上 下
586 / 687
11章

687.殲滅

しおりを挟む
【フハハハハ!】

シルバは笑いながらゴブリン達の間を駆け抜ける!

すると風圧とシルバの風魔法で作った透明な盾にゴブリン達は何が起こったのかも気が付かないまま死を迎えていた。

シルバが通るところはまさにゴブリンの屍しか残らなかった…

【楽しそうだな、では私も…】

プルシアは様子を見た後シルバとは反対方向から同じように小さい体のまま飛んでゴブリン達の体を貫通していく。

弾丸のような速さで貫くドラゴンにゴブリン達はなすすべがなかった。

いくら頭の悪いゴブリン達でもこの二人に勝てるわけないと気が付き目標をセバスに切り替えた。

ゴブリン達に一斉に注目を浴びる。

「まぁ気持ちはわかりますがあなた達の相手をするのは彼らですよ」

セバスは笑うとゴブリン達が逃げられないように土魔法で周りを囲った!

【おお!一箇所に集まって殺りやすい】

【この壁どんどん狭まっているな】

セバスの作った壁は徐々に厚みをまして中心へと向かっていく、ゴブリン達は動く壁に追い詰められ中かはシルバとプルシアの攻撃と逃げる場所が無くなっていた。

「では、私は周りの確認に行きますので中のゴミ処理はよろしくお願い致します」

「ガルル!」

シルバの声を了承と捉えてセバスはゴブリンの住処に入っていった。

谷底にいくつか開いた洞穴へと入っていくと内の様子を確かめる。

「うっ…防壁をしてても少し臭いますね…」

ハンカチを取り出し口と鼻に当てて奥へと向かった。

「これは…」

そこには床に散らばる骨がいくつも落ちている…形からして人間の骨のようだった。

やはりミヅキさんを置いてきてよかった…

セバスは自分の判断が正しかったと確信する。

きっとミヅキさんがこんな所を見れば悲しみ、何も出来なかったと悔やむに違いない…何も悪くないのにあの小さい肩に色々と背負い嘆く姿が目に浮かぶ。

ミヅキさんは優しすぎますからね…

しかしそれを悪いことだとは思えないセバスはなるべくそんな場面をミヅキに見せないようにするしか出来なかった。

せめて助けられる命があればいいが…

中の様子を伺うが出てくるのは残っていた残党のゴブリンだけ、こっちの姿を見ると躊躇なく襲ってくる。

セバスは淡々と返り討ちにすると全部の洞穴を確認した。

一匹残らずゴブリンを殲滅したが生きた人は確認出来なかった…

まぁここで生き延びていても辛いだけだけですね…

セバスは土魔法で洞穴を全て埋めると手を合わせた。

穴の中を確認してる間に外ではシルバ達がとっくにゴブリンを全て動かない肉片に変えていた。

【やはりゴブリンなどでは運動にもならんな】

【ああ、ただ飛んだだけなのに気がつけばみんな死んでいる】

プルシアもつまらなそうに欠伸をした。

そんな二人の様子を見てセバスは苦笑すると…

「お二人ともご苦労さまです。本来ならこの規模のゴブリンの巣でしたら討伐隊を組まないとならないところでしたが、一瞬でしたね。後でギルマスに報奨金を出すように言っておきますから」

【うむ、金か…】

プルシアが頷くとシルバはそんなものは腹にもたまらんと顔を背けた。

「シルバさん、その様子ですとお金などいらない…というところでしょうか?しかしお金があればミヅキさんに好きな物を買ってあげられますよ」

【なに!?】

【それはいいな】

お金には興味無いがミヅキが喜ぶと聞いて顔色が変わる。

「前回の獣人の国では大変な思いをさせたようですし、何かプレゼントを買うのもいいのでは?」

【うむ、悪くない提案だ!】

【そうだが私達だけでは買い物が出来ないぞ】

プルシアの顔が曇る。

【そうだな…まぁコハクがいれば大丈夫だろ!あとはコジローを使ってもいい】

二人が何やら話している様子にセバスはニコニコと笑って伺っている。

国を一瞬で潰せる聖獣が一人の子供のために焦りながらも楽しそうにしている。

その姿を見るだけでミヅキの周りが平和なのだと確認できた。

「お二人共、ご相談はまた後でにしましょう。ミヅキさんを残しているとまた大変な事になるかもしれませんからね」

【そうだ!早くミヅキにあってこの臭い匂いを払拭せねば】

【私も今日は風呂にいれてもらおうかな…】

二人とも防壁を張っていたので返り血などは付いていないが臭いだけは移ってしまっていた。
自分の体の匂いを嗅いで顔をしかめている。

「軽く水を浴びますか?」

【いや、ミヅキが気になるから先に帰ろう】

シルバが首を振るのでセバスは頷くと上を見上げる。

「お二人共先に帰ってて下さい。私はゴブリンの亡骸を埋めてから向かいますので」

シルバ達は頷くと崖の少しある足場を登り上に向かった。

セバスも少し上に上がり足場を見つけるとゴブリン達の臭いも一緒に土の中に閉じ込めた。

「よし、これでいいでしょう」

上を見上げシルバ達と同じように崖を登ると既に上ではシルバ達がミヅキのそばに寄ろうとして拒否されていた。

「シルバ!くっ、臭い!」

【ミ、ミヅキ!!】

ミヅキに拒否されてシルバの耳と尻尾がこれでもかとペタンと垂れ下がる。

【あっ!ご、ごめんね!シルバ達頑張ってきたのに…でもその臭いやばいね。すぐにお風呂に入ろう!】

【風呂!?いや!これくらい水でサッと流せば…】

【ダメダメ、絶対そんなんじゃ落ちないよ!ちゃんと石鹸で泡立てないと!】

ミヅキとシルバのやり取りにセバスさんが近づいてきた。

「あれ?どうしました?」

「あっ!セバスさんおかえりなさい!…ってセバスさんも臭いがすごいです…」

ミヅキが駆け寄ろうとしてその手前で止まってしまった。

しっかり受け止めるつもりで出した両手が寂しく制止する…思わず笑顔も固まってしまった。

「あっ!べ、別にセバスさんが臭いわけじゃないですよ!セバスさんいつもいい香りだし…」

少し頬を染めながら伺うように少し離れたところから覗き込んだ。

「シルバさん、プルシアさん」

セバスは真剣な顔で二人に声をかけた。

【なんだ…】

【……】

二人ともミヅキに触って貰えずそれどころではなく素っ気なく答えると

「今すぐお風呂に入りましょう」

セバスさんの提案に二人はすぐに頷いた。
しおりを挟む
感想 6,824

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。