58 / 318
連載
119.噂※
しおりを挟む
「いったい何があったのですか?」
俺は、極力ジュリアを見ないように運びながら先程何があったのか探りをいれる。
ジュリアは小さな声でボソボソと話し出した。
「私達があそこを通っていたらローズさんが急に声をかけてきて私達に難癖を言ってきたんです。きっと私が他の方より少し恵まれているから気に食わなかったんだと思います」
「そうですか……」
俺は真っ直ぐ前を見たまま感情を出さずに答えた。
「あと、本当かわかりませんが……」
チラチラっとうかがうように視線を向ける。
話を聞いてほしそうな態度に心の中でため息をついた。
「何か?」
「最近ローズさんには良くない噂があるのを知っていますか?」
ジュリアが待ってましたとばかりに前のめりに話し出した。
「噂?」
ジュリアは興味を持った事にクスッと口の端を持ち上げる。
「ええ、何やらローズさんの周りにはいつも決まった男の人がいるそうです」
「男……」
そう聞いて速度が少し遅くなる。
ローズに限ってそんな事はと思うが彼女を知れば知るほどに好きになる人も多いのではと不安になった。
そんな俺の顔にジュリアは楽しそうに話し出す。
「ロイ王子の婚約者候補としては有るまじき事ですよね」
「その……男っていうのは?」
気になってジュリアをみて先を促す。
「私のお友達が見たらしいのです。ローズさんの部屋から出てくる細身の男性の姿を!」
「細身……」
俺は自分の周りにいる男達を思い出す。
ロイはさすがに違うだろうし、スチュアートさんも執事としていても不思議はない。あとローズの部屋に近づく男……
門番と城下で会ったロドムを思い出した。
「あいつか?」
いや、あいつは細身と言うよりはチビだ、特徴的に合わない。
ロドムも細身だが来るなら従者の姿をするだろう。
他にもいるのかとモヤモヤしながら考える。
「かなり見目麗しい方だと言っておりました」
「そうか……」
自分の知らないローズの交流関係に胸がザワつく。
するとそんな浮かない顔の俺にジュリアはそっと頭を寄りかけた。
「ですからカイル様もロイ王子にも気をつけるように言おうかと迷っておりました。本当はこんな事言いたくないのに……」
突然の事に黙ってしまった。
いつもならこんな事をされれば卒倒するか気持ち悪くなりそうだが平気だった。
ローズとの出会いでこんなにも自分が変わった事にも内心驚いていた。
そんなローズに近づきたい男はそりゃいるだろう。
クスッと笑ってしまった。
「すみません、余計な事を」
ジュリアは俺の気持ちには気が付かずにまだ話をしていた。
「言う事はそれだけか?」
これ以上不快な会話を続けたくなくて俺は話を終了した。
「えっ……ええ」
拍子抜けしたようなジュリアを無視して先を急いだ。
「では、ちょうど着いたようだ後は頼むぞ」
医務室の前でジュリアを下ろすと従者に引き渡す。
早くこの場を去りたかったので、下ろすなり声もかけずに後ろを向く。
「カ、カイル様! お礼をしたいのでよかったら後で部屋に寄って下さい!」
ジュリアが引き止めようと声をかけてきた。
「結構だ、足が痛いんだろ? ゆっくり休んでくれ」
「ま、待って!」
ジュリアの引き止める声を無視して急いで走り走り出した。
俺は、極力ジュリアを見ないように運びながら先程何があったのか探りをいれる。
ジュリアは小さな声でボソボソと話し出した。
「私達があそこを通っていたらローズさんが急に声をかけてきて私達に難癖を言ってきたんです。きっと私が他の方より少し恵まれているから気に食わなかったんだと思います」
「そうですか……」
俺は真っ直ぐ前を見たまま感情を出さずに答えた。
「あと、本当かわかりませんが……」
チラチラっとうかがうように視線を向ける。
話を聞いてほしそうな態度に心の中でため息をついた。
「何か?」
「最近ローズさんには良くない噂があるのを知っていますか?」
ジュリアが待ってましたとばかりに前のめりに話し出した。
「噂?」
ジュリアは興味を持った事にクスッと口の端を持ち上げる。
「ええ、何やらローズさんの周りにはいつも決まった男の人がいるそうです」
「男……」
そう聞いて速度が少し遅くなる。
ローズに限ってそんな事はと思うが彼女を知れば知るほどに好きになる人も多いのではと不安になった。
そんな俺の顔にジュリアは楽しそうに話し出す。
「ロイ王子の婚約者候補としては有るまじき事ですよね」
「その……男っていうのは?」
気になってジュリアをみて先を促す。
「私のお友達が見たらしいのです。ローズさんの部屋から出てくる細身の男性の姿を!」
「細身……」
俺は自分の周りにいる男達を思い出す。
ロイはさすがに違うだろうし、スチュアートさんも執事としていても不思議はない。あとローズの部屋に近づく男……
門番と城下で会ったロドムを思い出した。
「あいつか?」
いや、あいつは細身と言うよりはチビだ、特徴的に合わない。
ロドムも細身だが来るなら従者の姿をするだろう。
他にもいるのかとモヤモヤしながら考える。
「かなり見目麗しい方だと言っておりました」
「そうか……」
自分の知らないローズの交流関係に胸がザワつく。
するとそんな浮かない顔の俺にジュリアはそっと頭を寄りかけた。
「ですからカイル様もロイ王子にも気をつけるように言おうかと迷っておりました。本当はこんな事言いたくないのに……」
突然の事に黙ってしまった。
いつもならこんな事をされれば卒倒するか気持ち悪くなりそうだが平気だった。
ローズとの出会いでこんなにも自分が変わった事にも内心驚いていた。
そんなローズに近づきたい男はそりゃいるだろう。
クスッと笑ってしまった。
「すみません、余計な事を」
ジュリアは俺の気持ちには気が付かずにまだ話をしていた。
「言う事はそれだけか?」
これ以上不快な会話を続けたくなくて俺は話を終了した。
「えっ……ええ」
拍子抜けしたようなジュリアを無視して先を急いだ。
「では、ちょうど着いたようだ後は頼むぞ」
医務室の前でジュリアを下ろすと従者に引き渡す。
早くこの場を去りたかったので、下ろすなり声もかけずに後ろを向く。
「カ、カイル様! お礼をしたいのでよかったら後で部屋に寄って下さい!」
ジュリアが引き止めようと声をかけてきた。
「結構だ、足が痛いんだろ? ゆっくり休んでくれ」
「ま、待って!」
ジュリアの引き止める声を無視して急いで走り走り出した。
321
お気に入りに追加
8,926
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。