天使な狼、悪魔な羊

駿馬

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第17章 変化の時

14.外野の事情

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(前書き)
更新を大変お待たせしました。m(__)m
今回のお話は、ソルディナンド→ディスコーニ→バルジアラと視点が変わります。

◆◆◆


シェニカ様が鍾乳洞から無事に生還してから降り続いた雨は昨晩止んで、濡れた建物がじわじわと朝日の色に染まる夜明けを迎えた。
「雨が止んでいれば、明日の朝に出発する」と聞いていたが、ウィニストラが出発の準備を整える前に、サザベルの軍勢がこの地を出発した。その様子をバーナン殿と一緒に部屋の窓から見届けると、すぐ側にあるソファに向かい合って座った。それと同時に、自分の腹心のミルトが2人分のコーヒーをテーブルに置くと、静かに部屋から出て行った。


「サザベルはカケラの交換をしたのだろうか」

「共通の話題を探そうにも、せいぜい今回の戦争のことくらいでしょうし、そんな話題をシェニカ様としても盛り上がらないでしょう。縁戚や知人といった何らかの繋がりがなければ、話題なんてそう簡単に見つかりません。サザベルにシェニカ様と繋がりがある者がいるなんて聞いたことがありませんから、面会してもカケラの交換は出来なかったのではないでしょうか」

シェニカ様と親しくなりたいのは自分達だけじゃない。当然、サザベルも繋がりを作りたかったはずだ。
ヘルベは年齢が離れているし見た目も悪いから対象外だろうが、ディネードは能力の高い子を作れる可能性が高いことからシェニカ様との関係構築を望み、ユドはライバルのディスコーニがシェニカ様と深い仲になったことで、奪い取ってやりたいと思ったはずだ。
その中でも。子供という次世代への恵みと、子供をダシにしてシェニカ様を呼べるのだから、ディネードは国王から繋がりを作れと特にプレッシャーを与えられただろう。


「ここに来るまで、シェニカ様は随分と心労で塞ぎ込んでいらっしゃいましたから、こちらとしてもなかなかチャンスが巡ってきませんでした。トラント国王を捕縛したことで戦争終結の目途が立ったので、今が話しかけるチャンスなのですが。ディスコーニが我々の目にシェニカ様が入らぬように徹底していますから、すれ違うこともありませんね」

シェニカ様が鍾乳洞から戻ってきて以降、どうにか接触する機会を得られないかと様子を伺ってみれば、世話役になったディスコーニが『赤い悪魔』を押し退けるようにシェニカ様の隣に張り付いていた。鉢合わせする機会もないから、連絡役の副官に「シェニカ様とお話したいことがある」と言っても、「何か御用がありましたら、我々がお伺いします」と言って会わせようとしない。埒が明かないからバルジアラに直談判して、ようやくシェニカ様から良い返事を貰えた。


「シェニカ様と話をする機会ですら、ディスコーニを介さねばならないのが腹立たしい!落盤に巻き込まれたのが私だったら。私が自由の身だったら!今その場所にいるのは私だったかもしれないのに!」

シェニカ様は恋人だった『赤い悪魔』を下がらせ、ディスコーニを側に置いているということは、よほど奴を気に入ったのだろう。
シェニカ様と共に鍾乳洞に落ちたのが自分だったら。誰もが喉から手が出る程欲しいその場所には、自分が立っていたのかもしれないのに。そうすれば小煩い妻から解放され、世界中が羨む相手を得られたのに。そう思うと悔しくてたまらない。




「ソルディナンド様は既婚者なので、圧倒的に不利でございます。ここはデュレイ様のご指示の通りに動いた方がよろしいのでは?」

「既婚であることが不利だというのは分かっていても、政略結婚で押し付けられたあんな女のせいで、折角目の前に落ちてきた幸運を他の者に渡すなど……!」

「お気持ちは分かりますが、ソルディナンド様は上官であるデュレイ様のご命令は必ず守らねばなりません。それに、戦争は事実上終わりましたので、今後我々がシェニカ様に近付く機会はそうありません。難攻不落のシェニカ様が相手ですので、結果が残せなくても責められることはないかと思いますが、命令を無視してチャンスを逃してしまうと貴方様のお立場が悪くなります」

