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13章

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「さてと、話がそれたな。お前はルナではないと?」

ヴォイドは先程の事をサラッと流して話し出した。

「は、はい。私はそんな名前じゃないしあなた達の事も知らないです。だから帰して」

私がそういうとヴォイドはじっと見つめてくる。

「嘘をついているようには見えないな」

「じゃあ!」

帰して貰えるかと淡い期待に顔をあげた。

「それは出来ない、お前の魔力がルナだといっているからな」

「はっ?私の魔力?」

なんの事だと両手を見るが魔力なんて見えない。

「父親である私が言うのだから確かだ、お前は私の娘のルナだ」

「違います、私はベイカーさんやセバスさん達に拾ってもらったミヅキです!ここにいるシルバ達が家族です」

「貴様、父上に娘と言っていただけただけ誉れとおもえ!」

アナテマがたまらずに声をあげる。

「なら父親だって証拠は?本当に娘なら今まで何してたの?」

「居なくなったから探していた、そしてアナテマがお前を見つけただけの事」

ヴォイドが淡々と答える。

その顔は娘を心配する父親ではなかった。

「あなたなんて知らない、私のお父さんはベイカーさん達だ!」

「こいつ…」

アナテマは怒りに魔力を右手に集める。

何かされると身構えるとヴォイドが声をかけてきた。

「娘という証拠ならある、その髪が証拠だ。この国に私と同じ黒髪はそこのアナテマとお前だけ、それが証拠だ」

「そ、そんなの探せばまだいるかもしれない」

「ならこの赤い瞳はどうだ?」

ヴォイドは目を見開いて赤い瞳で見つめならが近づいてきた。

「こ、来ないで!」

私はたまらずに一歩後ろに下がるとシルバ達がヴォイドに威嚇する。

【ミヅキに近づけば殺す!】

シルバの唸り声にヴォイドは足を止めてフッと口角をあげた。

「別に近づかなくともほれみろ、その瞳が赤くなっているぞ」

「え?」

私は自分の顔を触る。

【シルバ!  私の瞳はあかくないよね?シルバと同じ黒だよね?】

シルバをみるとペタンと耳を伏せて悲しそうな顔をした。

シルバ達の様子に私の瞳が赤いのだとわかってしまった。

「なんで?」

わからないと顔を覆った瞬間プチッと目の前が暗くなる。

私は気を失ってしまった。





【ミヅキ!】

急にミヅキの気持ちが遮断されたかと思ったらガクッと膝をついてしゃがみ込んだ。

俺達はミヅキの顔を覗き込むと真っ赤な瞳は虚ろのように視点が合わない。

「ひっ!」

それどころか俺達をみて怯えだした。

「い、いやぁ…ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」

頭を抱えて小さくなると謝罪しながら涙をこぼす。

そのミヅキらしくない様子に唖然として俺達は近づけないでいた。

「ルナ…」

ヴォイドの声にミヅキは泣くのをピタッとやめた。

「はい…お父様…」

ミヅキはルナと呼ばれて返事をするとヴォイドにお父様と返す。

【ミヅキ?】

「やはりお前はルナだったか」

ヴォイドの満足そうな声にミヅキはビクッと肩を震わせて下を向いた。

【ミヅキ!どうした?俺達の声が聞こえないのか?】

【シルバ、これってあの時のミヅキみたいだ】

シンクは今のミヅキに覚えがあったようだ、それは俺も同じ…もう見たくない姿だった。

【ミヅキ!】

【【【ミヅキ!】】】

みんなでミヅキを呼ぶとふっと瞳の色が黒に戻る。

するとミヅキはハッとしたように俺達をみた。

【シルバ…今私…】

ミヅキは信じられないと言った様子で俺達を見つめる。

【よかった、ミヅキが戻った】

シンクはほっとしてミヅキに近づくがミヅキの顔色は優れない。

「もう、部屋に帰ってもいい…ですか?」

ミヅキは顔をあげないでヴォイドに聞いた。

「いいだろう、私の事も思い出せたようだしな…」

ヴォイドがニヤッと笑って見つめるとミヅキはサッと視線を逸らす。

【シルバ、行こ】

ミヅキが扉に向かって歩き出すと俺達は後を追った。

部屋までの帰り道、ミヅキは一言も口を聞かなかった。

ミヅキがそばにいて無言で歩くなんて久しぶりの事だ、俺達は戸惑うがミヅキからは迷いと混乱の気持ちが流れ込んでくる。

だから俺達は顔を見合わせてミヅキから話しかけてくれるのを待つことにした。

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