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11.怒りの矛先
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イアルの訪問を目撃し、片頭痛を悪化させてベッドに突っ伏したクレアは、どうやらそのまま眠ってしまったようだ……。
サイドテーブルには、恐らくマリンダが運んでくれたと思われるシルバーのティーセットが置かれていた。はちみつが添えられているところを見ると、恐らくこの中には、冷やされたカモミールティーでも入っているのだろう。
クレアは、ややシワが付いてしまったドレスを伸ばすようにして立ち上がると、もう日がすっかり落ちているようで、窓の外には紺色の空の境界線辺りにうっすらと夕焼けの赤色が差している事を確認する。
ふと右手で頬に触れると、どうやらシーツの痕が付いているようだ。
「あの後、イアルはどうしたのかしら……」
眠った事で片頭痛はすっかり治まったが、直前で見た光景を思い出し、クレアは急に不安な気持ちを抱く。そのまま部屋を出ると、ちょうどクレアの様子を確認しようと、こちらへ向かっていたジョルジュに出くわした。
「クレアお嬢様! もうお加減はよろしいのですか?」
「ええ。眠ったら大分良くなったわ。ジョルジュ、ありがとう」
「それはよろしゅうございました」
「ところで……あの後、ジェラルド様の接待はどうなったの?」
「ご安心くださいませ。すぐに旦那様が来てくださいましたので。その後、イアル様もお見えになられたので、ティアラお嬢様も大人しく自室の方で過ごされておりましたよ?」
その話を聞いて、クレアがホッと胸を撫でおろす。
「そう。良かった……」
「どうやらジェラルド様は、ティアラお嬢様にとって理想の塊である男性像の様でございますね……」
「そうみたい。全く困ったものだわ……」
それでもイアルの訪問があれば、そちらを優先させたティアラの行動に安堵したクレアだったが……。
翌日、このティアラが全く懲りてない事を思い知らされる。
昨日のクレアの体調不良によって代理で対応してくれた父から、本日昼過ぎにそのジェラルドが、クレアの様子を心配して訪問する事を聞かされていた。
その為、クレアは先程からずっと自室で、ジェラルドの到着の知らせを待っているのだが……何故か一向にその知らせがクレアの許には来ない。
ジェラルドに提示する為のハーブ園についてまとめた資料の精査もすっかり終わってしまった。
不審に思ったクレアがその事を確認しようと部屋を出ると、ちょうど階段を降りようとしていたマリンダが、そのクレアの姿に気付く。
「クレアお嬢様!? もうお加減はよろしいのですか?」
「お加減? 片頭痛なら昨日しっかり寝た事で、もうとっくに治まっているのだけれど……」
「まぁ……。ですがティアラお嬢様が、昼食後にクレアお嬢様は起き上がる事も出来ない程、酷い頭痛をまた発症されたと。ですので、お見えになったジェラルド様は、ご自身がご対応されると……」
その話を聞いたクレアは、あまりの話に瞳を大きく見開いて唖然とする。
「なんですってぇ!? ティアラは今どこに!?」
「30分程前からお庭の方で公爵様のご対応をされておりますが……」
それを聞き終わらない内にクレアは、急いで庭の方へと向かおうとする。
しかし、そんなクレアの目の前にイアルを案内しながらジョルジュが現れた。
「イアル!? ど、どうしたの? 確か昨日も来ていたと聞いたのだけれど、今日もティアラに会いに来たの?」
やや引きつった笑顔でクレアが問うと、イアルがゆっくりと首を振った。
「今日はティアラじゃなくて、君に会いに来たんだ」
「私に?」
「うん。少し聞きたい事があって……」
そう言ったイアルは、どこか悲しそうな笑みを浮かべる。
その表情にクレアは、やや嫌な予感を抱く。
「ならば客間の方で……」
そう言いかけたクレアだが、今そこにイアルを案内してしまうと、中庭でジェラルドとお茶をしているティアラ達の姿が丸見えだ……。
その事に気付いたクレアがどうしようかと迷っていると、それを察したのかイアルが困った笑みを浮かべる。
