青年は『私は貴女の力を受け継ぐ子が欲しい。貴女と私の血を引く子はこの世を平定する子になるでしょう』と答えた。
女神が青年に恵みを与えると、女神と青年は人間となった。夫婦となった2人の間に生まれた子は、女神より受け継いだ力と天使と悪魔の力をもって地上の世界を1つにし、天と地に繋がる道を塞いで平和をもたらした。





「面白味のないありがちなお伽噺だな。この絵にも仕掛けはなさそうだな。そこの書庫に行くぞ」


書庫に繋がる扉に入ると、本棚がぎっしりと並べられていた。ガラスの小窓から差し込む陽の光のおかげで随分明るい部屋を回ると、ここには戦略論や兵法と言った本や白魔法の魔導書が詰まっていて、他の場所にあったような伝承の本は置いていない。今まで見た書庫とは毛色が違うことが気になるが、空気の流れが違う場所も違和感を感じる場所もない。


「ここには隠し通路はないようだな。次は1階の謁見の間に行くか」



階段を下りて緻密な彫刻で飾られた重々しい扉を開くと、窓ガラスから差し込む陽の光が満ちた広い半円形の空間が広がっていて、ウィニストラ兵だけしかいなかった。
その床には毛足が短い赤い絨毯が余すところなく敷かれ、一箇所しか無いこの扉から中央にある玉座まで一直線に白く細長い絨毯が伸びている。その白い絨毯は金や銀糸で緻密な縁取りが施された豪華なものだが、たくさんの兵士が遠慮なく入ったからか汚れてしまっている。


そして部屋の真正面にある黒い壁の前には、左肩にデカイ鳥を乗せた巨大な女神の白い石像がある。この女神像は周囲よりも5段高い場所に置かれた玉座を見下ろすようになっていて、正直言って国王よりも女神像が目立つ。
目を閉じて両手を広げた女神像の右手側には白い石で出来た天使の像があり、左手側には黒い石で出来た悪魔の石像がある。
国王の執務室にあった絵を見た後だからか、『女神が生んだ子供はこの玉座に座る者だ』と言っているような印象を受ける。


女神像の迫力を感じながら白い絨毯の上を真っ直ぐに進んで、玉座に続く階段を上った。
焦げ茶色で頑丈な玉座には、座面と背もたれ、肘掛けに弾力のある綿が紫色のビロードで覆われ、その枠には波打つ模様が彫刻されていて、サファイアやエメラルド、ターコイズやアメジストなど色とりどりの宝石が嵌められている。

この玉座と女神像を中心に、部屋の形に沿う様に円弧型の大きく長い机と立派な椅子が左右に並べられているから、そこが将軍や大臣が座る場所なのだろう。高い場所からそれらを眺めていると、机の縁の部分に草文様の彫刻が施されているのまでしっかり見えた。



特に怪しい部分もないと階段を降りると、後ろにある女神像の方に移動した。
女神像と玉座の間には3人が並んで歩けるくらいの通路があって、女神像の前に立っても俺の目線は女神の膝くらいしかない。巨像を真下から見上げていると、降ってくるような慈愛に満ちた女神の表情に圧倒されるが次第に肩が凝ってきた。

凝った首の筋肉を解しながら後ろを振り向くと、自分の胸あたりまでの高さがある玉座が置かれた黒い石がある。そこには背中に天使と悪魔の羽を生やした男が腰に差した剣に左手を添え、何かを求めるように右手を伸ばしている絵が彫刻されている。
通路を挟んで向かいにある女神像に手を伸ばしているように見えるから、女神像とこの玉座の土台の彫刻は一対なのかもしれない。
玉座を正面から見た時、階段にも絨毯が敷いてあったから分からなかったが、黒い石が剥き出しになっている後ろと横から見てみれば、黒い巨石を階段状に削り出したものを使っているようだ。



「ここには女神と天使、悪魔と鳥が居ますから、国王の執務室にあった絵と重なりますね」


「女神がアルナで男がガーファエルってことなんだろう。この女は能力がかなり高かったのか容姿が良かったのか知らんが、神格化するような物語になるくらいだから、かなり大事にされたみたいだな。
この世界に神や天使、悪魔なんているわけねぇって誰もが知ってるんだから、いちいち神格化する必要ねぇだろうに」


エニアスと会話をしながら、女神像の両側にある天使と悪魔の石像を調べてみた。
女神の右手側にいる天使と左側にいる悪魔の像は、焦がれるような切なげな表情をして、真ん中にいる女神に向かって手を差し伸べている。
2つの像は女神像ほど巨大ではないが、長さも横幅も俺より一回りくらい大きい。落下防止のためなのか、正面から見た時は分からなかったが、3つの像は数箇所を鎖で背後の壁に繋がれていた。



「この国は古い国ですから何代も王が変わってきたのに、王宮内に有るのはアルナの女神像とガーファエルと思われる国王の肖像画だけ。王族はきっと神格化したガーファエルとアルナを信仰していたのでしょうね」


「昔は世界中の神殿で戦勝や平和を祈っていたらしいが、祈っても祈っても平和にならねぇし、国が侵略されて滅んできた。だからこそ神への信仰なんてなくなって、豊穣や自然の恵みを求める地域限定の信仰しか残ってない。そんな状態なのに、敢えて過去の寵姫を女神として崇めているなんて、馬鹿馬鹿しく思わねぇのか不思議だ。
ただ気になるのは、シェニカ様の『聖なる一滴』を狙っているのは分かるが、このアルナって女が何を出来たのかってことだな」


