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豆まき
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「ベイカーさん!今日は節分だよ!」
「おお、もうそんな時期か、今年の鬼は誰だ?」
私が広めた催し物にベイカーさんが慣れつつあった。
「今年はどうしましょうか?この前はベイカーさんとアランでしたよね」
セバスさんが豆を用意しながら鬼を誰にしようかと考えている。
「今年は俺は嫌だぞ!この前は散々な目にあったからな…」
「俺もパスだ!今年はやってない奴にしろよ!」
「では私がやりましょうか?」
セバスさんがしょうがないと手を上げると
「セバスか…本物の登場だな…」
アランさんがゴクリと唾を飲み込むと…
「シッ!アランさん声がでかいぞ…」
ベイカーさんが慌ててアランさんに注意した。
「また二人ともそんな事言って~」
私が注意していると…
「それならまたあなた達がやりますか?」
「「ひっ!」」
すぐ後ろにセバスさんが立っていた。
ベイカーさんとアランさんが文字通り飛び跳ねる!
「い、いや!セバスさんだと豆が当たるか心配だと思って…」
「そうそう!それに変なところに当たっても怒るなよ!」
「別にそんな事で怒りませんよ…まぁ誰が何発当てたか正確に覚えておく必要はありそうですが…」
セバスさんの笑顔に二人は鬼の変更を申し出た!
「ダメだダメだ!今年の鬼はくじにしよう!」
「それもいいね!じゃあ私がくじを作るよ!ベイカーさん達は参加者集めといてね~」
私は一旦ベイカーさん達と別れると…
「ではミヅキさんのお手伝いは私がしましょうか?」
セバスさんがおいでとギルドの自分の部屋を貸してくれた。
「どんなくじがいいかなぁ~」
箱タイプ?あみだくじ?何にしようかと考える。
「そうだ!あれにしよう」
私は木を取り出すと細い棒に削って加工する。
「串ですか?」
セバスさんが私が作った棒を見て首を傾げる。
「これの先端に色をつけてそれを引いた人が鬼です!後で串としても使えるし一石二鳥ですよね!」
「ふふふ、わかりました。では木をそのように加工すればいいのですね?」
「はい!お願いします!」
私はセバスさんにもう一本木を取り出して渡した。
セバスさんとひたすら串を作り容器に入れていく、何人集まるかわからないのでとりあえず沢山作っておくことにした。
「ふ~、このくらいでいいですかね?」
「大丈夫でしょう、ざっと百本ほどありそうです。作りすぎましたかね?」
セバスさんが苦笑する。
「余ったら閉まっておきますから!それで鬼は何人くらいにしましょうか?」
「前はあの二人でなかなか当てられない人もいましたからね、今年は少し多めにしておきましょうか?」
「じゃあ…五人くらいかな」
私は串を五本取り出すと先端に赤い染料を付けて色を塗る。
「これで後は参加人数分混ぜて引かせれば大丈夫ですね」
「では行きましょうか?そろそろ人も集まっているでしょうから」
私は頷くとセバスさんと外に出て驚いた!
そこにはギルド中の冒険者達が揃っていた。
「えっ!?これみんな参加者?」
「おお、ミヅキいたいた!」
ベイカーさん達が私達を見つけてそばに駆け寄ってきた。
「なんか凄い人数なんだけど…」
「いやぁ声かけたらみんな面白そうだとどんどん声掛けやがってさ、それでくじはできたのか?」
「うん!これだと…五十本くらいですかね?」
私はセバスさんを見ると…
「そうですね…ざっと数えましたが五十五人ですね」
「え?この一瞬で数えたんですか?」
「はい、だいたいギルドのパーティを組んでるもの同士で参加のようですから大体は把握してますので」
さすが出来る副ギルだ!
改めて尊敬する。
「よし!じゃあ早速くじを引こうぜ!恨みっこなしな!」
「おーい!お前らくじを引くから並べー!」
ベイカーさんとアランさんが声をかけるとみんなが集まってきた。
「ではギルド主催の豆まきを始めまーす!皆さん知ってると思いますがこれは鬼に豆をあてて撃退して今年一年健康で幸せになるように悪いものを追い出すと言う意味でやるんですよ」
「はーい!まぁようは豆で鬼を追い出すんだよな」
「では今年は鬼は五人です!この串を引いて先端に赤い色が着いてる人が当たり!鬼をやりますよー」
「ええ!セバスさんがやるって聞いたんですけど違うんですか!?」
「俺はベイカーさんがやるって聞きました!だから参加したのに」
「おい!それはどういう意味だ!」
ベイカーさんが拳を振り上げる!