「クレア。少し聞きたい事あるだけで、そんなに長居するつもりはないから……。何なら君の部屋でもいいよ?」
そう言って目の前にあるクレアの自室の方へと視線を向ける。
「私はそれでも構わないけれど……。でも、せめてお茶ぐらいは……」
「大丈夫だよ。本当に少し……少しだけ確認したい事があるだけだから」
そう言ってイアルが、ゆっくりとクレアの部屋の方へと向かって歩き出したので、クレアもそれに合わせて移動する。幼少期から兄妹のような付き合いなので、クレアの自室にイアルが入る事は、お互いあまり抵抗がないのだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
クレアが扉を開けて入室を促すと、イアルはいつも通り中へと足を踏み入れる。
そしてそのまま、座り慣れたクレアの部屋のソファーに腰を掛けた。
クレアもそれに合わせる様に向かい側の一人掛け用のソファーに座る。
「それで……聞きたい事って何かしら?」
「実はティアラの事なんだけれど……」
その言葉にクレアが一瞬、ビクリと反応した。
すると、イアルが悲しげで困った様な笑みを浮かべる。
「ティアラは今、公爵閣下と中庭でお茶をしているみたいだね?」
「ど、どうしてそれを……」
「昨日、ティアラから聞いたんだ。君の体調があまり良くないから、代わりに自分が閣下の対応をするって嬉しそうに話してくれた」
そのイアルの言葉にクレアの顔色が悪くなる。
イアルもクレア同様、ティアラとの付き合いが長い為、彼女がどういう性格をしているかをよく知っている。
今のイアルの言葉は、ティアラがジェラルドに惹かれている事を示唆するような内容を含んでいる事を勘の良いクレアが、すぐに気付いた。
「違うの! 昨日は私、本当に片頭痛が酷くて……。それでティアラが私の事を過剰に心配してしまって今日こんな事に……」
つい先程まで、イアルが誤解している状況と全く同じ疑念を抱いていたクレアだが、今は必死にこの壊れかけている二人の関係の修復をしなければと、咄嗟にそういう言葉が出てしまった。
しかしその気遣いも虚しく……イアルが放った次の言葉は耳を疑ってしまうような物だった。
「ティアラがね。もし公爵閣下から婚約の打診があった場合、僕との婚約は無かった事にして欲しいと、昨日無邪気な笑顔をしながら僕に言って来たんだ」
そう言ったイアルの表情は、今までクレアが見た中で一番慈愛に満ちた笑みで、一番恐怖を感じる笑みだった。
イアルから放たれた妹の信じられない言葉に衝撃を受けたからなのか……。
それともイアルが、初めて見せた恐怖すら感じる優し過ぎる微笑みに怯んでしまったのか……。
クレアは何かを発しようとして、全く声が出ないという状況を初めて味わう。
そんなクレアの反応を確認するようにイアルがゆっくり、静かに言葉を続ける。
「公爵閣下は、ティアラの大好きなロマンス小説に出てくる完璧な王子様の様な素敵な容姿をなされているんだね」
その言葉にクレアの口元が、無意識にぎゅっと締まる。
「僕だってティアラとは付き合いが長いから、彼女が自分の好みの存在に出会った時の過剰な程の執着を見せる事は、ある程度理解しているよ?」
ゆっくりと、まるで歌でも紡ぐかの様にイアルがポツリとこぼす。
「そして僕との婚約も自分の好みと真逆な人物像だと思い込んでいた公爵閣下から逃げる為、承諾したという事もちゃんと受け入れているつもりだった……」
そう告げると、イアルはやや顔を俯かせた。
その様子を見ていたクレアは弁明の言葉すら発せられない程、息を張り詰めており、首筋に嫌な汗が流れるのを感じていた。
「でもね、流石の僕でも今の状況は、あまりにも納得出来ない。だからその事で昨日、少しティアラを責めたんだ。そうしたら……ティアラがこう答えたんだ」
一度そこで言葉を溜めたイアルは、スッとクレアの方に真っ直ぐ顔を向け、とびきり優しい笑みを浮かべた。
「公爵閣下がオーデント領に来た当初の目的には、ティアラに会う事も含まれていたから、それを気遣った君が荷物を取りに来たティアラに話し合いの場に同席するようにと勧めてきたって」
その話を聞いたクレアは、大きく目を見開きながら小さく震え出す。
