[完]異世界銭湯

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
19 / 50

19

しおりを挟む
「あっつい!」

リザちゃんは足をつけた途端ヒュっと足を出してしまった。

「あれ、リザちゃんには少し熱かったかな?」

私は湯船に使って湯をかき混ぜる。
他の人がいたら出来ないが今は二人きり少し湯が冷めるように大きく混ぜた。

「このくらいでどうかな?」

「うーんまだ少し熱いけど大丈夫」

「ここが段差になってるから腰掛けて」

リザちゃんが座るにはちょうどいい高さの足場に座らせる。

「はぁ…すごい、天井が高い。それになんか不思議な絵が描いてある」

壁に大きく描かれた風景画に目を奪われいた。

「まるでそこにいるみたいだよね。男湯には富士山…大きくて綺麗な山が描いてあるんだよ」

「そっちは入れないの?」

「大丈夫、定期的に男湯と女湯を交換するからまたその時な入れば見れるよ」

「そっか」

「でもどうだろ。ここの銭湯を気に入って使っていいって言ってくれる人がいないと入れないかもねー」

私はニヤッと笑ってリザちゃんをみる。

「あっ、その…ごめんなさい」

リザちゃんは頬をほんのり赤くしながら眉を下げて謝った。

「じゃあ銭湯を続けてもいいって事かな?」

「うん、ここすごく素敵…今度お母様と入りたいな」

そんなことを言うとガラガラと銭湯の戸が開いて母とリザちゃんのお母さんのエミリアさんが前を隠しながら入ってきた。

エミリアさんは子供がいるとは思えない程スタイルがよくリザちゃんが私の胸をじっと見た理由がわかった。

エミリアさんの胸は溢れんばかりに盛り上がっていた。

「お母様!」

「リザ、ここ素敵ね。もうリザは入ってるのね」

エミリアさんは自分もと湯船に近づこうとする。

「待って!」

するとリザちゃんは慌ててエミリアさんを止めた。

「リザ…どうしたの?お母様は入ったらダメかしら?」

少し悲しそうにリザちゃんに聞いた。

「違うの!先にあそこで体を洗うのよ」

リザちゃんは慌てて先程洗っていた場所を指さした。

「リザちゃんよく知ってるね。エミリアさん湯に浸かるまでに体を綺麗にするのは銭湯のマナーなんですよ」

後ろからお母さんがリザちゃんを褒めた。

「あら、ならリザ教えてくれる?」

「任せて!」

リザちゃんはこっち!とエミリアさんの手を掴んだ。

「ここではね領主とか貴族とか関係ないんだって!だから私たちはただの親子なんだよ。ね!お姉ちゃん!」

リザちゃんに同意を求められて私は笑顔で頷いた。

「そうですよーここではリザちゃんが先輩になりますからエミリアさんはよく教えて貰って下さいね」

「あらそうなの?じゃあよろしくお願いします」

エミリアさんが笑ってリザちゃんに頭を下げた。

そんな仲の良さそうな親子にしか見えない二人を尻目にお母さんはサッサと体を流して湯船にきた。

「あれ、お母さん洗ったの?」

「軽く流したから大丈夫よ、お母さん綺麗だもの」

お母さんは気にした様子もなくタオルを頭に乗せると息を吐いた。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界ニートを生贄に。

ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』  五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。  その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。  その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。  残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。  そして七十年後の今。  結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。  そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭
ファンタジー
唐津 那雪、高校生、恋愛経験は特に無し。 メガネをかけたいかにもな非モテ少女。 そんな彼女はあるところで壊れた家を見つけ、魔力を感じた事で危機を感じて急いで家に帰って行った。 家に閉じこもるもそんな那雪を襲撃する人物、そしてその男を倒しに来た男、前原 一真と共に始める戦いの日々が幕を開ける! ※本作品はノベルアップ+にて掲載している紅魚 圭の作品の中の「魔導」のタグの付いた作品の設定や人物の名前などをある程度共有していますが、作品群としては全くの別物であります。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

処理中です...