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前篇:夢の通ひ路
第四話 其の三
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どうしよう、ここで私が左大臣家の姫君だと名乗れば、こちらの方が格上だし、話はまとまるかもしれないがそんなことはしたくない。親の七光りをさきほど否定したばかりである。それに言ったら最後、確実に面倒くさいことになりそう。大体私、抜け出してきている身だし…… 加えて宮中じゃちょっと有名な「物の怪姫」である。色々と問題点ばかりだ。
自分のした行いのせいで、家や父に迷惑をかけることもあってはならない。身から出た錆だ、もう大人しくいうこと聞いとこう。
「申し訳ございません。どうか、そちらの母子はお見逃しくださいませ」
「ええい、今更遅いわ! 頭を地面にこすりつけて謝罪せよ!」
男が、私へと手を伸ばした。おそらく、無理やりにでもひれ伏させるつもりだ。
それで気が済むのなら好きにさせてやろう、少なくとも母子は守れるなら私の土下座に価値はある。額に土をつけるくらいでこの場が収まるなら。
そう思っていたのだけれど、頭を掴まれるような衝撃は一向に襲ってこない。
「お待ちください」
ふと顏を上げれば、男の手は宙に浮いているままだった。それを止めたのは、牛車の中にいるであろう右大臣家の三の君――ではなかった。
無表情に私の手を引いて立たせた超絶美形が、もう片方の手で男の腕を掴んでいたのだ。そして、「無茶なことをなさる」と私にだけ聞こえるように小さく呟いた。
「お前はなんじゃ、離せ!! 次から次へと!! 貴様ら、全員そこへ並べ!!」
苛立ちが頂点に達した男が美形の手を振り払おうとするのだが、びくともしない。それどころか逆に美形に引き寄せられて、耳元に何かを囁やかれたようだった。瞬時に男の顔がさっと青ざめる。わなわなと震えだしかと思えば、突然美形に向かって土下座をした。信じ難い光景だった。何が起こった?
「も、も、申し訳ございません!!」
「早う立ち去れ」
「ど、どうかこのことは上様にはご内密に!! どうか!!」
「立ち去れと言うたのが聞こえなんだか」
「は、ははっ」
慌てふためいた男が、牛飼いや車副に急ぎ進むよう声を掛ける。先ほどの勢いはどこへやら、未だその顔色は青く、何かを怖がっているようにも見えた。
ガタガタと転がるように去っていく牛車の乗り心地は相当悪そうだ。あれじゃ中の姫君はあちこちに身体がぶつかりそうなほど前後左右に振られているはずだが、同情の余地はない。そもそも姫が止めるように声を掛けていれば、こんなことにはならなかったのだ。それを見て見ぬふりして黙っていたのだから、罪は同じだ。
私はというと、謎の形勢逆転に美形と右大臣家姫君ご一行を交互に見ているだけである。
「全く。ご自分が何をなさったかお分かりですか? 女人の身で、無謀にも程がございますよ」
呆れ果てた美形の言い方に、ぐうの音も出ない。確かに、もっといいやり方はいくらでもあったはずかもしれなかったが、そんなことを考えている余裕なんかなかったのだ。
「……ごめんなさい。貴方を巻き込んで、悪かったわ。じゃなくて、悪かったと思っております。助けて下さって、ありがとうございました」
「いいですよ、今更そんな口調。弱々しく泣いておられたかと思えば、勇敢にも他人をお庇いになられる。貴女にはいくつもの面があるのですね」
「あれは、だって、我慢ができなかったから。人の上に立つ者が、下の者を軽んじていいはずがないでしょう。ましてや、あのような暴挙など…… 朝廷の評判を下げ、右大臣を任命した上様の御名にも傷がつきます」
「なんと、そこまでお考えでいらっしゃいましたか。ええ、おっしゃる通り、さようでございますが」
それにしても、一体、彼は何を言ったの? 右大臣家付の者があそこまで態度を変えるだなんて、滅多な事じゃないだろう。
確かあの男は、上様には、と言っていなかったか? ということは、彼は帝に関わりのある者? そうだ、それしか考えられない。
今度は私が青くなる番だった。振る舞い方を間違えれば私も不敬になる。
すでにため口で、しかも知ったような口を聞いている。まずい!