イアルが自分達二人の事をよく知っている様にクレア達もイアルが、どういう性格なのかをよく知っている。
イアルは、本気で怒ると物凄く優しい笑みを浮かべて、ゆっくり、じっくり、諭すようにその気持ちを訴えてくる……深く静かに怒るタイプなのだ。
だからティアラがそのような嘘をついてしまった事は、分からなくもない。
いつも不満や怒りをまき散らしている人間に怒鳴られるより、普段は優しく穏やかで滅多に怒らない人間が、本気で怒っている時の方が恐ろしいからだ……。
なまじ周りの人間をいつの間にか怒らせてしまう事が多いティアラにとって、相手から本気で怒りをぶつけられる事は、ややトラウマになっている。
傍から見れば、ティアラが無意識に繰り出した不快な振る舞いが蓄積された結果なので、自業自得な状況だと言われても当たり前なのだが……。
ティアラにとっては、相手の不快になる行為だという事に気付けず、無意識でやり続けてしまっているので、限界を感じて怒りをぶつけてくる相手が、自分は何もしてないのに急に怒り出したように見えてしまうのだ。
だから本気で怒りを訴えてくる人間に対して、すぐに自分は悪くないという逃げ道を必死で探してしまう悪い癖がある。
それは誰かに責任転換をしたいという事より、相手に怒られる事に対しての過剰な恐怖心から、思わずそういう行動をしてしまうのだ。
そしてその逃げ口上は傍から見れば、すぐに嘘だと分かる稚拙なレベルの言い訳な事が殆どで、それが原因でまたしても相手を怒らせてしまう……。
恐らくティアラは、そういう理由で婚約解消する事になっても優しいイアルなら、すんなりと受け入れてくれるだろうと思い込み、悪気なく軽い気持ちで、そんな話をしてしまったのだろう。
相手の気持ちを察する事が、苦手な何ともティアラらしい愚行だ。
しかし、ずっとティアラに想いを寄せ、必死で諦めようとしながら、やっと婚約者になる事が出来たイアルにとっては、いくらティアラがそういう性格だと分かっていても許す事が出来なかったのだ……。
そんな深い怒りを訴えてきた自分に甘く優しい婚約者にティアラは、恐怖してしまい、あのような嘘を咄嗟に付いてしまった事は容易に想像出来る。
だが、責任転換されてしまったクレアの方は、正直たまったものではない。
「待って、イアル! そもそも私はお父様と一緒に必死になってティアラを閣下に会わせない様に配慮して来たのよ!? そんな事、言う訳ないじゃない!!」
イアルならティアラの性格をよく知っているはずなので、その妹の言い分は嘘だと、すでに理解しているはずだ。
なのに……目の前にいるイアルからは、全くその気配が感じられない。
その状況をまずいと判断したクレアは、ソファーから立ち上がり、必死にイアルへ自分の無実を訴える。
するとイアルは、冷たさを含む優しい笑みを浮かべてきた。
「そうだね……。確かに君はそんな事を言う人ではない。ならどうして、その時に何としてでもティアラを自室に下がらせようとしなかったんだい? 君だって、ティアラの好きな物に対する過剰な執着心は知っていただろ?」
「下がらせようとしたわ! でもあの子、ちっとも言う事を聞いてくれなくて……。あなたの方こそ、あの子がそういう性格だって知っているでしょ!?」
するとイアルがソファーから立ち上がり、必死に弁明するクレアの方へと、ゆっくりと近づいてくる。
そのイアルの動きに何故かクレアは恐怖を感じてしまい、思わず後ろへ数歩、後退ってしまった。
「もちろん知っているよ? 本気で怒られる事を過剰に恐れるティアラが、一杯一杯になって自分の保身の事しか考えられず、誰もがすぐに見抜ける完成度の低い嘘の言い訳を咄嗟にしてしまう事も……」
「だったら!!」
「でも君は、僕とティアラの仲を後押ししてくれていただろ? 君だってティアラの性格をよく分かっているのだから、もう少し彼女から公爵閣下を遠ざけるように対策は出来なかったのかな?」
「だから……その件に関しては、防ぎようが無かったと言ったでしょ!? イアル……あなた変よ? 今までのあなたならこんな理不尽な怒り方なんてしなかったじゃない……」
クレアのその言葉にイアルが、フッと小さく息を吐きながら口の端を上げる。
