上 下
441 / 687
10章

553.帰還

しおりを挟む
プルシアの姿を確認した町のみんなは…

「ミヅキ達が帰って来たぞ!」

ギルマスに知らせようと慌ててギルドに駆け込んできた。

「あいつらは無事か!?」

ディムロスが椅子を派手に倒して立ち上がると

「いえ…まだプルシアさんの姿しか確認していませんが、いつものように籠を掴んでいますのでその中にいるかと…」

「すぐに向かう」

ディムロスは仕事を放り投げると近道とばかりに窓から飛び出した!

外に飛び出し空を見上げると遠くに確かにプルシアの姿を確認するとそちらに向かって走り出した。

「ディムロスさん!」

「おお!お前らか」

途中で同じようにプルシアに気がついたデボットとレアルと合流すると一緒に走り出す。

「ミヅキ達は大丈夫ですかね…」

必死にディムロスについて走りながら聞いてくる。

「あいつらの事だから大丈夫だ。いつものように笑って顔を出すだろ」

ニカッと笑うディムロスにデボット達は笑い返すと

「そうですね、あの従魔達を連れたミヅキがいるんだから大丈夫ですよね」

「そうですよ」

そうは言いうものの早く無事な姿を確認したい三人は足を急いだ。

そんな自分達に向かってくる三人に気がついたプルシアは

【ミヅキ、ギルドのじいさんとデボット達がこっちに向かっているぞ】

【え?じいちゃん達が?】

私は籠から下を覗くと凄い勢いで走る三人を見つけた。

【あっ!本当だ!】

「おーい!じいちゃん!デボットさん、レアルさーん」

私は背伸びをしながら三人に向かって大声をあげると

「ミヅキです!ミヅキが手を振ってる」

「ほらな!だから無事だと言ったんだ。セバスの奴も…いるようだな」

後ろからミヅキを支えるように立つセバスを確認してディムロスはほっと胸を撫で下ろした。

少し町まで遠いがプルシアに降りて貰うとじいちゃん達に駆け寄る。

「ただいま!無事みんなを連れて帰ってきたよ」

私は手を広げるじいちゃんの胸に飛び込むと固い胸板のじいちゃんがギュッと抱きしめる。

「よくやったな!さすがミヅキだ!」

よしよしと頭を撫でてくれると後ろに微笑んで立つセバスさんをみる。

「おかえり、まぁお前の事だから大丈夫だよな」

セバスさんはニコッと笑うと

「ええ、ですがミヅキさんが来てくれて助かりました。これでエルフの方々と交流が持てそうですから」

「本当か?」

ディムロスが驚くと

「ええ、手始めに私を誘拐したオリビアさんがここでの暮らしを学びに来てくださいました」

アルフノーヴァに連れられて気まずそうに籠から降りてくるオリビアを見つめると

「ミヅキの事だから何か連れ帰ってくると思っていたが…」

ディムロスが苦笑しながらミヅキを見る。

「オリビアはちゃんと謝ってくれたよ」

伺うようにじいちゃんを見つめていると

「その節は…大変失礼致しました…」

ペコッと頭を下げる。

その様子にディムロスは

「本当にあの時来た子か?別人じゃないのか」

あまりの変わりように訝しげにしていると

「元は素直ないい子なんだよ、私も友達になったんだよ」

「ミヅキやセバスが許してるならわしは問題ないぞ」

ディムロスが笑うと

「私達からは何も言うことはありませんから…」

デボットとレアルは口を噤む。

「まぁここではなんですから町に戻りましょう」

セバスさんが歩き出すと

「ありゃ?そういやあいつらはどうした?」

姿が見えないバカ息子とベイカーの姿を探してキョロキョロと周りを確認すると

「彼らは反省させる為に少し走らせてます。まぁそろそろ着くと思うのですが…」

飛んできた方角を見つめるが人が走ってくる様子は見えなかった。

「迷子になっちゃったのかな?」

心配そうにじいちゃんとセバスさんを見ると

「あの歳で迷子もないだろここら辺の地形ならあいつらは把握しているはずだ。どっかで寄り道でもしているのかもな」

じいちゃんの言葉に

【ミヅキ!俺が様子を見てきてやる!】

シルバが何かに気がついた様に走り出した!

