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【我が家の元愛犬】

63.我が家の元愛犬は状況判断も得意

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 パルマンの潜伏していた地下道を後にした三人は、再び馬に乗りリートフラム城へと向っていた。

「そういえば……アルス、お前さっきパルマン殿に奇襲をしかける時、何故王家の影に頼まなかったんだ?」
「何故って……あの状況では俺が奇襲をかけた方が一番効率が良かったからだ」
「効率~? 最優先護衛対象者のお前が一番危険な役回りをする事が~?」

 胡乱うろんな目を向けてきたロアルドにアルスが盛大にため息をつく。

「ロアは分かっていないな……。影達の本業は俺達を守る事だ。それなのに奇襲役をやらせてしまっては、俺達の護衛が疎かになる。人は二つの事を同時にこなす事は、そこまで得意ではないだろう? もし影達に奇襲役をやらせてしまったら、あいつらは俺達の安全を気にしつつ、パルマンを捕縛しなければならない。俺が奇襲をしかけた方が、あいつらは全力で俺達の護衛に徹する事が出来るから、全体的に一番効率のいい役回りなんだ」

 アルスのその話にロアルドが目を丸くする。

「お前……あの一瞬でそんな判断をして、自分が奇襲を仕掛けると言ったのか?」
「ああ。俺は影達が全力で守ってくれるから攻撃に徹する事が出来る。パルマンの捕縛に関しては、あくまでもロア主体で動く予定だったし、いざとなったら俺に防御壁も張ってくれると思ったから、俺は全力でパルマンに突っ込めたんだ」

 そのアルスの言い分にロアルドが、呆れ気味な表情を浮かべる。

「いや、それ……口で言うのは簡単だけれど実行するには、かなり肝が据わっていないと、なかなか出来ない事だぞ? しかも瞬時にその判断が出来るって……。やはりリートフラム王家の人間は、能力的にかなり秀でた人間が多いんじゃないのか?」

 しかしロアルドの考察を聞いたアルスは、何とも言えない微妙な表情を浮かべた。

「王家の血筋はあまり関係ないと思う……。恐らく、俺がそういう判断を瞬時に出来るようになったのは、そうしなければ命を落としてしまう状況が今まで多かったからだ」

 珍しく眉尻を下げながら、力無く笑みを浮かべるアルスに流石のロアルドも押し黙る。僅か7歳で、そのような判断が出来るようになってしまったアルスの幼少期は、常に命の危険に晒された緊迫した日々だったからだ。

 もちろん、その間は父フィリックスや第一騎士団長のマルコムにシークが、しっかりと守りを固めていたとは思う。だが今回の黒幕は14年間もリートフラム城内に何食わぬ顔で潜伏し、ずっと王子達の命を狙い続けていたのだ。

 それが今回、セルクレイスの光属性魔法の結界が破られていたラテール邸での襲撃で発覚した……。
 その事から暗殺を企てている首謀者は長い間、王家に仕えて自由に城内をうろついても何の違和感も抱かれない人間という犯人像が、やっと浮かび上がってきた。そして現状、その最有力容疑者候補として見られているのがパルマンである。

 だが、このパルマン犯人説に関しては、三人とも腑に落ちないと感じていた。先程から目にしてきたパルマンの生活環境や人間性から考えると、どうも犯人としては説得力に欠けるのだ……。

 パルマンの人間性から考えると、権力よりも魔法研究バカという印象が強い。すなわち、王位継承権を欲しているイメージとは、かなりかけ離れた人間性なのだ。
 だが何故か属性魔法を調べようとした際、全力で逃走した事を考えると、どうしても王家の血が入っているのではと懸念してしまう。

 それは宰相のラッセルが犯人であると考えた場合も同様である。彼もまた控えめな性格な為、権力を欲しているような印象がない。何よりもラッセルの場合、魔法能力検査で扱える属性は氷属性のみと判明している。

 現状、やっと容疑者が二名浮上したが、どちらも動機はもちろん、犯人像とかなりかけ離れた人物像なのだ。

 だが、本当に二人のどちらかが犯人だった場合、アルスはまたしても自身の身近で仕えていた人間に裏切られた事になる……。ここまで襲撃に対する耐性を身につけてしまう程、アルスを追い詰めてきた人間が、何食わぬ顔をして自分と兄の周辺を14年間も臣下として、うろついていたという事になるのだ。

 その事に気づいているのか、いないのか……。
 アルスではないフィリアナとロアルドには、その心境は分からない。
 それでも犬になる呪いをかけてきた侍従の件を未だに引きずっている様子のアルスにとって、この状況はかなり辛いのではないだろうか……。

