上 下
452 / 687
10章

562.の合間の話2

しおりを挟む
「ミヅキ!ベイカーさん達が捕まったって本当か?」

デボットさん達が知らせを受けて家に駆けつけてきた。

「うん、でもセバスさんも信じて無いみたいだから大丈夫…だと…思う」

私は自信なく頷くと、これまでの経緯を説明した。

「ベイカーさんとアランさんが食い逃げね、まじでありえそうだから怖いな…」

「でもやってないよ!」

「わかってるよ、それにあの二人がいくら食いじがはってるからってそんな事本当にやるなんて信じてないよ」

デボットさんが悪いと私の頭を宥めるように撫でると

「その本当の犯人を捕まえないと、ベイカーさん達またこんな事が起きちゃうかな?」

「そうだな…どうも私怨的な犯行っぽいよな」

「そうですね」

デボットさんとレアルさんが唸っていると

「私は許せない!犯人捕まえてやる!」

ミヅキがフンっと鼻息を荒くすると腕まくりをした。

「ま、待て!ミヅキ!お前セバスさん達から大人しくしてるように言われてないのか?」

デボットさんがやる気満々の私を制止させる。

「あっ…」

ー、静かにここにいて下さいね…

「大丈夫!ここに居れば問題ないよ!」

「ここに居ればって…お前動けないのにどうするつもりだよ」

「そりゃ犯人に来てもらうんだよ」

ミヅキはニヤリと笑った。

ミヅキは急遽デボット達の家をお店へと改良した。

魔法でやればあっという間だね!

「ごめんね、後でちゃんと元に戻すからね」

デボットさんとレアルさんには家を改造した事を謝ると

「ミヅキの従者なんだから主人に従うまでさ、どうなろうと問題ない」

レアルさんが笑うとデボットさんも微笑んだ。

「ありがとう~」

「それで?どうする気なんだ?」

デボットが広くなった店を見ると

「そりゃもちろんお店を出すんだよ!冒険者達が好きそうなガッツリ系のお店をね!」

「そんなんで来るか?」

「ガッツリ系の店にアランさん達が行かないと思う?」

「絶対に行くな…」

「でしょ!そこで食い逃げ犯が来たら捕まえてやる!」

「わかった…おびき寄せるまではいい、だけど捕まえるのは駄目だ!危ない!そこは俺達がやるからな」

デボットさんとレアルさんが頷くと

「はーい…」

【俺達が捕まえようか?】

シルバ達がコソッと聞いてくると

【うん!デボットさん達が危なそうならお願い!他の人に被害が出たりしたら危ないもんね】

シルバ達はコクっと笑って頷いた。

ミヅキはルンバさんとファルさんに協力をお願いして臨時のコックとして雇った。

「二人ともごめんね、自分達のお店があるのに…」

「大丈夫だ、ミヅキにはいつも世話になっているからな。あいつも今子供の世話で大変だったからなちょうどいいからお休みをとることにしたよ」

「こちらも問題ないよ」

二人が優しく笑顔を返してくれる。

「ムツカも頑張るよ!」

ムツカも手伝いたいと給仕をしてくれる事になった…

「後はデボットさんとレアルさん、コジローさんが給仕と会計ね。コハクは招き猫ならぬ招き狐で頑張って!」

コハクを店の看板代わりに置いて手招きしてもらう。

「可愛い!」

「ねー!」

ミヅキとムツカはキャッキャツとコハクを見ていると…

「それで?肝心のメニューはどうするんだ?」

「ここは美味い!早い!安い!の三拍子揃ったミノタウロス牛丼で勝負だ!」

「ミノタウロス牛丼…」

「材料も少ないしすぐ出来るし回転数も早いからお客をたくさん呼べると思うんだよね、それでまずは玉ねぎ、後はミノタウロスの肉を薄切りにして醤油ベースのつけ汁で煮込むだけ!」

