上 下
22 / 80

入れ替わり1

しおりを挟む
「はぁ~」

ミヅキは目が覚めて立ち上がると…いつもより高い目線に違和感を覚えた…

(あれ?家具が小さくなってる?)

シルバ達が側に居ないし…何故かベイカーさんのベットで寝ていたようだった…。

「あれ?」

声を出すと、いつもと違う低い声にびっくりして口を抑える。

(なに?今の声…)

そっと手を離すと…

「あー…」

やっぱり自分の声じゃない…

「べ、ベイカーさん!」

ミヅキが大声を上げると…

ガターン!

奥で何かが倒れる音が響いた。

何事かと一歩足を出すと…いつもよりも進む距離に扉にぶつかりそうになる…

「きゃぁ!」

野太い声で悲鳴を上げると…

「ミヅキー!」

自分に似た声が自分の名前を呼んでいる…

(えっ?なに?何がおきたの?)

ミヅキはおぼつかない足取りで自分の部屋へと向かうと…そこにはシルバに睨まれている自分の姿があった…。

「シルバ!」

【…ベイカーじゃないな…その気配…ミヅキか!?】

シルバが自分に話しかける言葉に違和感を覚える…

【シルバ何言ってるの?それになんで私がいるの?】

ミヅキが自分の姿を見つめると…

「俺?」

【お前…ベイカーなのか?】

シルバがミヅキの姿の方に向かって驚きの表情を見せる…。


落ち着いて皆で座り話を整理すると…。

「つまり…ミヅキと俺が入れ替わったって事だな…」

「へー!ベイカーさんの目線てこんな高いんだー」

ミヅキが立ち上がりキョロキョロと周りを見ていると…

「ミヅキ…座ってくれ、何だか自分がやってると気馬鹿みたいだ…」

ベイカーさんが自分の体の足をつんつんと引っ張っていると…

【ミヅキ…早く戻さないと…ミヅキの体だが…気配が違うし…ベイカーの体でミヅキの気配…嫌だ!】

シルバがガクッと項垂れる…

「シルバはどうしたんだ?」

ベイカーさんが聞いてくるので説明すると…

「俺だって嫌だわ!俺の体でシルバに抱きつくなよ!」

「えー!駄目なの!シルバに触れないなんて…耐えられない…」

ミヅキが両手を顔に当てて膝を折ると…ミヅキの姿のベイカーがブルっと震える…。

「やめてくれ…気持ち悪い…直ぐにどうにか直す方法を考えないと…とりあえずセバスさんに相談するか…」

「じゃ急いでギルドに行こうよ!」

ミヅキは立ち上がると…

ガン!