「それは分かっているのですが、目の前で掻っ攫われるのを指を咥えて見ていろ、というのは耐えられませんよ!」

苛立ちのままにソファの肘掛けを殴れば、バーナン殿は不憫そうな顔を向けてきた。


悔しさに油を注ぐのは、上官である筆頭将軍のデュレイ様から連日のように届く手紙だ。

『お前の副官は全員独身だったな。シェニカ様に誰かを気に入ってもらうように、お前が仲を取り持て』
『シェニカ様との関係はどんな感じだ?どんな些細なことでも報告しろ』
『親しく話せるようになったか?カケラの交換はまだか?時間は限られているのだから、悠長に構えずお前がしっかりやれ』
『落盤事故に巻き込まれたとのことだが、シェニカ様の姿を見るまでは生存を信じて行動しろ。どこよりも先にシェニカ様を見つけ出せ』
『シェニカ様の発見はまだか?この件は国王陛下も注視しておられるから、状況に変化がなくても毎日報告のフィラを飛ばせ』
『分かっていると思うが、今回の戦争に我が国は直接関係がない。だが、シェニカ様と親しくなることが出来れば戦争に勝ったと同じ功績を得る。気に入って貰えた者がいれば、シェニカ様の旅に同行させるために退役と出国を許可する』

自分をダシにして世界中で1番価値のある女と部下との間を取り持て、というのが気に食わなくて仕方がない。あんな女に縛られていなければ、国の応援を得てシェニカ様に近づけるのは自分なのに。


どうしてこんな大事な時に自分に運は味方しないのかと、人生が狂った縁談を言われた時のことを思い出す。


『ソルディナンド。決まった相手がいないのならば、会って欲しい令嬢がいるのだが。実は王妃の姪でな。お前が副官の時から気になっておったそうだ。会ってみないか?』

自分の外見に惹かれた女が放って置いても次々に寄ってくるから、それなりに女遊びをやってきたし、妻よりも外見が良く貞淑な性格の女もいた。寄ってくる相手の中から、自分にとって一番条件の良い相手を選ぼうと思っていたのに、将軍になった直後に国王陛下からそう言われて縁談を勧められた。
陛下からの縁談なんて断ることが出来なくて、見合いの席に嫌々行ったら化粧や宝石、ドレス、夜会のことしか喋らない女がいた。延々と続いた興味のない会話は曖昧な相槌で終わらせ、盛り上がることもない。終始良い印象を持たれないようにしたから、相手の方から断るだろうと思っていた。

なのに。


『あの子はすっかりお前を気に入ったそうだ。決まった者がいないのならば、このまま結婚してはどうか?』

陛下と王妃様に言われてしまうと断るに断れず、承諾の返事しか返せなかった。

後々聞いてみれば、妻は容姿がよく、地位や身分が高く、金を稼ぎ、家にあまり居ない男を求めていたらしい。それならば貴族の男よりも将軍職の男が良いと考えたらしいが、残念ながら容姿の良い将軍は既に結婚していた。そのうち年齢が28を過ぎて、本人も周囲も焦り始めた頃に、自分が将軍職に就いてしまったのだ。この機を逃してはならぬと、断れないように王妃様を介して縁談の話を持っていったのだと知った。

結婚してみれば、相変わらず化粧や宝石、ドレス、夜会のことを話すばかりで、家のことは使用人にすべてを任せるだけだから家庭的な面もなく、惹かれるところなんて一切無かった。そんな妻の最近の悩みは、体重の増加と子宝に恵まれないことらしい。
仕事を理由に家に帰らないようにし、たまに帰ると妻に「早く子供が欲しい」と迫られる。苦痛でしか無いが、避妊薬を飲んで子供が出来ない状態を数年続け、『子供が出来ないのは相性が合わないから、というのが世間一般の認識だ。互いに子宝に恵まれぬのは困るから、離婚して別の相手を探そう』とよくある理由で離婚しようと思っていた。
そうやって押し付けられた結婚から抜け出そうとしてもがいているのに。人生最大のチャンスが目の前に転がっているのに、それが足を引っ張って、まるで呪いのように自分を雁字搦めにしてくる。



「ソルディナンド様、貴方様のお気持ちはよく分かりますから、とりあえず落ち着いて下さい。シェニカ様を相手に結論を急いではいけません。シェニカ様が貴方様を気に入って下されば、国王陛下も離婚をお勧めになるでしょうし、副官の誰かを気に入ってもらえれば、その者を介して貴方様の接触の機会を増やせば良いのです。
特に今はディスコーニがシェニカ様を囲っていますから、そう簡単に手出しは出来ません。例え親しくなれなくても、カケラの交換が出来なくても、シェニカ様と普通に会話出来る間柄になれば上出来というものですよ」

