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ミヅキの気になる子

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「ベイカーさん…お話があります…。」

とミヅキが神妙な顔でベイカーの前に佇む。

「ど、どうした?なんかあったのか?」

いつもと違うミヅキの雰囲気にベイカーはのまれていた。

「ベイカーさん、私…気になる子が出来たの…」

とミヅキが頬を赤く染め恥ずかしそうに目をそらす。

ベイカーはビクッと体を固くした。

「…で、どこのどいつだ?」

とベイカーはなるべく穏やかに聞く。

「ベイカーさんも知ってる子だよ。」

とミヅキが嬉しそうに話す。
どこのどいつだ!まさかあいつじゃないだろうな!
ベイカーは金髪馬鹿の顔が浮ぶ。

「一度、ここに連れてきなさい。」

と妙な敬語で話す。

「えっ!いいの?じゃ明日連れて来ていい?」

とミヅキが楽しそうにしている。

ミシッ!
ベイカーが座っている椅子が音を立てる…。

「ああ、」

とかろうじて返事をする。
明日は早いからおやすみなさい!

とミヅキは、自分の部屋に行ってしまった。

バキッ!
ベイカーが座る椅子の肘当てが砕けた。

ベイカーはギルドへと向かった…

バン!

とギルマスの部屋をノックも無しに飛び込む。

「ギルマス!セバス!ミヅキが…。」

とベイカーがギルマス達に泣きつくと、ミヅキに好きな奴が出来たと報告する。

「それで?どこの方ですか?」

とセバスが笑顔も忘れて聞いてくる。

「それが教えてくれないんだ!連れてこいって言ったら、明日連れてくると…」

とベイカーは酒をグイッと飲んで答える。
何杯飲んでもちっとも酔えない。

「コジローに調べさせるか?」

とギルマスが言うと、ふたりが頷いた。
至急、コジローを呼び出すと、コジローが膝をつく。

「お、おい、大丈夫か?」

ベイカーが声をかけると

「あっ…すみません、覚悟はしてましたが、思いのほかショックが大きくて」

と椅子に向かって話しかけている。

「おい!コジロー俺はこっちだ!大丈夫かコイツ?」

とセバスをみると

「コジローさん。ミヅキさんの相手を調べて下さい。あなたも気になりますよね?」

とコジローを立たせる。

「ミヅキのあいて…。ミヅキの相手!ああ!分かりました。」

コジローの顔がしゃんとする。

「よろしい、ミヅキさんが選んだ相手です、素晴らしい人ならいいんです。しかし、ミヅキさんが騙されているかも知れません。なんせミヅキさんは人を疑う事を知りませんから。もし!あの馬鹿王子なんて事にでもなったら…国を出ないと行けませんしね。」

と笑うと、

「明日その方を連れてくるそうです。それまでに情報をお願いしますね」

とコジローの肩を叩く。はい!とコジローが音も立てずに出ていった。

朝になり、コジローが戻ってくるが浮かない顔をしている。

まさかとみんな青い顔をするが、コジローが首を横に振る。

「すみません、ミヅキが誰かと一緒にいたという情報は一切ありませんでした。ほぼ、ベイカーさんか、セバスさん、俺の誰かが側にいたようです。」

「私達の隙をついて会ったと言うことですか?」

「そんな奴いるか?」

とベイカーも考える。しかしもうミヅキが起きる時間だ。
ベイカーは一度家に帰ることにした。

セバスとコジローも落ち着かずついて行くことにした。

「おはよぉーございます。」

とミヅキが眠そうに起きてくる。

「「「おはよう。」」ございます。」

と三人が挨拶を返すと、ミヅキがびっくりしている。

「セバスさん?コジローさん?何してるんですか?」

とミヅキが聞くと

「いえ…ちょっとベイカーさんに用事がありまして…」

とセバスが言うと、

「えっ?今日ベイカーさんもセバスさんも忙しいですか?」

とミヅキが困ったように聞く。

「どうしたのですか?」

とセバスが聞くと
みんなに会わせたい子がいると言う。
来たか…。

着替えたら、連れてくると言う…。
三人は覚悟を決めて家で大人しく待っていた。

「ただいま~」

とミヅキが帰ってくると手に小さな動物を抱いている。

「この子がね、お家無いみたいなの!だからお家作るまで家に置いて上げていい?」

とミヅキが三人をのぞき込む。

「…会わせたい子ってこいつか?」

とベイカーがミヅキが抱っこしている、リスみたいな動物を指す。
この前道でミヅキが、撫でていた奴だった。
うん!とミヅキが頷く。

「「ベイカーさん!」」

セバスとコジローがベイカーを睨む。

「いや!だって!ミヅキがあんな言い方するから!」

と二人に待て待てと手で静止させる。

「ミヅキさん、ちょっとベイカーさんお借りしますね!」

とセバスが笑ってベイカーを連れていく。

「ミヅキまたな。」

とコジローもそれに続く。

「う、うん?またね?」

ミヅキは訳が分からず返事をした。

その後、ベイカーさんが帰ってきたのは夜遅くになってからだった。
帰るなり倒れ込み、そのまま気絶するように寝てしまった…。

【どうしたんだろ?】

とミヅキがシルバに聞くと

【さぁな】

とシルバが笑う。

【今日が何の日か知ってれば騙されなかったのにな。】

とシルバがボソッと言った。
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