「確かに僕は変だ。君の妹にいい様に逃げる口実の婚約者として利用され、でもその相手が、彼女の好みの男性と分かった途端、切り捨てられる……。そういう仕打ちを何の罪悪感もなく、無邪気な笑みを浮かべてやろうとしている君の妹に深い愛情を抱いてしまったのだから……。でもそれを言ったら、君の妹も相当変だ。そしてクレア……君自身も」
そう言いながら、クレアとの距離を詰めていたイアル。
対するクレアは無意識の内に後退っていた様で、いつの間にか部屋の隅にまで追いやられていた。
「君は本当に公爵閣下からティアラを遠ざける気はあったのかな?」
「どういう……意味……?」
「だって君は、以前一時とは言え、僕に好意を抱いていたじゃないか」
その言葉で、やっとクレアはイアルが言うとしている事を理解する。
一時とは言え、婚約者であるイアルに恋心を抱いていた自分。
しかし、そのイアルの気持ちが妹にあると思い、身を引く事にしたが、土壇場になってその妹が公爵閣下という魅惑的な男性に惹かれている事を目の当たりにしたクレア。
イアルは、ティアラとジェラルドが結ばれれば、自分がまたクレアの許に戻ってくるかもしれないという考えをクレアが抱いたのではないか……という事を問い詰めてきているのだ。
そんな事を微塵も考えた事もないクレアが、必死で否定しようとする。
しかし、イアルの冷たい笑みを前にして、自分でも信じられない程の恐怖を感じてしまい、声が上手く出せない。
そもそも今のイアルは、明らかに様子がおかしい……。
そう瞬時に感じたクレアは、イアルの横をすり抜ける様に扉の方へと逃れようとした。しかし、それに気付いたイアルに思いっきり片腕を引っ張られ、後ろに倒れそうになる。
その際、サイドテーブルにクレアの腰辺りが激しくぶつかり、上に乗っていた中身が空のシルバーのティーセットが落下し、部屋中に盛大な音を響かせる。
そのままイアルによって両手を壁に貼り付けられる様な体勢になったクレアは、目の前で悲しみと絶望の表情を浮かべたイアルを恐怖を感じながら、憐れみの目で見つめ返した。
「クレア……君は本当に本心で僕とティアラの仲を祝福してくれていたのかな?」
光の無い瞳でゆっくりと口元に笑みを浮かべながら、やや首を傾げたイアルがクレアの両手首から手を放す。
しかし次の瞬間、イアルのその両手は掴む対象を今度はクレアの首へと変えた。
驚きで目を見開いたクレアの喉が、空気を吸い込む様にヒュッと音を立てる。
「お願いだ……答えてくれ……」
矛盾した事を言いながらイアルは、ゆっくりと真綿で締め上げる様に徐々に指に込める力を強めてくる……。人一倍真面目で、誰よりも優しかったイアルのその行動にクレアが、信じられない物でも見る様に更に目を見開いた。
それだけイアルの心は深く傷つき、追いつめられていた。
そしてその怒りは、何故か彼を一番深く傷付けた妹のティアラではなく、姉であるクレアへと向かってしまったのだ……。
そんなイアルの仕打ちに段々と空気の道が狭まる事を焦りながら、クレアがもがく様に必死でその指の間に自身の指を入れ、少しでも緩めようとする。
しかしイアルの指の力は、弱まるどころか徐々に込められていくばかりだ。
「イ……アル……。やめ……て……っ」
絞り出す様にクレアが懇願するが、目の前のイアルは虚ろな瞳をしたまま、じっとクレアを見つめ、更に首に掛けた手の力を強めて行く。
段々と意識が薄れて行く中で、ついにクレアの手がイアルから滑り落ちた。
視界の周りに黒い靄が掛かり始め、クレアがもうダメだと覚悟した瞬間……。
突然、部屋の扉が大きく蹴破られた。
すると、我に返ったイアルの手がクレアの首から一瞬で離れる。
それと同時にクレアの中に勢いよく空気が押し寄せ、咳き込みながらクレアは膝を折って床にへたり込んでしまった。
そして目の前では、物凄い音と共にイアルが勢いよく床に押し付けられている。
「クレア様っ!! お気を確かにっ!!」
そう自分に向って叫んでいるのは、ジェラルドの護衛のコリウスだ。
その後から、執事のジョルジュとマリンダが勢いよく部屋に入ってくる。
「クレアお嬢様ぁぁぁー!!」