「そうは言っても、こんなに近くにいる機会なんて滅多にない。この機を生かして、シェニカ様とカケラの交換くらいはしたいのだが」

「シェニカ様との食事が成功するといいのですが。私の神殿にはこれといって使える情報がありませんから、何の助言も出来ずに申し訳ありません」

今回の戦争で、どの国も神殿が今まで隠していたシェニカ様の情報を手にしたはずだ。シェニカ様は失敗出来ない相手だからと、今まで及び腰だった国もこれからは積極的に動く。加えてシェニカ様がディスコーニと深い仲になったと他国に知れ渡れば、奴に追いつこうと余計に必死になる。他国の一歩先を行くためにも、自分のためにも、ここが正念場だ。

シェニカ様と親しくなれるチャンスは、キルレとウィニストラの首都に向かう街道の分岐点までしかない。それまでの間に、シェニカ様の側に我が物顔で張り付き、こちらの邪魔をするディスコーニをどうにかして排除したい。一番良いのはシェニカ様の方から近付いて来てもらうことなのだが、見届人としての役割は終わり、シェニカ様に何の恩も与えることが出来なかったから、こちらに目を向けてもらう可能性は低い。
ここを出たら早い段階で食事に誘い、その席を成功させてその後もまた食事に誘おう。それを繰り返していけば、シェニカ様との距離も近くなって自然とカケラの交換も出来るだろう。この機を逃さずに、他国の者達を出し抜けるようにしなければ。


「シェニカ様の情報は、どの国のどこの神殿が買っていたのですか?」

「どの神殿も、情報の買い手を言わないので分かりません。ですが、シェニカ様の情報は貴重なために、競り合いになってかなりの高額になっています。その金額は地方の神殿はもちろん、小国の首都の神殿でも手が出せないほどです。そのため、神殿に潤沢な金が入る大国、もしくはポルペアのような経済的に余裕のある国ではないかと噂されています」


コーヒーを飲み終える頃、静けさで包まれていた城下に、今度は馬が疾走しながら近付いてくる音が聞こえ始めた。バーナン殿と同時に立ち上がって窓の下を見下ろせば、建物の入り口でバルジアラとエメルバ、ディスコーニとその副官達が勢揃いしていて、青碧色のマントをたなびかせる甲冑姿の2人の将軍とその副官達を出迎えた。


「私が退役する時、レイビニオンとコルゼニスはまだ腹心だったのに、今じゃすっかり大国の将軍が板についた様子。時が経つのは早いものですな」

ここに来たのは、戦場で音もなく敵を殲滅する『無音の豹』レイビニオンと、上官だったエメルバ譲りの戦略で攻め落とす『瑠璃のからす』コルゼニスだ。


レイビニオンはディスコーニよりもオレンジ色に近い金髪、ハイヒールを履いた小柄な女と同じ目線になるほどの背の高さしかなく、軍服姿は将軍とは思えないほど細身に見える。だが、誰も追いつけないほど足が速い上に暗部のように身のこなしが素早いために、こいつが戦場に来ると、常にその動きを視界に捉えていなければ、あっという間に姿を見失って距離を詰められる。
既婚者ではあるが、自分のようにシェニカ様狙いで来るかもしれない。こいつの吊り上がった目は鋭い印象を与えるし、無表情で口数が少ない。それでも社交の場に行けば、目を閉じているように細めて、貼り付けたような微笑を浮かべ、付き合い程度にしか女の相手をしないから、シェニカ様が気に入る要素はないだろう。

瑠璃色の髪が中途半端にしか伸びていないのか、首の後で無理矢理一つにまとめているコルゼニスは、相変わらず前髪を目を隠すほど伸ばしている。毛量が多いのか、その髪は風を受けてサラサラと靡いているのに目が顕になることはない。視線が分からず、陰鬱な雰囲気を醸し出す根暗な奴だが、エメルバが育てただけあって策略を駆使した戦い方をしてくる。
その一方、社交の場には長い前髪を左右に分けた姿で出てくるのだが、顕になったその顔は女受けする童顔で、陰鬱な雰囲気は一気に無くなる。小顔の割に大きな赤紫の目、女のような小さな唇、美少年のように整った顔なのに、それなりの背があって、軍服姿からでも分かる厚みのある身体つきのギャップが好評らしく、国を問わずあちこちから女が寄ってきて、ダンスを踊ったり、コルゼニスの話し相手になろうと列をなす。

コルゼニスは独身だし、髪型を変えればシェニカ様に気に入られる可能性があるが、ディスコーニがその隙を与えないだろう。



耳を澄ませていると、窓ガラス越しにバルジアラの野太い声が聞こえてきた。

「長距離の移動ご苦労だった。これよりトラント国王、4人の『白い渡り鳥』様、シェニカ様、見届人を務めたキルレの連中を連れて本国に向かう。本国に戻るのは、俺とディスコーニ、レイビニオンの3人の部隊だ。コルゼニスはエメルバの指揮下で動け。エメルバ、後は頼んだ」

