上 下
667 / 687
13章

762.

しおりを挟む
「なるほど、材料がないからそんなに用意できないと」

「はい、来ていただいて嬉しいのですがうちでは今はスープとパンを少ししか用意出来なくて」

店主さんは申し訳なさそうにそういった。

聞けば町に届く食材は城に最優先に届けられるそうだ、そして残りが町へと来るがほんの僅かで、最近は野菜も育たず町の人達に十分に行き届かないらしい。

「確かローラさんもそんなこと言ってたな」

メイドさんから聞いた話を思い出した。

「ローラ!ローラを知っているんですか?」

店主さんはローラさんの名前を聞いて私の肩を掴んで問い詰めてきた。

「わっ!」

店主さんの勢いに驚くとシルバがすぐに店主さんをはじき飛ばした。

【ミヅキに何をする!】

グルルっと店主さんに威嚇をする。

【こら、シルバ乱暴はダメだよ】

【しかしミヅキが!】

【ちょっと驚いただけだよ、ありがとね】

シルバにお礼を言うと床にうずくまる店主さんの元に駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

起こしながら回復魔法をかける。

「あ、あれ?さっきまで腕が痛かったのに……」

不思議そうに打ち付けた自分の体を確認している。

「うちの子がすみません、ちょっと過保護で……」

店主さんは自分が悪いと慌てて起き上がり謝ってくれた。

「すみません、懐かしい名前に興奮してしまい。それでローラの事をお聞きしても?」

「ローラさんは私がお城にいる間お世話になってるメイドさんです。とっても優しい人ですよ」

「そうですか……ローラは生きているんですね」

店主さんはホッとして目に涙を浮かべている。

「えっと……ローラさんとは?」

大事な人のようだし、関係性を聞いてみた。

「ローラは私の娘です、この通り町は寂れてろくな働き口もなく喧嘩別れのように家を飛び出して行って……城で働いていたのですね」

「ローラさんも町の事を聞いて心配してましたよ。近いなら会いに行けばいいのに」

ローラさんが町の事を話していたのを思い出した。

「そうですか、いや元気ならいいんです」

店主さんは話を聞けてよかったとローラさんの事はそれ以上聞かずに食事の用意に向かった。

そしてみんなに少しのパンとスープを持ってきてくれた。

「うちでおだしできるのはこの程度で……」

恥ずかしそうに声を小さくする。

【少ないな】

【しょぼいね】

【これでは足りんな】

みんな聞こえないからって言いたい放題!
いや、この子達なら聞こえてても言いそうだな

私は苦笑して店主さんに笑いかけた。

「いただきます」

手を合わせてありがたくいただく、スープは薄味でパンもボソボソだけどどうにか美味しく出そうとする店主さんの気持ちを感じた。

みんなで一瞬で食べ終えるとご馳走様をして私は腕まくりをして立ち上がった。

「よし!」

【おっ!ミヅキのお節介がでるのか!】

【僕も手伝うよ~、火を使うでしょ?】

【私も何かしようか?】

【ぼくもー!】

みんな空のお皿を舐めていたのを止めると一緒に立ち上がった。

【ありがとう!じゃあシルバとプルシアは何かお肉を調達してきてくれる?シンクとレムは私のそばでお手伝いをお願いね。コハクは何か木の魔法で野菜を育ててくれるかな?】

【【【【【任せて!(ろ)】】】】】

みんなは私がやる事を瞬時にわかってくれたようだ。

【よーし!美味しくて暖かいものたくさん作るぞー!】

【【【【【おー!】】】】】

私達が拳を掲げるのをみて店主さんは不思議そうにその光景を見つめていた。

店主さんの名前はロフティさんと言うらしく、厨房を貸してほしいと言うと快く了承してくれた。

お店の裏の畑を借りて雪を退かしてドーム型の防御魔法をかけると雪を遮断する。

その中でコハクに野菜を育ててもらい私が水をまいた!

【ミヅキの水魔法があれば元気に育ちます】

レムとコハクにそこは任せて私は自分の持ち物を確認する。

「うーん調味料はあんまりないな……」

「調味料かい?少しなら倉庫にあるよ」

私が悩んでいるとロフティさんが声をかけてきた。

「え!?調味料あるんですか?」

「ああ、食材がなきゃ何の役にも立たないから好きに使っていいよ」

そう言われて確認すると結構いい品揃えで調味料が揃っている。

「この国は調味料があるんですね」

「え?調味料なんてどこでもあるだろ?」

「いや、ウエスト国とかだとスパイスって言って魔物避けとかに使われてたりするんですよ」

「そうなのか、いや俺は生まれてからこの国を出たことなくてね。外の事は知らなくて」

「そっか」

この国も色んな国と交流ができるようになればいいのに…そうすればこんな酷い生活は送らないですむのに。

しかしそれもこれもあのバカ親父のせいだろう。

「町の人達やみんなを不幸にして何が王様だ」

私は思わず城の方角を睨みつけた。
しおりを挟む
感想 6,824

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。