貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

160.衣装

ローズとバルトが衣装部屋へと入ると…

ードン！

入ると同時に出てくる人影にぶつかる！

「きゃ！」

ローズが軽く尻もちを着くが相手は構わずに足早にその場を去っていった。

「なんだあいつ…」

バルトがキッと睨むと

「大丈夫、大丈夫大したことないよ」

ローズがスっと起き上がって部屋へと入る。

中には令嬢達が用意した衣装がズラっと並んでいた…ローズは自分の衣装を探すと…

「あっ、あった」

衣装を手に取り着替えようとすると…

「えっ…」

クレアさんが作ってくれた衣装がビリビリに破かれていた…

「なんだこれは！」

バルトが驚いて声をあげると

「酷い…」

クレアさんが作ってくれた衣装は動きやすさを重視して袖がなくスラッと下まである長いスカートが特徴の作りだった…そのスカート部分が無惨に破かれてこのまま着ると足が丸見えになりそうだった…

「ローズ？大丈夫？」

物音に気がついてキャシーが様子を見に来ると…

ボロボロの服を持ったローズが唖然と固まっているのが見えた…

「どうしたの？」

キャシーが近づくと…

「それ…もしかしてローズが着る衣装？」

ローズはコクンと頷く…

「酷い！一体誰が」

キャシーが憤怒すると

「さっき顔を隠した奴とすれ違った！きっとあいつだ！」

バルトが言うと

「ローズ…とりあえず私のドレスを着て…スチュアートさんとクレアさんを呼んできましょうか？」

「だめ、二人はここに入れないの…二人を使ったって言われちゃうから」

ローズが首を振ると

「えっ…じゃあローズメイドを誰も連れてないの？」

「私は自分で用意が出来るから…」

「でもこの衣装じゃ…」

ローズはクレアさんが作ってくれた衣装を握りしめると…

「キャシー！貸してほしい物があるんだけど！」

ローズはキャシーを見つめた！


「ふぅ…」

ジュリアは自分のお披露目のダンスを終えて満足そうに戻ってくると

「お疲れ様でございました」

メイド達が飲み物を用意して待っていた。

「素晴らしかったです！皆様ジュリア様のダンスに驚いて声を無くしていました！」

「ええ！ドレスが波打つように動く度にご令嬢からはため息が漏れておりましたよ」

メイド達の言葉にジュリアは機嫌よく笑うと

「当たり前よ！誰だと思っているの？このくらい出来なくては恥ずかしいわ」

すると一人のメイドが息を切らし服を乱しながら戻ってきた…

ジュリアはそれを見つけると

「ちょっと甘い物が食べたいわ、何か持ってきてちょうだい」

周りのメイドに言うと

「あなたは残っててちょうだい」

はぁはぁと肩で息をしているメイドを指さすと

「ではすぐにお持ちします」

メイド達が部屋を出ていく。

それを確認すると

「で？どうだったのかしら？」

ジュリアが顔色を青くしているメイドに聞くと

「は、はい…言われた通りにドレスを破いてまいりました…しかし…本当によろしいのですか？もしバレでもしたら…」

メイドの青い顔がさらに青くなると

「あら、なんでバレるの？私は何もしてないもの」

「で、ですが」

「あなたが勝手にやった事よ私を巻き込んだら…病気で寝込んでいるあなたの親がどうなるかわかってるわよね。薬代をいくら立て替えてやってると思ってるの」

「申し訳ございません…私のやった事でした…ですから母の事はどうか宜しくお願い致します」

メイドは深々とジュリアに頭を下げた。

「わかればいいの、あとあなたみすぼらしくて私には相応しくないわ、もういいから下がってちょうだい」

ジュリアはメイドをシッシッと手で追い払った。