上 下
481 / 687
11章

583.ミヅキのパンケーキ

しおりを挟む
「そうだなぁ~人数もいるし簡単なパンケーキにしようか?」

ミヅキが聞くとベイカーとシルバは素直に頷く。

「パンケーキか…美味いけど食べた気はしないな…美味いけど甘いんだよなぁ…肉じゃないんだよなぁ…」

ベイカーさんがブツブツ文句を言いながらもフライパンの用意をし始める。

【そうなんだよな…あれなら百枚は食べないと腹にたまらん。でもミヅキの作るパンケーキはふわふわだからなぁ…うんたまにはいいな】

シルバは結局ミヅキの作るものならなんでも良さそうだった…

ミヅキは大きな容器に小麦粉に卵、砂糖に牛乳とバターを混ぜて生地を作るとフライパンで大きく一枚一枚焼いていく。

隣のフライパンではコジローさんが…その隣ではベイカーさんと、ムーに乗ったレムがフライパンを握っていた。

【レム大丈夫?】

ミヅキが心配になって声をかけると

【問題ありません、温度が上がって表面にボツボツが出来たらひっくり返します】

【うん、それで大丈夫!よろしくね~】

頼りになる従魔に任せてミヅキもたくさんパンケーキを焼いた。

焼けたパンケーキをお皿に乗せると今度はベーコンを薄く切って焼いていく。

ベーコンの香ばしい香りにシルバの鼻がピクピクと反応しだした。

【ん?なんか肉の匂いがする…】

シルバはミヅキの肩から顔を覗かせる…見るとミヅキがフライパンでベーコンを焼いていた!

【ミヅキ!それは?】

シルバが興奮すると

【シルバとベイカーさんが肉、肉言うからベーコンエッグのパンケーキにしたよ。パンケーキは甘さ控えめにしたからベーコンの塩気と合うと思うよ】

【さすがミヅキだ!】

シルバはペロペロとミヅキを舐めて称えた!

シルバの興奮した様子にベイカーも気になり様子を伺いに来ると…

「あっ!なんだそれ!」

ベイカーもベーコンの存在に気がついた!

「もう…ベイカーさんもシルバも落ち着いてよ。とりあえず獣人の子達に食べさせてからゆっくりとね!みんなを起こして来てくれる?シルバはテーブル作って欲しいな」

  「わかった!」

【任せておけ!】

ベイカーは急いで馬車に向かうと、シルバはあっという間に獣人達が座れるテーブルと椅子を土魔法で作った!