 そう考えてしまったフィリアナは、自身を後ろから支えるように馬を走らせてくれているアルスの顔を振り返るようにじっと見上げる。

「フィー? どうした?」
「アルスは……平気なの?」
「何がだ?」
「もし今回の主犯が、今まで平然と臣下として接してきたパルマン様だった場合……深く傷ついたりしない?」

 フィリアナのその問いにアルスが驚くように、ゆっくりと瞳を見開く。

「どう……だろうな。パルマンは、ルインと違って最初からいい印象は持っていなかったから、そこまで傷つかないと思う。ただ……」

 そこで一度、アルスが息を深く吸った後、やや呆れたように盛大に吐く。

「パルマンのあの自堕落的な生活態度を目の当たりにしてしまうと、とてもではないが王位を狙っている人間とは思えない……」

 そう言い切ったアルスの言葉にフィリアナだけでなく、並走しているロアルドまでもが深く頷く。

「だが、そうなるとラッセルが黒幕というのもしっくりこない……。あいつは真面目が服を着たような人間だ。だからと言って気の弱い男でもない。父上と同じように合理的な考えでサッと判断が出来るが、それでも王族に刺客を差し向けてまで王位を狙っているという状況は、ラッセルの人間性で考えると犯人像とは、かけ離れているように思える……」

 アルスの意見を聞いた二人だが、宰相ラッセルに関しては全く接点がなかった為、どういう人間なのかあまり想像が出来ない。ただ、ラッセルが黒幕だった場合、動機が何なのか検討が付かないというところは二人にも想像が出来た。
 あれだけ国を支えてくれている人間が、王位継承権を虎視眈々と狙っているというは、どうも腑に落ちないからだ。

「やはり、二人の母親の過去を調べてみないと何も言えない状況だな……。もしそれで二人が前王の血を引いていたら、それはそれで俺達リートフラム王家の人間は、複雑な気持ちを抱くことにはなるのだが……」

 落胆するように深いため息をついたアルスは、馬の速度を徐々に緩めた。
 その事に気づいたフィリアナが前方に目を向けると、先程出発した厩舎きゅうしゃが見えてくる。

「とりあえず、まずはパルマンから何故、魔法能力検査から逃げたのか問い詰める。まぁ、逃げた原因は恐らく俺達が想像している理由だと思うが……」

 力無くそうこぼしたアルスは厩舎に到着した為、馬を止める。そして身を翻しながら馬から降り、手綱を馬の世話係に託した後、フィリアナに手を差し出した。その手を取ったフィリアナは、もう一度アルスが傷ついていないか確認してしようと馬から降りながら、その青みがかった灰色の瞳を覗き込む。
 すると、アルスが一瞬だけキョトンとした表情を浮かべた後、苦笑した。

「フィー、大丈夫だ。俺は、もう弱くないからそんな事では傷つかない」

 そう口にしたアルスだが、フィリアナにはとても大丈夫そうには見えなかった。恐らく、パルマンが魔法能力検査を受ける事から逃げた理由は、自身が二属性持ちだからだろう。
 そしてそれは、パルマンの母親が前王オレストの被害に遭い、子を孕まされた事を意味する。しかもパルマンは、伯爵家の三男であるのだから、その母親は既婚状態でオレストの毒牙に掛かったという事だ。

 アルス達が生まれた時点では、この残忍な暴君の祖父は、すでにこの世を去っていた。だが、彼が犯した罪は、被害者の存在が明るみになる度に残された子や孫に深い罪悪感を与え続ける。特に父親の非道な行いを目の当たりにしていても、当時まだ力ない幼い王太子だった現王リオレスと、王弟クレオスが抱く罪悪感は計り知れないだろう。

 現状、若い世代が学ぶ歴史学の教材に王家の恥でもある愚王オレストの暴君ぶりが、詳細に書かれているのは、当時声をあげる事が出来なかった被害者の悲痛な叫びと向き合おうとするリオレス達の決意だったのかもしれない……。

 そんな事を思いながら、城内へと向かうアルスの横にピタリと付いたフィリアナは、おもむろにその手を取る。すると、急に手を繋がれたアルスが一瞬驚くような顔をした後、弱々しい笑みを返して来た。

「フィーは本当に俺に対して過保護だな……」
「だって……今のアルス、泣きそうな顔をしているのだもの……」
「俺よりもフィーの方が今にも泣き出しそうな顔をしているぞ?」
「そんな事ないもん……」

 フィリアナが否定しながらフイっと視線を外すと、その反応に何故かアルスが表情を緩ませる。

「フィーは、かわいいなぁー」
「なっ、何を急に――――っ!」

 急に赤面するような事を口にしてきたアルスは、先程フィリアナから繋がれた手に更に指を絡ませ、嬉しそうにブンブンと腕を振り始める。そんな二人の様子を後ろから見ていたロアルドが、呆れ果てた顔をしながら口を挟んで来た。

