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10章

551.少女愛

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「どうもオリビアはミヅキ信者になってるな」

ベイカーがため息をつくと

「あれは帰ってから教育が必要ですね…」

セバスも頭を抱える。

「まぁエルフ達はそこまでオリビアの言葉を信じてないから大丈夫じゃないか?」

アランに言われて周りをみると確かにエルフ達はまだ伺うように遠巻きに見ている。

するとエルフの中にミヅキはハイドラさんとトリヤさんの姿を見つけた。

「あっ!エヴァさんハイドラさん達がいたよ」

エヴァさんに声をかけると

「おーい、ハイドラさん!トリヤさん!」

手を振るとハイドラさん達がビクッと反応した…恐る恐る近づいて来ると

「お前…あのミヅキなのか?」

ハイドラさんが声をかけるとイシスさんと同じようにコハクに幻影で姿を変える。

「騙しててごめんね」

エルフの姿で謝ると…

「やっぱり可愛いなぁ!」

ハイドラさんが思わず頭を撫でると、幻影が解けて人の姿に戻る!

「わっ!」

「触られると解けちゃうんです。だから触られるの避けてたの」

「そうだったのか…じゃああの時連れてた動物達が聖獣だったのか?」

「そうだよ、狼がシルバで小鳥達がシンクとプルシアだよ」

「あんなにそばにいたのに全然気が付かなかった…」

「そりゃそうだ。お前たちよりミヅキ達の方が魔力が上なんだからな」

エヴァさんが言うと

「「えっ!」」

「この子の方が俺達より上なんですか?」

トリヤがエヴァに聞き返すと

「お前達どころか王子達より上だろうな…この子は特別だ…聖獣に愛され神木様からも加護を受ける人の子だ」

エヴァさんが誇らしそうにミヅキを見つめると

「そんな大層なもんじゃないよ~普通の人間の女の子です」

私が笑うがエルフ達の顔は引き攣っている。

「す、すみません…気軽に頭を撫でてしまいました…」

ハイドラさんが手を引っ込めると

「だ、大丈夫だよ!」

私はハイドラさんの引っ込めた手を掴むと

「私皆さんより年下だし…そんなお兄さん達に敬語とか…嫌です」

ハイドラさんの手を握りしめてお願いをする…態度を変えないで欲しいと見つめると

「こ、これは!トリヤやばいぞ!どうしよう」

「ハイドラどけ!俺が変わる」

トリヤさんがハイドラから私の手を取ると膝まづく。

「ミヅキちゃん…君がエルフでも人でも僕らの気持ちは変わらないよ…これからも君をで…」

バシッ!バシッ!ガシッ!