【え!シルバ?】

【心配するな!すぐに連れて帰ってくる】

シルバは凄い速さで走り出すとあっという間に見えなくなってしまった。

「シルバさんどうしたのですか?」

セバスさんが聞くと

「なんか二人の様子見てくるって…迎えに行ってくれたみたいです」

「シルバさんが?」

「「まさか!」」

セバスさんが聞き返すと、デボット達は信じられないと肩をあげる。

「ソワソワしてましたから…なにか見つけたのかもしれませんね」

コジローがシルバが消えた先を見つめると

「あの三人の事だから肉でも見つけたんじゃないのか」

ディムロスの言葉に一同は「あー…」と納得した。

あの人達ならほっといても大丈夫だろうとみんなで歩きながら町に向かうと…

「それで?エルフの国でどんな事をしでかしたんだ?」

ディムロスに抱かれたまま運ばれるミヅキにデボットが話しかけると

「何もしてないよ!今回は…」

自信なさげに答えると

「何もしてなきゃエルフが付いてくるかよ。大方なにか料理でも振舞ったんだろ?」

「それとも魔法で完膚なきまでに叩きのめしたのですか?」

レアルさんが笑いながら言うと

「そんな事しないよ!普通に食事してお話して帰ってきたんだよ!ねぇセバスさんアルフノーヴァさん」

二人に同意を求めると

「まぁ…そんなところですかね…」

セバスさんが顔を逸らす。

「なんだその顔は…まさか今回はお前がなにかしたのか?」

ディムロスが呆れてセバスを見ると

「いえ…少し感情が昂ってしまいまして…ねぇ?」

誤魔化すように笑うと

「お前もあの二人の事を言えんな」

やれやれとディムロスがため息をつくと

「あの二人と一緒にはして欲しくありませんね」

心外だとセバスが顔を顰める。

「わしからみりゃお前とあいつらも変わらんがな、なぁアルフ」

アルフノーヴァに同意を求めると

「そうだね、まだまだみんな可愛い子供だよ」

「四十の男を捕まえて子供とは…私もまだまだですね」

さすがのセバスもアルフノーヴァには頭が上がらなかった。


「ハックシュン!」

豪快なくしゃみをしたアランは…

「あー!」

魔物に気付かれてしまうと

「何やってんだ、アランさん!」

ベイカーが怒鳴り声をあげる。

「悪いな!誰かが噂でもしてんのかな?可愛い女の子かもなぁ~」

ニヤッと笑うと

「どうせセバスさん達だろ、もしくはセシル達かもな」

「うるせえな!わかってるよ…少しくらい夢持たせてくれたっていいだろ…」

アランがベイカーを睨みつけブツブツと文句を言っていると

「もう肉はこのくらいでいいんじゃないか?そろそろ帰らないとミヅキ達が心配するぞ」

「そうだな、じゃあここら辺でさっさと焼いちまうか」

アランとベイカーは捕まえた獲物を解体すると火をおこして肉を串に刺すと調味料を付けて焼き出す。

肉が焼ける匂いがしてくるともうそろそらかと二人が手を伸ばそうとすると凄い勢いで何かが近づいてくる気配がした!

アランとベイカーは肉を掴むと立ち上がりしっかりと咥えながら剣を抜き構えると…

「グルルル…」

【やはり!】

シルバが唸りながら顔を出した。

「お前かよ!」

「びびった…」

【狡いぞ!貴様ら、俺にも食わせろ!】

シルバがヨダレを垂らしながら近づいていくと

「なんだ、シルバだけか?他の奴らはいないんだな」

周りを確認するとシルバがコクコクと頷く。

「じゃあ半分やるから黙ってろよ」

ベイカーは仕方なく串から肉を取ってやるとシルバの前に葉っぱを置いてその上に肉をおいてやる。

置いた途端にガツガツと食い出すシルバに自分たちの取り分が減ってベイカーとアランはため息をついた…
しおりを挟む
感想 6,824

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。