「お任せ下さい。本国から援軍や文官、大臣らが来るまでの間、コルゼニスと共にトラント領内の仮統治、防衛線の構築、治安の維持。それと同時に、鍾乳洞の調査や鍾乳洞で捕らえた副官の尋問、残党の調査なども行っておきます」

「トラントの残党が狙うとしたらトラント国王とシェニカ様、4人の『白い渡り鳥』様だろうが、この地の鍾乳洞に固執しているから奇襲の恐れもある。俺達は最低限の兵だけ連れて行くから、残りの兵士は存分に使え」

バルジアラが言ったように、残党の将軍がシェニカ様を再び狙ったり、トラント国王や4人の『白い渡り鳥』様を奪還しようとする可能性がある。下級、中級兵士は戦力としては心許ないかもしれないが、手駒となるから同行させて守備を固めた方が良いと判断するのが普通だ。
だが、バルジアラは『大国ウィニストラの筆頭将軍を含めた将軍3人とその副官達、選抜した兵士がいれば十分』と判断した。確かにトラントの残党は手駒の兵士を失っているだろうから、来るのは将軍や副官くらいだろう。そいつらが襲ってきても対処出来る、と言ってのける自信と実績があるのは分かるが、実力差を見せつけられているようでなんとも腹立たしく思える。


帰還の準備を整えて建物の外へ出てみれば、バルジアラとレイビニオン、2人の副官達が集まってシェニカ様を待ち構えている。
しばらくするとフードを目深に被ったシェニカ様が建物から出て来たのだが、その隣には『赤い悪魔』ではなくディスコーニが陣取っている。ディスコーニの副官達に囲まれた『赤い悪魔』は、前を歩く2人を不満そうに見ているものの、文句を言う素振りは見せない。『白い渡り鳥』様の愛人達が似たような、それ以上の憎悪を露骨に発しているのをよく見るが、この様子だとディスコーニを恋人に迎えたということだろうか。


「シェニカ、紹介しますね。こちらはウィニストラの首都まで同行するレイビニオン殿です」

「はじめまして、シェニカ様。私は将軍を務めておりますレイビニオンと申します。どうぞよろしくお願いします」

「シェニカ・ヒジェイトです。よろしくお願いします」

「ではシェニカが乗る馬まで案内します。こちらにどうぞ」

ディスコーニは、レイビニオンに背を向けて近くに控える馬の方へと歩き始めた。その場に残されたレイビニオンと副官達は、感心したような表情で顔を見合わせながら2人の背中を見送っている。この様子だと、レイビニオンはシェニカ様を狙っているわけではないらしい。
それにしても『赤い悪魔』は何をやっているのだろうか。こういう時こそ、その傲慢さを出してシェニカ様にディスコーニへの印象を悪くするように言い含めればいいものを。


シェニカ様に一言でいいから言葉をかけようと、馬の前で親しげに話す2人に近寄ろうとすると、ファズが立ち塞がった。

「キルレと分かれる分岐点まで、我々が皆様の護衛もさせて頂きます。皆様の乗る馬はあちらに連れて来ておりますので、ご案内します」



ファズに阻まれて声をかけられないまま馬に乗ると、バルジアラの部隊が先頭を切って出発し、人の往来を邪魔しないように街道から少し離れた場所を走り始めた。
バルジアラの乗る馬の後ろには2頭の軍馬がひく頑丈な屋根付きの荷台があり、その周囲を副官が取り囲んでいる。バルジアラの監視下に置いているとしたら、捕まえた『白い渡り鳥』様ではなくトラント国王だろうから、国王はそこに乗せられているようだ。
その次の隊列がレイビニオンの部隊で、その真後ろに同じ様な荷台があるから、そこに4人の『白い渡り鳥』様を乗せているらしい。
その次がディスコーニの部隊で、ファズとアクエルが先頭に立ち、その後ろにシェニカ様を挟むようにディスコーニと『赤い悪魔』が並んでいる。自分はその後ろにバーナン殿と並び、更に後ろには自分の副官達が2列に並んでいて、その周囲をディスコーニの副官の3人が囲っている。
この3人の将軍の周囲には一定間隔で馬に乗った兵士が散開して並走していて、隊列の最後尾にも兵士達の一団がいる。将軍と副官以外の兵士達の胸には、全員銅の階級章がついている。たかだか銅の階級章の兵士だからと侮っていれば、痛い目にあう可能性がある。