「まぁまぁ!今年は鬼は平等にくじにしました!誰が当たっても恨みっこなしですよー!豆はギルドの受付のお姉様達が配ってますのでくじを引いたら貰ってください!」
「よし!絶対に鬼は引かんぞ!」
「アランさんが当たりますように!!」
冒険者達は各々祈るように手を合わせた。
「では…まずはミヅキさんからいきますか?」
セバスさんが私にくじを差し出した。
「よーし!」
私がくじを引こうとすると…
【待てミヅキ!俺達も参加していいか?】
シルバが待ったと声をかけた。
【ん?シルバ達も】
見るとシルバ、プルシア、コハク、ムーが参加したいと並んでいる。
【あれ?シルクとレムは?】
【僕達はいいや~的が小さいし羽に当たったら困るからね】
シンクが首を振る。
【レムは?】
【私は豆が握れないので…発射することはできますが…】
レムがだからいいと首を振った。
【発射?どうやるの?】
私は気になって豆を借りるとレムに渡した。
レムは豆を食べると腕を持ち上げ近くの木に向かって腕を伸ばした。
【発射!】
するとレムの腕から豆が飛び出した!
ズドドドド!!
豆は連射して飛び出すと木を貫通して奥の建物を直撃する!
そこには凹んだ跡が出来ていた。
【す、凄い威力…】
「お、おい!ミヅキなんだ今のは!」
ベイカーさん達がレムの豆鉄砲驚いている…冒険者達は口を開けて綺麗に穴の空いた木を見つめていた。
【ですので今回は辞退します】
「レム…は豆を投げるとこうなっちゃうので今回は不参加だそうです…その代わりシルバ達も参加したいと…」
「な、なんだ…いやあれは反則だろ…絶対に怪我じゃすまないぞ」
「ま、まぁ気を取り直して!じゃあくじ引くよー」
私は話を逸らそうとクジに手を伸ばした。
「よし!これだ!」
一本掴んで引っこ抜くと…
「あ!当たりだ!…って事は今年は私が鬼!?」
「ミヅキちゃんが鬼…」
【よし!ミヅキが鬼なら俺も鬼だな!】
続いてシルバが一本咥えると…
【やった!ミヅキと一緒だ!】
シルバの串も色付きだった。
【えー!!ミヅキもシルバおじちゃんも鬼かぁ~】
続いてコハクが一本取る。
【あー!ぼくも鬼だよ!】
コハクが嬉しそうに串を見せる。
「え?続けて三本連続?本当に塗ってないのあるのか?」
ベイカーさんが残りのくじを確認するが確かにあと二本だけ色付きが入っているだけだった。
【では私が…】
プルシアも引いてみると…
【うむ、鬼だな】
やはり当たりがでる!
【これは…ミヅキのスキルのせいかもな】
【え?そうなの?】
【ミヅキが引けば絶対に当たりが出るだろうからな…従魔の俺達にもその加護がでたんだろ】
プルシアが苦笑する。
「おいおい!ミヅキ達が鬼かよ…あと一人は…」
「では私からいいですか?」
セバスさんが手を伸ばすと…
「まて!嫌な予感がするから次は俺だ!」
ベイカーさんがセバスさんを無視して自分が先に引く。
「あー…ハズレか…いや!いいのか?鬼じゃないんだから…」
ややこしいなとベイカーさんはハズレのくじを回収箱に戻す。
「じゃあ次は俺だ!」
アランさんが引くがハズレ!
「じゃあ次こそ私が…」
セバスさんがじっくりとくじを見つめると…
「では、コレです」
一本選んでゆっくりと引き抜くと…
「やっぱり…」
串の先端をみてベイカーが呟いた。
「セバスが鬼かよ」
アランさんが複雑な表情をする。
「おや、私が当たりました。ミヅキさんおそろいですね」
「うん!セバスさん!シルバ達も頑張って鬼やろうね!」
「はい」
セバスさんは嬉しそうに笑うと…
「では皆さん私達は逃げますので豆を当てて下さいね。制限時間は持ち豆が無くなるまでとします。頑張って鬼を撃退しましょう」
「は、はい…」
冒険者達は今年の鬼達をみて顔をひきつらせた。
私達鬼組はバラけてみんなが来るのを待っていると…
「鬼はー外!」
声が聞こえてきた!
