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二章 夜市編

14.少し前の話

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「これは、僕がまだ小さな頃の話。正確にいえば小学3年生の頃の話です」

ゆっくりとした聞き取りやすい声で柳は語り始めた。

「僕はこのことはずっと忘れないです。この体験から僕は妖怪が見えるということに気がついたんです。もしかすると見えるようになったのかもしれないですが」

「妖怪が見えるってどういうこと?」

新道は柳へとそう質問をすると柳は「じゃあ」と言って説明しだす。

「妖怪っていうのは実在はするんですけど皆さんは見たことがないって答えますよね?それは多分意識をしていないからだと思いますよ」

意識をしていない?どういうことだろう。
見ていないものは見ていないだろうに。
と思っていると新道は「どういうこと?」と聞き返す。

「どういうことか、ですか。そうですね、皆さんは街で知らない人とすれ違っても気にはとめませんよね。」

「まぁそうね」

「それと同じって言ったらいいのかな。まぁ気にしないから認識もしないんですよ。もしかしたら認識阻害の妖術でも使ってるのかもしれないですけど」

「認識阻害の妖術?」

「認識阻害、言わば人から見られなくなるみたいなことだよ」

新道が優しく教えてくれる。
それを聞いてあぁそういうことかと妖花は理解してまたその話をまじまじと聞いていた。

「妖術を使うって説はあるかもしれないね。まぁとりあえず分かったわ。ごめんね、話を変えて」

新道がそういうと柳はいいですよと顔を横に振ったあと妖怪に出会った話を話し始めた。

「ただの僕の仮説ですのでスルーしてくれても大丈夫です。改めて、話を始めましょうか。
僕が見た妖怪っていうのは煙々羅です。煙々羅という妖怪は空気中を様々な姿になりながらさまよう妖怪です。」

「へぇー。そんな妖怪もいるんだね」

初めて聞く名前の妖怪だったため、自分の知らない妖怪の話を聞くことに少し興奮しつつ、話を聞いていく。

「その妖怪に会った話をしますね。」


◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇


これは数年前の話────


僕が小学生の頃、まだ体が弱かった頃でした。その頃は弱い体ながら遊んだりはしていました。
夏の日、祖母の家に遊びに行った時、親や祖父母からは体を気にして、あまり外では遊ぶことができませんでした。しかし、遊びたいという心があり、つい、黙って一人で遊びに行ってしまったんです。
近くには公園もなく、山に登って遊んでいました。そしてそこである少年と出会いました。

少年は短髪の黒髪が特徴で、いつも笑顔でした。
僕が「どこからきたの?」と聞くと彼はいつも何も言わずに山の方を指差していました。
僕もまだ子供でしたし、あまりそんなことは気にしませんでした。ここら辺は子供が少なく、遊ぶ人も家族だけで同い年の子供と遊ぶことができるなんて思わなかった僕はその子と一日中遊んでいました。
夕方になり、僕が帰ろうとすると彼はまだ遊ぼう、そういうんです。でも帰らないと親に怒られてしまう。ですが遊びたい、そう思っていました。



「じゃあ僕の家に行こうよ」


彼はそう言いました。家?家なら遊べるかもしれない。しかし、もうすぐ日没。

「うん、でも今日遅いから明日ね!お母さんに言わなきゃいけないし」

僕がそういうと彼は黙ってうなづいて下を指差した。

「わかった!またここで遊ぼうね」

僕はここでまた遊ぶ、そう解釈して彼と別れ、家へと帰宅した。
家に帰るととても親に心配をされた。

「一人でどこいってたの!心配したのよ…」

母親に怒られ、落ち込んだものの、何をしていたのかをすぐに答えた。

「遊んでたんだよ、男の子と」

そう答えると母親は嬉しそうな顔をした。

「あら、そう。でも今度からはちゃんとどこに行くか言ってから遅くならないうちに帰って来なさいね」

「うん!わかったー」


なんだかんだで甘い母親は怒っていたことをとうの昔に忘れ、僕が友達ができたということに大喜びしているようだった。
それは僕が病気のため、学校にあまり行けず、転校もしょっちゅうで友達ができることがなかったからだと思った。

「それじゃあ早めに寝て明日あの子と遊ぼうかな」

まだ午後5時。流石に早いとは思ったが、早く明日にならないかとそわそわしている自分がいた。


「ねぇ、翔ー」

母親の声が聞こえ、僕は寝ようとしていた体を起こし、母親のところへと向かった。

「どうしたの」

「ごめんね、寝ようとしてた?まだ夕飯もまだだし、少しだけ待ってね。ご飯食べてお風呂はいったら寝ていいから」

母親にそう言われて寝ることをやめてとりあえずお風呂に入ることにした。
浴室を開けると湯の蒸気が浴室を包んでいた。

早く入ろう

そう思いながらすぐに頭や体を洗い目を開けるときには包まれていた水蒸気は無くなっていた。どうやら扉をあけていたせいで蒸気は逃げていったらしい。

「ふぅー、いいお湯でしたー」

お風呂に入り終わり、夕飯を食べたあと眠くなるまでテレビを見る。
ゴールデンタイムでバラエティ番組がしており、それをみながら時間を潰す。
それから時間が経ち午後9時。

