上 下
467 / 687
11章

閑話【アランさんのお留守番2】

しおりを挟む
ギスギスした雰囲気の中、依頼のニーズヘッグが生息する洞窟に行く…先頭はマルスでリリンを真ん中に配置してそのまわりを男達が囲みながら目的の場所へと向かう事になった。

「じゃあアランさんは初めてだし私の隣で…」

リリンがアランの場所を提案すると

「駄目だ、アランは一番後ろからついてきてくれ」

マルスがそう言うと、アランは素直に頷く。

「ああそれでいいよ」

四人はしっかりとリリンをアランから離すとマルスが走り出した。

アランは少し離れながら五人の後ろを走って行くが…

「おい、少し遅くねぇか?」

前を走るハリーに声をかけた。

ハリーはチラッとアランを見ると

「リリンの体力に合わせているんだ、これ以上早くするとリリンの体力が持たないからな」

「はっ?まじかよ…」

アランが呆れると

「すみません…私のせいで…」

リリンがしょんぼりと肩を落とす。

するとマルスが急に立ち止まった。

「アラン!今日だけのあんたに俺達のパーティの仲を崩されたくない!変な発言はしないで欲しい」

「はっ?」

アランが顔をしかめると

「俺はお前達が依頼に来てくれって聞いたからここにいるんだが?」

「あっ!それは私が頼んだんです…」

リリンが小さく手を上げる。

「アランさんと一度一緒に依頼に行きたいって…みんな納得してくれたよね?」

リリンがマルス達を見つめると

「そりゃ…一回出してみて無理なら諦めるって言うから…まさか通ると思ってなかった」

マルスがボソッとつぶやくと

「ふーん…まぁいいけどよ。俺はニーズヘッグが食えりゃ…」

アランはどうでもいいと肩を上げると

「さっさと行こうぜ、だがなリリンの事を思うならもう少しスピード上げろ。それじゃいつになっても強くなれないぜ」

「うるさい、わかってる!今から徐々にあげていくところだったんだ」

「ならいいけど…こんな調子だと着くの夜になるぜ」

「はっ?当たり前だろ。そんなに早く着けるわけない」

ハリーの言葉にエイダンとアンドレアも頷く。

「えっ…まじかよ…ベイカーとなら昼前には着くのに…」

アランははぁ…とため息をついた。

あの後もチンたらとリリンに合わせて走り出す、途中何度も休憩を取っていた。

アランは三度目の休憩中に…

「ちょっと近くを探索してくる」

腰を上げると

「早く戻れよ、遅かったら置いてくからな」

「はい、はい」

アランは適当に答えると…

「あ、あの、私も行っていいですか?」

リリンが行きたいとアランのあとを追う。

「リリン!」

「リリンは休んでた方がいいよ」

「そうだよ、まだ体力戻ってないだろ?」

マルス達が心配そうに声をかけると

「大丈夫、ちょっとついて行くだけだから。アランさん、別に走ったりしませんよね?」

「まぁ…な」

アランが頷くと四人の刺すような視線が突き刺さる。

アランは視線を無視して森の中へと入ると…

「何か探してるんですか?」

リリンが近づいてアランのそばにピッタリとくっつく。

「いや、腹減ったからななんか食べられるもんはねぇかなと…」

森に目を向けながら歩くと、木になる果物を見つけた。

「おっ良さそうだな」

アランはナイフを取り出すと果実目掛けて投げる。

ナイフは見事果実を支える茎の部分を切ると果実を下に落とす。

「リリン拾え」

アランはリリンに果実を受け取るように声をかけると

「えっ!?は、はい!」

見事にキャッチする。

「ほら、どんどん落とすぞ」

アランは次々に果実を落とすと

「わっ!ま、待って!」

リリンは慌てながら果実を拾った!

リリンは見事に全ての果実をキャッチした…

「よくやったな。じゃあ食うか?」

アランは下に置いてある果実を拾うとナイフで二つに割る、半分をリリンに差し出すと

「いいんですか?」

「ああ、お前が取ったもんだからな」

「ありがとうございます!アランさんて…意外と優しいんですね…」

リリンは上目遣いにアランを見つめると

「意外ってなんだよ、俺はいつでも優しいぞ」

「あはは!アランさんて面白い!」

リリンはアランの腕を掴むと自分の胸を押し当てる。

「私…アランさんを一目見た時から…なんだが胸が苦しくて…」

大きく開いた胸元からは魅力的な胸がアランの腕によって押し出される…

「アランさんは…彼女とかいるんですか?」

リリンがそっと囁くようにアランの耳元に唇を寄せると…

「美味っ!この果実甘くて美味いな!」

アランはリリンの胸には目もくれず果実に夢中になっていた…

「チッ…」

「ん?なんか言ったか?」

「えっ?ううん、本当にこの果物美味しいですね…みんなにも持っててあげようかな」

リリンはパーティの分を拾うと

「そろそろ戻らんとな、置いてかれる」

アランも残りの果物を拾って収納にしまった。

「置いてかれたら、二人っきりであとを追いましょうね」

リリンが嬉しそうに微笑むと

「大丈夫だ、ほらあいつら来たぞ」

アランが前を顎で指し示すと、マルス達が不機嫌そうに歩いて来る。

「遅いぞ!」

「何してたんだ!?」

アランに向かって声をかける、するとリリンはみんなに駆け寄って

「ごめんなさい、私…みんなの分の果実拾ってて…すごく美味しいからみんなにも食べさせたくて…」

うるうると目を潤ませてマルス達を見つめた。

「えっ…俺たちに?」

その言葉にマルス達の機嫌が少し良くなると

「うん、これ。私が拾ったの」

一人一人に手渡しで果実を渡していく。

「俺の為に…ありがとう」

「すごく美味そうだ、大切に食うよ」

「ありがとう、リリンでも心配だから僕達の目の届く範囲にいてよ」

ハリーが心配そうにリリンの頭を撫でると

「はい…ごめんなさい…」

リリンはしゅんと肩を落とした。

「ま、まぁ今回は食料を集めてくれていたからね。すごく役にたったよ」

「そうだな、この調子で頑張ってくれ。でも次行く時は俺と行ってくれ」

「はぁ?次は俺の番だろ?」

「ちょっと止めなよ、喧嘩したら順番飛ばすよ」

マルス達はなんだが揉め出すと

「みんな心配してくれてありがとう!でも今日はアランさんがいるから次もアランさんと行くわ」

リリンが微笑むと

「いや、別にそいつらと行けよ。俺はいいよ」

アランが断る。

「あいつ…リリンの誘いを…いや…リリンそんな薄情な奴はほっといてやっぱり俺と行こう」

マルスがリリンの手をそっと掴むと

「ありがとう…考えとくね」

リリンはマルスの手をギュッと握り返した。

しおりを挟む
感想 6,824

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。