「きたきた!」
私が待ち構えていると…
「げっ!ミヅキちゃんの鬼かよ…」
出くわした冒険者達が私を見て立ち止まった!
さぁ来いとばかりに笑顔で手を広げていると…
「お、鬼は~そと、福は~家!」
冒険者達はそっと豆を私の手前に落とした…
「はっ?」
全然当たらないどころか届いてもない!みんなやる気あるの!?
「皆さん!届いてませんよ!ほら気にせず当てて下さい!」
「だ、だけど…」
冒険者達は顔を見合わせている。
「大丈夫です!皆さんの健康の為にさぁ当てて!」
私が近づくと…
「ええい!どうにでもなれ!鬼は外!」
冒険者達がやけくそに豆を巻いた!
「いたーい!逃げろ~」
私は痛がる振りをしてみんなから逃げると…
【ミヅキ!大丈夫か!】
私の声にシルバが声をかけてくる。
【大丈夫だよー!痛がる振りだから!】
心配ないと声をかける。
【そうか…まぁ本当に痛かったら言うんだぞ!】
【はーい】
私は適当に返事をして次のターゲットへと向かった!
ミヅキが居なくなると…
「ふー…」
冒険者達はため息をつく。
「ミヅキちゃんに豆を投げるなんて罪悪感半端ないぞ!」
「ええ、しかもなんかすっごい視線を感じるし…さっきから悪寒が止まらない」
冒険者達はキョロキョロと周りを見ると…
にっこり…
こちらをみて笑うセバスさんと目が合った。
やば…やはり思いっきり当てなくてよかった…
冒険者達は手加減した自分達の行為は間違っていなかったとほっとする。
「よ、よし次はセバスさんに撒きに行くか!」
「そ、そうですね!こんな機会でないと豆なんて投げられませんし…」
冒険者達は恐る恐るセバスさんの元に向かった。
結果豆を巻き終わった冒険者達はどっと疲れて座り込む。
「今年の鬼は卑怯だ…」
「あんなの当てられるかよ…」
今年の豆まきを振り返る。
シルバは豆を投げると…ぱくっ!
見事に全て口の中へと吸い込まれていく。
【うむ!もぐもぐ!美味い!もっと投げろ!】
コハクは人型となってぴょんぴょん飛び跳ねながら逃げていると…
「コハクちゃん行くよ~」
冒険者のお姉さん達に大人気だった。
山なりの豆をひょいひょいと避けて楽しそうに駆け回っていた。
プルシアは…
「鬼は外!」
冒険者達の豆をヒラヒラとかわす、時折豆を食らうと…
コツン!
固い鱗に弾き返され逆に豆が投げた人に返ってくる。
ムーはその体に全ての豆を吸収していた。
そして最後にセバスさんは…
「はい、今年の豆まきもお疲れ様でした。後でギルドの方でミヅキさん特製のけんちん汁のご褒美がありますので受け取って帰ってくださいね…あとアラン…あなた豆を巻く時にセバス覚悟と言って豆を撒きましたね?」
「い、いや!そんな事言ってないぞ…気のせいでは?」
アランさんが口笛をふく。
「そうですか…ってあなたのその大きな声を間違えるはずありません。後で私の部屋に来るように…」
セバスさんがにっこりと笑うと他の人達がほっと息をはいた。
「ああ、あと必要以上に豆をぶつけてきたあなた……」
セバスさんがじっと冒険者達を見つめる…
ギクッ!
