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11章

618.レオンハルト視点(ちょっと過去編)

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※ここから少し遡り、レオンハルト視点になります…


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ミヅキ達が獣人の国を訪れる前…


レオンハルト達は獣人の国に新たな協定を結ぶべくユリウスとシリウスを連れてアトラス王の元を訪れていた。

しかし王宮に入るなり潜んでいた賊に急に襲われたのだ…

シリウスがすぐに対応してそいつらを捉えると獣人達兵士がすぐさま尋問を始めた。

そしてその結果、それを企てたのはこの国の王のアトラスだと知らされた…

レオンハルト達は何度かアトラスと接触をしていたが彼がそんな事を企てる人物だとは思えなかった。

もう一度調べ直すように助言をしたがもう既に遅く彼は囚われの身となってしまっていた…

「一体どうなってるんだ…」

レオンハルトは部屋の中をウロウロと行き来しながら落ち着きなくしている。

「レオンハルト様、少し落ち着いて下さい。一度椅子にお座りになってください」

ユリウスが椅子を示すとレオンハルトは仕方なさそうにドサッと座り込んだ。

「なんだってこんな事になったんだ…」

レオンハルトは頭を抱えて項垂れた。

「彼が俺を襲う理由はなんだ!?」

「それは…」

シリウスもユリウスを顔を顰める。

「アトラス王は王子との対談を心待ちにしてると伺っておりました」

「はい…それにアトラス様はそのような卑怯な真似をするような方ではありません…やるなら正々堂々御本人が殺るでしょう…」

シリウスが答えると

「それもどうなんだ…」

レオンハルトが顔を引き攣らせる。

三人はなんの説明もないまま危険だからと厳重な警備のなか部屋に閉じ込められていた…

そしてアトラスが王を退任して息子のアルフレッドが次の王を継承したと知らされた。

「この度愚かな父の代わりにこの獣人の国の王となりました…ウエスト国との協定の話は今後私が引き継がせていただきます」

そう言って挨拶に来た王はレオンハルトよりも幼いライオンの獣人の子供だった。

「アルフレッド…陛下…お年をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

レオンハルトは驚いた顔を隠そうともせずにアルフレッド国王に話しかけた…

「アルフレッド様はお年こそお若いですが、父親とは違い冷静に物事を判断できるお方です!何か問題がありますか?」

するとアルフレッドの隣に立つ大臣が代わりに答えた。

「レオンハルト王子はアルフレッド様にお聞きしております…あなたが答えるのは筋違いでは?」

ユリウスが大臣を見つめた。

「これは失礼致しました…」

大臣が恭しく頭を下げると…

「レオンハルト王子…彼の言う通りだ。私は年が幼いがその分周りの優秀な家臣によって助けられている…何も問題ない…」

そう答えるアルフレッドの瞳は澱んでいるように見えた。

「俺もまだまだ未熟だからそれに対して偉そうな事は言えないが…」

心配そうにアルフレッドを見つめると…

「少し二人だけで話してもいいかな?」

獣人達を見ると大臣達が渋い顔をする。

「レオンハルト様が襲われて日も経っておりません…こちらとしては数人は付き添わせたいのですが…」

「ではユリウスとシリウスを付ける。なら問題ないだろ?なんせ今回の賊を捕らえたのだからな」

レオンハルトが笑うと獣人達は何も言い返せなかった。

「で、では少しお待ち下さい…安全な部屋を御用致しますので…アルフレッド様…こちらに…」

大臣達はアルフレッドを連れて一度部屋を出ていった…

「この部屋ですればいいのにな…」

レオンハルトがボソッとつぶやくと

「ユリウス、シリウスどう思う?」

レオンハルトが二人に聞くと…

「私たちはアトラス様は面識があります…あの方は人との戦争の時に活躍した英雄ですから…でもその後我らは奴隷となりましたので、その後の獣人の国の事情はあまりよく分かりません」

「そうか…すまないな」

レオンハルトが謝ると

「いえ…」

ユリウスが苦笑してレオンハルトの背中を見つめる。

「アルフレッド様とその姉上のバイオレッド様がどんな方かは…しかし王妃様のヴィーラ様はアトラス様同様戦争の英雄です…あのお二人のご子息とご息女なら…」

「そうですね…」

ユリウスとシリウスが顔を見合わせて悩んでいる。

「あの隣の大臣はどうだ?」

「あの者は初めてお会いしました…我らはその時は子供でしたからそこまで覚えてはおりません…」

「うーん…まぁとりあえずアルフレッド王子と腹を割って話してみよう」

「危険ではありませんか?」

シリウスが心配すると

「俺も一応お前達に剣を習ってそれなりになっているつもりだが?」

レオンハルトがじろっとシリウスを睨むと

「そうですが…レオンハルト様、調子に乗るとすぐにポカしますから…」

心配そうにため息をつく。

「そうですね、それがなければそこそこできるのに…勿体ない…」

ユリウスも全く同じ様にため息をつく。

「「だからミヅキに相手にされないのです」」

二人が声を揃えると…

「お前ら…言わせておけば…人が一番気にしている事を!」

レオンハルトが顔を赤くして怒ると

「お前らはいいよ!あの後何度かミヅキに会ってるし!挨拶に来いって言ってるのに一度も来ないし…話を聞くのはいつも後日だし…アランなんか部隊長やめてついて行くし!これが終わったら何がなんでもミヅキに会いに行くからな!」

レオンハルトが一気にまくし立てはぁはぁと息をする。

「ええ、この協定が上手く行きましたら三人で胸を張って報告に行きましょう」

ユリウスが微笑むと

「えっ…いいのか?」

レオンハルトが驚いてユリウスを見ると

「はい、陛下からも承諾は得ております」

「やっと…久しぶりに会える…」

「その為にもこの協定はしっかりと組みたいものです」

「わかってる!何がなんでものんでもらうぞ!」

レオンハルトは一気にやる気がみなぎってきた!
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