太陽が真上の位置から光を放つ頃、隊列は平原を流れる小川の側で歩みを止めた。
首都を出てから休憩なしで馬を走らせたから、首都の周囲にあった砂地はとうに通り過ぎ、背の低い雑草と点在するように木が生えた場所まで移動した。小川の側には大きなテントが4つ設営され、それを取り囲むように離れた場所にテントの海が出来ている。ウィニストラの3将軍と自分達が小川の側のテントで、その周辺は上級兵士達が使うのだろう。


「随分と遠くまで移動しましたね。シェニカ様がいるから休憩を増やすと思ったのですが」

「本当ですよ」

今回使っている軍馬は普通の移動に使う馬よりも足は速いが、乗り心地よりも速度に重点を置いているから、乗っているだけでも疲れただろう。こういう時に隣にいることが出来れば、マッサージをすると声をかけて良い流れにもっていけるのに。


「シェニカ様と一緒に昼食を取りたいと、伝えて頂きたい」

「分かりました」

近くに居たアヴィスにそう伝えると、離れた場所にいるディスコーニの方へ向かっていった。アヴィスから伝言を伝えられた奴は、すぐ隣にいるシェニカ様に何か喋りかけているから、ちゃんと伝えたらしい。そして返事をもらったアヴィスは、いつもと同じ無表情でこちらに戻ってきた。


「申し訳ありません。シェニカ様はお疲れですのでご遠慮下さい、とのことです」

「休憩なしで移動するから、シェニカ様は余計にお疲れになるのではないですか?」

「ウィニストラ領内に早く入るために休憩はなくて良いと、シェニカ様からご厚意を頂きました。その分、こうした休憩の時間はシェニカ様にしっかりと休んで頂きたく、我々も配慮しております。皆様のテントにご案内します」

アヴィスは、遠回しに「おたくらと昼食を共にしたらシェニカ様は休めない」と言ってきた。
思った以上の長距離移動だったから、シェニカ様が「疲れているから」と断るのは理解できるのだが、嫌味をつけて返されると腹が立ってしょうがない。
ディスコーニが世話役として堂々と独占している状況に腹を立てて動けば、シェニカ様の目や耳に入る可能性があるし、ディスコーニが良いように吹き込んでこちらが余計に不利になりかねない。


用意されたテントに運び込まれた鶏肉のソテーとおにぎり、熱すぎる野菜スープを食べ終えると、シェニカ様がいるテントを探そうと外に出た。デザインも大きさも全く同じテントが間隔をおいて3つ設置されているが、シェニカ様がどこにいるのかは見ただけでは分からない。シェニカ様の気配が読める位置まで近寄ろうと歩き出すと、小川の近くにある木の下にディスコーニの副官達が集まっているのが見えた。
そちらに注目してみれば、木から少し離れた小川の土手にディスコーニとシェニカ様が座って、川に足を浸しながら食事を取っている。『赤い悪魔』は副官達とは別の木の下に座って、頭の後ろで手を組んで幹に凭れたまま目を閉じている。

ディスコーニがシェニカ様とどんな会話をしているのかは距離があって聞こえないし、口の動きを読もうにも2人ともこちらに背を向けているので分からない。だが、肩を並べる2人は、どこからどう見ても仲睦まじい恋人のようにしか見えない。

その様子を見ただけなのに、身体に感じるそよ風に流されるように気力が失われていく。
一歩踏み出そうと思っているのに、指先一本動かせないほどの過酷な訓練を受けた後のような疲労感に襲われ、前に進もうとする足は重だるい上に、地面に縫い留められたように動かない。


「ソルディナンド様。なんだか、こう……。近寄りがたいですな」

「ただ川に足を浸しながら食事をしているだけ。なのに、なんでこう疲労感に襲われると言うか……。ガリガリと精神的なダメージを受けているのだろうか」

隣にいるバーナン殿の顔を見ると、自分のように精神的なダメージを受けてはいないようだが、困ったような表情を浮かべてポリポリと頬を掻いている。


「他の『白い渡り鳥』様達の場合、人目を憚らずに抱き着いたり、キスしたり、身体を弄り合ったりと乳繰り合っているのをよく見るのですが。それをあまりにも見慣れてしまっているから、それよりも遥かに軽めの行為に遠慮してしまうのでしょうか?」

バーナン殿の言う通り、そういう場面はよく見る。誰もが直視するのは失礼だと思って目を逸らし、「はいはい、お熱いことですね」と処理してるから精神的なダメージは受けないのだろうか?

