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第二章
脅し
しおりを挟むシャルルはまだ幼い女の子に体を向け、俸のような体をじろじろと眺め回した。
妹にそんな視線を向けられ、銀髪の少女の表情が引き攣る。妹は男の目を悦ばせるにはまだ幼すぎるし、その体は男を受け入れられるようには出来ていない。
だが変態伯はそんなことにも構わず、妹の顎に手をかけた。
「ほら、口を開けなさい」
「やっ」
「いいから、口を開けなさい。偉い人の言うことは聞かなきゃダメだろう」
妹はそう言われて口を開いた。シャルルは顎を掴んだまま妹の顔を見下ろしている。
「舌を出しなさい。ベロを見せるように、そう、いい子だ」
シャルルはにやにや笑いながら妹の小さな口を覗き込んでいる。
「はっはっは、小さなお口だなぁ。これじゃ俺のは入らないか」
その発言に少女の背筋が凍る。
少女はシャルルの足元に膝をついた。両手を組んで、哀願するようにシャルルを見上げる。
「お、お許しください! どうか、お許しください!」
「許す? 何故?」
「お願いします。妹はまだ十歳なんです。伯爵さま、お願いします」
そう頼んでみたが、シャルルは意に介した様子がなかった。シャルルが柔和な笑みを浮かべたまましゃがみこむ。
それで跪いた少女と視線の高さが合った。
「ほう、十歳か。確かに、胸もまったく無いな、ぺったんこだ」
シャルルが妹の胸の辺りをまさぐりはじめた。そこには女性らしい乳房などあるはずもない。
だがシャルルは指の先をまだ幼い女の子の胸に当てて、そこで手を止めている。
少女は伏せるように頭を下げ、さらに大きな声で言った。
「お願いします! どうかおやめください、なんでもします。お願いします、どうかお許しください!」
「ははは、なんでもしてくれるのか。男に向かってそんなことを言うとは、その意味がわかっているのか?」
「お願いします、なんでもしますから、お願いします」
少女は神に祈るかのように両手を組んでシャルルの顔を見上げた。シャルルは喜びでも感じているのか笑みを浮かべている。
そのシャルルの右手が妹の胸元からわずかに下がった。妹の腹部に手で触れている。
「まだ子どもだな、お腹がぽっこりしている」
そう言ってシャルルが指先で妹の腹部をぐっと押した。痛みを感じたのか妹が呻く。
「いたっ、痛い」
「はは、痛いか、そうか」
痛みを訴えられているにも関わらず、シャルルは手を止めようとしない。少女は悲痛の中でさらに声を上げた。
裏返りそうな声でシャルルに乞う。
「お許しください! お願いします。伯爵さまだと知らなかったんです、お願いします。なんでもしますから、どうか妹だけは」
「随分と妹が大事なようだな。うむ、麗しい」
シャルルの左手がすっと伸びて少女の胸に触れた。シャルルが左手で少女の乳房を弄ぶ。
そうやって左手で少女の乳を揉みながら、シャルルは妹のスカートの中に右手を差し入れた。シャルルの手が妹の足に触れ、それが太腿へと伸びてゆく。
「はっ、俸みたいな足だな」
シャルルは妹の足を撫でさすり、嘲るようにそう言った。妹は何か痛みを感じているのか、今にも泣き出しそうな顔をしている。
それでも泣いてはいけないと思っているのだろう。何が起こっているのかはわからないが、姉の姿を見て何かを察している。
しゃがんでいたシャルルだったが、二人から手を離してゆっくりと立ち上がった。それから後ろにいた兵士に声をかける。
「おい、紙とペンを持って来い。なんでもいい」
その命令を受けた兵士が短く返事をして、少し離れた場所に停まっていた馬車へと向かった。
シャルルは視線を少女に戻し、その小さな体を見下ろす。
「なんでもすると言ってくれたな」
「は、はい……、だからどうか、お許しください。顔を殴った非礼は詫びます。だからどうか、妹だけは」
「さて、どうしようか。俺に危害を加えたのだから、それなりの罰は受けてもらわなければな」
「お、お許しください。知らなかったんです」
兵士から紙とペンを受け取り、シャルルが何かをさらさらと書き始めた。
そうやって手を動かしながらシャルルが言う。
「なんでもする、か。君が知っているかどうかは知らないが、俺は巷では変態伯なんて呼ばれててな。いい女を見ると我慢が出来ない。女を思うがままに扱うことに快楽を覚えるんだ」
「あ、ああ……」
「そんな相手になんでもすると言うとはな。だがその言葉通り、俺の命令には従ってもらおう」
「うう……」
少女は地面に膝をついたまま顔を歪めた。今にも涙がこぼれそうになる。それでも泣くのだけは嫌だった。
どうしてこんなことになっているのだろう。目の前の伯爵とやらは見た目も良いし、女たちに人気もあるようだった。
自分のような乞食も同然の女などの相手をしなくても、女には困らないはずだ。きっと嫌がる相手を陵辱するのが好きなのだろう。
どうしてこんなことに。もう十分すぎるほどの絶望の中にいたのに、神はまだ自分に辛苦を味合わせようというのか。
シャルルは書き終えたのか、ペンを後ろに控えていた兵士に渡し、紙を自分に見せ付けてきた。
少女がそこに目を向ける。長々と何かが書いてあるが、一番上に大きくこう書いてあった。
IN NOMINE MARCHIONIS PUELLAE HAE BENE TRACTANDAE SUNT.
そこに書かれた文字を見ても、少女には意味がわからなかった。
シャルルが尋ねてくる。
「読めるか?」
「いえ」
少女が首を振ると、シャルルが頷く。
「だろうな」
当然のようにシャルルがそう言った。インクを乾かすためか、シャルルが紙を小さく振る。
それを見ながら少女は歯を噛み締めた。文字を読めるようになるほどの教育は受けていない。そんなものはごく限られた一部の金持ちにしか許されていないのだ。
知能の無さを嘲られたように感じられて、少女は悔しい気持ちでいっぱいになった。自分だって機会があれば読み書きの勉強がしたかった。しかしそんな環境にはいられなかったのだ。
シャルルが紙を差し出してくる。少女は両手でそれを受け取った。
頷いた後で、シャルルが言う。
「なんでもすると言ったな。ならば俺の命令に従ってもらおう。今から言う場所に行け、もし行かなければ……、妹の命は無いものと思え」
「ひっ……」
明確な脅しに、少女は息を飲んだ。
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