上 下
519 / 687
11章

620.レオンハルト視点

しおりを挟む
「どうされたのですかレオンハルト様!」

「いや…きっともう兵士達を集めるのは難しいだろう、先程時間をかけられたのはその為かもしれない…」

「でしたら我らだけでも…いえ、レオンハルト様だけでもお逃げいただければ…」

「それは出来ん、そんなことになれば残された者達がどうなるか…それこそ そのせいでまた戦争になるかもしれない。だから兵士の中で一番馬の扱いの上手い者に手紙を持たせろ…アルフノーヴァ師匠を呼ぶんだ」

「アルフノーヴァ様を?」

「彼女の洗脳の様な症状が薬で無いのなら魔法しか考えられない、魔法と言えば師匠だろ。彼女の洗脳が解ければこの国で何が起きてるのかわかるだろう」

「しかし獣人達が魔法…ですか?」

シリウスもユリウスも同じように顔をしかめる。

「お言葉ですが我ら獣人は魔法が苦手です…この様な高度な魔法を使える者がいるとは思えません」

「それでも知識も経験も豊富なアルフノーヴァ師匠がくるが適任だろ…この事をウエスト国の父上達にもまだ広めないように言っておいてもらおう…それにはやはり俺の師匠として数人呼ぶくらいがいいだろう…」

「わかりました…我らとしてもアルフノーヴァ様が来ていただければ心強いです」

「では早速…」

ユリウスはペンを持つと紙に書き出す。

「内容は…レオンハルト様の婚約の事の相談としておきましょう…途中で見られても問題無いような文にしておかないと…」

「ミヅキに惚れているレオンハルト様が婚約などありえないからな、向こうである程度察して急いで来てくれるといいが…」

ユリウスは文に印章を押した。

それをシリウスがこっそりと部屋を抜け出して兵士達が休んでいる部屋へと向かう。

シリウスは信頼のおける兵士に声をかけて文を託した…

兵士は獣人の国を無事抜け出しウエスト国へとレオンハルト王子達の文を届けた。


それを受け取ったギルバート王は…

「これは一体どういう事だ…」

シリウスからの文に顔を顰めてもう一度確認する。

「レオンハルト様が獣人と婚約?ありえませんね」

宰相がキッパリと否定する。

「アルフノーヴァを呼ぶ当たり…何かあったのだろう…しかしアルフノーヴァは今は休暇中、しかもミヅキの町に行ってるとはタイミングが悪い…」

すると兵士が慌てて駆けつけて来ると

「ミヅキちゃんが王都に到着したようです!アルフノーヴァ様の姿も確認致しました!」

「何!」

ギルバートが立ち上がると

「急いでアルフノーヴァをここへ呼べ!」

「は、はい!」

兵士はまた急いで回れ右をして駆け出した。


話を聞いたアルフノーヴァは…

「それはなんともきな臭い…」

「レオンハルトもあまり事を大きくはしたくないようだ…どうにかアルフノーヴァ上手く収めて来てくれないか?」

「そうですね…私も獣人の国は興味があります…すぐに向かいましょう」

「帰ってきてすぐですまないな」

ギルバートが申し訳なさそうにすると

「いえ…プルシアさんに乗せて貰ったので疲れはありませんから」

思い出したのか嬉しそうに頷く。

「そうだ!これも大事な事だがこの事はミヅキ達には秘密だ!この事がバレてみろ…」

「そうですね…お似合いだね!とか…祝福します!など言いそうです…」

「レオンハルトにはミヅキを嫁に…と諦めたわけでは無いからな!良いな、この事はここだけの事にして他言無用だぞ!」

ギルバートが部屋の中の大臣達を睨みつける。

「我らとしてもミヅキ様がレオンハルト様の婚約者になっていただければと思っております…そこは皆同じでしょう」

大臣が言うと頷きあった。

「よし…ではアルフノーヴァ…よろしく頼む」

アルフノーヴァは微笑むと少人数で獣人の国へと向かった。

門を出るとき遠くにプルシア達が飛び立つ姿を確認する。

「よかった…無事に町に帰るようですね」

アルフノーヴァはプルシア達を見てそっと頭を下げると獣人の国を目指して馬を走らせた!

途中何度か馬を休ませながら順調に進んでいると…

「アルフノーヴァ様!横から何か砂埃が!」

兵士の言葉にアルフノーヴァが確認すると確かにこちらに方角に何かが向かって来ていた…

「あれは…」

アルフノーヴァが目を細めると…

「不味い!皆さん何処か高台に避難して下さい!あれは魔物の群れです!」

アルフノーヴァは馬を操りながら高台を探すと…

「あそこです!皆さん付いてきて下さい!」

大きな岩場目掛けて馬の腹を蹴ってスピードをあげた。

「はやく!追いつかれる…」

アルフノーヴァ達は間一髪どうにか避けると魔物達はそのままアルフノーヴァ達をスルーして走り抜けて行った…

「なんだったのだ…」

襲う事なく走り抜けた魔物達の群れを唖然と見送ると…

「何かから逃げているようでしたね…」

アルフノーヴァは魔物達が走ってきた先をじっと見つめた…

その後は大したトラブルもなく獣人の国へと到着した…アルフノーヴァ達は真っ直ぐに獣人の国の王宮へと向かった。

「止まれ!」

王宮の前で門番に止められるとアルフノーヴァは書状を見せる。

「私はウエスト国より参りました、レオンハルト様の使いの者です…レオンハルト様にお目通りをお願い致します」

アルフノーヴァが優雅に微笑むと書状を渡す。

「ああ、バイオレッド様の婚約の事で来たんだな!わかった通れ」

獣人は頷くとアルフノーヴァ達を中へと通す。

「婚約…それはまだ正式には決まっていませんよね」

アルフノーヴァが思わず聞くと

「いやもう本決まりだと聞いているが?これで我らもお前達と同じだな!」

嬉しそうに笑っている…よく見れば王宮は獣人の国の国旗とウエスト国の国旗がクロスして飾られていた…

それは婚約が決まったかの様な装いだった…

遅かったのか…

アルフノーヴァは急いでレオンハルト様の元に案内してもらった!

しおりを挟む
感想 6,823

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~

アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。 誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。 彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。 これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。