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夜会

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「大丈夫ですか?今下ろしますね」
 やっと着いたらしい。カーテンフードが取られた。視界が見えるっていいわー。まぶしい。
 ここはどこかの部屋みたいだけど。たぶん、セリカ王女の部屋、ではない。なんか賓客用にしては小さいし、地味だ。
「ありがとうございました。腕、大丈夫ですか?」
 明日は筋肉痛になるよ?
「腕ですか?大丈夫ですよ?今、馬車を呼んでいます。ここはセリカ王女様の隣の控え室です」
 まさかの控え室。普通の部屋でもないのか。小さいと思って悪かった。
「侍女の部屋は?」
「現在セリカ王女様の許可の元に捜索中ですが、何も出てきていません」
 一つでも何かヒントになるものが見つかるといいな。
 帝国は無関係だろう。それにこれ以上他国に深く介入できないはずだ。
 やはり王国側で何かがあったんだ。
「お茶を入れましょう」
 助かります。まだちょっとフラフラするので。
 カーテンを簡単にたたんで、イスに置く。
「あのセリカ王女様は、自分の部屋に?」
「身支度を整えておられるかと」
 え、ドレスに傷つけちゃった?ドームのバリアがあるから大丈夫だったと思いたい。また賠償を思い出してしまった。
「失礼致します。セリカ王女様がいらっしゃいました」
 扉の向こうから声がかかった。
「わかりました」
 ガーゼイが扉へ向かった。これは、また誰がついてくるパターン?扉から視界に入らない角度の場所ってどこだ?
 と探していたら、入ってきたのはセリカ王女のみだった。お付きの人はいないらしい。
 扉は少し開いたままだが。貴族って面倒くさい。
「先ほどのをかけてくれませんか?」
 私はうなづいて『サイレント』をかけた。
「皇族付きの侍女なので安全です。時間は少しだけですが」
 一国の王女が一般人と部屋で二人きりで話すなんて、普通ないよね。しかもここは皇宮だし。
「えーと、私も色々と聞きたいことがあります。セリカ王女様はいつまでここに?」
「三日後に発ちます」
 うーん。
「明後日くらいにセリカ王女様とコンタクトを取ることは可能ですか?」
 ガーゼイに聞く。
「事件のことで、と言えばおそらくは」
 じゃあ、その時に魔道具を渡してもらうか。ぎりぎりになってしまうけど。
 このままじゃ不安なんだよね。あの時ああしておけばよかった、なんて後悔はしたくない。
「帰ったら、アーデルたちとは会えるんですよね?」
「はい」
 少しためらってから答えた。なら、少しは安全なのかな。まだ会える手段があるというなら。
 セリカ王女が隔離されてるわけ、ではないのか?それに近いのかもしれない。
 ガーゼイがいる前で、国の事情はセリカ王女だって話せないだろうし。
「カヒリをどうぞ。私のことはお構いなく。外に出ますから」
 ほんと、気遣いのできる男だよ。
 あ~カヒリのいい香り~。この香りにいやされる。脳がシャキッとする感じがする。思いこみ、大事。
「お気遣い感謝します」
「とんでもない。ただし、10分程しかありません。馬車の迎えがきますから」
「了解です」
 ガーゼイが扉の向こうへ消えていった。
「で、どういう状況なんですか?王位でもめてるとか?」
 国がもめてる、ていったらよくあるのが後継者争いだよねぇ~。
「元々、今の王は国王には向いておりません」
 おっとー。実の父親だよね?まあ、あの王は実権握ってなさそうだけどさ。どうでもいい感があったし、周りにまかせきりな雰囲気だったよねぇ。一般人の私ですら気づいたくらいだよ。
「次の王は決まってますか?」
「王太子の兄がおります」
 あ、やっぱりいたんだ。
 じゃあ、安泰では?今を乗り越えて世代交代すれば、あの国もましになるんじゃないの?時間はかかるだろうけど。
 それにしてもそんな不穏な噂あったかなぁ。さすがにディタだってそれくらいは知ってたと思う。
「兄は実力も臣下の信頼もあります。わたくしの実兄です。嫁いだ姉と二番目は各々別の妃となります」
 三人の奥さんいるんだ。その人数は少ないのか多いのか、どっちだろう。そういえば帝国には側妃いなかったような。表に出てない、なら知らないかもだけど。
 二番目、って言い方。問題起こしたやつじゃないか。
「兄は、他国へ留学中です。これも仕組まれていたことだったのですけれど」
 は?いきなり陰謀話が出てきた。
「その兄がもうすぐ帰国します。それまでに次の王位につきたい二番目が」
 姉と呼びたくないのかな。あはは。
「まって。女性王位はあり?」
「なくはありません。過去に存在したようです。退位期間が短いですが。正しくいうなら、実権を握りたいのは二番目の伴侶となる一族と継母の一族ですね」
 複雑になってきた。
「以前はお互い足をひっぱり、ええ牽制しあって均衡が取れていたのですが。それが」
「結託して力を持ってしまった、と」
 やっかいなことになってしまったというわけだ。
「はい。よい国となるならよいのです。兄もそう思うでしょう」
 うーん、今を見ていたら今後よい国へむかっていく、というようには思えないな。
「王は二番目の母を?」
「はい。わたくしたちの母は、小さい頃病で亡くなっております。嫁いだ義姉の母は、離婚しており国にはおりません。その方は好きだったのですが」
 後半小さい声でつぶやいた。
 離婚できるんだ、王族って。よっぽど嫌だったんだね。
 そこは毒殺とかドロドロしてなくてよかったわ。
 王よ、言いなりはどうなのよ?そこは責任もって治めるのが王族としての生き方でしょうが。
「わたくしがいなければ、兄は帰国しないかもしれません。元々王位に固執しているわけではありませんでした。それに、留学先でその恋人をみつけたようなので」
 お、う。今度はラブストーリー展開になった。
「その恋人が、王女殿下なのです。わたしくしはまだお会いしたことはないのですが、とてもできる方だと聞いています」
 その国は王女が女王となって治めることができる、てことか。
 あー。敵からしてみれば、「おまえそっちで結婚して戻ってくんなよ」て感じ?
 王太子、とはいえ国民にお披露目はしていないらしい。
 普通、お披露目したら『王太子』て肩書きが周知されるんじゃなかったっけ?適当な国だな。だらしない。
 それとも敵に阻止されたのか?それなら問題だ。
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