戸棚に頭をぶつける…

「いたーい!」

大きな体で蹲ると…

「ミヅキ、大丈夫か?体が大きくなってるから気をつけろよ」

「うっうう…うん…」

べソをかいてゆっくり立ち上がると周りに気をつけながら家を出た…。

ミヅキ姿のベイカーさんを先頭に歩いていると…

「ミヅキちゃん!ベイカーさんこんにちは~」

ギルドの冒険者が声をかけてきた…

「こんにちは~」

「おう!」

「へっ?ミ、ミヅキちゃん…今…おうって…」

ミヅキからの男らしい返事に戸惑っていると…

「あっ!えーとこんにちは~」

ベイカーは言い直してニッコリと笑うと…

ゾクッ…

「なっ…なんだろ?いま寒気がしたぞ…」

冒険者はキョロキョロと周りを見るが…周りに変わった様子はない…

「ベイカーさん、ミヅキちゃんすみません…何だか寒気がして…今日はゆっくり休む事にします…じゃまた…」

冒険者はくるっと来た道を引き返して行った…

「ベイカーさん!変な返事するから驚いてたよ!」

「いや…悪い。ついいつもの調子で…」

「とりあえずお互いのフリをしながら行こうよ」

ミヅキの提案にベイカーも頷くと…

「あっ!ミヅキ、ベイカーさんこんにちはー」

コジローさんが近づいて来た…

【シルバさんもこんにちは!これからギルドですか?】

【…あ、ああ…】

「じゃ俺も一緒に行こうかな!いいかい?」

コジローがミヅキに笑いかけると…

ヒクヒク…ベイカーが笑いかけられ笑顔が引き攣る…

「ミヅキ?」

何だかいつもと様子が違うミヅキにコジローが心配そうに顔を見る…。

「どうしたんだ?大丈夫か?」

コジローがミヅキの頭に手を置こうとすると…

「うわぁー!とっ!」

凄い勢いでミヅキが後ずさった…

ミヅキの拒否反応にコジローがショックのあまり固まると…

「コジローさん!」

ベイカー姿のミヅキがコジローに駆け寄った…

「違うの!コジローさんが嫌なわけじゃないんだよ!」

ベイカーに擦り寄られコジローがビクッと体を固める…

「べ、ベイカーさん…俺…そういう趣味は…」

「はっ!俺だってお前なんてゴメンだわ!」

「ミヅキ…」

コジローが愕然と立ち尽くすと…

「ごめん…」

コジローさんが風と共に消えて行った…

「わぁー!ベイカーさんコジローさんどっか行っちゃったよー!何してんの!」

ミヅキが自分の姿のベイカーの体を叩くと…

「うわぁっ!」

ミヅキの体が後ろに吹っ飛んだ…

「えっ…」

【お、おい!】

シルバが回り込みミヅキの体を壁に激突する直前で止めると…

【ミヅキ!気をつけろよ、自分の体が怪我するぞ!】

【ごめーん!こんなに力が強いなんて…ベイカーさん凄いね…】

「自分に殺されるかと思った…」

ベイカーがはぁはぁと息を整えていると…

「回復~」

ミヅキがベイカーに回復をかけてみる…

「おお!使える!筋力とかは変わったけど…魔法とかはそのままみたいだね」

「ミヅキの体で剣なんて振り回せるかよ…これ…襲われたらどうしたらいいんだ…ミヅキ早いとこギルドに行くぞ!」

「うん!じゃ私がベイカーさん抱っこしてあげるよ、その方が早いんじゃない?」

ミヅキは自分の体を抱き上げるとギルドに向かって走り出した!

「お、おい、ちょっ、ちょっと待て…ミヅキ…」

ベイカーさんの返事も待たずにどんどん走り出すと…

「すごーい!ベイカーさんの体早く走れる!」

「嫌だぁー自分の体に抱きかかえられるなんてー」

ベイカーさんの叫び声を無視してギルドまで走り抜けた…。

ギルドにつくとベイカーさんがガクッと膝を着いて落ち込んでいると…

「ミヅキちゃんどうしたの?」

「ミヅキ大丈夫か?」

「ベイカーさんに怒られたの?」

ギルドのみんなが心配して話しかけてくれる…

「なんでもないよ~気にしないでね」

ベイカーさんがニコニコと笑顔で返事を返してくる光景に皆が怪訝な顔をする…

「ベイカーさん?ミヅキが落ち込んでるのになんで笑顔なんですか?」

「あっ!えーと…ミ、ミヅキはご飯食べられなかっただけだから…気にすんな!」

「?」

「なんか…ベイカーさん変じゃないか?」

「うん…なんかいつもよりなよっとしてるな…」

ベイカーさんからみんなが距離をとろうとすると…

「おい!セバスさんを呼んでくれ!いや!いい行くぞ!」

ミヅキが大股で歩き出すと…

「ミヅキちゃん?」

「な、なんかワイルドになった?」

「あれはあれで…」

「「はっ?」」

そんなミヅキの後を慌ててベイカーが着いて行った…。

「セバスさん!」

ベイカーさんがノックもせずにギルマスの部屋に入ると…

ギルマスとセバスが机で仕事の書類に目を通していた…

「ミヅキさん…?」

セバスさんがノックもせずに入ってきたミヅキに目を向けると…スっとギルマスの前に出る…

「あなた…ミヅキさんじゃありませんよね?」

セバスさんにニッコリと笑いかけられて、ミヅキ姿のベイカーがゾクッとする寒気に立ち止まると…

「ベイカーさん!待ってよー」

開いた扉からベイカーが入ってきた…。

「ベイカーさん?」

セバスとギルマスがミヅキとベイカーを交互にみると

「なるほど…」

セバスが頷いた…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

処理中です...