でも、この2人は肩を並べて座り、川に足を浸しながら食事しているだけ。

直接的な接触をしていないのに、なぜいちゃつく『白い渡り鳥』様達以上に近寄りがたい空気が出て、過去から現在に至るまでの疲労感が一気に押し寄せてくるような精神的なダメージを感じるのだろうか。嫉妬深そうな『赤い悪魔』が2人の間に割り込んで、雰囲気をぶち壊してくれることを期待したが、奴を見ても一切動いていないから視界と心を遮断しているようだ。


この場にいる時間が長くなればなるほど、どんどん気力を奪われ、押し寄せる疲労感に耐えきれず今にも倒れ込みたくなる。
どうしたものかと困っていると、周囲のテントからバルジアラやレイビニオン、副官達も気配を消して出てきて、その様子を見ては誰もが顔を見合わせて、感心したような、驚いたような顔をしている。涼しい顔をしているのは、ディスコーニの5人の副官達だけだ。


「話しかけるタイミングは見つかりませんね。ここに立っていても意味がありませんし、ウィニストラの視線を集めるだけですから、テントに戻りましょう」

バーナン殿にそう促され、将軍の誇りにかけて無様な姿は晒せないと、重い足を引きずるようにしてテントに戻った。





「シェニカ、疲れたでしょう?」

ソルディナンドがアヴィスに案内されてテントに入ったのを見届けると、自分達が使うテントの横で大きく背伸びをしていたシェニカに声をかけた。


「うーん。ちょっと疲れたかなぁ」

「なら、気分転換にテントの外で。あっちの木の下でご飯を食べませんか?」

「それ、いいね!」

テントに背を向けて、シェニカと一緒に小川の側の木の下に行くと、彼女は突然すぐ脇の小川を指さした。


「ねぇ、小川に足を浸しながら食べない?」

「いいですね。気持ちが良さそうです」

自分が返事をすると、シェニカが後ろにいた『赤い悪魔』に振り向いて、ぎこちない笑顔を浮かべた。無表情の男の目にシェニカの姿が入り込んだ時、不機嫌そうな目に一瞬悲しみが滲んだ。


「ルクトも、一緒に小川に足を浸けながら食べる?」

「俺はいい」

「そう?じゃあ、テントに行ってる?」

「俺はそこの木の下で食べる」

『赤い悪魔』はそう言うと、木の下に座って幹に持たれながら目を閉じた。気配を消してはいないが、話しかけるなと言わんばかりの空気を出している。
土手に向かって歩き出すと、シェニカは困ったような表情をしながら『赤い悪魔』に小さく振り向いた。


「いいのかな?居づらくないのかな」

「彼が良いと言っているのですから、気にしない方が良いと思います。気を遣うことで、逆に彼を居づらくさせることもあります」

「そっか……」

シェニカと一緒に土手に座ると、ブーツと靴下を脱ぎ、ズボンの裾を上げて足を小川に浸した。流れる水が指の間を抜けていく感触がくすぐったいのか、シェニカは両足をもぞもぞと動かした。それを見ていた自分の視線を感じたのか、彼女はふふっと可愛く笑った。


「とっても気持ちがいいね」

「えぇ。ブーツを脱ぐだけでも開放感がありますが、冷たい水に浸すと爽快感があっていいですね。
もう少ししたら食事が来ると思いますが、ユーリは一足先にご飯にしましょう」

シェニカにクルミを渡しながらポーチに声を掛けると、出てきたユーリは自分の膝の上に2本足で立ち、クルミを持つシェニカに向かっておねだりポーズを始めた。シェニカはその可愛い動きを見ると、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「ユーリくん、クルミどうぞ~♪」

「チチッ!」

クルミをもらったユーリは、彼女の膝の上でカリカリと一心不乱に食べ始めた。シェニカはユーリの頭を撫でながら、幸せそうな穏やかな笑顔を浮かべている。ここにいると『赤い悪魔』の不機嫌な視線だけでなく、周囲の好奇の視線も感じる。でも、彼女の穏やかな表情と小川の流れる音、暖かな太陽の日差し、爽やかなそよ風、足に感じる水の冷たさを感じるだけで、自分はとても幸せになれる。


「失礼します。お食事をお持ちいたしました」

満腹になったユーリがシェニカの服の隙間から顔を出していると、ファズとセナイオルが食事の載ったトレイを持ってきた。それを受け取ったシェニカは、ふんふんと匂いを嗅いでパッと明るい笑顔を見せた。
シェニカの一つ一つの仕草が可愛くてたまらない。優しくて、可愛くて、責任感があって、真面目で、高い身分に驕ることのない彼女は、本当に天使のようだ。


