貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

258.確保

｢では、チャート様ローズ様が先程お目覚めになりましたので是非とも会ってあげて下さいませ｣

｢いいのですか？｣

｢もちろんです！ローズ様は大変傷ついています…男をなど通す訳には行きませんが大切な家族のお父様と弟君のクリス様は別ですから｣

｢ありがとう、では…じゃあレイン…陛下！失礼します｣

チャートはレインに頭を下げると…レインが名残りおしそうに声をかけた。

｢チャート、しばらくは王都に滞在するのだろう？｣

｢そうだな…まぁ一週間位は大丈夫かな｣

｢良かった、なら今夜お前と話したいと言ってる人がいるからな良かったら一杯…｣

レインがコソッと声をかけると

｢ああ｣

チャートはわかったと頷いた。

クレアさんに連れられて今度こそローズの部屋を訪れると…廊下ではスチュアートさんが兵士達と一緒に護衛をしていた。

｢スチュアートさん…どうされた？｣

チャートが声をかけると

｢ローズ様と部屋に二人でいるなどおこがましいので外で見張りを…｣

済まなそうにしていると…

キィ～と静かに扉が開くとバルトが顔を出した。

｢ローズがスチュアートを呼んでるぞ…｣

｢いえ…私などやはりもうローズ様に合わせる顔などありません…クレアさんに言われて改めて思い知りました…｣

ふるふると力なく首を振ると

｢きゃあー！｣

部屋の中からローズの叫び声がする！

スチュアートは真っ先に駆けつけると…

｢やっと来てくれた｣

ベッドの上でローズが苦笑して待っていた。

｢ロ、ローズ様？何事ですか！何かありましたか？｣

スチュアートさんが心配そうにローズの様子を伺うと

｢なんでもありませんよ、だってこうでもしないとスチュアートさん部屋に入ってくれないんだもの…｣

ローズが苦笑すると

｢あっ！クレアさんにお父さん｣

後から入ってきた二人に微笑むと

｢何変な声を上げてるんだ、驚くじゃないか｣

チャートが顔を顰めると

｢あはっ！お父さんにはバレたか｣

ローズがヘラッと笑う。

｢だってスチュアートさんに何度大丈夫だと言っても合わせる顔がないからってしばらく姿を見せないなんて寂しい事を言われるから…｣

｢だからってスチュアートさんを騙すなんてよくないぞ！｣

チャートが注意すると

｢本当にそうですね…スチュアートさんごめんなさい｣

ローズが頭を下げると

｢やめてください、私になど頭を下げないで下さい…やはりローズ様を守れなかった私などここにいるべきではないのです｣

スチュアートはローズを見つめると

｢申し訳ございません、やはり私は自分を許せません…ですのでローズ様の教育係を辞退させていただきます｣

スチュアートさんが頭を下げると部屋を出ていこうとする。

｢それは…自分を罰するためなんですか？｣

ローズが聞くとスチュアートはこくっと頷く。

｢うーん…ならやはりスチュアートさんは今まで通りそばにいてください｣

｢はっ？｣

スチュアートは意味がわからずにローズを見ると、彼女は自信満々に笑っていた。

｢スチュアートさんは自分を罰したいんですよね？それで私のそばにいるといたたまれないと…って事は私のそばにいる間ずっと反省しないといけないと…それって十分罰になりませんか？｣

ニコッと笑いスチュアートさんを見上げる。

｢ですからやはりこれからもスチュアートさんはそばにいて欲しいです…駄目でしょうか？｣

ローズが伺うようにスチュアートを見つめると

｢スチュアートさん、諦めた方がいいかと…こうなったローズはあの手この手で了承するまで続けるので…｣

チャートがコソッと耳打ちすると、二人を見つめる。

チャートは苦笑して頷くと、ローズはキラキラと顔を輝かせている。

｢そうですね…ではローズ様おそばにずっと居させて反省させて下さいませ……｣

｢はい！｣

ローズが笑顔で頷くと

｢この身が朽ち果てるまで仕えさせていただきます｣

スチュアートさんから追加の誓の言葉が続く…

｢あれ？朽ち果てるまで…？｣

｢ええ、しっかりとお約束いただき感謝致します…これからもよろしくお願い致します｣

スチュアートさんのいつもの笑顔にローズはまぁいいかと頷き返した。