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番外編【ネタバレ注意】

【ほっといて下さい】6巻刊行の番外編

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シルバ達に連れられた場所に来るなり私は目を見開いた。

「わぁ!  素敵!」

【でしょ!  この前シルバと狩りで来て見つけたんだ!】

私が喜ぶとシンクが誇らしげに胸を張る。

私達は久しぶりの長期休みにみんなでバカンスに来ていた。

いい場所はないかとシンクに相談したら海があるいい所を見つけたと案内してくれた場所がここだった。

「周りに何も無いしいいね」

少し遠くに村らしきものがあったがここで騒いでも迷惑にはならないだろう。

てことで……

「やっほー!  シルバ砂浜で競走しようぜ」

ベイカーさんも開放的な場所にテンションがあがったのかシルバを誘って走り出した。

【俺に勝負なんて片腹痛い!】

シルバは砂の走りにくさなどものともせずあっという間にベイカーさんを追い抜いて差をつける。

「もう!  ベイカーさん先に荷物の整理とかでしょー」

ベイカーさんに声をかけるがもうかなり先に行ってしまっていた。

「ミヅキ、俺が手伝うよ」

すると一緒に来ていたコジローさんが優しく声をかけてくれる。

「コジローさんありがとう。夕食のご飯大盛りにしてあげるね」

「な、なに!」

遠くからベイカーさんの声がしたと思ったら急いで戻ってきたよ。

「俺も手伝うよ!」

ご飯の事に関しては地獄耳のベイカーさんに呆れて私達は浜辺近くに泊まるための家を建てることにした。

ここには一週間ほどいる予定なのでしっかりとした家を建てる。
シルバ達の魔力も借りて快適なかなりの人数が泊まれそうな家を木魔法で建てた。

場所も場所なのでリゾートっぽくオシャレな感じにしてみる。

「うん!  いい感じだね」

「ちょっと立派過ぎないか?」

ベイカーさんは家の大きさに苦笑いする。

「たまの贅沢でいいでしょ!  さぁ荷物を家に入れよう」

家に入ると収納から荷物を出して各部屋に置いてきた。

「じゃあ早速遊ぼうぜ」

全くベイカーさんは……といつもなら言うが今日はその意見に賛成だ!

あんなに綺麗な海を見て遊びたいと思わないわけが無い。

私は水着に着替えると部屋を飛び出した。

シルバ達は海には入りたくないと言うので近くの森に狩りに行くという。
夕食のご飯になりそうなものを頼み私達は海を楽しむことにした。

「ミヅキ見てみろ!  貝があるぞ」

泳いでいるとベイカーさんが海の底を指さすが私にはよく見えない。

「えー?  どこ」

するとベイカーさんはザブンッと潜ると海底まで行き何かを掴んで戻ってきた。

「ほら!」

ベイカーさんの手には大きなハマグリのような貝がいくつも掴んである。

「か、鑑定」

食べられるのかと見てみればやはりハマグリに似た味の貝で食べられるらしい。

そういうとベイカーさんは何度ももぐってはいくつも取ってきた。

「ミヅキ、魚もいるぞ」

少し沖に行ってたコジローさんがこれまた魚を手に戻ってきた。

「みんなよく捕まえられるね」

この分だと夕食には困らなそうだ。

いつの間にか遊びはやめて貝拾いや魚釣りになっていた。

少し体が冷えると海から上がって家に戻る。
お風呂を準備して潮をしっかりと流すと取ってきたもので夕食の準備を始めることにした。

海と言ったらバーベキューだよね!