「ああ、貴女、ありがとうございます、ありがとうございます」
内心冷や汗ものの私に、先ほどの母親が私に何度もお礼を言う。頬が涙に濡れていた。右大臣家の名を出されて、きっと怖かったのだろう。私も怖くなかったと言ったら嘘になるけど、どこかで自分は「左大臣家」という家名に守られている気がしていたので、彼女の比ではない。
「あんた!! かっこよかったぞ!!」
「そうだ、よくやった!!」
「いい気味だったなぁ!」
いつの間にか、私たちを囲むように人だかりが出来ていた。周りから口々に飛んできた野次は、どうも私に向けられているものらしい。そのどれもが、賞賛のようなものだった。気恥ずかしさを覚えると同時に、またもや私はハッとした。
だから目立ってどうする、目立って!
あれからどれくらい時間が経ったのだろう? こんなことをしていないで早く邸に戻らなければ! タイムリミットは近いはずだ。
人だかりを抜けてささっと帰ろうとした私だが、そうはいかなかった。しっかりと手首を掴んで「どこへ行くのです?」と美形が微笑んだ。
「貴女とは、もう少しお話がしたい」
「大変ありがたいお言葉ですが、申し訳ありません。急いでおりますの」
「そのような口調はおやめください、先ほどのように、どうかお気になさらずに。して、あなたはどちらのお邸の女房でございますか?」
えっ。
何で身バレしてんの? 姫じゃなく女房と勘違いしてくれているのは有り難いけど。
「さすがに分かりますよ、そのお姿、身のこなし。姫君はこのようなところへ供もつけずにいるはずもない。となれば、貴女はどちらかの家に仕える女房なのではございませんか?」
「……ええと」
「急いでいるのであれば、お送りしますから。歩きながら、お話でもいたしませんか。私は、もっと貴女のことが知りたい」
美形効果は本当侮れない。
「貴女のことが知りたい」だなんてセリフ、言わせたら駄目だ。思わずうっとりした顔で「はい」と頷きそうになった。本心では頷きたかったのだが、私は急いでいるのだ。なんとしてでも、左大臣家別邸に、今すぐ帰らなければならないのだ。今すぐ、だ。小梅のお説教コースだけは何が何でも避けたい。絶対に嫌だ。
このままこの人と一緒にいたら、うっかり女房じゃなく姫なのだと口を滑らせてしまいそうな自分もいて怖い。
「申し訳ございません、今日の事はすべてお忘れになってください」
「なぜそのようなことをおっしゃるのです? 忘れることなどできません」
「失礼ながら……上様に近しい身の上である方とお見受けいたします。どうか私のご無礼をお許しくださいませ。そしてお助けいただきましたこと、心より感謝いたします」
美形が驚いた表情を浮かべた。その一瞬の隙を狙って、彼に囚われていた手をするりと抜いた。そして大声で言う。
「私ではなく、こちらのお方が母子をお助け下さったのです!」
注目は完全に彼に向けられた。もうチャンスなんてここしかなかった。人だかりをなんとか割って抜けた。「お待ちください!」と追いかけてこようとした彼が今度は囲まれて、やんややんやと賞賛されている。
野次馬たちの中心に一人置き去りにしてきたことを申し訳なく思いつつも、私は振り返らずに全速力で来た道を戻った。
大丈夫、まだ間に合うはずだ。いくつかの角を時を巻き戻したかのように戻り、抜け出したときと同じく周りに気を配りながら、途切れた透垣の隙間から入り縁側をよじ登る。とても姫君のすることではないが、今更だ。ようはばれなきゃいいのだ、ばれなきゃ。
塗籠付近に人気はない。大急ぎで着替えをし(多少の乱れは横になっていたからということにしよう)、着ていた壺装束は櫃に押し込めて、今度はまた西面にむかって、部屋の中でごろんと横になった。額にうっすらと汗が滲んだのをぬぐい、乱れた呼吸を整える。
