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第二部 第三章
穴に入れる
しおりを挟む蔵の薄い闇でさえシシィの白い肌を覆うことは出来なかったようだ。シシィの体を押して、ベッドの上に座らせた。予想できていなかったのだろう、シシィはやや大きく目を見開いている。
座った瞬間に、シシィのスカートが少しめくれ上がった。太腿の白さが顕わになり、その付け根のほうまで見えそうになっていた。
シシィは慌ててスカートの裾を掴んで、膝のほうへと引っ張った。その恥ずかしがる仕草でさえも心を掻きたてる。
その服を脱がせて、すべてをこの目に焼き付けたくなった。
「シシィ、そのように隠されると余計に見たくなるではないか」
「あっ……」
シシィはスカートの裾を掴んだまま顔を伏せてしまった。アデルはシシィの頬に右手を添えて、その顔を上向かせた。ベッドの側に立ったまま、アデルはシシィの顔を、体を見下ろす。
美しい翡翠は濡れて輝き、雪の肌は夕日を受けたかのように赤く染まっている。その顔から下へ目を向けると、大きく晒された胸元が見えた。上から覗き込むと、シシィのその豊かな膨らみの上半分がよく見える。
その服を引き摺り下ろして、あの果実を思う存分に味わってしまいたい。
シシィは呼吸が定まらないのか、口を開いたまま胸を上下させている。肋骨が膨らんだり収縮したりを繰り返していた。その様は何か軟体動物の蠕動を思わせる。生々しくて、艶かしい。
新雪を前にしたような気分だった。その美しさには誰も触れたことがない。自分はその処女雪を思う存分楽しむことが出来る。
アデルは右手をシシィの頬に添えたまま、指先でシシィの耳の裏をくすぐった。同じ人間だとは思えないほど小さな頭だ。片手でその顔を全て覆ってしまえるだろうとさえ思えた。
シシィは耳の裏に触れられて肩をぴくりと跳ねさせた。
座り込んだシシィを立ったまま見下ろし、アデルはゆっくりと息を吸い込んだ。自分の心が潤いを失い、じりじりと焼けてきている。水分を失い、ぶつぶつと音を立てていた。
このままでは焦げ付いてしまうに違いない。目の前の潤いを啜り上げなければ、心が焼け付いて壊れてしまうだろう。
「シシィ、わしはもう自分で自分を抑えられそうにない」
「あっ……」
「わしの本能も、わしの心も、わしの全てがシシィを欲しがって欲しがって、壊れてしまいそうじゃ」
「あなたが、望むのなら、わたしは」
「シシィを望んでおる。シシィが欲しい」
「あっ……」
シシィの呼吸はさらに早くなったようだった。肩が上下に動き、潤っていた瞳はさらに潤いを増す。その瞳に見つめられると、自分の何もかもが吸い込まれてしまいそうだった。
息も絶え絶えといった様子のシシィが、小さな唇を開く。
「あなたになら、何をされても、いい」
その言葉で血管が沸き立ってしまいそうになった。
「例え、酷いことでも、わたしは、あなたが喜ぶのなら、わたしのすべてを、あなたに」
「そのようなことを言われては、おかしくなってしまうではないか」
「わたしのすべては、あなたのものだから」
吐息が熱く混じっていた。かろうじて細く繋がっていた理性が、千切れてしまいそうになる。底さえ見えない欲望の谷へ落ちれば、もう二度とは這い上がってこれないだろう。
まだ自分を失うわけにはいかない。シシィの言葉を真に受けては、シシィを傷つけてしまうだけだ。
抗わなければいけないと思っていても、心の奥底にいる獣は唸り声を上げて暴れまわり、柔肉を食わせろと訴えてくる。
シシィは焦点の合わない目でこちらを見上げていた。
「わたしを、もっと、あなたのものにして……、おねがい」
「くっ……」
「わたしも、あなたが欲しい」
もはや限界だった。これ以上シシィの声音を耳にすれば、理性の檻は崩れ去ってしまう。
シシィの唇に目を向ける。柔らかそうなその肉の奥に、小さな歯が覗いていた。
アデルは右手の親指をシシィの口の中へと突っ込んだ。
「んんっ」
「いかんなシシィ、そのようなことを言われれば、わしはもうシシィに壊れてしまう」
「んっ……」
シシィの小さな口の中へ、男の太い親指が無遠慮に入り込む。ぬるりとした暖かさと、舌の感触が指に伝わってきた。
べったりと濡れてゆく親指で、アデルはシシィの舌をなぞった。シシィの肩が震える。目は細められ、今にも涙がこぼれてしまいそうに見えた。
自分がまだ理性を保っているのか、それとも理性はもうとっく壊れてしまったのか、判断がつかなかった。壊れた物差しで長さが測れないように、壊れた心では何が壊れているのかを知ることは出来ないのかもしれない。
「ではまずシシィの言葉を奪うとしようか。これ以上シシィの可愛い声を聞いていては、わしはもうおかしくなるでな」
シシィの舌が、親指に絡み付いてきた。まるで放り込まれた飴玉を舐めるかのように、シシィの小さな舌が男の親指にまとわりつく。舌の先で指先をなぞり、唇をすぼめて吸い上げてくる。
熱い唾液が指を覆う。シシィは無遠慮に突き入れられた男の指を丹念に舐め上げているのだ。
