貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

132.お茶のおもてなし

「ではお茶を用意致しますので少々お待ちください」

ローズがジェシカと下がっていくと

「あれ？主催者も下がるかい？」

レインがローズを見ていると

「まぁ…どういうことかしら？お客様をほっとくなんて」

皆が顔を顰めて待っていると

「お待たせしました」

そんなに待つことなくたくさんのティーポットを用意して戻ってきた…

「本来はレイン様からでしょうが…申し訳ございません。順番があるので先にフリード様から失礼します」

ローズはレイン様に頭を下げると

「構わないよ」

レインは笑って了承した。

ローズはお礼を言ってフリード様と王妃様にお茶を入れていく…一人一人ポットを変えて置いていくと

「あら、私のお茶とフリード様のお茶色が違いますわ…これ大丈夫かしら」

キャンベル夫人がお茶に手を伸ばそうとしてその手が止まる。

「皆さんお茶の種類が違いますので大丈夫です。フリード様はあまり甘い物がお好きでないと聞いたのでさっぱりとした物を、王妃様は逆に甘いのがお好きと言う事でミルクに合った物に…キャンベル様は香りが強い物がお好きと聞いたのでそれに合わせて茶葉を用意してみました」

ローズの説明にキャンベル夫人の顔が固まる。

「もしかして…ここにいるみんな違うのかしら？」

「はい」

ローズは当たり前のように頷いた…

先にお茶を用意されたフリード様とキャンベル夫人はお先にとお茶を飲むと

「うん…美味しい！」

「飲む前に香りがスっと広がります…飲み終わった後にも…この香りは何かしら？これは何処のお茶を使ったのかしら？私でも飲んだ事ありませんわ」

他の方にお茶を出しているローズの代わりにジェシカが笑顔で対応すると

「こちらはローズ様がおひとりおひとりに合わせて一から配合致しましたので…何処にも売ってはおりません」

「えっ！一人一人に用意したとは茶葉を配合したのですか？」

「はい！」

ジェシカは誇らしそうに頷いた。

キャンベル夫人の様子に他の人達も自分のお茶を見つめる。

次々にお茶を飲んでいくと…

「私のは後味がさっぱりしているわ！フリード様が飲んでいたお茶も気になるわ…それも頂いていいかしら？」

「はい、ご用意致しますね」

ジェシカが笑顔で下がるとお茶を入れる。

その様子を王妃様が見つめていると…

「あなた何処の家で給仕を覚えたのかしら？その所作何処かで見た事あるわ…」

綺麗な顔の整った眉毛をまるで絵画の様に下げ憂いある瞳で見つめる。

「は、はい。私はタウンゼント男爵ご息女のローズ様が初めてのお勤め先となります…何か至らないところがありましたでしょうか？」

ジェシカが申し訳ありませんと頭を下げると

「責めてないのよ。とても手際が良くて感心していただけですからね…お手を止めてごめんなさいね」

王妃様が微笑むとジェシカはそのお顔に見とれて頬を染めた…