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11章

660.人と獣人

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「なんか…凄いことになってないか…」

ジュウト達は自分達の仕事を終えてからみんなで人族がギルマスを務めるギルドへと来ていた。

いつもならギルドに嫌な匂いが立ち込めているが今日はそれがない…そしてギルドの前は目をギラつかせた刃物を持った獣人達がうろついていた。

「兄ちゃん…ミヅキ大丈夫かな?」

同じ孤児院で育ち今回ミヅキ達に助けられたルークや弟分達が不安そうに服を掴んできた。

アトラス様が幽閉されて人族達の争いもこのままさらに悪化の一途を辿るかと思われたがいつの間にかアトラス様の王子殺害未遂の誤解は解けたらしく人族達との和平の協定が結ばれたと獣人の国は喜びに溢れた。

だからミヅキ達がここに居ても被害はないかと思っていたが…

「自分の考えが甘かった…」

よく見れば特に人族を嫌うゴリラの獣人ロバートの率いる獣人達の群れだった。

「俺が話を付けてくる…国で決まったことなんだ…獣人達はもう人を傷つけちゃいけないんだ」

自分に言い聞かせて覚悟を決めると、嬉々として肉を切り刻む獣人達に向かっていった…

「お、おい!ロバートはいるか!?」

近くにいた比較的優しそうなおばちゃんの獣人に声をかけると…

「なんだい?今忙しいのに、ロバートなら…ほら!あそこにいるよ」

そう言って指をさされた方を見るとそこにはミヅキとそれを見下ろすロバートが見えた。

「ミヅキ!た、大変だ!」

ジュウトは慌ててミヅキの元にかけていった!

そんなジュウトの慌てた様子に獣人達は手を止めて首を傾げた。

「あの子なんであんなに慌ててるんだろうね?」

「お腹でも空いてるんじゃないかい?ミヅキの料理は美味しいらしいから…」

「さっきからいい匂いがしててたまらない!あー早く食べてみたいね!」

ミヅキとロバートから肉を切るように言われていた獣人達は早くしようとジュウトの事は気にせず料理に戻った。


「ミヅキー!」

ジュウトは叫ぶとミヅキとそれに並ぶロバートが後ろを振り返った。

「ん?なんか呼ばれた?」

名前を呼ばれて振り返ると慌てた様子のジュウトが凄い速さでこちらに向かってきていた。

「なんだあいつは…」

ロバートさんが警戒して庇うように私の前に立ち塞がった。

「あっ、ロバートさん…」

大丈夫だよと声をかけようとすると…

「ロバート!その子は違うんだ!」

ジュウトが走ってきた勢いのままロバートさんに飛びかかった!

「えー!な、なに?」

ジュウトの行動に驚いていると…

「小僧…何してるかわかってるのか!?」

ロバートさんはジュウトを軽々と掴んで凄い形相で怒っている。

えっ?なんで喧嘩?

二人で両手を組んで睨み合っている。

「ちょっと!やめてよ!」

私が二人を止めようとすると…

「「ミヅキは退いてろ!」」

二人して邪魔だと怒鳴ってきた…

「えっ…」

ビクッと肩を揺らすと

「グルルル…」

シルバが私を怒鳴った二人に唸り声をあげた。

【ミヅキを怒鳴るとは何を考えている…】

シルバの激怒した様子にロバートさんとジュウトの顔がみるみる青くなる。

「ち、違います!俺はミヅキを守ろうと…」

「違うぞ!ミヅキが襲われそうだったから守ろうと…」

二人は唸るシルバに一緒に言い訳すると…

「「えっ?」」

お互いの言い分に顔を見合わせた。

「ん?よく見りゃお前…孤児院のジュウトか?」

「お、俺を知ってるのか?」

ジュウトが名前を知っていたロバートを警戒すると

「ああ、結構骨がある子供だと他の奴らが褒めてたからな、もう少し大きくなったらうちの群に勧誘しようかと思ってたところだ」

「お、俺は人族がいい奴らもいるってわかったんだ…だからお前のところには入らねぇよ」

ジュウトが拒否するようにキッと睨みつけると…ロバートがキョトンとジュウトを見つめ返した。

「ロバートさん、ジュウト…さっきから何の話をしてるの?」

私はわけがわからずに堪らず二人に声をかけた。

「ロバートさん…ってミヅキ…まさか二人は知り合いなのか!?」

ジュウトが驚いて私達を交互に見ると

「うん!ロバートさんとは抱っこし合うほど仲良しだよ!ねー!」

「ああ、そうだな」

ロバートさんが苦笑しながらも同意してくれた。

「だ、だってあんた…あんなに人族嫌いだったのに…」

ジュウトはロバートは人族が嫌いで有名な事を知っていた…なので信じられない思いでミヅキと楽しそうにいるロバートを見つめる。

「そういうお前も人族との共存反対派だったよな?」

逆にロバートさんもじっと怪しむようにジュウトを見下ろす。

「そ、それは…」

言い淀むジュウトに私が代わりに説明してあげた。

「ジュウト達は誘拐されそうになってところを助けた仲だよ」

「助けたってのはこいつらだったのか…」

「え?なんで?どうなってる?」

ジュウトはわけがわからずに頭を抱えた。

「兄ちゃ~ん!」

すると待っていられなかったのかルーク達が心配そうにこちらに駆け寄ってきた。

「あっ!みんな~よく来たね」

私は可愛い獣人の子供達に手を広げていると…

ピョン!と跳ねながら腕の中に飛び込んできた!

「わっ!」

凄い勢いに後ろに倒れそうになると…ファサッ…とフワフワな毛並みが支えてくれた。

【あっ!シルバありがとう】

振り返るとシルバが倒れないように支えてくれている。

後ろにはシルバ、前には獣人の子供…幸せなサンドに思わず顔が綻ぶ…

【大丈夫か?全く子供はこれだから…】

不満そうにしているがさすがに私が好きなのを知っているのでそれ以上は怒らなかった。

【ありがとう、やっぱりシルバはいい子だね】

わたしが撫でると

「ご、ごめんミヅキ…嬉しくて思わず…」

ルークが可愛い耳をペタンと後ろに下げた。

「大丈夫だよ、シルバが支えてくれてるからね!でも次はもう少しゆっくり来てね」

「うん!あっ!そ、それよりも大丈夫?いじめられてない?」

ルークが心配そうに周りを警戒する。

「あれ?料理?」

よく見るとみんな刃物を持って肉を捌いていた。

「そうだよ、みんなが手伝ってくれてるの!本当に獣人さん達は働き者で偉いよね」

私がにっこりと笑うと、ロバート達は恥ずかしそう顔を逸らした。

「うそ…」

その様子にジュウトは信じられないと私とロバートさんを何度も交互に見つめた。

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