すると何人かの肩がビクッと動いた。
「あなた達も後で部屋に来るように」
肩を揺らした冒険者達が一斉に項垂れた。
「やっぱり鬼だった…」
お咎めナシだったベイカーは豆を思いっきり当てなくて良かったと心底ほっとした。
「そりゃ思いっきり当てたら痛いもんね!あー!楽しかった!また次も鬼がしたいな!」
私が鬼役を気に入ると…
「「もう勘弁してください!」」
冒険者達からやめてくれと声があがる。
その年から私とシルバ達、セバスさんの鬼役は禁止となってしまった。
「おお、もうそんな時期か、今年の鬼は誰だ?」
私が広めた催し物にベイカーさんが慣れつつあった。
「今年はどうしましょうか?この前はベイカーさんとアランでしたよね」
セバスさんが豆を用意しながら鬼を誰にしようかと考えている。
「今年は俺は嫌だぞ!この前は散々な目にあったからな…」
「俺もパスだ!今年はやってない奴にしろよ!」
「では私がやりましょうか?」
セバスさんがしょうがないと手を上げると
「セバスか…本物の登場だな…」
アランさんがゴクリと唾を飲み込むと…
「シッ!アランさん声がでかいぞ…」
ベイカーさんが慌ててアランさんに注意した。
「また二人ともそんな事言って~」
私が注意していると…
「それならまたあなた達がやりますか?」
「「ひっ!」」
すぐ後ろにセバスさんが立っていた。
ベイカーさんとアランさんが文字通り飛び跳ねる!
「い、いや!セバスさんだと豆が当たるか心配だと思って…」
「そうそう!それに変なところに当たっても怒るなよ!」
「別にそんな事で怒りませんよ…まぁ誰が何発当てたか正確に覚えておく必要はありそうですが…」
セバスさんの笑顔に二人は鬼の変更を申し出た!
「ダメだダメだ!今年の鬼はくじにしよう!」
「それもいいね!じゃあ私がくじを作るよ!ベイカーさん達は参加者集めといてね~」
私は一旦ベイカーさん達と別れると…
「ではミヅキさんのお手伝いは私がしましょうか?」
セバスさんがおいでとギルドの自分の部屋を貸してくれた。
「どんなくじがいいかなぁ~」
箱タイプ?あみだくじ?何にしようかと考える。
「そうだ!あれにしよう」
私は木を取り出すと細い棒に削って加工する。
「串ですか?」
セバスさんが私が作った棒を見て首を傾げる。
「これの先端に色をつけてそれを引いた人が鬼です!後で串としても使えるし一石二鳥ですよね!」
「ふふふ、わかりました。では木をそのように加工すればいいのですね?」
「はい!お願いします!」
私はセバスさんにもう一本木を取り出して渡した。
セバスさんとひたすら串を作り容器に入れていく、何人集まるかわからないのでとりあえず沢山作っておくことにした。
「ふ~、このくらいでいいですかね?」
「大丈夫でしょう、ざっと百本ほどありそうです。作りすぎましたかね?」
セバスさんが苦笑する。
「余ったら閉まっておきますから!それで鬼は何人くらいにしましょうか?」
「前はあの二人でなかなか当てられない人もいましたからね、今年は少し多めにしておきましょうか?」
「じゃあ…五人くらいかな」
私は串を五本取り出すと先端に赤い染料を付けて色を塗る。
「これで後は参加人数分混ぜて引かせれば大丈夫ですね」
「では行きましょうか?そろそろ人も集まっているでしょうから」
私は頷くとセバスさんと外に出て驚いた!
そこにはギルド中の冒険者達が揃っていた。
「えっ!?これみんな参加者?」
「おお、ミヅキいたいた!」
ベイカーさん達が私達を見つけてそばに駆け寄ってきた。
「なんか凄い人数なんだけど…」
「いやぁ声かけたらみんな面白そうだとどんどん声掛けやがってさ、それでくじはできたのか?」
「うん!これだと…五十本くらいですかね?」
私はセバスさんを見ると…
「そうですね…ざっと数えましたが五十五人ですね」
「え?この一瞬で数えたんですか?」
「はい、だいたいギルドのパーティを組んでるもの同士で参加のようですから大体は把握してますので」
さすが出来る副ギルだ!
改めて尊敬する。
「よし!じゃあ早速くじを引こうぜ!恨みっこなしな!」
「おーい!お前らくじを引くから並べー!」
ベイカーさんとアランさんが声をかけるとみんなが集まってきた。
「ではギルド主催の豆まきを始めまーす!皆さん知ってると思いますがこれは鬼に豆をあてて撃退して今年一年健康で幸せになるように悪いものを追い出すと言う意味でやるんですよ」
「はーい!まぁようは豆で鬼を追い出すんだよな」
「では今年は鬼は五人です!この串を引いて先端に赤い色が着いてる人が当たり!鬼をやりますよー」
「ええ!セバスさんがやるって聞いたんですけど違うんですか!?」
「俺はベイカーさんがやるって聞きました!だから参加したのに」
「おい!それはどういう意味だ!」
ベイカーさんが拳を振り上げる!