悲痛な叫びを上げながら駆け寄って来たマリンダと、真っ青な顔をしたジョルジュの姿を確認したクレアは、急に目の前が真っ暗となり、そのまま意識を失ってしまった……。
サイドテーブルには、恐らくマリンダが運んでくれたと思われるシルバーのティーセットが置かれていた。はちみつが添えられているところを見ると、恐らくこの中には、冷やされたカモミールティーでも入っているのだろう。
クレアは、ややシワが付いてしまったドレスを伸ばすようにして立ち上がると、もう日がすっかり落ちているようで、窓の外には紺色の空の境界線辺りにうっすらと夕焼けの赤色が差している事を確認する。
ふと右手で頬に触れると、どうやらシーツの痕が付いているようだ。
「あの後、イアルはどうしたのかしら……」
眠った事で片頭痛はすっかり治まったが、直前で見た光景を思い出し、クレアは急に不安な気持ちを抱く。そのまま部屋を出ると、ちょうどクレアの様子を確認しようと、こちらへ向かっていたジョルジュに出くわした。
「クレアお嬢様! もうお加減はよろしいのですか?」
「ええ。眠ったら大分良くなったわ。ジョルジュ、ありがとう」
「それはよろしゅうございました」
「ところで……あの後、ジェラルド様の接待はどうなったの?」
「ご安心くださいませ。すぐに旦那様が来てくださいましたので。その後、イアル様もお見えになられたので、ティアラお嬢様も大人しく自室の方で過ごされておりましたよ?」
その話を聞いて、クレアがホッと胸を撫でおろす。
「そう。良かった……」
「どうやらジェラルド様は、ティアラお嬢様にとって理想の塊である男性像の様でございますね……」
「そうみたい。全く困ったものだわ……」
それでもイアルの訪問があれば、そちらを優先させたティアラの行動に安堵したクレアだったが……。
翌日、このティアラが全く懲りてない事を思い知らされる。
昨日のクレアの体調不良によって代理で対応してくれた父から、本日昼過ぎにそのジェラルドが、クレアの様子を心配して訪問する事を聞かされていた。
その為、クレアは先程からずっと自室で、ジェラルドの到着の知らせを待っているのだが……何故か一向にその知らせがクレアの許には来ない。
ジェラルドに提示する為のハーブ園についてまとめた資料の精査もすっかり終わってしまった。
不審に思ったクレアがその事を確認しようと部屋を出ると、ちょうど階段を降りようとしていたマリンダが、そのクレアの姿に気付く。
「クレアお嬢様!? もうお加減はよろしいのですか?」
「お加減? 片頭痛なら昨日しっかり寝た事で、もうとっくに治まっているのだけれど……」
「まぁ……。ですがティアラお嬢様が、昼食後にクレアお嬢様は起き上がる事も出来ない程、酷い頭痛をまた発症されたと。ですので、お見えになったジェラルド様は、ご自身がご対応されると……」
その話を聞いたクレアは、あまりの話に瞳を大きく見開いて唖然とする。
「なんですってぇ!? ティアラは今どこに!?」
「30分程前からお庭の方で公爵様のご対応をされておりますが……」
それを聞き終わらない内にクレアは、急いで庭の方へと向かおうとする。
しかし、そんなクレアの目の前にイアルを案内しながらジョルジュが現れた。
「イアル!? ど、どうしたの? 確か昨日も来ていたと聞いたのだけれど、今日もティアラに会いに来たの?」
やや引きつった笑顔でクレアが問うと、イアルがゆっくりと首を振った。
「今日はティアラじゃなくて、君に会いに来たんだ」
「私に?」
「うん。少し聞きたい事があって……」
そう言ったイアルは、どこか悲しそうな笑みを浮かべる。
その表情にクレアは、やや嫌な予感を抱く。
「ならば客間の方で……」
そう言いかけたクレアだが、今そこにイアルを案内してしまうと、中庭でジェラルドとお茶をしているティアラ達の姿が丸見えだ……。
その事に気付いたクレアがどうしようかと迷っていると、それを察したのかイアルが困った笑みを浮かべる。
「クレア。少し聞きたい事あるだけで、そんなに長居するつもりはないから……。何なら君の部屋でもいいよ?」
そう言って目の前にあるクレアの自室の方へと視線を向ける。
「私はそれでも構わないけれど……。でも、せめてお茶ぐらいは……」