「良い匂い!いっただきまーす!」

「いただきます」

シェニカは自分の膝の上に戻ってきたユーリに微笑みながら、鶏肉のソテーとおにぎりを美味しそうに頬張り、スープを一生懸命フーフーしている。そんな何気ない彼女の仕草もとっても可愛い。彼女と一緒に旅をしたら、こんな風に休憩しながら食事を取るのだろうか。

彼女は基本的に馬を使わずに歩いて旅をしているから、手を繋ぎながら歩き、その土地の風や季節を五感でたっぷり感じよう。
野宿をする時は、鍾乳洞の時のように抱き締めあって眠るのも良いし、暑い場所では彼女の寝顔を近くで見ながら別々に寝ても良いが、眠る前はおやすみのキスがしたい。それが出来たら、きっと幸せな夢が見れると思う。幸せな夢を見て目を開いたら、今度は本物のシェニカがいるなんて、なんと幸せな日々だろうか。
シェニカとの旅路を邪魔する盗賊、彼女を監視する者がいたら、さっさと退治して彼女の手を繋いでまた前に進もう。そして街についたら宿を取って、領主や町長に挨拶を終えたら一緒に街をデートしよう。行く先の街では必ず甘味処に立ち寄って、ご当地パフェを食べ歩くのもいいし、市場に行ってその場所の手軽な食べ物を食べ歩きたい。シェニカが治療院を開いている時は、彼女の邪魔にならないように近くに控え、彼女に手を出そうとする者から守る。宿では別々の部屋で休むのもいいけど、同じ部屋で一夜を明かすことが出来たら、幸せすぎて眠れそうにない。
想像するだけでこんなに満たされた気持ちになれるなんて、彼女との旅はなんて幸せと充実が詰まった時間なのだろうか。あぁ、何もかも放り出してシェニカと一緒に旅が出来たら良いのに。


そんなことを思いながら他愛のない会話をしながら食事を取る。すると、おにぎりを頬張ったシェニカの右の口の端に、1粒の米粒が離れたくないと言っているかのようにくっついている。その存在に気付いていない様子のシェニカを見ると、なんて可愛いのだろうと自分の頬も緩んだ。


「シェニカ。口の端にご飯粒がついていますよ」

「こっち?」

「いいえ、こっちです。はい、取れました」

手を伸ばし、シェニカにくっついていた米粒を取って自分の口に入れると、彼女は恥ずかしそうにはにかんだ笑顔を見せた。


「あ、ありがとう。お弁当くっつけるなんて、なんか子どもっぽいや」

「そんなことありませんよ。とっても可愛いです」

2人で顔を見合わせながら笑い合う。こんな幸せな時間が、これからもずっと続くといいのに。
彼女は色んな人と接してみようと思っているから、今後は自分のように純粋に彼女を想う者も出てくるだろうし、ソルディナンドのように下心を抱いて近づいて来る者も大勢いるだろう。自分のあることないことをシェニカに吹き込んで気持ちを引き離そうとするかもしれないから、彼女に誤解されないように、今後はより一層自分の言動には注意しなければ。


人を愛することがこんなに尊く、幸せに満ちた素晴らしいことなのだと実感するだけで、どんな困難でも乗り越えられる気がする。
一緒に手を繋いで、肩を並べて歩いて、笑い合って、時間を共有して。そして、お互いの気持ちが重なって、溶け合ったら、どうなるのだろう。

その先を知る日が来ることを、シェニカの笑顔を見ながら心から望んだ。





自分の場所からは、足を小川に浸しながらメシを食ってる2人の背中しか見えないが、長い付き合いのせいか、ディスコーニの嬉しそうな感情をヒシヒシと感じる。この10年、褒めても、将軍に昇進した時も、こんなに露骨な嬉しいという感情は出さなかったのに。よっぽどシェニカ様と親しくなれたことが嬉しいのだろう。童貞の初恋が手の届かない高嶺の花だっただけに、恋人のような振る舞いが出来ることに喜びが爆発しているのだろうか。


「ディスコーニがいくらちゃっかりしていようとも、色々と経験不足だから大丈夫かと心配していたが、あの様子だと良い感じみたいだな。エニアス、お前なんでそんなに疲れた顔してんだ?」

後ろにいるエニアスを見ると、顔から表情が抜け落ちて疲労感が滲んでいる。ついさっきまで普通だったのに。一体どうしたというのだろうか。


「バルジアラ様は何ともないのですか?」

「何ともないってどういう意味だ?戦闘があったわけでもなく、ただ馬を走らせてるだけだ。これくらいで疲れるわけねぇだろ。この後も長距離を移動するんだから、今のうちに休んでおけ」

