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しおりを挟む慌ただしい。仕方ない、二日も寝込んでいたから、ていうのはわかってる。だが。ああ、もったいない!市場にもまた行きたかったのに。店主さん戻ってるよね?お米がー。ちょっと寄ってもいいかなと頭の中をかすめたけど、絶対反対されるだろうし、大騒ぎになりそうなので泣く泣く諦めた。また来るからねっ絶対に。
○リーポ○ンズカバンはロックかかってるから、ディタしか使えない。部屋も自分で片づけたいし。変なのはないけど、他の人に見られるのもなんかさ。本も積んだまま。魚料理も持ち帰る予定だったのにー。
館への帰路はガーゼイが付き添ってくれた。真面目だな。
「髪、とても似合っていますよ」
ほら、もてる男はほめ言葉をまず持ってくるんだよ。
思わずヨゾンを見た。チッ。目をそらした。
お風呂あがりに、髪を切ろうと果物ナイフ(それしか切れるものが見あたらなかった)を手にしたら、ちょっとした騒ぎになってしまい、切らない方がいいだの、残った髪にも魔力が、だの。
おかしいでしょ?!あの髪型のままいろっていうの?
さわぐ男性陣(ジンガもいた)を冷めた目で見つつ、マミヤにそろえてもらったのだ。騎士隊でちょくちょく切ったことがあるらしい。
「涼しくて気に入ってます」
「よかったらこれを」
ガーゼイがくれたのは、髪飾りだった。前髪を留めてみる。
「ありがとうございます」
助かったよー。前髪は耳にかけてたけど、バラバラ落ちてくるし、どうしようかと悩んでいた所だった。後頭部で結べるほどまだ長さないし。
さすが気の利く男。
「あの剣のおかげで、命拾いしました。そのお礼がこれでは合わないのですが」
ストレングスのことか。スパンと切れたもんね、私もびっくりだよ。よほどの腕前ってことか。
いやいや、この飾りの石は宝石だよね?小さいけど純度いいよ?決してお安くないはず。
「充分ですよ」
「あなたはこの国の恩人です。感謝を」
騎士の格好で敬礼をするものだから、感動してしまった。普通にかっこいいし。それに、見送りにきた他の人も同じようにポーズとってくれたんだよ?
おばちゃん涙でちゃうよ。がんばってよかったな。うん。
館に着けば、セリカ王女自ら出迎えてくれたし。一番心配かけたよね。
「ただいま、戻りました。ご心配をおかけしました」
「本当で…すよ。戻ってきてくれて嬉しいです」
ぎゅってハグとかしてくれちゃったから、またまた感動。
アーデルに怒られるよ?と側を見れば、なんと涙ぐんでた。まじか?!主人を守った人、に格上げされたってことかしら。
着いて早々に部屋に行ったら、本がテーブルに山積みになっててびびった。目録もあった。これあの眼鏡メイドよね?丁寧な仕事で助かるわー。そのまま分類された状態でカバンに入れていく。家に図書室作れるんじゃない?いいわー。しばし夢にひたっていると、ノックがした。
「お手伝い…いらないですね」
荷物を全部カバンに次々放り込むだけだからね。
「大丈夫よ、ありがとう。マミヤの方が忙しいでしょ」
「慣れてますから」
そうか、移動任務ありだもんね。旅慣れてる人のセリフでかっこいい。一度は言ってみたいセリフだ。
「あの本、全部入ったんですか?」
「うん。読む?貸すよー」
「いや…自分はちょっと」
あ、そうだ。入れてた本を全部だして、別のロックかかってないマジックバッグに読み終わった本を入れ直す。あと半分も。
「騎士隊で読んでた子たちいたじゃない?これどうぞ。回し読み用ね」「えっ」
「私読まなきゃいけない本がまだまだあるからねー」
楽しみだなー。贅沢。そして同士が増えるのは嬉しい。
その日の夕飯は、お別れ会と私の快気祝いになった。ありがたや~。
カルパッチョだよー、今日もおいしいです。病み上がりとか関係ない。魔力が急になくなるって、疲労と同じ感覚だから。内蔵は別、ということで。まあ、もっと食べたかったけど、一応少しは自重したよ。明日からは馬車でずっと寝てるだけなんだけどね。ジンガからもあの飲み物を持たされたし。ぜひ、さらっと感へ改良していただきたい。
寝ているだけなんてもったいないと思ってたけど、まだ疲れがたまっていたのか、予想以上にずっと寝ていられた。二日目までは。
クーラー石を馬車にとりつけたままだったし、大きな衝撃もなく案外快適だった。
三日目はさすがにまた体の節々が痛くなってきたし、寝ていられる時間も減った。かといって、やることは特になく、魔力全回復してないから色々試すこともできない。ああ、もったいない。
実はマウシャ側からの報酬で宝石をもらってしまったのだ。本当は皇帝と謁見で褒美をもらえるらしかった。いやムリ。無理だから。そんなの求めてないし。辞退しまくってたら、宝石が来たのだ。まあ、外交のこともあるのだろうと思って、ありがたくもらっておいた。
初めは本を読んでいたんだけど、さすがにずっとは読めなかった。気持ちは先を読みたいんだけど。