「もう僕寝るね」

「おやすみ」

母親の声が聞こえ、僕はベッドの中に入り目を瞑る。

早く明日が来ないかな。早くあの子とまた遊びたいな。そんなことを思っているうちに眠ってしまった。



◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇


「おはよー」


朝になっていた。時刻は8時。母親は朝食の準備をしており、そんな中僕はまだ覚めていない目を流水で洗い目を覚ます。


「行ってきまーす」

朝食を取り終え、すぐに公園へと向かった。
公園にはまだ誰もおらず古いブランコにまたがり遊んでいると後ろから声をかけられる。

「おはよう」

昨日の少年だった。急に声がして驚き変な声を上げてしまう。

「お、おはよう」

「今日も遊ぼうよ」

そう言われて断る理由もない、むしろ遊びたいと思っていた僕はすぐに承諾した。

「君の名前は?僕は柳翔!」

「僕はね…あ!」

二人で遊んでいると少年がフェンスの方を指差す。そこには親らしき人がこちらをみていた。

「ねぇ、あの人たちは君のお父さんたち?」

僕がそう聞くと、彼は「うん」と頷きながらつづける。

「そうだよ、僕の親」

「そっか、なら安心だね。」

そういうと、少年がかすかににやりと笑ったきがした。
二人で遊んでいる中、少年の親もいるのでゆっくり安心して遊んでいた。

時間が経ちもう夕方になっていた。
そろそろ帰るために別れを告げに行くと彼はまたこう言った。

「僕の家に行こうよ、今日は親もいるから安心だよ」

そう言われて迷ったが親に連絡してから行くと言うと少年はこう言う。

「大丈夫だよ、後で連絡すればいいんだからさ」

そう言われていこうと思ったが、体の弱い僕を心配しているだろうし、一度連絡を済ませたい、それに用意をしなければならないと思った僕はとりあえず親に伝えることにした。

「遊ぶ用意とかがあるから一度帰るよやっぱり」

「わかった。待ってるね」

帰宅してからすぐに母親のところに行き事情を話した。

「ねぇ、友達の家に行っていい?その子が来て一緒に遊ぼうて言うんだけど」

「そうねぇー、いいんじゃない。たまにはそう言うことも必要だからね」

母親の了承をもらい支度をしていると、祖父が声をかけてくる。

「おや、翔。どこに行くんじゃ?」

「今から友達の家に遊びに行くんだよ」

「友達のー。そうかー、その子はどんな子じゃった?」

「うーんと元気な子だったよ」

「そうかー。名前とか聞いとらんのか?」


名前…そういえば結局聞けていない。なんだろう、聞こうとしたら濁されたような気がする。

「聞けてないんだー。聞こうとしたけど結局言ってくれなかったんだー」

そう言うと、祖父の目の色が変わった。

「翔、今日は遊びに行くな」

声色が変わり、少し怖かった。祖父をここまで怖いと思ったことは初めてだった。

「なんで?僕初めて友達の家で遊ぶのに…」

理由を聞くと祖父は答えた。

「ここには有名な話で人さらいがあるんじゃよ。名前を名乗らず家に連れ込みそのまま…」

「あの子はそんなことしないよ!あの子今日はお父さんもいたし、それに子供がそんなことするはずないよ」

僕が怒って言うと祖父はそのことよりもあることが気になったらしい。

「親じゃと…」

「うん、あの子があれは親だって言ってたんだ」

「それは…翔。今日はやめておきなさい。もう夕暮れじゃ。迷惑をかけてしまうかもしれんからのー」

「えー、なんでそんなこと言うのー」

「翔、今日は早めに寝なさい。わしがその子の親に今日はごめんと断っておくから」

祖父にそこまで言われて流石にそれを破ってまで遊ぶわけにはいかないと思い、断ることを祖父に頼んだ。

「なんで今日ダメって言ったの?」

夕飯が終わり祖父の部屋に行き理由を聞くと答えが返ってきた。

「お前は小さいからのー。それに病気で体が弱い。遊びに行くならわしと行くか?」

「うん、じゃあ明日一緒に行こうね」

そう祖父と約束してベットに入る。
そうしてすぐに眠りに誘われ、意識を夢の中へと置いていった。


◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇


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