そのちょうど五分後だったのだ。「姫様、お加減はいかがですか?」とやはり女房が様子を見に来たのは。そして私は、何食わぬ顔で、計画通りの言葉を返したのである。
「ええ。少しよくなったわ」
自分のした行いのせいで、家や父に迷惑をかけることもあってはならない。身から出た錆だ、もう大人しくいうこと聞いとこう。
「申し訳ございません。どうか、そちらの母子はお見逃しくださいませ」
「ええい、今更遅いわ! 頭を地面にこすりつけて謝罪せよ!」
男が、私へと手を伸ばした。おそらく、無理やりにでもひれ伏させるつもりだ。
それで気が済むのなら好きにさせてやろう、少なくとも母子は守れるなら私の土下座に価値はある。額に土をつけるくらいでこの場が収まるなら。
そう思っていたのだけれど、頭を掴まれるような衝撃は一向に襲ってこない。
「お待ちください」
ふと顏を上げれば、男の手は宙に浮いているままだった。それを止めたのは、牛車の中にいるであろう右大臣家の三の君――ではなかった。
無表情に私の手を引いて立たせた超絶美形が、もう片方の手で男の腕を掴んでいたのだ。そして、「無茶なことをなさる」と私にだけ聞こえるように小さく呟いた。
「お前はなんじゃ、離せ!! 次から次へと!! 貴様ら、全員そこへ並べ!!」
苛立ちが頂点に達した男が美形の手を振り払おうとするのだが、びくともしない。それどころか逆に美形に引き寄せられて、耳元に何かを囁やかれたようだった。瞬時に男の顔がさっと青ざめる。わなわなと震えだしかと思えば、突然美形に向かって土下座をした。信じ難い光景だった。何が起こった?
「も、も、申し訳ございません!!」
「早う立ち去れ」
「ど、どうかこのことは上様にはご内密に!! どうか!!」
「立ち去れと言うたのが聞こえなんだか」
「は、ははっ」
慌てふためいた男が、牛飼いや車副に急ぎ進むよう声を掛ける。先ほどの勢いはどこへやら、未だその顔色は青く、何かを怖がっているようにも見えた。
ガタガタと転がるように去っていく牛車の乗り心地は相当悪そうだ。あれじゃ中の姫君はあちこちに身体がぶつかりそうなほど前後左右に振られているはずだが、同情の余地はない。そもそも姫が止めるように声を掛けていれば、こんなことにはならなかったのだ。それを見て見ぬふりして黙っていたのだから、罪は同じだ。
私はというと、謎の形勢逆転に美形と右大臣家姫君ご一行を交互に見ているだけである。
「全く。ご自分が何をなさったかお分かりですか? 女人の身で、無謀にも程がございますよ」
呆れ果てた美形の言い方に、ぐうの音も出ない。確かに、もっといいやり方はいくらでもあったはずかもしれなかったが、そんなことを考えている余裕なんかなかったのだ。
「……ごめんなさい。貴方を巻き込んで、悪かったわ。じゃなくて、悪かったと思っております。助けて下さって、ありがとうございました」
「いいですよ、今更そんな口調。弱々しく泣いておられたかと思えば、勇敢にも他人をお庇いになられる。貴女にはいくつもの面があるのですね」
「あれは、だって、我慢ができなかったから。人の上に立つ者が、下の者を軽んじていいはずがないでしょう。ましてや、あのような暴挙など…… 朝廷の評判を下げ、右大臣を任命した上様の御名にも傷がつきます」
「なんと、そこまでお考えでいらっしゃいましたか。ええ、おっしゃる通り、さようでございますが」
それにしても、一体、彼は何を言ったの? 右大臣家付の者があそこまで態度を変えるだなんて、滅多な事じゃないだろう。
確かあの男は、上様には、と言っていなかったか? ということは、彼は帝に関わりのある者? そうだ、それしか考えられない。
今度は私が青くなる番だった。振る舞い方を間違えれば私も不敬になる。
すでにため口で、しかも知ったような口を聞いている。まずい!
