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11章

617.すいとん

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鍋を見ると入れた小麦粉の生地に火が通って上の方に浮いてくる。

それを確認するとミヅキが一口味見をしてみる。

「うん!大丈夫そう、美味しっ!」

「これは…短いうどんか何かか?」

匂いをかいでベイカーさんが聞くと

「これはすいとんだよ、これがモチモチで食べ応えがあって美味しいんだよ」

早速とみんなの分をよそおうとすると…

「ああいい、いいミヅキは休んでな。俺がやってやるよ」

アランさんが変わろうとミヅキからおたまを借りる。

「いいの?ありがとうアランさん」

ミヅキが笑って場所を変わると…

「ほら、じじい共。お前達は年寄りだからなぁ、喉に詰まらせたら大変だ。柔らかい野菜をたくさん入れといたぞ」

アランさんがディムロスとロブに器を渡すと

「一言余計じゃ!」

文句を言いながらも二人が受け取ると

「ほら、ロバートお前は筋肉が大事だからな!肉を多めに入れてやったぞ」

「お、俺も?一緒にいいのか?」

ロバートが戸惑うと

「一緒に小麦粉捏ねただろうが、ほら食えよ」

アランさんが強引にロバートさんに器を渡す。

「次はベイカーとコジローな、お前達も最近野菜が足りてないみたいだな…ほらよ」

ドサッと山盛りの野菜を盛る。

「ミヅキはちっこいからなたくさん食えよ」

さらに大盛りでよそう…

「こんなに食べられないよー」

「残したらシルバにでも食べてもらえ」

そうしてシルバ達の分もよそってあとは自分の分…底に残った肉とでかいすいとんを自分の器に入れる。

アランがニヤリと笑うと

「グルル…」

シルバが何やら不機嫌そうに唸った。

「ん?なぁにシルバ?」

ミヅキがシルバから話を聞いている…アランがちらっと伺うと…

「えっ…」

ミヅキが驚いた顔をしてこちらを見た…そして近づいて来ると…

「アランさん、ちょっとそのすいとん見せてくれる?」

ミヅキがじっと見つめながら声をかけてきた。

「な、なんでだ、みんなにちゃんと分けただろ!」

アランがミヅキに届かないように高い位置に持っていくと…

「怪しい!」

ベイカーがアランの器を取り上げた!

「あっ!返せ!」

アランが取り返そうとすると…

「あっ!アランさん自分のにだけこんなに肉入れやがって、しかもなんだこのでかいすいとんは…」

アランさんのすいとんはみんなの倍以上の大きさだった…

「やっぱり!シルバが怪しいから調べろって言ったんだよ!」

ミヅキが怒ると

「やっぱり気づいてたのか…」

アランがシルバを睨むとシルバが何か吠えた。それをミヅキが訳すと…

「自分だけ狡いって!…えっ狡い?」

ミヅキが驚き振り返ってシルバを見る。

「それってシルバも欲しかった…って事じゃないよね?一人だけじゃなくて俺にも寄越せって事?」

ミヅキが聞くと、シルバが慌てて首を振っていた。

「アランさんもそんなに大きなすいとんだと多分芯まで火が通ってないよ。それじゃあお腹壊しちゃうよ」

「な、なに!?」

アランがベイカーからすいとんをとりあげて一口かじって見ると…確かに中心部分までまだ火が通ってなかった…

「あともう少し煮込まないとね~」

ミヅキが笑うと

「くっそー…」

「そうやってズルするから食べられなくなっちゃうんだよ!」

「そうだぞ、全く本当に食いじがはってるなぁ」

「しょうがない奴だな、このままでもすごい美味いのに勿体ない」

じいちゃん達は構わずにうまいうまいとすいとんを食べている。

「ズルをしたアランさんはほっといて俺達は腹ごしらえしちゃおうぜ」

ベイカーやコジロー達も構わずに食べ始めると

「お、俺のを少しやろうか?」

ロバートさんがしょうがないとアランさんにすいとんを渡そうとすると

「ロ、ロバート!」

アランさんが嬉しそうにロバートさんを見つめる。

「なんて優しいんだ!人間共よりよっぽど獣人の方が優しいじゃねぇか!どうなってるそこの人間共!」

「あんたはその人間様を騙そうとした人間だろうが」

ベイカー達はアランに構わずすいとんを食べ終えた。

「ロバートさんそれはロバートさんの分だから食べていいよ。アランさんのは私がちゃんと食べられるようにするからね」

ミヅキが苦笑してロバートさんの分を返すと

「ミヅキ~お前は優しいな!やっぱりお前だけだよ可愛いのは」

アランがミヅキの頭を撫でると

「もう駄目だよ!次は無いからね!」

ミヅキが怒ってアランさんのドデカすいとんを一口大に切るとすいとんの汁の中に入れる。

「具材の大きさにも意味があるんだから勝手に変えたら駄目だからね」

ミヅキがすいとんを煮込みながら説明すると

「わかった、もう料理に関してはミヅキには逆らわんぞ!」

アランが素直に頷くと

「まぁわかればよろしい!」

ミヅキがふんぞり返って頷いた。

すいとんに火が通ると器によそってあげる。

「熱いから気をつけてね」

ミヅキから受け取りアランはありがたくすいとんを口にした…

腹も膨れて今日はここで寝て明日らダンジョンの本格的な捜索へと向かう事になった。

みんなで輪になってこれからの事を話し合う。

ロブさんがみんなを見ながら

「今日見てきた感じだとエリクサーを置く部屋まではこのメンバーなら…まぁ行けるだろう、ミヅキには悪いが進みながらエリクサーを作って貰いたい」

「わかった!頑張るよ」

ミヅキが頷く。

「そういえばダンジョンって部屋に別れてるの?」

ミヅキが聞くと

「ダンジョンにもよるがここのは地下にどんどん潜るタイプだ、地下二十階まである…下に降りる階段を見つければその階はクリアだな」

「へー!」

「地下五階までは行き来は自由なんだが、その先は一度進むと十階、十五階と最終の二十階まで行かないと戻れない仕様になっている」

「なんか人が作ったアトラクションみたいだね」

「アトラ…くしょん?」

ロブさんが首を捻ると

「なんでもないよ、じゃあ明日はとりあえず五階まで?」

「そうだな…五階までならまぁ一日もあれば行けるだろう」

「はい!質問!」

「はいミヅキ」

ロブさんが手を上げたミヅキを指さした。

「十階まで行ってまた地上に戻ったらまた十階から挑戦できるんですか!?」

「出来ん…それが出来れば苦労はないんだがな…一度戻るとまた最初っからやり直しだ」

「うーん…となると一度潜ったらなるべく一気に行きたいね。エリクサーを使うのは何階ですか?」

「エリクサーは十六階だ。俺はそこに行けなくて十五階で戻ってきた…」

「じゃあそれまでに作らないとね…」

「アトラスの様子がわからんがあんまりのんびりとはしてられんだろう…」

「わかった!じゃあ今日はしっかりと休んで明日から頑張ろうね!」

「みんなも頼む!」

ロブはうっすら毛の生えてきた頭を深々と下げた。
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