サトリと私

三園 七詩

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サトリ

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「佐鳥くん、良かったら付き合って下さい!」

目の前の可愛らしい女の子は目を潤ませ必死な顔で頭を下げた。

「やるー!佐鳥って本当にモテるよな!」

「学校一の美少女の小鳥遊さんから告白なんて羨ますぎるぞ!」

教室の一番後ろの席に座る自分の目の前に来て人が多くいる教室での告白。
野次馬だらけのなか泣きそうな顔で俺を見つめている小鳥遊さんはさぞかし可愛らしく見えているのだろう。

しかしサトリ(覚)の血を引く俺は人の心が聞こえてくる。

彼女の本心はこういっていた。

(こんな場所で可愛い私からの告白に断る男なんていないわ。相手は顔は良いしミステリアスで女子から距離を置いて未だに彼女も作らない佐鳥くん、私の相手にはこの人くらいが相応しいわね)

彼女の本心を聞いて顔をしかめた。

女は怖い。

平気で嘘をつく、しかも真顔や笑顔で真逆の事を平然と言うのだ。

俺は平均よりも顔がいいらしい。

そのおかげで小学生の時から女の子に告白されてきた。

それこそ最初は喜んだ。

その子は本当に俺が好きだと思っていたから……

しかしそのうちに彼女と心の声に矛盾が出てきた。

「いいね」と言いながら「ないわ」と思ったり、「大好き」と言いながら「言っときゃいいよね」と心の声が答える。

耐えられなくなり別れようとすると必死に泣かれて「好きなのに」と言いながら「別れたら何を言われるか分からない」と保身の心配をしていた。

中学生も同じようなもので俺はそのうちに女を避けるようになった。

しかし高校生になってグンと背が伸びてから女の視線や告白が一気に増えた。

俺はもう誰とも付き合う気はなかった。

それなら多少嘘をつく男の方が一緒にいてマシだ。



「悪いけど付き合えない」

「え?」

小鳥遊さんの告白をあっさりと断ると仮面が剥がれて眉間にシワが寄る。

あの顔が本当の顔なのだろう。
その顔は歪み醜く見えた。

「付き合えない」

何も言わない小鳥遊さんに再度お断りをする。

「なんで!だって……佐鳥くん彼女いないんでしょ?なら……」

「なら?なんでそれであなたと付き合わなきゃいけないの?俺にも選ぶ権利はあるよね?それとも小鳥遊さんに告白されたらみんな付き合わないといけない決まりでもあるの?」

「うっ……」

小鳥遊さんは失言に気がついたのか言葉を詰まらせる。

すると周りから「クスッ」と失笑が漏れた。

「いい気味……」

「自分が可愛いと思ってるからね」

誰が言ったのか後ろの方から囁くような声がすると小鳥遊さんは顔を真っ赤にして俺を睨むと無言で教室を出ていった。

「お前、あんな可愛いのになんで断ったんだよ」

「可愛い?あれが?」

俺は信じられないと友達を見つめた。

「可愛いだろ!顔も良いしスタイルも良いなんと言っても胸がある!」

そういう友達に嘘はなかった。

「俺は見た目よりも中身派なの」

「えー?小鳥遊さん性格だっていいだろ、俺みたいな奴にも挨拶してくれるぜ」

それは俺の友達だからだよ……とは言えなかった。

「しかし佐鳥は女嫌いだよねー、小鳥遊さんでもだめか。お前このままだと一生彼女できないぞ」

「いいよ、女なんて嘘つきしかいないからな」

俺はこの時まで本気でそう思っていた。

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