「まぁまぁ!今年は鬼は平等にくじにしました!誰が当たっても恨みっこなしですよー!豆はギルドの受付のお姉様達が配ってますのでくじを引いたら貰ってください!」
「よし!絶対に鬼は引かんぞ!」
「アランさんが当たりますように!!」
冒険者達は各々祈るように手を合わせた。
「では…まずはミヅキさんからいきますか?」
セバスさんが私にくじを差し出した。
「よーし!」
私がくじを引こうとすると…
【待てミヅキ!俺達も参加していいか?】
シルバが待ったと声をかけた。
【ん?シルバ達も】
見るとシルバ、プルシア、コハク、ムーが参加したいと並んでいる。
【あれ?シルクとレムは?】
【僕達はいいや~的が小さいし羽に当たったら困るからね】
シンクが首を振る。
【レムは?】
【私は豆が握れないので…発射することはできますが…】
レムがだからいいと首を振った。
【発射?どうやるの?】
私は気になって豆を借りるとレムに渡した。
レムは豆を食べると腕を持ち上げ近くの木に向かって腕を伸ばした。
【発射!】
するとレムの腕から豆が飛び出した!
ズドドドド!!
豆は連射して飛び出すと木を貫通して奥の建物を直撃する!
そこには凹んだ跡が出来ていた。
【す、凄い威力…】
「お、おい!ミヅキなんだ今のは!」
ベイカーさん達がレムの豆鉄砲驚いている…冒険者達は口を開けて綺麗に穴の空いた木を見つめていた。
【ですので今回は辞退します】
「レム…は豆を投げるとこうなっちゃうので今回は不参加だそうです…その代わりシルバ達も参加したいと…」
「な、なんだ…いやあれは反則だろ…絶対に怪我じゃすまないぞ」
「ま、まぁ気を取り直して!じゃあくじ引くよー」
私は話を逸らそうとクジに手を伸ばした。
「よし!これだ!」
一本掴んで引っこ抜くと…
「あ!当たりだ!…って事は今年は私が鬼!?」
「ミヅキちゃんが鬼…」
【よし!ミヅキが鬼なら俺も鬼だな!】
続いてシルバが一本咥えると…
【やった!ミヅキと一緒だ!】
シルバの串も色付きだった。
【えー!!ミヅキもシルバおじちゃんも鬼かぁ~】
続いてコハクが一本取る。
【あー!ぼくも鬼だよ!】
コハクが嬉しそうに串を見せる。
「え?続けて三本連続?本当に塗ってないのあるのか?」
ベイカーさんが残りのくじを確認するが確かにあと二本だけ色付きが入っているだけだった。
【では私が…】
プルシアも引いてみると…
【うむ、鬼だな】
やはり当たりがでる!
【これは…ミヅキのスキルのせいかもな】
【え?そうなの?】
【ミヅキが引けば絶対に当たりが出るだろうからな…従魔の俺達にもその加護がでたんだろ】
プルシアが苦笑する。
「おいおい!ミヅキ達が鬼かよ…あと一人は…」
「では私からいいですか?」
セバスさんが手を伸ばすと…
「まて!嫌な予感がするから次は俺だ!」
ベイカーさんがセバスさんを無視して自分が先に引く。
「あー…ハズレか…いや!いいのか?鬼じゃないんだから…」
ややこしいなとベイカーさんはハズレのくじを回収箱に戻す。
「じゃあ次は俺だ!」
アランさんが引くがハズレ!
「じゃあ次こそ私が…」
セバスさんがじっくりとくじを見つめると…
「では、コレです」
一本選んでゆっくりと引き抜くと…
「やっぱり…」
串の先端をみてベイカーが呟いた。
「セバスが鬼かよ」
アランさんが複雑な表情をする。
「おや、私が当たりました。ミヅキさんおそろいですね」
「うん!セバスさん!シルバ達も頑張って鬼やろうね!」
「はい」
セバスさんは嬉しそうに笑うと…
「では皆さん私達は逃げますので豆を当てて下さいね。制限時間は持ち豆が無くなるまでとします。頑張って鬼を撃退しましょう」
「は、はい…」
冒険者達は今年の鬼達をみて顔をひきつらせた。
私達鬼組はバラけてみんなが来るのを待っていると…
「鬼はー外!」
声が聞こえてきた!