「大丈夫だよ。本当に少し……少しだけ確認したい事があるだけだから」
そう言ってイアルが、ゆっくりとクレアの部屋の方へと向かって歩き出したので、クレアもそれに合わせて移動する。幼少期から兄妹のような付き合いなので、クレアの自室にイアルが入る事は、お互いあまり抵抗がないのだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
クレアが扉を開けて入室を促すと、イアルはいつも通り中へと足を踏み入れる。
そしてそのまま、座り慣れたクレアの部屋のソファーに腰を掛けた。
クレアもそれに合わせる様に向かい側の一人掛け用のソファーに座る。
「それで……聞きたい事って何かしら?」
「実はティアラの事なんだけれど……」
その言葉にクレアが一瞬、ビクリと反応した。
すると、イアルが悲しげで困った様な笑みを浮かべる。
「ティアラは今、公爵閣下と中庭でお茶をしているみたいだね?」
「ど、どうしてそれを……」
「昨日、ティアラから聞いたんだ。君の体調があまり良くないから、代わりに自分が閣下の対応をするって嬉しそうに話してくれた」
そのイアルの言葉にクレアの顔色が悪くなる。
イアルもクレア同様、ティアラとの付き合いが長い為、彼女がどういう性格をしているかをよく知っている。
今のイアルの言葉は、ティアラがジェラルドに惹かれている事を示唆するような内容を含んでいる事を勘の良いクレアが、すぐに気付いた。
「違うの! 昨日は私、本当に片頭痛が酷くて……。それでティアラが私の事を過剰に心配してしまって今日こんな事に……」
つい先程まで、イアルが誤解している状況と全く同じ疑念を抱いていたクレアだが、今は必死にこの壊れかけている二人の関係の修復をしなければと、咄嗟にそういう言葉が出てしまった。
しかしその気遣いも虚しく……イアルが放った次の言葉は耳を疑ってしまうような物だった。
「ティアラがね。もし公爵閣下から婚約の打診があった場合、僕との婚約は無かった事にして欲しいと、昨日無邪気な笑顔をしながら僕に言って来たんだ」
そう言ったイアルの表情は、今までクレアが見た中で一番慈愛に満ちた笑みで、一番恐怖を感じる笑みだった。
イアルから放たれた妹の信じられない言葉に衝撃を受けたからなのか……。
それともイアルが、初めて見せた恐怖すら感じる優し過ぎる微笑みに怯んでしまったのか……。
クレアは何かを発しようとして、全く声が出ないという状況を初めて味わう。
そんなクレアの反応を確認するようにイアルがゆっくり、静かに言葉を続ける。
「公爵閣下は、ティアラの大好きなロマンス小説に出てくる完璧な王子様の様な素敵な容姿をなされているんだね」
その言葉にクレアの口元が、無意識にぎゅっと締まる。
「僕だってティアラとは付き合いが長いから、彼女が自分の好みの存在に出会った時の過剰な程の執着を見せる事は、ある程度理解しているよ?」
ゆっくりと、まるで歌でも紡ぐかの様にイアルがポツリとこぼす。
「そして僕との婚約も自分の好みと真逆な人物像だと思い込んでいた公爵閣下から逃げる為、承諾したという事もちゃんと受け入れているつもりだった……」
そう告げると、イアルはやや顔を俯かせた。
その様子を見ていたクレアは弁明の言葉すら発せられない程、息を張り詰めており、首筋に嫌な汗が流れるのを感じていた。
「でもね、流石の僕でも今の状況は、あまりにも納得出来ない。だからその事で昨日、少しティアラを責めたんだ。そうしたら……ティアラがこう答えたんだ」
一度そこで言葉を溜めたイアルは、スッとクレアの方に真っ直ぐ顔を向け、とびきり優しい笑みを浮かべた。
「公爵閣下がオーデント領に来た当初の目的には、ティアラに会う事も含まれていたから、それを気遣った君が荷物を取りに来たティアラに話し合いの場に同席するようにと勧めてきたって」
その話を聞いたクレアは、大きく目を見開きながら小さく震え出す。
イアルが自分達二人の事をよく知っている様にクレア達もイアルが、どういう性格なのかをよく知っている。
イアルは、本気で怒ると物凄く優しい笑みを浮かべて、ゆっくり、じっくり、諭すようにその気持ちを訴えてくる……深く静かに怒るタイプなのだ。
