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13章

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「親父、大丈夫か!?」

おじいさんと鍋の様子を確認していると慌てた様子でロフティさんが駆け込んできた。

「なんだ、そんなに慌てて」

おじいさんは怪訝な顔でロフティさんを睨みつけている。

「あれ?」

ロフティさんは首を傾げながら、おかしいなとそばに近づいくると私達の手元を覗き込んだ。

「なんかいい匂いですね」

湯気が立つ鍋をじっと見つめている。

「そろそろいい感じですよ。食べてみましょうか」

お皿を用意してもらってみんなの分を取り分けて貰う。

まずは材料をとってきてくれたシルバ達に食べてもらう事にした。

【はい、みんな熱いから気をつけてね】

【いただこう!】

【いただきます!】

お腹が空いていたのかすごい勢いで食べだした。

「お、美味しそうに食べますね……」

【美味しそうではない!美味しいんだ!】

シルバが大きな口を開けて抗議した。

「すごく美味しいみたいです。みなさんもどうぞ」

ロフティさん達にも食べてもらうとお皿を差し出した。

二人は嬉しそうに料理に口を運んだ。

「美味い……久しぶりにこんなしっかりとした料理を作れたな」

「ああ、みんなにも食べさせてやりたいな」

しみじみと味わっていた。

すると匂いにつられてかお客さんが店を覗き込んでいた。

「いらっしゃいませ!」

私が声をかけると怯えた顔を見せる。

私の顔はこの国では禁忌のようだ……

「この子はアナテマ様じゃないから大丈夫だよ、ほら入ってくれ」

するとおじいさんがお客さんに声をかける。

「し、しかし…」

私を見て足が進まないようだ。

私はいつものように笑顔で微笑んで見せた。怖くないよ、敵意はないよと訴えるように笑って見せる。

「アナテマ様が笑っ…た?」

驚きすぎて口が開けっ放しの人までいた。

「プッ」

その顔に笑ってしまい口を押さえた。

「私はミヅキって言います。訳あってあのアナテマと同じ顔なんですが全くの別人なんですよー」

明るい口調で説明した。

ロフティさん達の説明もあって町の人達が店内に入ってきた。

「すまないが金がこれしかないんだ、これで食べられるだけ頼むよ」

一人のお客さんが申し訳なさそうにお金をそっとロフティさんに渡した。

「イスマさん…わかったよ」

ロフティさんはお金を受け取ると私のところにやってきて耳打ちする。

「すまないがこれだけしか渡せないそうだ、お願いだから少しでもその食事をあげてくれないか?」

断られると思っているのか難しそうな顔で聞いてくる。

「いいですよ、それにお金取る気なんてなかったのに。これはロフティさん達に作ってあげたものですから好きにしてください」

「で、でも…」

「私が作ったなんて言ったらみんな食べてくれなくなりますよ」

内緒にしようと私は口に人差し指を当てた。

ロフティさんは納得出来なそうな顔をしていたのでいいからと背中を押す。

「私も配るの手伝いますから、温かいうちに食べて貰いましょう!」

「そ、そうだな。ミヅキちゃんありがとう」

「やっと名前を呼んでくれましたね」

私はこの国で少し認められたようで嬉しくなった。

少しでも顔を隠そうと口に布を巻いてマスク代わりにしながらお皿を運ぶ。

「熱いから気をつけて食べてくださいね」

「ありがとう…久しぶりのまともな食事だな」

みんな涙を浮かべながら料理を食べている。

この国でやっと人の笑顔を見れた気がした。

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