そんな風にボヤきながら、今度はこの部屋の黒い壁沿いを歩き始めた。

女神や天使、悪魔、鳥、天使と悪魔の羽を持つ男が1人ずつ描かれた壁画が刻まれた石の壁と、豪華な燭台が嵌め込まれた石の壁が交互に配置されている。
天使の像と悪魔の像に一番近い両脇の壁には、ルビーやサファイア、黒曜石、ムーンストーンといった宝石があしらってある豪華な木枠に嵌め込まれたデカイ鏡があって、そこを起点に左右の壁画が同じ柄になるように順序よく配置されている。俺の全身が余裕で映る巨大な鏡から始まった壁の装飾は、剣を掲げた男の彫刻が扉の両脇に配置されて終わっている。

壁画の少し上の方には壁画1枚分の大きなガラス窓が嵌め込まれていて、必ず窓が壁画の上に来るように黒い壁と交互に配置されている。
この王宮はどこも黒い石で出来ているから、窓のない空間は昼間でも魔力の光を掲げないといけないほど暗く、窓があったとしても暗い印象を受ける。でも、この部屋の窓はかなり大きい上に枚数もあるから、暗いという印象は受けなかったが、雨や曇の日だったら明るい印象は消え失せて陰鬱な印象を受けるに違いない。


2つのデカイ鏡は、誰かが調べた時のものなのか指紋がベタベタと付いているが、歪みはないし、宝石が散りばめられた木枠部分にも仕掛けがある様子もないし、空気の流れに違いは感じない。
壁画は両手を胸元で組んで祈る女神、大粒の涙を1滴流す苦悶の表情をした天使、顔を抑えて崩れ落ちる悪魔、足で掴んだ岩を落とそうとする鳥、胸に手を当てて焦がれるような表情をした男といった、執務室で見たお伽噺になぞらえたような題材が多い。壁画や燭台を触って調べてみたものの、ここにも異変を感じる部分はなかった。


トラントが崇拝している女神像や、それがある場所に何かヒントや仕掛けがあるのではないかと思ったが、今のところ何もない。
王宮のどこかに鍾乳洞に通じるような出入り口があるはずなのに、見つからないということは想像出来ないような場所にあるか、仕掛けや手掛かりを分かりにくくするための工夫が施されているのだろう。




「王族が使う緊急用の隠し通路は痕跡を残さないように念入りに造っているものだが、探す方は骨が折れるな。何の進展もないと注意力は散漫になるしヤル気がなくなってくる。アステラはこういう状態を利用するだろうから、気が抜けん」


「そうですね。既に下級、中級兵士には士気の低下が見られて、王宮内の水に手を触れたり、飲んだりしています。触れないように再度通達しましたが、もしもの時のことを考えると気が気でありません」


「はぁ~。さっさと終わらせてしまいたいっていうのに、膠着状態が続くとイライラするな。こういう時は部下をおちょくって気を紛らわせるか」


「え?」

俺がそう言って隣にいるエニアスを見ると、目をパチクリと数回瞬きした。
すっかり可愛げが無くなったディスコーニと違い、まだまだ俺に振り回されることに慣れていないこいつは、からかいがいがありそうだ。



「お前、ハンバーグのソースで一番合うのはオニオンソースかトマトソースかで彼女と喧嘩した末にフラれたらしいな。最近娼館に行って雰囲気が良く似た相手を指名したらしいが、まだ彼女に未練があるのか?」


「バッ!バババ、バルジアラ様!ど、どうしてそれをっ!」

エニアスは分かりやすいほど狼狽し、周囲にいる兵士には聞こえない程度の声で慌てふためき始めた。こうやって面白い反応が返ってくると、何とも楽しい。
ディスコーニはそういう所があまりなかったから、からかっても毎回面白みのない返事しか返ってこず、早い段階で嫌味を言い出すようになってしまった。こいつをからかって遊んでいれば、そのうち嫌味を言うようになってくるだろう。これは面白みのある鍛錬になりそうだ。



「あははは!面白いほど動揺するとは、お前はいい反応するなぁ。これはからかいがいがあるな。
ハンバーグはオニオンソースにトマトソースも良いが、デミグラスソースにガーリックソースも外せねぇな。あ~……。メシのこと考えてたら、串焼きが食べたくなったな」


「バルジアラ様は本当にガンテツ屋の串焼きがお好きですね。私が初めてバルジアラ様の分を買いに行かされた時は、『バルジアラ様が召し上がられるのなら、味付けはお任せを』と言って、タレを特別調合していたのには驚きました」


「散々ディスコーニに買いに行かせたから、あの店は俺好みの味を知ってんだよなぁ。まぁ、あそこの串焼きは他の店よりもデカくて美味いし、良心的な価格で客を大事にする良い店だ。帰ったら串焼きは100本くらいは食いてぇな」


そんな雑談をしていると、エメルバの副官のアスギークと自分の副官のストラとニドニアーゼルが扉を開けて、俺に向かって真っ直ぐ歩いてきた。


「バルジアラ様。ご報告です」


探したが何も出なかったという報告を聞きながら、心の中でまた大きな溜息を吐いた。

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