だからティアラがそのような嘘をついてしまった事は、分からなくもない。
いつも不満や怒りをまき散らしている人間に怒鳴られるより、普段は優しく穏やかで滅多に怒らない人間が、本気で怒っている時の方が恐ろしいからだ……。
なまじ周りの人間をいつの間にか怒らせてしまう事が多いティアラにとって、相手から本気で怒りをぶつけられる事は、ややトラウマになっている。
傍から見れば、ティアラが無意識に繰り出した不快な振る舞いが蓄積された結果なので、自業自得な状況だと言われても当たり前なのだが……。
ティアラにとっては、相手の不快になる行為だという事に気付けず、無意識でやり続けてしまっているので、限界を感じて怒りをぶつけてくる相手が、自分は何もしてないのに急に怒り出したように見えてしまうのだ。
だから本気で怒りを訴えてくる人間に対して、すぐに自分は悪くないという逃げ道を必死で探してしまう悪い癖がある。
それは誰かに責任転換をしたいという事より、相手に怒られる事に対しての過剰な恐怖心から、思わずそういう行動をしてしまうのだ。
そしてその逃げ口上は傍から見れば、すぐに嘘だと分かる稚拙なレベルの言い訳な事が殆どで、それが原因でまたしても相手を怒らせてしまう……。
恐らくティアラは、そういう理由で婚約解消する事になっても優しいイアルなら、すんなりと受け入れてくれるだろうと思い込み、悪気なく軽い気持ちで、そんな話をしてしまったのだろう。
相手の気持ちを察する事が、苦手な何ともティアラらしい愚行だ。
しかし、ずっとティアラに想いを寄せ、必死で諦めようとしながら、やっと婚約者になる事が出来たイアルにとっては、いくらティアラがそういう性格だと分かっていても許す事が出来なかったのだ……。
そんな深い怒りを訴えてきた自分に甘く優しい婚約者にティアラは、恐怖してしまい、あのような嘘を咄嗟に付いてしまった事は容易に想像出来る。
だが、責任転換されてしまったクレアの方は、正直たまったものではない。
「待って、イアル! そもそも私はお父様と一緒に必死になってティアラを閣下に会わせない様に配慮して来たのよ!? そんな事、言う訳ないじゃない!!」
イアルならティアラの性格をよく知っているはずなので、その妹の言い分は嘘だと、すでに理解しているはずだ。
なのに……目の前にいるイアルからは、全くその気配が感じられない。
その状況をまずいと判断したクレアは、ソファーから立ち上がり、必死にイアルへ自分の無実を訴える。
するとイアルは、冷たさを含む優しい笑みを浮かべてきた。
「そうだね……。確かに君はそんな事を言う人ではない。ならどうして、その時に何としてでもティアラを自室に下がらせようとしなかったんだい? 君だって、ティアラの好きな物に対する過剰な執着心は知っていただろ?」
「下がらせようとしたわ! でもあの子、ちっとも言う事を聞いてくれなくて……。あなたの方こそ、あの子がそういう性格だって知っているでしょ!?」
するとイアルがソファーから立ち上がり、必死に弁明するクレアの方へと、ゆっくりと近づいてくる。
そのイアルの動きに何故かクレアは恐怖を感じてしまい、思わず後ろへ数歩、後退ってしまった。
「もちろん知っているよ? 本気で怒られる事を過剰に恐れるティアラが、一杯一杯になって自分の保身の事しか考えられず、誰もがすぐに見抜ける完成度の低い嘘の言い訳を咄嗟にしてしまう事も……」
「だったら!!」
「でも君は、僕とティアラの仲を後押ししてくれていただろ? 君だってティアラの性格をよく分かっているのだから、もう少し彼女から公爵閣下を遠ざけるように対策は出来なかったのかな?」
「だから……その件に関しては、防ぎようが無かったと言ったでしょ!? イアル……あなた変よ? 今までのあなたならこんな理不尽な怒り方なんてしなかったじゃない……」
クレアのその言葉にイアルが、フッと小さく息を吐きながら口の端を上げる。
「確かに僕は変だ。君の妹にいい様に逃げる口実の婚約者として利用され、でもその相手が、彼女の好みの男性と分かった途端、切り捨てられる……。そういう仕打ちを何の罪悪感もなく、無邪気な笑みを浮かべてやろうとしている君の妹に深い愛情を抱いてしまったのだから……。でもそれを言ったら、君の妹も相当変だ。そしてクレア……君自身も」
