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僕よりあいつの方が好きだよね…

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僕には好きな人がいる。その人を好きになったのは、とある日の出来事だった。
僕はその日、忘れ物をしたのだ。次の授業にどうしても必要なもので、とても困っていた。
「あの……」
そんな時に声をかけてきたのが彼女だ。彼女は同じクラスの子であり、少し大人しい性格をしている女の子だった。
「これ……どうぞ」
そうして必要だったものを貸してくれたのだ。その時から僕の頭は彼女のことでいっぱいになっていた。少し優しくされただけなのに、不思議なものだ。それからというもの、彼女と話す機会も増えていき、次第に好きになっていった。だけど、なかなか思いを伝えることが出来ずにいた。
その子は、あまり社交的な人ではないので、一人でいることが多かった。そのため、僕が大抵の話し相手となることが必然的に多くなった。あまり喋らない彼女だが、時折見せる笑顔と、かわいらしい声が僕にとっては最高だった。そんな彼女が大好きになった。
しかし、今日は何やら彼女が他の人と話している声がする。気になって見てみると、そこには一人の男の子と彼女がいた。彼は確か……隣のクラスの子で名前は確か……高橋くんと言ったかな? 二人は楽しそうに会話をしていて、何とも言えない気持ちになる。こんなにも近くにいるはずなのに、遠く感じてしまう自分が嫌で仕方がない。どうしてこうも上手くいかないんだろう……。
いつもは控えめな彼女があんなに愉快そうに笑っている。そして、それを隣にいる彼が見ている。
僕だって君と話したいのに……なんで僕じゃないんだよ! 悔しくて悲しくて……嫉妬心で狂ってしまいそうだ。今すぐにでも二人のところへ行って、…という衝動に駆られる。ダメだ。僕は何を考えているんだ……そんなことしたら彼女を困らせるだけだ。
「うん。じゃあまたね!」
そんな明るい声出せるんだ…彼女が僕の前以外でもそんな風に笑うのかと思うと胸が苦しくなる。きっとこの痛みはしばらく続くだろう。それでも、いつかはこの想いを伝えよう。それまでは彼女に気付かれないようにしなければ……。…………ってあれ? どうして彼女はこちらに向かってくるんだろう? まさか僕に会いに来てくれたとか!? それはそれで嬉しいけどさ……
「えっと……何か用?」
「いえ、特に用はないんですけど……」
「そっか……」
心なしか僕の前では冷たい気がしてきた。まぁいいか……今は二人きりだしね。
「あの……ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」
「ん? なにかな?」
やっぱり彼女の口から出る言葉は全て愛おしい。
「その……さっきの人と、仲いいんだ…」
「まぁそれなりには……仲良くさせてもらってるよ」
「そうなんだ……」
ちょっと恥ずかし気に、目をそらして言っているのが分かる。あぁ、悔しい。羨ましい。なんで、僕のところに来ないんだろう。どうして、君の目に映るのは彼なんだ。……そんなこと言ってもしょうがないんだけどさ。
「ねぇ、もし良かったらこれから一緒に帰らない?」
これは賭けだ。ここで断られたら諦めようと思っている。だからどうか断らないで欲しい。
「別に良いよ」
「ありがとう!」こうして、二人で帰ることになった。まだチャンスはあるはずだ。このまま諦めたくはない。たとえフラれたとしても、せめて告白だけでもしたい。僕の気持ちを知ってほしいから……。
そんなことを考えているうちに学校を出る。もう少しで分かれ道に差し掛かるところで、僕は勇気を振り絞った。
「あのさ……、話があるんだ」
「分かったわ。何の話かしら?」
「その前に一つ聞いても良いかな?」
「どうぞ」
「君は彼のことが好きなのかい?」
「っ!!」
図星だったようだ。顔が赤く染まっている。それが何よりの証拠なのだけれど、あえて言わなかった。
「そうよ。悪い?」
やっぱりあいつのこと好きだったのか。分かってたけどさ……。
「悪くはないけど……少し意外だなって思って。君なら他にもっといい人いるんじゃない?」
「あなたには関係ないでしょう?……それと、私が好きになるのに理由なんて要らないと思うのだけど?」
「確かにそうだね……」
「そういうことだから、もう話は終わりにしてもいいかしら?」
「待ってくれ!……最後にこれだけは言わせてほしいんだ」
「なにかしら?」
「僕は君のことが好きだ。友達としてではなく、異性として」
ついに言った。今までずっと隠していた感情を、彼女にぶつけたのだ。
「ごめんなさい……。あなたの気持ちには応えられないわ」
「そっか……振られちゃったか。残念だけど仕方ないか……」「ごめんなさい……」
「謝らないでくれ。むしろ感謝してるくらいだよ。こんなに素敵な人に恋をして、失恋できたんだからね」
「そう言ってもらえると助かるわ……」
「じゃあ、僕はこれで帰るとするよ。」
僕はそういいつつう、走りながら涙を拭うのだった。
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