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121.眉間のしわ※

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カイルはローズが向かった先目指して廊下を疾走していた。

あっちは鍛錬場……まさかとは思うが一応行ってみよう。

鍛錬場に着くと先に来ていた兵士達が鍛錬もせずに集まって何か話をしている。

「お前達!」

嫌な予感に怒鳴りながら近づいた。

「「「わっ!」」」

兵士達が驚いて振り返ると顔を見るなり何かを後ろに隠した。

「カ、カイル様……ど、どうされました?」

「今隠したものはなんだ?」

ジロリと兵士を睨みつけて後ろを覗き込むが兵士達はジリジリと正面を向き後ろを見せないようにしている。

「な、なんでもありません。ただのゴミです……落ちていたので何かと拾っただけです」

「そ、そうなんです!  鍛錬場にあったから驚いていて……なぁ?」

他の兵士達も同意するようにうんうんと頷く。

兵士達はオドオドとしながらそのゴミを見せた、確かにただの空の袋を持っているだけだがどうも様子がおかしい。

「まぁいい、それよりここに誰か来なかったか?」

「だ、誰かとは?」

逆に兵士に聞き返されてしまった。

「た、例えば……可愛らしいご令嬢とか……」

俺はローズのはにかんだ笑顔を思いながら問いかけた。

「こ、こんな所にご令嬢来ますかねぇ?  なぁみんな」

「そうですよ~こんな野蛮な所に普通のご令嬢なら来ませんよ」

兵士達が変な汗を流しながら必死に答える。

「ならいいが……」

兵士達に鍛錬を続けるように言うが何か引っかかる。

普通の令嬢なら……

俺はソワソワしている兵士達を疑いながら見つめていた。

しかし当たりを見回してとローズがいる気配はない。鍛錬場には居ないと判断すると今度はローズの部屋へ向かうことにした。

廊下を大股で歩いていると前方にとぼとぼと歩くローズの姿を確認する。

いた!

「ローズ!」

俺は姿を見るなり声をかけた。ローズはピクッと反応したかと思うと振り返るどころか足を早めた。

「ロ、ローズ?」

俺は聞こえなかったのかと慌てて追いかける。

何度もローズの名前を呼ぶが聞こえてないわけではないようだった。

追いつき咄嗟にローズの腕を掴んだ。

「待って!  なんで逃げるんだ!」

「べ、別に……ただ早く部屋に帰りたいだけですから」

ローズがこちらを見てくれない。
いつも人の目を見て話すローズらしくない。

「ローズ、お願いだ顔を見せて、こっちを向いてくれ」

俺はそれが無性に悲しくて懇願するように頼んだ。

するとローズがゆっくりと振り返る。

その顔は寂しそうな少し怒っているような初めて見る顔をしていた。

「なんだ……その顔?」

眉間に皺がより、頬も微かに色づいているローズの顔にクスッと笑みがこぼれた。こんな時なのにどんな顔をしていても可愛いらしく見飽きる事がない。

そんな俺の思いに気づかずにローズは不機嫌なままだった。

「別に……それより何かようがあって声かけたんですよね?」

「ああ、さっきは大丈夫だったのか?」

「大丈夫?  心配なのはジュリア様でしょ」

可愛かった顔を曇らせた。

「ジュリア様、足は大丈夫でしたか?」

何かに怒りながらも相手を心配するローズらしさに苦笑する。 

しかしジュリアの事を聞かれるがあまり覚えていない。

「ジュリア嬢?  知らないなぁ、医務室の前に置いてきた。俺が下ろすとしっかりと立っていたからな大したことないだろ」

どうでもいいと俺は答える。
どうせ大した事がないのを大袈裟に言ってるだけだろう。

「そっか」

ローズはほっとして眉間のシワが少し緩んだ。
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