「きたきた!」
私が待ち構えていると…
「げっ!ミヅキちゃんの鬼かよ…」
出くわした冒険者達が私を見て立ち止まった!
さぁ来いとばかりに笑顔で手を広げていると…
「お、鬼は~そと、福は~家!」
冒険者達はそっと豆を私の手前に落とした…
「はっ?」
全然当たらないどころか届いてもない!みんなやる気あるの!?
「皆さん!届いてませんよ!ほら気にせず当てて下さい!」
「だ、だけど…」
冒険者達は顔を見合わせている。
「大丈夫です!皆さんの健康の為にさぁ当てて!」
私が近づくと…
「ええい!どうにでもなれ!鬼は外!」
冒険者達がやけくそに豆を巻いた!
「いたーい!逃げろ~」
私は痛がる振りをしてみんなから逃げると…
【ミヅキ!大丈夫か!】
私の声にシルバが声をかけてくる。
【大丈夫だよー!痛がる振りだから!】
心配ないと声をかける。
【そうか…まぁ本当に痛かったら言うんだぞ!】
【はーい】
私は適当に返事をして次のターゲットへと向かった!
ミヅキが居なくなると…
「ふー…」
冒険者達はため息をつく。
「ミヅキちゃんに豆を投げるなんて罪悪感半端ないぞ!」
「ええ、しかもなんかすっごい視線を感じるし…さっきから悪寒が止まらない」
冒険者達はキョロキョロと周りを見ると…
にっこり…
こちらをみて笑うセバスさんと目が合った。
やば…やはり思いっきり当てなくてよかった…
冒険者達は手加減した自分達の行為は間違っていなかったとほっとする。
「よ、よし次はセバスさんに撒きに行くか!」
「そ、そうですね!こんな機会でないと豆なんて投げられませんし…」
冒険者達は恐る恐るセバスさんの元に向かった。
結果豆を巻き終わった冒険者達はどっと疲れて座り込む。
「今年の鬼は卑怯だ…」
「あんなの当てられるかよ…」
今年の豆まきを振り返る。
シルバは豆を投げると…ぱくっ!
見事に全て口の中へと吸い込まれていく。
【うむ!もぐもぐ!美味い!もっと投げろ!】
コハクは人型となってぴょんぴょん飛び跳ねながら逃げていると…
「コハクちゃん行くよ~」
冒険者のお姉さん達に大人気だった。
山なりの豆をひょいひょいと避けて楽しそうに駆け回っていた。
プルシアは…
「鬼は外!」
冒険者達の豆をヒラヒラとかわす、時折豆を食らうと…
コツン!
固い鱗に弾き返され逆に豆が投げた人に返ってくる。
ムーはその体に全ての豆を吸収していた。
そして最後にセバスさんは…
「はい、今年の豆まきもお疲れ様でした。後でギルドの方でミヅキさん特製のけんちん汁のご褒美がありますので受け取って帰ってくださいね…あとアラン…あなた豆を巻く時にセバス覚悟と言って豆を撒きましたね?」
「い、いや!そんな事言ってないぞ…気のせいでは?」
アランさんが口笛をふく。
「そうですか…ってあなたのその大きな声を間違えるはずありません。後で私の部屋に来るように…」
セバスさんがにっこりと笑うと他の人達がほっと息をはいた。
「ああ、あと必要以上に豆をぶつけてきたあなた……」
セバスさんがじっと冒険者達を見つめる…
ギクッ!
すると何人かの肩がビクッと動いた。
「あなた達も後で部屋に来るように」
肩を揺らした冒険者達が一斉に項垂れた。
「やっぱり鬼だった…」
お咎めナシだったベイカーは豆を思いっきり当てなくて良かったと心底ほっとした。
「そりゃ思いっきり当てたら痛いもんね!あー!楽しかった!また次も鬼がしたいな!」
私が鬼役を気に入ると…
「「もう勘弁してください!」」
冒険者達からやめてくれと声があがる。
その年から私とシルバ達、セバスさんの鬼役は禁止となってしまった。
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皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
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「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
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