外で焚き火を作ってもらいその上に網を置く台を作る。

取ってきた貝や魚を並べているとシルバ達も戻ってきた。

【大量だ!】

シルバは狩ってきた魔物をドサッと出すとベイカーさんとコジローさんがササッと捌いてくれた。

肉も網に乗せると魚がいい感じに焼けてきた。

「んー!  よく焼けてて美味しそう!」

パカッと貝が開くとそこに醤油を垂らし、ついでに魚にもかけた。
醤油の焦げる匂いに食欲が湧く。

「もういいだろ!」

ベイカーさんは待ちきれないと魚を掴むとガブッとかじりついた。

【ミヅキ!  俺も】

【はい、はい】

シルバ達にも貝と魚を取ってやり私も貝を堪能する。

肉も食べて満腹な夕食に私達はすぐに眠りについてしまった。

次の日も海で遊び次の日は森にも行った、たくさんの果物や山菜をとってくるとその日は山菜の天ぷらで天丼を作った。

「あー、まじで幸せ……このままここに住みたいな」

ベイカーさんはご飯をしっかりと食べたあとのフルーツに舌づつみをうつ。

夜はみんなで浜辺に寝転び波の音に満天の夜空を楽しんだ。

次の日は何をしようかと迷っていると少し歩くが近くの村に行ってみる事にした。

私はシルバに乗ってみんなは駆け足で行けばあっという間にたどり着く。

しかし村はなんとなく寂れていて活気が無い。
せっかくの海の近くの村なのにもったいない……

店を見て回るが魚や貝などほとんど置いてなく、そこらで取れそうな野菜が少し並ぶだけだった。

「ミヅキ、ここはハズレだな。違う村に行くか」

どうしようかと悩んでいると村の子供が走ってきてベイカーさんにぶつかってきた。

「ごめんなさーい」

子供達が謝り立ち去ろうとすると「待て」とベイカーさんが厳しい顔で子供の腕を掴んだ。

「ベイカーさんどうしたの?」

私が驚いていると子供の手からベイカーさんのお金の入った袋が落ちた。

「俺から盗もうとはいい度胸だな」

「あっ……」

ベイカーさんの迫力に子供達は目に涙を浮かべる。

「ご、ごめんなさい……」

「謝って済むわけないだろ、親は何処だ!」

子供に親のところに案内させるとボロボロの家にたどり着く。

「ここか、おい!」

ベイカーさんが声をかけるが家からは返事がない。もう一度ドアを叩くと不機嫌そうな男がでてきた。

「うるせぇな、なんだよ」

男は昼から酔っ払っているのか酒の匂いがした。

「あんたの子か?」

先程の男の子をつきだすと男は顔を顰めた。

「俺の子じゃねぇけど確かに家に住んでるな」

「どういう事だ?まぁいい、保護者だろこの子は俺の財布を盗んだんだ」

「何!」

男はギロっと男の子を睨む、すると男の子は真っ青になりガタガタと震えた。

「それはすまなかったな、よく言っておくよ」

男はから謝りでぶっきらぼうに言うと子供を掴んで家の中に戻ってしまった。

「なんだあの態度は!」

ベイカーさんはお怒りだったが私達もいた事でこれ以上騒ぎを大きくする気はないらしくこの場はこれで終わりになった。

その後も村を少し回って見るがお店の人達も畑で働いている人達もジロジロと私達を観察するように見てきた。

「なんか居心地悪いね」

コソッとベイカーさんに耳打ちすると頷きこの村を出ていくことにした。

その後は少し足を伸ばして遠くの村に行くとそこは普通だった。
野菜など食材を買い足して戻ろうとすると村のおばちゃんとベイカーさんの話しが盛り上がっていた。

「あんた達あの村の方から来たの?」

「その先の海で休暇で遊んでいるんですよ」

「あー、ならあの村には関わらない方がいいよ。あそこは領主が変わってから盗賊まがいのことをして治安が悪いんだよ」

「えー、領主様が悪いことしてるの?」

「あら、こんな話小さい子には聞かせない方がいいね。とりあえず親のあんたが気をつけなよ!」

おばちゃんは話は終わりだと手を振り離れて行った。

「あの村やっぱりおかしかったんだね」

あの雰囲気に納得する。
今はせっかくの休暇だ、嫌な事は忘れて楽しむ事に……私達は村を避けて海へと向かうことにした。

その頃村ではベイカーさんが押しかけた家の男が領主の屋敷と向かっていた。

「領主様にお目通りを……いい話があるんです」

男のニヤついた顔にすぐさま領主の元へと通された。

「それで話とは?」

領主の前にくると男はご機嫌に話だした。

「今日村にきた男達ですが何やらやたらと金を持っていそうでした。小さい子供連れであの娘を誘拐すればたんまりと金が手に入るのでは?」

「ふーん、本当にそんな金を持っていそうなのか?」

「は、はい……多分」

あの後財布をくすね損ねたガキを問い出すとかなり重かったと言っていたから間違いないと思うが……

男はチラッと領主をみる。

「数日下されば奴らに動向を探って来ます!」

「そうしろ、失敗は許さんぞ」

男はヘコヘコと頭を下げると屋敷を後にした。
家に戻るとガキを大声で呼んだ。

「呼ばれたらすぐにこい!」

男の声にビクビクとしながらガキがきた。

「お前が失敗した男の様子を探ってこい!何かわかるまで帰ってくるなよ」

ギロっとガキを睨めば真っ青な顔をして頷く。

ガキなんて役にたたないと思って捨てようかとしていたが最後にいい仕事を持ってきたもんだ。

場合によってはもう少し飼ってやってもいいと男は笑っていた。

子供は男に殴られる前にと家を飛び出した。

急いであの男を探さないとと村中を駆け回る。
するともう村を出ていってしまったと聞いて絶望していた。

「あいつらこっちの森からやってくるのを見かけたぞ、もしかしたらこの先の海にでも来てたのかもな」

そんな話を聞いて最後の望みと森の方へ向かってみることにした。

海までは一日ほど歩かないとたどり着かない……しかし何もしなければ男に殴りるだけだと子供は森の中を走り出した。


「少し遠回りになったがこの森を抜けたらまたあの海だぜ!」

ベイカーさんはスキップをするような足取りでシルバと並んで森のなかを走っていた。

【ん、ミヅキ何かいるぞ】

走っているとシルバがなにかに気がついて足を緩める。

ベイカーさんも気がついたようで私達に止まるように指示を出した。

「ミヅキ達はここにいろ」

ベイカーさんが一人確認に向かうと……何かを担いで戻ってきた。

「ベイカーさん、その子……」

「さっきの子供だな」

ベイカーさんの肩には先程財布を盗もうとした子供がぐったりとした様子で担がれていた。

「その先で気を失っていた、足の傷を見るとこの森を抜けようとしてたのかな」

足には走っていたのか擦り傷などがついている。他にも殴られたりしたのか痣のような痕もついていた。

「この子、どうするか……」

私は子供の疲れきった顔を見つめ、困り顔のベイカーさんに向き合った。
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