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Epilogue
しおりを挟むアレから数週間。
やっぱり築島くんを見ているのは辛く。
でも絢さんと二人でいるのを見ていると、どうやっても二人の間には入り込めないものがあるって、降参するしかなかった。
しかも、絢さんに会って気がついた。
築島くんが今までほめてくれたのは……絢さんに似合いそうな雰囲気のものばかりで。
ホント、私バカだ。
でも、だからって築島くんのいいところはいっぱいあって。
なかなか「好き」を卒業できない。
そんな風に勝手に傷ついて……そんな時、気がつけばさりげなく常磐くんは隣にいる。
知里ちゃんは、常磐くんの気持ちを見抜いていたみたい。告白された事を話すと「やっぱりね」と言い、困惑している私に向かって「小学生並みの愛情表現なのよ、ガキね」と言っていた。
「いい歳して、初恋こじらせ男子はこれだから……」とまで言っていたのは、まさかと思ったけど。常盤くんみたいな人が、今まで彼女いないだなんてありえないし。
告白されたといっても、口調や態度はやっぱり前と変わらず。
でもなんか行動は、前より親切だ。
口うるさいけど、優しいってまるで……。
「常磐くんって、お母さんみたいだね」
学食でご飯を食べてると、常磐くんが相席してきた。
常磐くんはすでに食べ終わってるのに、本を読み始めてる。
そのつぶやきは聞こえていたらしく、思い切り鼻をつままれた。
「アンタのお母さんになるつもりなんて、ないんだけど」
「でも、本当に無理だから……常磐くんなら、私じゃなくていい子いっぱいいるじゃない」
「それ本気で言ってんの?」
「うん」
「…………」
絶句する常磐くん。
「それ本気で言ってるって分かるから、更にムカつく」
「ご、ゴメン、でも」
「あーはいはい、迷惑って言うんだろう」
「そうじゃなくて……だって、辛いじゃない」
だって、こんなに苦しいのに。
「私、好きな人に好きになってもらえない辛さ知ってるから、だから常磐くんにも辛くなって欲しくないよ」
常磐くんは黒縁眼鏡の奥の瞳を少し見開くと、イジワルそうに笑った。
「これだから、天然は……」
ぐしゃぐしゃと、頭を撫でられる。
せっかくの前髪が……と文句を言い掛けて、止まった。
「だったら、そんな簡単に諦められない辛さも知ってるだろ」
いつもは余裕で、意地悪そうにしているのに。はじめて見る常磐くんの、少し辛そうな表情。
何で世の中上手くいかないんだろう。
今度また誰かを好きになるなら、それは常磐くんだったらいいな。そう思ってしまうズルイ女になってしまいそうで。
でもそれを常磐くんに言ったら、ダメだと思う。
これ以上は、常磐くんに甘えちゃいけない。
いけないのに……否定されない、居心地が良すぎて常磐くんに甘えっぱなしだから。
「これ以上は、無理だよ」
私は、常磐くんにそう繰り返す。
早く、私なんか諦めてくれればいいのに、という気持ちをこめて。
その言葉を口に出す理由が、段々と変化してる事なんて気付かずに。
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