「ああ、貴女、ありがとうございます、ありがとうございます」
内心冷や汗ものの私に、先ほどの母親が私に何度もお礼を言う。頬が涙に濡れていた。右大臣家の名を出されて、きっと怖かったのだろう。私も怖くなかったと言ったら嘘になるけど、どこかで自分は「左大臣家」という家名に守られている気がしていたので、彼女の比ではない。
「あんた!! かっこよかったぞ!!」
「そうだ、よくやった!!」
「いい気味だったなぁ!」
いつの間にか、私たちを囲むように人だかりが出来ていた。周りから口々に飛んできた野次は、どうも私に向けられているものらしい。そのどれもが、賞賛のようなものだった。気恥ずかしさを覚えると同時に、またもや私はハッとした。
だから目立ってどうする、目立って!
あれからどれくらい時間が経ったのだろう? こんなことをしていないで早く邸に戻らなければ! タイムリミットは近いはずだ。
人だかりを抜けてささっと帰ろうとした私だが、そうはいかなかった。しっかりと手首を掴んで「どこへ行くのです?」と美形が微笑んだ。
「貴女とは、もう少しお話がしたい」
「大変ありがたいお言葉ですが、申し訳ありません。急いでおりますの」
「そのような口調はおやめください、先ほどのように、どうかお気になさらずに。して、あなたはどちらのお邸の女房でございますか?」
えっ。
何で身バレしてんの? 姫じゃなく女房と勘違いしてくれているのは有り難いけど。
「さすがに分かりますよ、そのお姿、身のこなし。姫君はこのようなところへ供もつけずにいるはずもない。となれば、貴女はどちらかの家に仕える女房なのではございませんか?」
「……ええと」
「急いでいるのであれば、お送りしますから。歩きながら、お話でもいたしませんか。私は、もっと貴女のことが知りたい」
美形効果は本当侮れない。
「貴女のことが知りたい」だなんてセリフ、言わせたら駄目だ。思わずうっとりした顔で「はい」と頷きそうになった。本心では頷きたかったのだが、私は急いでいるのだ。なんとしてでも、左大臣家別邸に、今すぐ帰らなければならないのだ。今すぐ、だ。小梅のお説教コースだけは何が何でも避けたい。絶対に嫌だ。
このままこの人と一緒にいたら、うっかり女房じゃなく姫なのだと口を滑らせてしまいそうな自分もいて怖い。
「申し訳ございません、今日の事はすべてお忘れになってください」
「なぜそのようなことをおっしゃるのです? 忘れることなどできません」
「失礼ながら……上様に近しい身の上である方とお見受けいたします。どうか私のご無礼をお許しくださいませ。そしてお助けいただきましたこと、心より感謝いたします」
美形が驚いた表情を浮かべた。その一瞬の隙を狙って、彼に囚われていた手をするりと抜いた。そして大声で言う。
「私ではなく、こちらのお方が母子をお助け下さったのです!」
注目は完全に彼に向けられた。もうチャンスなんてここしかなかった。人だかりをなんとか割って抜けた。「お待ちください!」と追いかけてこようとした彼が今度は囲まれて、やんややんやと賞賛されている。
野次馬たちの中心に一人置き去りにしてきたことを申し訳なく思いつつも、私は振り返らずに全速力で来た道を戻った。
大丈夫、まだ間に合うはずだ。いくつかの角を時を巻き戻したかのように戻り、抜け出したときと同じく周りに気を配りながら、途切れた透垣の隙間から入り縁側をよじ登る。とても姫君のすることではないが、今更だ。ようはばれなきゃいいのだ、ばれなきゃ。
塗籠付近に人気はない。大急ぎで着替えをし(多少の乱れは横になっていたからということにしよう)、着ていた壺装束は櫃に押し込めて、今度はまた西面にむかって、部屋の中でごろんと横になった。額にうっすらと汗が滲んだのをぬぐい、乱れた呼吸を整える。
そのちょうど五分後だったのだ。「姫様、お加減はいかがですか?」とやはり女房が様子を見に来たのは。そして私は、何食わぬ顔で、計画通りの言葉を返したのである。
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