そう言いながら、クレアとの距離を詰めていたイアル。
対するクレアは無意識の内に後退っていた様で、いつの間にか部屋の隅にまで追いやられていた。
「君は本当に公爵閣下からティアラを遠ざける気はあったのかな?」
「どういう……意味……?」
「だって君は、以前一時とは言え、僕に好意を抱いていたじゃないか」
その言葉で、やっとクレアはイアルが言うとしている事を理解する。
一時とは言え、婚約者であるイアルに恋心を抱いていた自分。
しかし、そのイアルの気持ちが妹にあると思い、身を引く事にしたが、土壇場になってその妹が公爵閣下という魅惑的な男性に惹かれている事を目の当たりにしたクレア。
イアルは、ティアラとジェラルドが結ばれれば、自分がまたクレアの許に戻ってくるかもしれないという考えをクレアが抱いたのではないか……という事を問い詰めてきているのだ。
そんな事を微塵も考えた事もないクレアが、必死で否定しようとする。
しかし、イアルの冷たい笑みを前にして、自分でも信じられない程の恐怖を感じてしまい、声が上手く出せない。
そもそも今のイアルは、明らかに様子がおかしい……。
そう瞬時に感じたクレアは、イアルの横をすり抜ける様に扉の方へと逃れようとした。しかし、それに気付いたイアルに思いっきり片腕を引っ張られ、後ろに倒れそうになる。
その際、サイドテーブルにクレアの腰辺りが激しくぶつかり、上に乗っていた中身が空のシルバーのティーセットが落下し、部屋中に盛大な音を響かせる。
そのままイアルによって両手を壁に貼り付けられる様な体勢になったクレアは、目の前で悲しみと絶望の表情を浮かべたイアルを恐怖を感じながら、憐れみの目で見つめ返した。
「クレア……君は本当に本心で僕とティアラの仲を祝福してくれていたのかな?」
光の無い瞳でゆっくりと口元に笑みを浮かべながら、やや首を傾げたイアルがクレアの両手首から手を放す。
しかし次の瞬間、イアルのその両手は掴む対象を今度はクレアの首へと変えた。
驚きで目を見開いたクレアの喉が、空気を吸い込む様にヒュッと音を立てる。
「お願いだ……答えてくれ……」
矛盾した事を言いながらイアルは、ゆっくりと真綿で締め上げる様に徐々に指に込める力を強めてくる……。人一倍真面目で、誰よりも優しかったイアルのその行動にクレアが、信じられない物でも見る様に更に目を見開いた。
それだけイアルの心は深く傷つき、追いつめられていた。
そしてその怒りは、何故か彼を一番深く傷付けた妹のティアラではなく、姉であるクレアへと向かってしまったのだ……。
そんなイアルの仕打ちに段々と空気の道が狭まる事を焦りながら、クレアがもがく様に必死でその指の間に自身の指を入れ、少しでも緩めようとする。
しかしイアルの指の力は、弱まるどころか徐々に込められていくばかりだ。
「イ……アル……。やめ……て……っ」
絞り出す様にクレアが懇願するが、目の前のイアルは虚ろな瞳をしたまま、じっとクレアを見つめ、更に首に掛けた手の力を強めて行く。
段々と意識が薄れて行く中で、ついにクレアの手がイアルから滑り落ちた。
視界の周りに黒い靄が掛かり始め、クレアがもうダメだと覚悟した瞬間……。
突然、部屋の扉が大きく蹴破られた。
すると、我に返ったイアルの手がクレアの首から一瞬で離れる。
それと同時にクレアの中に勢いよく空気が押し寄せ、咳き込みながらクレアは膝を折って床にへたり込んでしまった。
そして目の前では、物凄い音と共にイアルが勢いよく床に押し付けられている。
「クレア様っ!! お気を確かにっ!!」
そう自分に向って叫んでいるのは、ジェラルドの護衛のコリウスだ。
その後から、執事のジョルジュとマリンダが勢いよく部屋に入ってくる。
「クレアお嬢様ぁぁぁー!!」
悲痛な叫びを上げながら駆け寄って来たマリンダと、真っ青な顔をしたジョルジュの姿を確認したクレアは、急に目の前が真っ暗となり、そのまま意識を失ってしまった……。
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