ディタは、魔法使として魔力がなくなっと思われているので、なんというか腫れ物扱いなんだよね。これがさ、結構重い。そりゃ今は護衛として役に立たないかも、だけど。いや、そこらの盗賊や魔物は対処できますよ?周りは信じてくれないだろうけど。
「ディタ、起きてるか?」
ノックと控えめな声がした。
「はいはーい」
人と話すのも久しぶりじゃない?気分明るく扉をあけるとヨゾンがいた。
「少し報告がある。ん。なんだこれ、うまいな」
だーかーらー、勝手に人のおやつを取らないでほしいわ。変わらないな。仕方ないから、カバンから予備のナッツクッキーを出してあげた。でないと、私の分を全部食べられそうだからな。
「局の部下から便りがきてな」
魔導局から?帰る途中なのに?緊急かしら。
「魔石が足りなくなったんだと」
「は?そんなわけないでしょう」
ディタが抜けたからといって、他の人は仕事をしているはず。若干怪しい連中もいるけど。
「あー、前も言ったが、おまえの魔石をひと味違うんだ。魔力のこもり方がな。で、魔力の巡りがいいし、使い勝手がいいから一番人気なわけだ」
えっへん。
「おまえ、帝国に行く前から手を抜き始めたろ?」
「健全な勤務時間に戻しただけです」
失礼だな。
「かなり量が減ったらしいんだな。今、大型のを作っているのもあって、まぁそれも原因だが。で、いつ帰るのか、到着するのか、もしかして任務中に魔石を作ってないか、早急にほしいと、嘆願がきた。帰国まで待てんのか、て思うだろ?」
は、あ。
「ムリですね。そもそも作業してませんし、今後ムリですし」
「だよなあ。どうするんだ?!」
プチパニックだ。
「他の魔石でやるしかないでしょ
「もちろんしたらしい。そもそも元から使ってるしな。ただ、魔導局でも腕の立つやつほどわかってんだよ、ディタの魔石の効果を」
ほう。
「それは、光栄ですねぇ」
「で、な。魔法局に行ったらしいんだよ」
「ん?何しに?」
「おまえの魔石をよこせ、と」
どういうこと?
「嫌がらせに隠してるっと思ったらしい」
「なぜそうなる?!」
「…あぁ、うん。せっぱつまったんだろうなぁ。そこで、ディタの魔石と他の魔石を比べて、いかに魔導具に違いがでるかやってみせたらしい」
やるわね、プレゼンですか。
「詳しいことは省くがな」
なぜそこで遠い目をする?気になるじゃないの。何をしたんだろう。
「問題は、ここからだ」
ん?
「ようやく違いを渋々認めたやつがとった行動というのが、おまえの家から魔石を取ってこようとしたことらしい」
…なんだって?!なに考えてるのよ。犯罪だからね、不法侵入だよそれ。しかも女性の一人暮らしの家に勝手に入ろうとするなんて。信じられない!そりゃ確かに置いてあったけど。でも。
「入れなかったでしょ」
ついニヤリと笑う。
「その通り。警邏まで出て来る騒ぎになったらしい」
ガーゴイル君たちはいい仕事をしてくれたのね。警備は万全。お隣のおば様にあとで何か差し入れを持って行かないとね。
「見たかったなー」
「何をしたのか聞きたいような、聞きたくないような」
だが、これであの魔法使局には戻れないことがはっきりした。決めた。
「どうする?」
「あそこには戻りません」
「だよな。引っ越しも考えた方がいいかもしれん。紹介するから頼れよ?」
「その時はお世話になります」
引っ越しか。そうだよね。
後ろからカバンをとって、中を探る。
「これ、とりあえず」
持ってきた魔石の残りを渡した。
「いいのか?必要じゃないのか?」
「まだあるから大丈夫。本当ですって。あとこれ」
行きのラオンが入ったマジックバッグ。
「頭きたので焼き肉パーティーしましょう」
「はあ?!」
「怒るとお腹すくじゃない?どうせ私一人じゃ食べられないし」
「そりゃあるがたい話だがな、こっちとしては」
なら問題ないでしょ。
久々の焼き肉パーティはおいしかったし、楽しかった。雰囲気も元に戻ったようでよかった。自分のせいだと余計にいやじゃない?
それになんとセリカ王女とアーデルも来たんだよ。びっくりした。
「初めて食しましたが、おいしいものですね」
食べたのか?!
「馬車がとても過ごしやすくて助かっています。ディタのおかげだと聞きました」
よほど気に入ったのか、
「行きも装備して下さったらよかったのに」
思わずと言った感じでアーデルが言った。
「試作段階で装備するわけにはいかない、て言ってましたよ」
二人は軽装とはいえドレスだしね、余計暑いか。
「わたくしからも異動願い許可をだしておきます。ヨゾンのもとならディタも過ごしやすいでしょう?」
年下から指摘される職場、てどうよ?確かにそうだけどね。
しばらく考えておきます、とヨゾンと同じ返答をしておいた。
まずは、城を、魔法局を出る。あの家を出る。
明日、城で報告という名の王との謁見があるらしい。それで最後だとしたら、今夜中に整理をやっておかないと。
ラオンのおかげでエネルギーチャージできたし、ヨゾンとマミヤとセリカ王女にそれぞれ手紙というか、各へ渡した魔導具の説明書を書きまくった。
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