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13章

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そのまま無言で与えられた部屋に戻るとバタンと扉を閉める。

やっと私達だけになると私はシルバ達を見つめた。

【ミヅキ?】

シルバ達は不安そうに私を見つめてくる、その瞳は心配しているのがありありとわかった。

強いシルバが私の事で不安そうにしている。
それだけ大事にされている事が嬉しかった…だからシルバ達には秘密にしておけないと思った。

【あのね、さっきフッと意識が飛んだでしょ?その時に見た事も無かった記憶が見えたの…】

【記憶?】

シルバ達は私のそばに来ると真剣に話を聞いてくれる。

【待ってミヅキ!ムー、僕達をムーの体に入れて結界を張ろう。この部屋にいても誰かが話を聞いてるかもしれない】

シンクの提案にみんな頷き合うとムーが大きく影を作ってみんなを包み込んだ。

【僕とプルシアで二重に結界をすれば大丈夫でしょ、ミヅキ話を止めてごめんね】

【ううん、シンクありがとう…】

私はシンクに触れようとしてその手をピタッと止める。

シンクも頭を撫でられると思っていたのだろう頭を出して何もされない事に不安そうに首を傾げた。

【ミヅキ?大丈夫】

【うん、先ずは話だよね…】

私はギュッと自分の手を握りしめて話し出した。

私の美月としてのミヅキの記憶は森で目覚めた時からのものしか無かった。

しかしさっき気を失った時にその前の記憶がよみがえった。

よみがえる…というのは正しくないかもしれない。

ミヅキの前のルナとして過ごしていた日々が走馬灯のように流れ込んできた。

でもそれは私が体験した感じではなく、ルナが体験来ているのを上から眺めている感じだった。



ルナはこの国で生まれた。

さっきのヴォイドと同じく黒髪の綺麗な女性、メアリアの間に…でもそれはヴォイドの腹違いの妹だった。

ヴォイドはメアリアを無理やり手篭めにして私を産ませた、その前にもたくさんの女性が同じような目にあい子供を作らされていたようだ。

ヴォイドは自分の魔力を引き継ぐ子供を作ろうとしていた…そこでこの国でヴォイドの次に魔力の高いメアリアに目をつけた。

メアリアは幽閉されて子供を身ごもるまで部屋から出されることは無かった。

そしてその部屋こそ私達が今いる場所だった。

メアリアはようやく子供を身ごもるとヴォイドはピタリとこの部屋に来なくなる。

不安のなかメアリアはついに出産の時を迎えた、そして生まれて来たのがアナテマと私…ルナだった。

ヴォイドは生まれてきた私達をみてなんの感情も見せなかった。

喜びも戸惑いも何もない。

しかしメアリアはようやく出てきた私達を喜び慈しんでくれた。

しばらくメアリアと三人での暮らしの中、ようやく授乳が終わる頃ヴォイドが現れた。

そして私達を交互にみるとアナテマを掴んで部屋を出ようとする。

「ま、待って下さい!アナテマをどうするのですか!」

メアリアは初めてヴォイドに自ら話しかけた。

「これは魔力が高い、だから私が育てる」

「つ、連れていかないで…アナテマとルナは双子なんです、一緒にいさせて…」

メアリアの泣きながら訴える声にもヴォイドは眉ひとつ動かさない。

「この為にお前に産ませたんだ、馬鹿なことをいうな」

ヴォイドは足にしがみついメアリアを引き剥がすと泣き叫ぶアナテマを連れて部屋から出ていった。

「アナテマー!」

メアリアが叫ぶとルナはアナテマの泣き声に共鳴するかのように一緒に泣き出す。

「うっ…うっ…」

メアリアは泣くルナを抱きしめて二人一緒にずっと泣いていた。

しかし泣いてもアナテマが戻ってくる事はなかった…そしてメアリアの涙は枯れ果ててその愛はルナに注がれた。

「あなただけは私が守ってあげるからね…」

メアリアがそういうとルナはわかっているのか笑ってメアリアの髪を触って喜んでいる。

「ふふ、可愛い私の子供…」

それからしばらくはメアリアもルナもヴォイドに会うことなく過ごしていた。

そしてルナが三つになった頃メアリアと城の裏手の人気のない森で散歩をしていた時、ルナとメアリアはアナテマに出会った。

アナテマは顔に怪我をしたのか布を当てており、少し汚れていた。

「ア、アナテマ…」

メアリアはすぐに奪われたアナテマだと気がついた。その容姿はルナそのもので二人並ぶとどちらかわからないほどだった。

「誰…」

しかし近づこうとするメアリアにアナテマは拒否を見せる。

「アナテマ!私よ、あなたの母よ!」

メアリアがそう言うとアナテマはキッとメアリアを睨みつけた。

「ははなんていない!」

アナテマは少し動揺したように叫ぶとその場を逃げるように走り去った。

「アナテマ…」

メアリアは涙を浮かべてその場に座り込む。

「おかあさま?」

ルナは状況がわからないのか首を傾げてメアリアの服を掴んでいるしか出来なかった。

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