ベイカーさんとコジローさんがトリヤさんのセリフを言う前に手を叩きつけ叩き落とすと、セバスさんが私を抱き上げ二人から遠ざけた。

「ミヅキさん、あの二人には迂闊に近づかないように」

セバスさんがやんわり私に注意すると

「なんだお前ら、ミヅキちゃんにちゃんと話をさせろよ」

ハイドラさんがベイカーさんに絡んでいる。

「そうだ!ミヅキちゃんから言葉を聞きたい!お前らにようはないんだよ」

「駄目だ…お前らをミヅキに近づけるなと本能が告げている」

コジローが近づけさせまいとギロッとトリヤを睨みつける。

「まぁちょっと落ち着けお前ら俺はベイカー、ミヅキの親代わりだミヅキと話したいならまずは俺に話を通すのが筋ってもんだろ?」

ベイカーが興奮する二人の肩に手を置くとギュッと握りしめる。

「グッ…」

「ガッハッ!」

痛みで体を曲げる二人に対して

「あれ?軽く挨拶をしただけだったが…大丈夫か?」

ベイカーが上から見下ろすと起こすふりをして耳元に近づくと

「うちの子に手ぇ出してみろ…こんなもんじゃすまさんぞ…」

冷めた目で睨みつける。

「はん、人間風情が…魔力がないもんだから力で押し付けようとする…やっぱり野蛮なのは変わらんな」

ハイドラは、魔力で体を強化するとベイカーの手を払い除ける。

「ベイカーさんもハイドラさんも喧嘩しないでよ!これから仲良くしてこうって言ってるのに…」

困り顔で二人を見つめると

「いや…別に喧嘩なんてしてねぇよ。ちょっと子供の扱いを知らないようだから注意してただけだよ」

ベイカーさんが笑ってこちらを振り返ると

「そうそう、ミヅキちゃんを困らせる気はないよ」

ハイドラさんも笑うと…

「本当に?」

じっと二人を見つめる。

「ああ、本当本当!なぁ…」

ベイカーさんがハイドラに手を差し出している。

「ほら、ミヅキが心配するだろ…手を出せよ」

ボソッとつぶやくと、仕方なさそうにハイドラもベイカーの手を握る。

「ああ、よ、ろ、し、く!」

ハイドラは力を込めてベイカーの手を握りしめた。

「ははは!こちらこそよ、ろ、し、く、なぁ!」

ベイカーが対抗すると二人は顔を近づける。

「ほら、仲良しのようですよ…邪魔したら悪いからあっちに行きましょう」

セバスさんが笑って二人をみると私を抱き上げたままその場を離れた…

「えっ?セ、セバスさん?あの二人…大丈夫?」

セバスさんは聞こえていないのかアルフノーヴァさんや王子達がいる方に向かうと

「エルフ達の教育をしっかりとしてからこっちに寄越して下さいね」

にっこりと笑いかけた。

王子達がコクコクと頷くと…

「教育ってなんですか?」

セバスさんに聞くと

「あまりお互いの事を知らずに来るとトラブルの原因になりますからね…こちらである程度説明をしてからお越し下さればああいった事もないでしょうからね」

「ん?」

よく分からないがまぁ説明も無しに来るのは不安だもんね。

現にエルフのみんなも戸惑ってるし…

ちらっとベイカーさん達をみるとまだ二人で握手していた…なんか仲良くなったのかな?

するとセバスさんは二人が見えないように体の位置を変えると

「ミヅキさんはここでシルバさんといてください。シンクさん、プルシアさん、コハクさん達もしっかりとミヅキさんのそばにいてくださいね」

【任せろ、変態エルフは近づけさせん】

【まぁどっちのミヅキも可愛いって気持ちはわかるけどねぇ~僕らのミヅキだからね】

シンクがエルフ達がいる方の肩に乗ると体で見えないようにガードする。

【変態エルフ?そんな人いたの?】

キョロキョロと周りを見るが変な人はいないように見える。

【ミヅキ、あまり愛想を振りまいては駄目だ。ろくなものが寄ってこないからな】

【みんなしてなんなの?もしかしてハイドラさん達の事?あの人達は子供が貴重だから大切にしてくれてるんだよ。変態とは違うよ】

私が説明すると

【いや…あの目は違う】

【僕もそう思う】

コクコクと頷く従魔達に心配しすぎなんだよな…と苦笑してため息をついた。


未だに手を握りあっている二人は…

「お前…なかなか…やるな…」

ハイドラがどんどん魔力を削られて顔をひきつらせる。

「こちとら魔力お化けのセバスやミヅキとやり合ってんだ。この程度どってことないんだよ」

「おい!いい加減にしろ!」

お互い譲らないハイドラとベイカーにアランが拳骨を落とすと

「見ろ!ミヅキが心配そうにこっちをチラチラ見てるぞ、あの子が大切なら心配させるような事をするんじゃねぇよ」

アランさんがまともな事を言うと

「だってこの変態がミヅキを攫いそうな目で見てるから!」

「はぁ!?ミヅキちゃんを攫うだと!そんな事するもんか!あんな天使みたいな子は大切に見守るもんなんだよ!」

「そうだ!」

トリヤが同意するように声をかける。

「なんかこいつらおかしいよ」

ベイカーが引くと

「お前らミヅキをどうこうするつもりはねぇんだよな」

アランが確認すると

「どうこうってなんだよ?ミヅキちゃんが嫌がることをする気はないよ」

二人が顔を見合わせると

「んー…どうやらエルフと我々とでは愛情表現も違いがあるようですね」

セバスさんがミヅキを置いて戻ってきた。

「オリビアさんといい、エルフの人達は好きになるとそれを全面に押し出すのかもしれませんね」

「あーなるほど」

アランが頷くと

「ですが!だからと言ってミヅキさんにベタベタと触れることは禁止です!ミヅキさんだけで無く人の子を無闇に触ると裁かれる事になりますのでご注意くださいね」

セバスはハイドラ達に笑いかけると

「そ、そういうものなのか…」

「これから王子達による人についての講習もあると思いますのでこっちに来たければしっかりと勉強してから来てください…」

セバスさんが手を差し出すと

「わかった…」

不服そうにセバスの手を取ると…

ボキッボキッ!

身体強化したセバスがハイドラの腕を折ると…一瞬で回復させる。

「なっ!」

ハイドラがセバスから急いで手を離すと

「人も身体強化すればこの程度の事軽くできますので甘く見ないで下さいね、ちなみにベイカーさんは身体強化なんて一切してませんからね…では…」

セバスは唖然とするハイドラ達に軽く頭を下げるとミヅキの元に戻って行った。

「な、なんなんだよあいつ!」

ハイドラは思わずベイカーに詰め寄ると

「あれが魔力お化けだよ…お前ら目えつけられたみたいだな…人の国に来る時は気をつけろよ」

ベイカーが哀れみの目を向けると

「まぁミヅキに目をつけたのが運の尽きだな、諦めな」

アランさんがどんまいとハイドラ達の背中をドンドンと叩くと

「まぁミヅキを困らせるような事したら俺達も黙ってないからな」

ベイカーはハイドラ達をチラッと見てセバスの後を追った。
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