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113.甘いお菓子※

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「ローズ様は何をお作りになるのですか?」

料理人が材料の準備を始める私に声をかけながら手元を覗き込んできた。

「クレアさんから日持ちがするものがいいとの事なので一つはフロランタンを作ります。この前森に行った時に実を見つけたので!」

「も、森?  ローズ様が森に行かれたのですか?」

「あ、あのお散歩で少し……」

ごにょごにょと誤魔化しながら話している。
多分普通の令嬢は森になど行かないのだろう。

「ほら、ローズ様サッサとやらないと皆さんのご迷惑になりますから!」

クレアさんが助け舟を出してくれて先を促した。

「フロランタンとあとは何を?」

「珍しい果物のケーキを作ります。これは果実が少ないのでぶっつけ本番で!」

「へぇ~珍しい果物ってなんですか?」

「名前は知らないんですけど凄く美味しいですよ」

「それは見てみたいですね」

料理人達が興味津々で聞いてくる。

「すみません、それはいまスチュアートさんに預かってもらっているんです」

見せられない事が申し訳なくて謝った。

「もしお茶会で余ったら持ってきますね」

「それは楽しみです」

料理人達と喋りながらも手を動かしながら生地を作っているとまじまじと見つめられる。

「な、なんでしょう?  何かおかしかったですか?」

手順を確認するが間違った様子はなかった。

「いえ、ローズ様は本当にお料理が得意なんですね」

料理人達が私の手際の良さを褒めて感心してくれた。

「いえ、皆さんには敵いません」

そうは言いながらも褒められて嬉しくていつもより多めに生地を混ぜる。

料理人達にも手伝って貰い、楽しく喋りながらフロランタンを焼き上げた。

「クレアさん、皆さんお味見よろしくお願いします」

私はフロランタンを一口大に切るとみんなの前に持っていく。

「まずはクレアさんどうぞ」

料理長がクレアさんに場所を譲った。

「では」

クレアさんが一つ取ると上品に口に運ぶと、カリッといい音が厨房に響く。

私はなんだか緊張してゴクッと息を飲みこみクレアさんの反応を待った。

ゴクンッ。

クレアさんが目を閉じながら噛み締めるように口を動かして最後に飲み込むと目を開けて私を見つめる。

「大変美味しくできてますよ」

何も言うことはないと微笑んだ。

緊張が一気に解けてホッと胸を撫で下ろす。

「みなさんもよかったら」

待っていた料理人達が手を伸ばした。

「では、失礼して」

料理人達もローズの作ったフロランタンを食べるとほっこりと微笑んだ。

「本当に美味しいです。素人とは思えませんね」

「ローズ様のように優しい味がします」

みんなに褒められて私は得意げに胸を張った。

「それはクレアさんのおかげです!  ここに来てからクレアさんのケーキ作りを教えてもらいましたからお菓子作りの腕が上がったんですよ」

私は自信満々に答えた。

「クレアさんの仕込みなら納得ですね」

私も味を確認する為に一つ口に入れると香ばしいザクザクとした食感に上品な甘さがもう一枚と食べたくなる。

「うん!  美味しいです、でももっと甘さをおさえた方がいいでしょうか?」

私はみんなに意見を聞いた。

「私は甘いほうが好きですからこのままで十分だと思います。でももう一つのケーキが甘めならこちらはもう少し抑えてもいいかもしれませんね」

「なるほど!」

私はうんうんと真剣に頷きながらみんなの話を聞いて回った。

「確かに甘い物ばかりだと飽きそうですからね~」

「このお茶会、甘い物が苦手な人は大変ですね」

料理人達が何気なくそんな事を口にした。

「甘い物が好きでも連日続けば嫌になりそうですね」

私は静かに料理人達の話に耳を傾ける。

「そっか、嫌にね……」

うーんと考え込みながらもう一つフロランタンを口に入れた。
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