コジローさんと二人の様子に笑いながらパンケーキをテーブルに並べていると

「連れてきたぞー」

ベイカーさんが暴れるジュウトを担いでこちらに向かってきた。

「なんでジュウトを担いでるの?」

ミヅキは不思議に思って聞くと

「こいつ飯を食いたくないって布団かぶって出てこなかったんだ、だから面倒で担いできた。この料理見りゃ食欲もわくだろ?」

ベイカーさんがジュウトを椅子に座らせると一人一人お皿が用意されパンケーキが二枚目ずつ乗っていた。

「すごい…お店みたい」

子供達が顔を輝かせると

「シルバがテーブル作ってくれたんだよ、これはパンケーキね!甘いジャムを付けてもいいし、こっちのベーコンと卵でおかず風に食べても美味しいよ、どっちがいいかな?」

子供達はどっちも美味しそうだとキョロキョロと目移りして悩んでいる。

その様子におかしくなると…

「ふふ…パンケーキは二枚あるから一枚はベーコンエッグで二枚目は甘いので食べてみれば?」

「いいの?」

子供が驚いてミヅキを見ると

「もちろん」

可愛くてつい笑ってしまった。

「やったー!僕この赤いの付ける」

「私はこの紫色が気になったの!ねぇちょっとあげるからそっちのも少しくれない?」

「いいね!」

女の子達は甘い方が気になるのか色々な味のジャムを試していた。

「ジュウトはどうする?」

何故か不貞腐れているジュウトに話しかけると…

「お前…なんにも覚えてないのな…」

ジュウトが悔しそうに睨みつけてきた。

「覚えて…?って何かしたっけ?」

ミヅキはうーんと腕を組んで昨日のことを考える…

「あっ!もしかしてお風呂を覗いた事?大丈夫だよー尻尾が少し見えただけだよ。全部は見てないから」

「そ、それじゃねぇ!…ってか尻尾見たのか…?」

ジュウトが恐る恐る聞いてくる。

「尻尾はいつも見えてるじゃん?」

「そういうことじゃなくて…」

顔を赤くするジュウトにベイカーはポンッと背中を叩くと

「諦めろ…こいつに何言っても無駄だ。お前の常識なんざ通用しないんだよ」

ふるふると首を振る。

「お前の子供だろ…ちゃんと教育しておけよ…」

ジュウトがガックリしていると

「ほらーそこの二人みんなにパンケーキ食べられちゃうよ~いいの?」

ミヅキはベイカーさんとジュウトに声をかけた。

「いやな事は美味いもん食って忘れろ!ほら食え!」

ベイカーはジュウトを抱き上げて椅子にキチンと座らせた。

ムスッとしているジュウトに構わずにミヅキはパンケーキを渡すと

「ジュウトはベーコンがいいよね」

ジュウトの答えも聞かずにベーコンと卵を乗せる。

「あっ…まだなんにも言ってないだろ!」

ジュウトが顔を顰めると

「なら甘いのでいいの?このベーコン、オークのバラ肉で作った特製だよ?脂がのってて塩気が最高でパンケーキにも相性バッチリだけど本当にいいの?」

ゴクリ…

ジュウトの喉がなると…

「ベーコンで…」

悔しそうにフォークを掴んだ。

ミヅキのパンケーキを獣人の子供達は気に入ったようで何枚もおかわりをした…その様子にジュウトはハラハラしながら様子を伺っている。

「お、お前らそのくらいにしておけよ…どうすんだ後できつい手伝いを強要されたら…」

ミヅキに聞こえないようにコソッと囁くと

「だ、だっへ…モゴモゴ…こへ…ゴクッ!すごく美味しい!止まらない!」

「わ、わかるけど…これは契約なんだぞ…食べたらその分手伝わないと行けないんだからな…」

「はーい!」

笑って気楽に返事を返す子供達にジュウトはため息をつく…

ジュウトの心配は子供達には届かなかった。

「あれ?ジュウトは二枚でいいの?」

ミヅキは空になったジュウトのお皿を見つめると

「ああ…なんか…こいつらの食べっぷり見てたら…腹いっぱいだ」

ジュウトは腹を撫でた…本当はあと十枚くらいは食べられそうだったがこれ以上ミヅキに頼む事が出来なかった。

「あーあ、よく食うなこいつら。俺の分あるよな?」

食べ終えた子供らを退かすとベイカーさんとコジローさんシルバ達がテーブルについた。

「大丈夫!生地を作ればまだまだ焼けるよ。ベイカーさんは何枚?」

「そうだなぁ…とりあえず五枚で!」

「俺は一枚でいいよ、ミヅキ手伝おう」

コジローさんがフライパンを用意してくれると

「ありがとう!これ重いから大変なんだ」

ミヅキが笑うと話を盗み聞きしていたジュウトがおかしいとチラッと様子を伺う。

あのベイカーと言う冒険者は俺よりはるかに食う…それが五枚で満足だと?

しかしその考えはフライパンを見て納得した…

「じゃあ焼くよー!」

ミヅキは半径30センチ程の巨大なフライパンにパンケーキの生地を垂らした。

【シンク!弱火でまんべんなくお願いね!】

フライパンと同じ大きさの蓋をすると鳥の魔獣がフライパン全体に火を纏った。

すると香ばしい甘い匂いがしてくる…思わず腹がなってしまった。

その音に目ざとくミヅキが振り向くとジュウトはバッチリと目が合ってしまった。
しおりを挟む
感想 6,823

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~

アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。 誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。 彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。 これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。