「おーい。二人共、僕の事を忘れたかのように二人だけの世界に浸るのは、やめてくれないか?」
「に、兄様まで! そんな世界になんて浸っていないでしょう!?」
「俺は流されただけだ。最初に俺を甘やかして来たのはフィーだからな!」
「アルスも酷い! 私、そんなつもりで手を繋いだ訳じゃないのに!」

 アルスとロアルドの両方から揶揄われたフィリアナが、キィーっと怒りを訴える。すると、一番近い城内への入り口からシークが姿を現わした。

「アルフレイス殿下、おかえりなさいませ。今からパルマン殿が監禁されているお部屋へご案内を……って、こんな時に何を呑気にフィーと仲良く手を繋いでいらっしゃるのですか……? 緊張感ゼロですか?」
「俺からじゃない。フィーから繋いできてくれた!」

 そう言ってアルスは、嬉しそうにシークへ見せつけるように再び繋いでいる手を大きく振る。そんな子供っぽい自慢をしてきた主君に白い目を向けたシークは、盛大にため息をついた。

「はいはい。良かったですねー。とりあえず、今はパルマン殿のもとへご案内いたしますね」
「ああ。頼む。それで今の状況は?」
「現在パルマン殿の尋問は、セルクレイス殿下とフィリックス先輩が行っております。あと念の為、マルコム騎士団長もセルクレイス殿下の護衛として同席してくださっています。尚、容疑内容は『王族の暗殺未遂』……ではなく、『闇属性魔法を使用し、城内に魔獣を招き入れ暴れさせた』という名目で、属性魔法の検査を受けるよう説得している最中です」
「説得している……?」

 シークの説明を聞いたアルスが怪訝そうに片眉をあげる。

「説得などせず、羽交い絞めにして属性魔法を調べられる水晶に触れさせればいいのではないか?」
「流石、狂犬王子! 力ずくで強引に検査を受けさせようという発想をなされるとは!」
「お前、いちいち俺をいじらないと気が済まないのか……?」
「申し訳ございません。殿下が本来の姿を取り戻された事が嬉しくて、つい……」
「明らかに俺を弄って楽しんでいるじゃないか! まぁいい……。それで何故、説得なのだ?」

 アルスのその問いにシークがバツの悪そうな笑みを浮かべた。

「パルマン殿は、容疑者というよりもあくまでも重要参考人という扱いになる為、検査関係は強要出来ないんですよ……。その為、ご本人の任意で受けて頂くしかないんですよね。ですが……現状はそれを頑なに拒否されているという状況です」
「なるほど……。そうなると、やはり属性魔法に関してパルマンは、何か秘密を抱えている感じだな……」
「ええ。セルクレイス殿下も同じお考えです。ですが、こればかりは尋問中の人権問題が関わってくるので、容疑に対してこれと言った証拠もない状態で検査を強要させる事はかなり難しいかと……」

 そこまで状況説明をしたシークは、悔しそうに押し黙る。
 すると、アルスが顎に手を添えて少し考える仕草をした後、口を開く。

「なるほど……。ならば、パルマンを別件の容疑者として魔法能力検査を受けさせればいいという事だな」
「また適当な事をおっしゃって……。そんな都合のいい案件があるとでも?」
「ある」

 そう言ってアルスは自分の懐から、先程パルマンの隠れ家的な地下道で回収した持ち出し禁止の闇属性魔法について書かれた本を取り出す。

「これは本来、王立図書館所蔵の持ち出し禁止の厳重管理対象の本だ。先程パルマンを捕縛した場所で見つけた。この本を発見した部屋は、恐らくパルマンが設置したと思われる魔法錠で扉が施錠されていた。すなわち、パルマンは王立図書館所蔵の貴重な本を盗んだ容疑者というわけだ。この件に関しては、別の状況証拠……主に魔道具研究費用の不正流用で作られた魔法錠の件から本の窃盗犯は、ほぼパルマンだと確定する。ならば、犯罪者に対する権限でこちらが強制的に魔法能力検査を受けさせる事が出来るよな?」

 そう言って意地の悪い笑みを浮かべたアルスにシークも同じ様な表情を返す。

「流石、殿下! 幼少期の頃に惜しみなく発揮されていた悪知恵は、今でもご健在のようですね!」
「悪知恵って言うな! いいから、さっさとパルマンのところに案内しろ!」

 褒める気が一切ないシークに抗議したアルスは、フィリアナと手を繋いだまま、苦笑気味のロアルドと共にパルマンが尋問を受けている部屋へと向かった。
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