頭の中身がぐらぐらと揺れ始める。息が荒くなりそうで、アデルは大きく息を吸った。
「人は言葉で物を考え、そして口から考えを出す。今のシシィは言葉を奪われておる。ほらシシィ、わしの可愛いシシィ、言葉をなくして、段々と考えられなくなってきてるであろう」
シシィは涙目のままこちらを見上げていた。ベッドの縁に腰掛け、両脚をぎゅっと強く閉じている。身を捩じらせ、太腿を擦り合わせていた。
耐え難い何かに耐えるため、両脚を閉じているが、それでも耐え切れないようだ。
その脚につい視線がいってしまう。
「いかんなシシィ、そうやって耐えようとしておるのはいかん。ほらシシィ、その脚を開いてみなさい」
「んんっ?!」
シシィの瞳が大きく開かれた。両手でスカートの裾をぎゅっと掴み、さらに強く太腿を閉じてしまう。
「わしの可愛いシシィなら言うことを聞いてくれるはずじゃが」
「んっ」
シシィの瞳がさらに濡れてゆく。困惑の中で、シシィがその涙目に言葉を乗せてきた。だが、受け入れられない。
アデルは指先でシシィの耳に触れた。シシィの肩が持ち上がる。
「シシィ、わしの指をもっと強く舐めてくれ。いつもは冷静なことを言うその舌で、理性を吐き出すその口で、わしを喜ばせてくれ」
そう告げるとシシィは目を閉じてさらに舌を絡ませてきた。じゅぱっ、と音がして親指が吸われる。シシィはおしゃぶりを与えられた乳児よりも熱心に吸いたててきた。
触れることさえ出来ないような美しい少女が、自分の指を口に含んでいる。しかも舌を絡ませ、唇で挟み込み、吸いたててくる。
そんなことをされたら、男はどうなるだろうか。もしもシシィのように可憐な少女が、自分の指を含んで舐め回したなら、男はどんな気持ちになるか。
「おお、わしの言うことを聞いてくれるとは、なんと可愛らしい」
そう告げると、シシィは両手でこちらの手首をそっと掴んだ。そんなシシィを見下ろしていると、心臓の鼓動がどんどん速くなってゆく。
シシィはもじもじと太腿を擦り合わせていた。体が自然と捩れるのか、背を反らしている。
「わしはシシィにもっと可愛くなってほしい。ほら、脚を開いてくれるな?」
「んんっ」
シシィのくぐもった声が指先にくすぐったい。
「シシィ、もっと可愛くなってくれ。わしを喜ばせてくれ」
そう告げると、シシィの靴がじりじりと離れ始めた。それでもなお、シシィはまだ膝を合わせたままだ。極度の内股になって、シシィは翡翠の瞳で哀願するように見上げてきた。
「そのように力を入れていてはいかん。もっと力を抜いて、膝も開いて」
シシィはついに膝を離し始めた。片手でスカートの裾を押さえ、下着が見えないように気を使いながら足を開いてゆく。
白い太腿が先ほどよりも大きく晒された。アデルは半歩進み、自分の脚をシシィの脚の間へと滑り込ませた。もしシシィが脚を閉じようとしても、自分の脚が邪魔になって閉ざすことは出来ないだろう。
ほんの少し近くなって、アデルは優しい声音で語りかけた。
「おお、シシィが可愛すぎてわしはもう耐え切れそうにない」
「んっ」
シシィはスカートの裾をベッドに押し付けるかのようにして、腿の付け根を隠していた。そんな仕草もたまらない。
真上から見下ろすような格好になり、アデルは右手でシシィの顔を上へと向けさせた。指を咥え込んだままのシシィはもはや息も絶え絶えといった様子だ。
シシィの呼吸が間に合わないせいで、右の親指はシシィが呼吸する度に暖かさと冷たさを交互に味わっている。
唇の間から唾液がこぼれて、シシィの細い顎へと伝っていた。その先で雫になり、ぽたりと胸の上に落ちる。その雫は胸の谷間へと吸い込まれていった。
もう我慢の限界だった。
アデルは左手をシシィの首の後ろへと回した。それから自分の口をシシィの耳へと近づける。
ふわふわした金髪の中に、小さな耳が見えた。その穴へと向かって、アデルは低い声で囁きかける。
「シシィ、わしはもう、耐えられん」
「んん」
シシィの体がぴくぴくと跳ねる。背をさらに反らし、脚をびくっと痙攣させていた。
このまま押し倒してしまおう。
「わしの可愛いシシィ、愛しておる。もはやシシィへの想いは止められん、シシィをすべてわしのものにする」
そう言い終えてすぐ、アデルはシシィの耳に舌を這わせた。耳朶を舐め上げ、舌の先でシシィの耳の穴を突く。
シシィの体が震える。ガクガクと痙攣し、背筋がびくびくと律動する。両脚が跳ね上がる。
だが、その動きもぴたりと止まった。
シシィの全身から力が抜け、アデルの体へ向かってぐったりと倒れこむ。アデルはシシィの首に回していた手でシシィの肩を支えた。
顔を離してシシィの顔を覗き込む。シシィの目は閉じていた。もはや口を閉じることも出来ないのか、唇はだらしなく開き、そこからぼたぼたと唾液が零れてゆく。
アデルはシシィの口から指を引き抜き、シシィの唾液を自分の服で拭った。シシィの体を支えながら、シシィの顔を覗き込む。
「シ、シシィ?」
問いかけても反応はない。
シシィは気絶していた。
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