「ミノタウロスはどうするんだ?」

「こちらのシルバさんが既に狩って来てくれました…」

シルバを見せると、どうだと胸を張っている。

「てことなんでとりあえずみんなには材料を切って貰います!」

「じゃあ俺は肉を切る」

ルンバさんが肉の塊に手を伸ばすと

「じゃあ俺は玉ねぎを…」

ファルさんは玉ねぎを数個掴むと早速と切り始めた。

「私はつけ汁の準備を…醤油に酒に塩にさとう!あっデボットさん達は大量にお米を炊いといて下さい!シンクお願いね!」

【はーい】

ミヅキ達は急ピッチで牛丼を作っていった…

お店の前には噂をと匂いを嗅ぎつけた人達が様子を伺っていた…

「新しい肉のお店だとよ…この匂いたまんねぇな…」

冒険者達がお店が開くのはまだかまだかと待っていた。

「お待たせしました。どうぞ…」

コジローさんが店の扉を開くと冒険者達がなだれ込んで来る。

「メニューはなんだ?この匂いはどれなんだ?」

キョロキョロと周りを確認していると…

「メニューはミノタウロス丼一つです!大きさは選べますよ~小、中、大、特大、特特大。おすすめは特大かな?」

「じゃあ特大頼む!」

「こっちもだ!」

「こっちは二つ!」

「はーい!ルンバさん特大四つね!」

「おう」

ファルさんがご飯をよそってルンバさんに渡すとルンバさんがドサッと肉をかける。

「はいよ」

ドンッとカウンターに置くと…

「もうかよ!早いな…しかし…いい匂いだたまらん!早速いただきます!」

その間にもドンッドンッドンッ!と丼が用意されていく。

「美味い!」

ガツガツと丼を書き込む冒険者立ちを微笑ましく眺めながらもミヅキはしっかりと一人一人の顔を見ていく。

みんな数分足らずで食べ終えると…

「美味かった!いくらだ?」

「小から銅貨三枚、中、四枚、大五枚、特大六枚、特特大が七枚だよ」

「コレで銅貨六枚か…悪くないな!」

「良かったら持ち帰りもありますよ~」

「なに!じゃあ特大をもう一つ頼む!持ち帰りで!」

「じゃあ俺もだ!」

みんな食べるともう一つお土産用を頼んでいくなか…

「俺は特特大二つで!」

体の大きなお客が二人入ってきた…一人は不自然な赤色の髪の男でもう一人はアランさんと同じ明るい茶髪だった…

「あれは…でも全然似てないしなぁ~」

顔を見るがベイカーさん達には似ても似つかない容姿だった…

まさか…あれじゃないよね…

一応注意しながら2人を見ていると…

「おい!」

ふてぶてしい態度の二人がミヅキを見つけて呼び出した。

「はーい」

ミヅキが行こうとすると、デボットさんが手で止める。

「俺が行くよ」

デボットが行こうとすると

「お前じゃねぇよ!そっちの子供に頼んだんだよ!男は来るな!」

シッシッとデボットを追いやる。

「はぁ?」

デボットさんのこめかみがビキッとなると…

「大丈夫、私が伺います」

デボットさんに手をかけて落ち着かせるとお客にニコッと笑いかけた。

「最初からそうしろな…なぁアラン?」

「ああ、そうだよなベイカー」

二人はわざとらしく名前を呼び合う。

「アラン…ベイカー?」

二人をじっと眺めると

「ああ、俺達の名前だ!」

ふんぞり返って胸を張る…

「ふーん…かっこいい名前ですね」

ミヅキは精一杯笑うと…

【ミヅキ…殺るか?】

シルバが裏から声をかけると

【待って…まだ食い逃げした訳じゃ無いからね…外出たらお願いね】

【わかった…】

私はデボットさん達を見るとみんなも無言で頷く。

こんなに早くかかるとは…しかし許せない!

ミヅキは気持ちを切り替えて二人に話しかける。

「ご用件は?」

「ああ、持ち帰りを頼みたい。そうだなぁ…俺は五つかな、ベイカーどうする?」

「俺も五でいいや、いくら大食いって言ってもなぁ~」

二人が笑い合う。

「ふん…本物ならもっと食べるもん…」

ボソッとつぶやくと

「あっ?なんだ?」

二人がミヅキを見下ろす。

「いえ、なんでもありません。持ち帰り用のミノタウロス丼合計で十個ですね」

ミヅキが接客用の笑顔を見せると

「ああ…」

二人はミヅキを見つめてニヤリと笑った。
しおりを挟む
感想 6,824

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。