「はい……」

近くに居たニドニアーゼルに支えられながら弱々しく歩くエニアスの背中を見送ると、レイビニオンがこちらに向かって歩いてきた。


「バルジアラ様、知らせを聞いた時はまさかと思いましたが。本当にディスコーニ殿とシェニカ様が親しくなっているのですね」

「見ての通り、上手くいってるようだ」

自分の近くで立ち止まったレイビニオンは、2人を見ながら感心したような表情を浮かべていたが、その視線が木の下にいる『赤い悪魔』に移った。
あの男がシェニカ様に強姦まがいなことをしたらしいとしか知らないが、シェニカ様とは距離を置いて歩いているし、ろくに会話しない様子を見ると、2人の関係は悪くなっているようだ。それは当然のことだと思うが、あぁしてシェニカ様の側にいることを許されているということは、別れたわけではないらしい。


「いちゃついてるわけではないですが、すっかり2人の世界が出来上がってしまっていて、『赤い悪魔』ですら入り込めないようですね」

「シェニカ様は最低限の接触を好まれる方だ。折角ディスコーニに良い印象を抱いて下さっているのに、余計な動きをすれば、ディスコーニだけでなくウィニストラへの印象を悪くする可能性がある。シェニカ様の意向もあってディスコーニが世話役になっているから、シェニカ様に関することは全てディスコーニを通せ」

レイビニオンはディスコーニをライバル視している派閥の奴だが、暗部出身ということもあって目立った行動を好まない性格だ。こいつは既婚者だし、最近子供が生まれて夫婦仲も良いだろうから、ソルディナンドのようにシェニカ様に気に入られようなどとしないだろう。


「承知いたしました。あの様子だとシェニカ様も満更でもない様子ですが、ディスコーニ殿は恋人になったのですか?」

「『お友達』になったんだと」

俺がそう言うと、一瞬ポカンとしたレイビニオンだったが、すぐにプッと短く笑った。


「お友達ですか。まぁ、なんともディスコーニ殿らしい関係性ですね。ディスコーニ殿は色々と経験不足でしょうが、上手くやって欲しいものですね」

「もう様子見はいいだろ。出発まで休んでおけ」

物分りの良いレイビニオンはまだ良いが、今後開かれる晩餐会といったもてなしの場になれば、他の奴らがシェニカ様に近付こうと躍起になるだろう。筆頭将軍の自分が「ディスコーニに任せろ。余計なことをするな」と言っても、大人しくしているとは思えない。
いかにユーリがいると言っても、ディスコーニは今まで女関係の経験がないからシェニカ様を繋ぎ止めれずに、奴らの話術でシェニカ様を取られるかもしれない。心配で仕方がないが、シェニカ様が一箇所に留まれない上に、何人もの恋人や愛人を持てる特権がある以上、こういう問題はこれから先ずっと付きまとう。シェニカ様と恋人や愛人、夫という関係になりたいのであれば、あいつ自身が対処しなくてはならない。


シェニカ様に気に入られるためには、ディスコーニの何を気に入ったのかが重要だと思うのだが、奴を10年使いまわして、性格をよく知っている俺でも謎だ。恋人の『赤い悪魔』のことはよく知らないが、あの男とディスコーニには共通点なんてなさそうだが、シェニカ様から見ればあるのだろうか。考えれば考えるだけ謎が深まる。

腑に落ちないままテントに戻ると、エニアスが暗い空気を背負って片隅に置かれた机に突っ伏している。緩く波打った黒髪が心なしか萎れているように見えて、テントの入り口までニドニアーゼルを呼び出した。


「あれはどうしたんだ?具合でも悪いのか?」

「えっと、その……。疲れが溜まっているようです」

「長距離を移動したくらいでへばるようなら、もっと鍛錬を厳しくしないといけないな」

突っ伏したままのエニアスを見ながらテントの中央にある椅子に座り、体力を増やしたり、ディスコーニのような回復力を得るようにするためには、どんな内容の鍛錬をやってやろうかと、何か言いたげなニドニアーゼルをよそに頭で色々と思い描き始めた。


◆◆◆


(後書き)

ディズの幸せオーラに対抗するために、私は中古の宇宙服を着て彼の心の中を覗いているのでどうにか無事でしたが、無防備なところに直撃を受けたソルディナンドは気力を奪われ、エニアスは傷心の傷に塩を塗るような感じだったのかダウンしました。
銀髪将軍やその他の人がなぜ無事だったのか分かりませんが、これから先、彼がまた幸せオーラを出した時には、新たな被害を生み出すかもしれません。(笑)

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